- アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
【警告】
-
1.1本剤の投与は、アミロイドPET、MRI等の本剤投与にあたり必要な検査及び管理が実施可能な医療施設又は当該医療施設と連携可能な医療施設において、アルツハイマー病の病態、診断、治療に関する十分な知識及び経験を有し、本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師の下で、本剤の投与が適切と判断される患者のみに行うこと。
-
1.2本剤の投与開始に先立ち、本剤投与によるARIAの発現割合、ARIAのリスク及びリスク管理のために必要な検査、ARIA発現時の対処法について、患者及び家族・介護者に十分な情報を提供して説明し、同意を得てから投与すること。また、異常が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指導すること。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
-
2.2本剤投与開始前に血管原性脳浮腫が確認された患者[ARIAのリスクが高まるおそれがある。]
-
2.3本剤投与開始前に5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症又は1cmを超える脳出血が確認された患者[ARIAのリスクが高まるおそれがある。]
効能・効果
用法・用量
通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1050mg、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。
使用上の注意
-
8.1アナフィラキシーを含むinfusion reactionがあらわれることがあるため、本剤投与終了後少なくとも30分は患者の状態を観察すること。
-
8.2本剤はARIA管理に関する適切な知識を有する医師の下で使用し、投与開始前及び投与中は以下の点に注意すること。
-
8.2.1本剤投与開始前に、最新(1年以内)のMRI画像により、ARIAを含む異常所見の有無を確認すること。
-
**8.2.2ARIAの発現は、本剤投与開始から24週間以内に多く、重篤なARIAの発現は12週間以内に多いことから、この期間は特に注意深く患者の状態を観察すること。当該期間にかかわらず、ARIAを示唆する症状(頭痛、錯乱、悪心、嘔吐、ふらつき、めまい、振戦、視覚障害、言語障害、認知機能の悪化、意識変容、発作等)が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するように患者及び家族・介護者に指導すること。速やかに臨床評価を行い、ARIAの発現が疑われる場合はMRI検査を実施すること。
-
**8.2.3ARIAを示唆する症状が認められない場合であっても、本剤2回目の投与前、3回目の投与前、4回目の投与前、及び7回目の投与前、並びにそれ以降も定期的にMRI検査を実施し、ARIAの有無を確認すること。
-
8.2.4アポリポ蛋白E対立遺伝子4(APOEε4)(ホモ接合型又はヘテロ接合型)キャリアの患者において、ARIA-E、ARIA-H、及び重篤なARIA-E及びARIA-Hがより高い頻度で認められている。なお、発現頻度は、APOEε4(ホモ接合型)キャリアで最も高く、次にAPOEε4(ヘテロ接合型)キャリア、APOEε4ノンキャリアの順で高かった。APOEε4保因状況にかかわらず、8.2.1~8.2.3項及び11.1.2項に規定のMRI検査を含むARIA管理を実施すること。アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症患者を対象とした本剤の国際共同第III相試験(AACI試験)及び海外第III相試験(AACQ試験)におけるAPOEε4ホモ接合型キャリアの割合はそれぞれ16.7%1)及び10.1%であった。
| 本剤群注8) | プラセボ群 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| ホモ 接合型 (N=143) |
ヘテロ 接合型 (N=452) |
ノン キャリア (N=255) |
ホモ 接合型 (N=146) |
ヘテロ 接合型 (N=474) |
ノン キャリア (N=250) |
|
| ARIA-E | 41.3% (59例) |
23.2% (105例) |
15.7% (40例) |
3.4% (5例) |
2.1% (10例) |
0.8% (2例) |
| 重篤なARIA-E | 2.8% (4例) |
1.8% (8例) |
0.4% (1例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
| ARIA-H | 50.3% (72例) |
32.5% (147例) |
18.8% (48例) |
20.5% (30例) |
12.9% (61例) |
11.2% (28例) |
| 重篤なARIA-H | 1.4% (2例) |
0.2% (1例) |
0.4% (1例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
注7)MRI中央読影で認められたARIA及び治験担当医師により報告されたARIAから頻度を算出した。
注8)本剤を最初の3回は1回700mg、以降は1回1400mgを4週間隔で静脈内投与した(初回承認時の用法及び用量)。
| 350mg開始群注10) | 700mg開始群注11) | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| ホモ 接合型 (N=21) |
ヘテロ 接合型 (N=115) |
ノン キャリア (N=75) |
ホモ 接合型 (N=21) |
ヘテロ 接合型 (N=112) |
ノン キャリア (N=72) |
|
| ARIA-E | 23.8% (5例) |
15.7% (18例) |
13.3% (10例) |
57.1% (12例) |
24.1% (27例) |
15.3% (11例) |
| 重篤なARIA-E | 0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
1.3% (1例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
| ARIA-H | 28.6% (6例) |
28.7% (33例) |
20.0% (15例) |
47.6% (10例) |
31.3% (35例) |
15.3% (11例) |
| 重篤なARIA-H | 0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
0.0% (0例) |
注9)MRI中央読影で認められたARIA及び治験担当医師により報告されたARIAから頻度を算出した。
注10)本剤を初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1050mg、以降は1回1400mgを4週間隔で静脈内投与した。
注11)本剤を最初の3回は1回700mg、以降は1回1400mgを4週間隔で静脈内投与した(初回承認時の用法及び用量)。
-
8.3本剤投与開始前のMRI検査で重度の白質病変が認められた患者において、本剤の投与を開始した経験はない。重度の白質病変が認められた患者への本剤投与の可否は、本剤投与によるリスクとベネフィットを考慮した上で、慎重に判断すること。
-
8.4一般的に高血圧症は脳出血のリスク因子であることから、本剤投与前に高血圧の有無を確認し、高血圧が持続する患者への投与は慎重に行うこと。本剤投与中は適切な血圧管理を行うこと。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。生殖発生毒性試験は実施していない。また、一般にヒトIgGは胎盤を通過することが知られている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤の乳汁中への移行に関するデータはないが、ヒトIgGは乳汁中へ移行することが知られている。
相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • 血液凝固阻止剤• ワルファリンカリウム • ヘパリンナトリウム • アピキサバン等 |
本剤との併用によりARIA-H又は脳出血が起こる可能性がある。併用時にはARIA-H及び脳出血に注意すること。 | 本剤の副作用としてARIA-Hの報告がある。併用により左記薬剤が出血を助長する可能性がある。 |
| • 血小板凝集抑制作用を有する薬剤• アスピリン • クロピドグレル硫酸塩等 |
本剤との併用によりARIA-H又は脳出血が起こる可能性がある。併用時にはARIA-H及び脳出血に注意すること。 | 本剤の副作用としてARIA-Hの報告がある。併用により左記薬剤が出血を助長する可能性がある。 |
| • 血栓溶解剤• アルテプラーゼ等 | 本剤との併用によりARIA-H又は脳出血が起こる可能性がある。併用時にはARIA-H及び脳出血に注意すること。 ARIAと虚血性脳卒中は類似した局所神経脱落症候を呈する場合がある。本剤投与中の患者で虚血性脳卒中に対する血栓溶解療法を行う前に、これらの症候がARIAによるものである可能性を考慮すること2),3)。 |
本剤の副作用としてARIA-Hの報告がある。併用により左記薬剤が出血を助長する可能性がある。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| 嘔吐 | 頻度不明 |
| 悪心注12) | 頻度不明 |
| 頭痛注12) | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
ドナネマブは、脳内の不溶性アミロイドβプラークにのみ存在すると考えられるN3pG Aβ(N末端第3残基がピログルタミル化されたアミロイドβ)10),11)を標的とするヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ドナネマブは、N3pG Aβに結合し、ミクログリアによる貪食作用を介したアミロイドβプラーク除去を促進すると考えられている12)。
18.2 臨床薬理作用
アルツハイマー病患者を対象とした臨床薬理試験において、ドナネマブは、アミロイドPETにより測定した脳内のアミロイドβプラークを減少させた4),13)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1*単回投与
アルツハイマー病による軽度認知障害患者又はアルツハイマー病による軽度から中等度の認知症患者18例(日本人5例を含む)にドナネマブ10、20、及び40mg/kg注14)(体重70kgの場合それぞれ700、1400、及び2800mg注14))、並びにアルツハイマー病による軽度認知障害患者及び軽度の認知症患者(外国人212例)に350mgを単回静脈内投与したときのドナネマブの曝露量はおおむね用量に比例して上昇した4),5)。消失半減期は約8~10日であった4)。
| 投与量 | 例数 | Cmax (μg/mL) |
AUC0-∞ (μg・h/mL) |
t1/2a) (日) |
|---|---|---|---|---|
| 10mg/kg | 7 | 196 (17) |
26200 (19) |
10.3 (5.4-14.5) |
| 20mg/kg | 7 | 413 (17) |
60500 (18) |
9.3 (5.6-16.2) |
| 40mg/kg | 4 | 910 (15) |
112000 (30) |
8.3 (6.8-11.3) |
幾何平均値(変動係数%)
a)幾何平均値(範囲)
- 図1)アルツハイマー病による軽度認知障害患者又はアルツハイマー病による軽度から中等度の認知症患者にドナネマブ10、20、及び40mg/kg注14)を単回静脈内投与したときの血清中ドナネマブ濃度推移(平均値±標準偏差)
- 16.1.2反復投与
第I相~第III相試験のデータを用いて母集団薬物動態解析を実施した。ADAが陰性の患者に本剤1400mg注14)を4週間ごとに反復静脈内投与したときの定常状態における薬物動態パラメータ[中央値(90%信頼区間)]は、Cmax,ssが381μg/mL(255, 559)、Cmin,ssが22.2μg/mL(5.63, 55.3)、AUCτ,ssが53500μg・h/mL(34900, 91500)、と推定された6)。
16.3 分布
ドナネマブは静脈内投与後二相性で消失する。母集団薬物動態解析により推定された中央コンパートメントの分布容積は3.36L(個体間変動18.7%)、末梢コンパートメントの分布容積は4.83L(個体間変動93.9%)であった6)。
16.4 代謝
ドナネマブはIgG1モノクローナル抗体であり、内因性IgGと同様に異化経路によりペプチド断片及びアミノ酸に分解され、代謝酵素の阻害や誘導はないと考えられる。ドナネマブはチトクロムP450等の代謝酵素による代謝を受けないため、活性代謝物はない。
16.5 排泄
母集団薬物動態解析より推定されたクリアランスは0.0255L/h(個体間変動24.9%)、消失半減期は12.1日であった6)。
16.6 特定の背景を有する患者
母集団薬物動態解析によると、年齢、性別、人種、腎機能、及び肝機能はドナネマブの薬物動態に影響を及ぼさなかった7)。
注14)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1050mg、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。」である。