Clinical snapshot

点滴静注用ホスカビル注24mg/mL

ホスカルネットナトリウム水和物

添付文書改訂 2025年07月01日

【警告】

  1. 1.1本剤の投与により腎障害があらわれるので、頻回に血清クレアチニン値等の腎機能検査を行い、腎機能に応じた用量調節を行うこと。

  2. 1.2本剤は、電解質異常に伴う発作を誘発することがあるので、定期的に血清電解質を測定するなど、観察を十分に行い、慎重に投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1本剤に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2クレアチニンクリアランス値が、0.4mL/分/kg未満の患者[腎障害を増悪させることがある。]

  3. 2.3ペンタミジンイセチオン酸塩を投与中の患者

効能・効果

  • 後天性免疫不全症候群(エイズ)患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎

  • 造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス血症及びサイトメガロウイルス感染症

  • 造血幹細胞移植後のヒトヘルペスウイルス6脳炎

用法・用量

  • 〈後天性免疫不全症候群(エイズ)患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎、造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症〉

  • 初期療法:

通常、ホスカルネットナトリウム水和物として1回体重1kgあたり60mgを、1時間以上かけて8時間ごとに1日3回、又は1回体重1kgあたり90mgを、2時間以上かけて12時間ごとに1日2回、それぞれ点滴静注する。なお、初期療法は2~3週間以上行う。

  • 維持療法:

初期療法に続く維持療法には、通常、ホスカルネットナトリウム水和物として1回体重1kgあたり90~120mgを2時間以上かけて1日1回点滴静注する。 維持療法中に再発が認められた場合は、初期療法の用法・用量により再投与することができる。

  • 〈造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス血症〉

  • 初期療法:

通常、ホスカルネットナトリウム水和物として1回体重1kgあたり60mgを、1時間以上かけて12時間ごとに1日2回点滴静注する。初期療法は1~2週間以上行う。

  • 維持療法:

通常、ホスカルネットナトリウム水和物として1回体重1kgあたり90~120mgを2時間以上かけて1日1回点滴静注する。 維持療法中に再発が認められた場合は、初期療法の用法・用量により再投与することができる。

  • 〈造血幹細胞移植後のヒトヘルペスウイルス6脳炎〉

  • 通常、ホスカルネットナトリウム水和物として1回体重1kgあたり60mgを、1時間以上かけて8時間ごとに1日3回点滴静注する。 なお、本剤による腎障害を軽減するため、本剤による治療中には水分補給を十分に行い、利尿を確保すること。

  • 〈効能共通〉

  • (投与法及び希釈調製法)

本剤を中心静脈より投与する場合は希釈せずに用いるが、末梢静脈より投与する場合には、血管への刺激を軽減するため、5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液にて2倍に希釈して用いる(12mg/mL)こと。なお、本剤の血漿中濃度の過剰な上昇により、本剤の毒性が増強することがあるので、点滴速度に十分注意し、点滴静注以外では投与しないこと。 また、点滴速度を調節するため、点滴ポンプを使用することが望ましい。

  • (用量の調節)

本剤の用量は、各患者の腎機能に応じて個別に調節すること。

使用上の注意

  • 〈後天性免疫不全症候群(エイズ)患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎〉
  1. 8.1使用に際しては、患者又はそれに代わる適切な者に、次の事項についてよく説明し同意を得た後、使用すること。
  • 国内で実施された臨床試験の科学的なデータは少ないこと。

  • 本剤は後天性免疫不全症候群(エイズ)患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎の根治療法薬ではないことから、症状が進行・再発する可能性があるので、定期的に眼科学的検査を受ける必要があること。

  • 腎障害、電解質異常に伴う発作があらわれ重篤な転帰をとることがあるので、口周囲のヒリヒリ感、四肢のしびれ知覚異常等の症状があらわれた場合には、直ちに担当医に報告すること。

  • 〈効能共通〉

  1. 8.2本剤は体内の2価陽イオンとキレートを形成し、血清中のカルシウム、マグネシウム濃度の低下を来すとの報告がある。また、血清中カリウム濃度の低下を来すことが報告されているので、本剤投与中は、定期的に血清電解質を測定するなど観察を十分に行い、口周囲のヒリヒリ感、四肢のしびれ感、知覚異常等の発現又は電解質異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

  2. 8.3ショック等の重篤な過敏反応の発現を予測するため、十分な問診を行うこと。また、このような症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。

  3. 8.4泌尿・生殖器に局所刺激性による刺激感、潰瘍があらわれることがあるので、排尿後は洗浄・清拭等により衛生状態に注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常のある患者

本剤のキレート作用によりカルシウム及びマグネシウムの血清中濃度の低下をさらに増強することがある。また、血清中カリウム濃度をさらに低下させることがある。

  1. 9.1.2中枢神経系に合併、既往のある患者

  2. (1)中枢神経系に異常のある患者では、慎重に観察を行い、血清電解質の補正など適切な処置を行うこと。本剤による電解質異常により症状を悪化させることがある。

  3. (2)中枢神経系疾患の既往歴のある患者では、精神神経系副作用の発現に注意すること。

  4. 9.1.3心機能に異常のある患者

慎重に観察を行い、血清電解質の補正など適切な処置を行うこと。本剤による電解質異常により症状を悪化させることがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1クレアチニンクリアランス値が、0.4mL/分/kg未満の腎機能障害患者

投与しないこと。腎障害を増悪させることがある。

  1. 9.2.2クレアチニンクリアランス値が、0.4mL/分/kg以上の腎機能障害患者

腎障害を増悪させることがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラット(75mg/kg投与)の乳汁中薬物濃度が母体血中濃度の3倍に達したとの報告がある。

9.7 小児等

  1. 9.7.1治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。本剤の歯あるいは骨への沈着は、成熟動物より幼若・成長期の動物に多いことが報告されており、ヒトでも同様の作用が予想される。

  2. 9.7.2低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

腎機能に注意し、慎重に投与量を設定すること。一般に腎機能が低下している場合が多い。

相互作用

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
• ペンタミジンイセチオン酸塩• ベナンバックス 腎障害の増強、低カルシウム血症が起こることがある。なお、海外で本剤とペンタミジンイセチオン酸塩(静注)との併用により、重篤な低カルシウム血症が発現し死亡した症例が報告されている。 相加的に副作用(腎障害、低カルシウム血症)が増強する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
• 血清カルシウム濃度に影響を及ぼす薬剤• ループ利尿薬 等• フロセミド 等 低カルシウム血症が起こることがある。 本剤のキレート作用により、低カルシウム血症を呈しやすくなる。
• 腎毒性を有する薬剤• アミノグリコシド系抗生物質• ゲンタマイシン硫酸塩
• アミカシン硫酸塩 等
• スルファメトキサゾール・トリメトプリム
• バンコマイシン塩酸塩
• アムホテリシンB
• シクロスポリン
• タクロリムス水和物
• メトトレキサート
• シスプラチン 等
腎障害を増強することがある。 相加的に副作用(腎障害)が増強する。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
A/G比異常 頻度不明
Al-P上昇 頻度不明
ALT上昇 頻度不明
AST上昇 頻度不明
CK上昇 1%未満
EEG異常 1%未満
LDH上昇 1%未満
QT間隔の延長 頻度不明
γ-GTP上昇 頻度不明
アシドーシス 頻度不明
アミラーゼ上昇 1%未満
クレアチニンクリアランス低下 頻度不明
ジスキネジア 1%未満
そう痒 頻度不明
ミオパシー 頻度不明
めまい・眩暈 頻度不明
下痢 頻度不明
不安 頻度不明
不随意筋収縮 頻度不明
中毒性ネフロパシー 1%未満
低カリウム血症(13.8%) 頻度不明
低カルシウム血症(11.7%) 頻度不明
低ナトリウム血症 頻度不明
低マグネシウム血症(14.4%) 頻度不明
低リン酸血症 頻度不明
低血圧 1%未満
体重減少 1%未満
便秘 頻度不明
倦怠感 頻度不明
健忘 1%未満
傾眠 1%未満
協調異常 1%未満
反射亢進 1%未満
口内乾燥 1%未満
口渇 1%未満
味覚倒錯 頻度不明
呼吸困難 1%未満
喉頭炎 1%未満
外陰膣潰瘍 頻度不明
多尿 頻度不明
多汗 1%未満
夜間頻尿 1%未満
尿崩症 頻度不明
尿毒症 頻度不明
尿道障害 頻度不明
局所刺激性による性器の刺激 頻度不明
徐脈 1%未満
心室性不整脈 頻度不明
心悸亢進 頻度不明
心電図異常 頻度不明
悪寒 頻度不明
悪心(30.9%)・嘔吐(17.0%) 頻度不明
感染症 頻度不明
抑うつ 頻度不明
抗利尿ホルモン異常 1%未満
振戦 頻度不明
排尿困難 頻度不明
攻撃性 頻度不明
昏迷 1%未満
期外収縮 1%未満
末梢神経障害 1%未満
注射部位の炎症 1%未満
注射部位の疼痛 頻度不明
浮腫 頻度不明
消化不良 頻度不明
潮紅 頻度不明
無力症 頻度不明
疲労 頻度不明
疼痛 1%未満
発熱(10.6%) 頻度不明
発疹 頻度不明
白血球増多 頻度不明
白血球減少 頻度不明
皮膚潰瘍形成 頻度不明
皮膚障害 1%未満
知覚減退 頻度不明
知覚異常(12.2%) 頻度不明
神経過敏 頻度不明
神経障害 頻度不明
筋炎 頻度不明
筋肉痛 頻度不明
筋脱力 頻度不明
精神病 頻度不明
網膜剥離 1%未満
緊張亢進 1%未満
耳痛 1%未満
耳鳴 1%未満
腎尿細管障害 1%未満
腎臓痛 頻度不明
腸炎 1%未満
腹痛 頻度不明
膵炎 1%未満
興奮 頻度不明
蛋白尿 1%未満
血中ヘモグロビン減少 頻度不明
血小板減少 頻度不明
血栓症 1%未満
血液量過多 1%未満
血清クレアチニン上昇(18.6%)等の腎機能異常 頻度不明
複視 1%未満
視覚異常 1%未満
貧血(28.7%) 頻度不明
運動失調 頻度不明
錯乱 頻度不明
陰茎潰瘍 頻度不明
頭痛(11.2%) 頻度不明
顆粒球減少 頻度不明
食欲不振 頻度不明
高カルシウム血症 1%未満
高リン酸血症 頻度不明
高血圧 頻度不明
鼓腸放屁 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ホスカルネットナトリウムは、DNAポリメラーゼのピロリン酸結合部位に直接作用して、DNAポリメラーゼ活性を抑制し10) 、サイトメガロウイルス及びヒトヘルペスウイルス6の増殖を抑制する。

18.2 抗ウイルス作用

ホスカルネットナトリウムは、サイトメガロウイルスの各種分離株のin vitroでの増殖を300~400μmol/Lで完全に抑制した。また、in vitroでヒトヘルペスウイルス6に対するIC50は49±2μmol/Lであった。in vivoにおいてホスカルネットナトリウムはサイトメガロウイルス感染マウスの死亡率を減少させた11),12),13) 。

18.3 耐性

野生型サイトメガロウイルスをホスカルネットナトリウム添加培地で継代培養することにより、ウイルスDNAポリメラーゼ遺伝子の突然変異に基づくホスカルネット耐性サイトメガロウイルス株が分離されている。したがって、ホスカルネットナトリウムに対する臨床応答が認められない場合には、耐性変異株の出現する可能性があるので、臨床分離株のホスカルネットナトリウムに対する感受性試験を行うことが望ましい。 なお、サイトメガロウイルス網膜炎を発症した後天性免疫不全症候群患者でなされた薬剤耐性の検討において、ホスカルネットナトリウムに対する耐性株は分離されなかったとの報告がある。また、ガンシクロビル耐性サイトメガロウイルス株がホスカルネットナトリウムに対して感受性を示したとの報告14) もあり、これまでの報告ではホスカルネットナトリウムがヒトで薬剤耐性及び交叉耐性を生じにくいことが示されている。

薬物動態

16.1 血中濃度

サイトメガロウイルス網膜炎の後天性免疫不全症候群患者に本剤を60mg/kg(1時間注入、1日3回、3週間)又は90mg/kg(2時間注入、1日2回、2週間)の用量で反復静脈内注入したときの血漿中ホスカルネット濃度は、注入終了時に約600μmol/Lの最高濃度を示し、その後約3時間の半減期で血漿中より消失し、反復投与による蓄積傾向は認められなかった1),2) (海外データ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1分布容積

定常状態における平均分布容積は0.3~0.6L/kgの範囲であった1),2),3) (海外データ)。

  1. 16.3.2血漿蛋白結合率

in vitro試験では、血漿中ホスカルネット濃度1~1000μmol/Lで14~17%が血漿蛋白と結合する(海外データ)。

  1. 16.3.3脳脊髄液の移行

後天性免疫不全症候群患者に本剤を56~213mg/kgの用量で静脈内注入時の脳脊髄液中のホスカルネット濃度は、ほぼ50~250μmol/Lで、この濃度は血漿中濃度の10~70%に相当した4) (海外データ)。

16.5 排泄

本剤を後天性免疫不全症候群患者に反復静脈内注入したときの血漿クリアランス(2臨床試験)は130±44(n=12)及び178±48mL/分(n=10)で、連続注入したときの血漿クリアランス(2臨床試験)は152±59(n=12)及び214±25mL/分(n=5)であった。 腎機能が正常な患者の静脈内に本剤を連続注入したとき、注入終了後12時間以内に投与量の79~92%が未変化体として尿中に排泄され、尿中排泄データより腎からの排泄機構には糸球体濾過と尿細管分泌の関与が示唆された。血漿からのホスカルネットのクリアランスは、患者のクレアチニンクリアランスに比例していたので、患者の腎機能(クレアチニンクリアランス)に応じて、投与量を個別に調整することが必要である5),6) (海外データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

本剤を後天性免疫不全症候群患者(n=6)の静脈内に3日間持続注入後の血漿中ホスカルネット濃度の半減期は、0.45±0.32時間(α相)、3.3±1.3時間(β相)であった。血漿中ホスカルネットの半減期は、腎障害の重症度に比例して長くなり、24時間のクレアチニンクリアランス値が44~90mL/分の患者における半減期は2~8時間と報告されている3) (海外データ)。

  1. 16.6.2薬物暴露と腎機能低下との関連

本剤で初期療法を受けている患者データの解析から、ホスカルネットに対する累積暴露(血漿中ホスカルネット濃度-時間曲線下面積)と投与終了時における腎機能(血清クレアチニン)低下との関連性が示唆されている。

16.7 薬物相互作用

ジドブジン及びガンシクロビルとの併用による薬物動態学的相互作用の可能性は少ないことが報告されている7),8) 。