全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能・効果
用法・用量
通常、成人及び12歳以上の小児には、ニポカリマブ(遺伝子組換え)として初回に30mg/kgを点滴静注し、以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注する。
使用上の注意
- 8.1本剤の投与により、血中IgG濃度が低下し、感染症が生じる又は悪化するおそれがある。本剤の治療期間中及び治療終了後は定期的に血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。また、感染症の自他覚症状に注意し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関に相談するよう患者に指導すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1感染症を合併している患者
感染症を合併している場合は、感染症の治療を優先すること。感染症が増悪するおそれがある。
- 9.1.2肝炎ウイルスキャリアの患者
肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化やC型肝炎の悪化の徴候や症状の発現に注意すること。
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。IgG抗体は胎盤通過性があることが知られており、本剤の投与を受けた患者からの出生児においては、母体から移行するIgGが低下し、感染のリスクが高まる可能性がある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。海外で実施された臨床試験において、妊娠中に本剤を投与した症例では、初乳(分娩後2日以内に1回採取)で57%(7例中4例)、母乳(分娩後5~8日の間に1回採取)で22%(9例中2例)に本剤が検出された。ヒト乳汁中の本剤の濃度は0.58~68.4μg/mLであった。1)(外国人データ)
9.7 小児等
12歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施していない。
相互作用
- 本剤は新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するため、併用によりFcRnに結合する薬剤の血中濃度が低下する可能性がある。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| 人免疫グロブリン製剤 • ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン等 |
これらの薬剤の治療効果が減弱する可能性がある。これらの薬剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。 | 本剤が、FcRnに結合するこれらの薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
| IgGベースのモノクローナル抗体製剤 • ロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)、エクリズマブ(遺伝子組換え)、ラブリズマブ(遺伝子組換え)、フレマネズマブ(遺伝子組換え)等 |
これらの薬剤の治療効果が減弱する可能性がある。これらの薬剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。 | 本剤が、FcRnに結合するこれらの薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
| Fc領域融合タンパク質製剤 • エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)、エタネルセプト(遺伝子組換え)等 |
これらの薬剤の治療効果が減弱する可能性がある。これらの薬剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。 | 本剤が、FcRnに結合するこれらの薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
| 血漿浄化療法 | 本剤の治療効果が減弱する可能性があるため、併用を避けることが望ましい。 | 本剤による治療中に施行することにより本剤の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
| 生ワクチン及び弱毒生ワクチン | 本剤による治療中の接種を避けることが望ましい。接種が必要な場合は本剤投与開始の少なくとも4週間前までに接種することが望ましい。本剤による治療中の場合、最終投与から2週間後以降にワクチンを投与することが望ましい。 | 生ワクチン又は弱毒生ワクチンによる感染症発現のリスクが増大するおそれがある。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| 下痢 | 頻度不明 |
| 不眠症 | 頻度不明 |
| 尿路感染 | 頻度不明 |
| 帯状疱疹 | 頻度不明 |
| 悪心 | 頻度不明 |
| 末梢性浮腫 | 5%以上 |
| 浮動性めまい | 頻度不明 |
| 発熱 | 頻度不明 |
| 筋痙縮 | 頻度不明 |
| 脂質増加 | 頻度不明 |
| 腹痛 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
ニポカリマブはFc領域がグリコシル化を受けずエフェクター機能を欠損したヒト型IgG1λモノクローナル抗体である。ニポカリマブは中性(細胞外)及び酸性(エンドソーム)いずれのpHでもFcRnのIgG Fc結合部位に高い特異性及び親和性で結合することによって、内因性IgGのリサイクルを阻害し、リソソームでのIgG分解を促進し、病原性IgG自己抗体を含む血中IgG濃度を減少させる。
18.2 In vitro FcRnに対する結合作用
ニポカリマブのヒトFcRnに対する平衡解離定数(KD)(平均値)は、pH6.0及びpH7.4の条件下において、それぞれ31.7pmol/L以下及び57.8pmol/L以下であった。9)
18.3 In vivo IgGに対する作用
ヒトIgGを投与したヒトFcRn遺伝子導入(Tg32)マウスにニポカリマブ0.2~100mg/kgを単回静脈内投与したところ、ニポカリマブの用量及び時間依存的な血漿中ヒトIgG濃度の減少が認められた。10)
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
日本人健康成人に、本剤10、30及び60mg/kgを単回静脈内投与したときの血清中ニポカリマブ濃度推移及び薬物動態パラメータを図1及び表1に示す。AUCは用量比を上回って増加した。4)
図1 日本人健康成人にニポカリマブを単回静脈内投与した時の血清中ニポカリマブ濃度推移(平均値±標準偏差)
| 用量 (mg/kg) |
例数 | AUCinf (h.μg/mL) |
t1/2 (h) |
|---|---|---|---|
| 10 | 6 | 6670 (640.69) |
16.1 (5.85) |
| 30 | 6 | 38630 (4510.2) |
24.2 (7.47) |
| 60 | 6 | 112400 (13442) |
39.7 (10.8) |
- 16.1.2反復投与
18歳以上の全身型重症筋無力症患者98例(日本人患者を6例含む)を対象に、ニポカリマブを初回30mg/kg静脈内投与後、ニポカリマブ15mg/kgを2週に1回静脈内投与したときの全体集団における血清中ニポカリマブ濃度は表2のとおりであった。また、全体集団及び日本人集団の血清中ニポカリマブ濃度推移は図2のとおりであった。静脈内投与終了時の濃度は15mg/kgの反復投与においても一定であり、Ctroughはすべて定量下限未満(<0.01μg/mL)であった。蓄積性は認められていない。2)
| 評価 例数 |
血清中本薬濃度 (μg/mL) |
||
|---|---|---|---|
| Day 1 | 投与前 | 97 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 97 | 878.0±178.3 | |
| Week 2 | 投与前 | 93 | 0.7±3.5 |
| 投与45分後 | 93 | 446.9±85.1 | |
| Week 4 | 投与前 | 90 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 91 | 452.7±91.6 | |
| Week 8 | 投与前 | 83 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 82 | 444.7±79.2 | |
| Week 12 | 投与前 | 77 | 0.1±0.9 |
| 投与45分後 | 75 | 445.3±85.5 | |
| Week 16 | 投与前 | 73 | 5.6±42.8 |
| 投与45分後 | 72 | 419.8±106.9 | |
| Week 20 | 投与前 | 71 | 0.0±0.1 |
| 投与45分後 | 71 | 430.3±86.0 | |
| Week 24 | 投与前 | 65 | 7.1±54.2 |
平均値±標準偏差
図2 全身型重症筋無力症患者にニポカリマブを反復静脈内投与したときの血清中ニポカリマブ濃度(μg/mL)(平均値±標準偏差)
12歳以上18歳未満の全身型重症筋無力症患者7例(日本人患者を4例含む)を対象に本剤を初回30mg/kg静脈内投与後、本剤15mg/kgを2週に1回静脈内投与したときの全体集団における血清中ニポカリマブ濃度は表3のとおりであった。3)
| 評価 例数 |
血清中本薬濃度 (μg/mL) |
||
|---|---|---|---|
| Day 1 | 投与前 | 6 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 6 | 826.7±204.2 | |
| Week 2 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 435.0±83.5 | |
| Week 4 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 417.4±73.6 | |
| Week 8 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 434.2±126.4 | |
| Week 12 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 419.8±97.1 | |
| Week 16 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 419.0±107.2 | |
| Week 20 | 投与前 | 5 | 0.0±0.0 |
| 投与45分後 | 5 | 422.4±97.8 | |
| Week 24 | 投与前 | 4 | 0.0±0.0 |
平均値±標準偏差
16.3 分布
健康成人にニポカリマブ15mg/kgを単回静脈内投与したときの平均分布容積は2.67Lであった。5)(外国人データ)
16.4 代謝
ニポカリマブは、内因性IgGと同様の蛋白分解酵素による異化経路により小ペプチド及びアミノ酸に分解されると考えられる。
16.5 排泄
ニポカリマブは濃度依存的な薬物動態を示す。健康成人にニポカリマブ15mg/kgを単回静脈内投与したときの平均クリアランスは0.0627L/h、t1/2は29.3時間であった。5)(外国人データ)
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1高齢者(65歳以上)
母集団薬物動態解析の結果、65歳以上の患者と65歳未満の患者との間でクリアランス及び分布容積に明らかな差は認められなかった。6)
- 16.6.2腎機能障害
ニポカリマブの代謝経路を考慮すると、腎機能障害はニポカリマブの薬物動態に影響を及ぼさないと予想される。 腎機能障害患者を対象とした薬物動態試験は実施していないが、母集団薬物動態解析の結果、軽度~中等度の腎機能障害(eGFR 30–89mL/min/1.73m2)によるクリアランスへの臨床的に重要な影響はないと推定された。6)
- 16.6.3肝機能障害
ニポカリマブはチトクロムP450酵素によって代謝されないため、肝機能障害はニポカリマブの薬物動態に影響を及ぼさないと予想される。肝機能障害患者を対象とした薬物動態試験は実施していないが、母集団薬物動態解析の結果、軽度~中等度の肝機能障害によるクリアランスへの臨床的に重要な影響はないと推定された。6)
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1フレマネズマブ
健康成人(8例)にニポカリマブ(30mg/kg)をフレマネズマブ(225mg)と併用投与したとき、フレマネズマブの全身曝露量(Cmax及びAUCinf)はそれぞれ約42%及び約66%低下した。フレマネズマブ投与の14日後にニポカリマブを投与したとき、Cmaxは変化しなかったが、AUCinfは約54%低下した。7)(外国人データ)
- 16.7.2エタネルセプト
健康成人(16例)にニポカリマブ(15mg/kg)をエタネルセプト(50mg)と併用投与したとき、エタネルセプトのCmaxは約9%、AUCinfは約28%低下した。8)(外国人データ)
16.8 その他
- 16.8.1薬力学
18歳以上の全身型重症筋無力症患者を対象に、ニポカリマブを初回30mg/kg静脈内投与後、ニポカリマブ15mg/kgを2週に1回静脈内投与したときの、2週ごと(投与前時点)の血清中総IgG濃度の推移は図3のとおりであった。 IgM、IgA及びIgEにはニポカリマブの投与に関連した変化は認められなかった。2)
図3 全身型重症筋無力症患者にニポカリマブを静脈内投与したときの血清中総IgG濃度のベースラインからの変化率(%)(中央値±四分位範囲)
12歳以上18歳未満の全身型重症筋無力症患者(5例)におけるニポカリマブ投与時の血清中総IgG濃度は、Week24時点でベースラインから約70%(中央値)低下した。3)