Clinical snapshot

ワントラム錠100mg

トラマドール塩酸塩徐放錠

添付文書改訂 2024年06月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.112歳未満の小児

  2. 2.2本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

  3. 2.3アルコール、睡眠剤、鎮痛剤、オピオイド鎮痛剤又は向精神薬による急性中毒患者[中枢神経抑制及び呼吸抑制を悪化させるおそれがある。]

  4. 2.4モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)を投与中の患者又は投与中止後14日以内の患者

  5. 2.5ナルメフェン塩酸塩水和物を投与中の患者又は投与中止後1週間以内の患者

  6. 2.6治療により十分な管理がされていないてんかん患者[症状が悪化するおそれがある。]

  7. 2.7高度な腎機能障害又は高度な肝機能障害のある患者

効能・効果

  • 非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛

  • 疼痛を伴う各種癌

  • 慢性疼痛

用法・用量

通常、成人にはトラマドール塩酸塩として100~300mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。ただし、1日400mgを超えないこととする。

使用上の注意

  1. 8.1連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。

  2. 8.2本剤を投与した際に、悪心、嘔吐、便秘等の症状があらわれることがある。悪心・嘔吐に対する対策として制吐剤の併用を、便秘に対する対策として下剤の併用を考慮し、本剤投与時の副作用の発現に十分注意すること。

  3. 8.3眠気、めまい、意識消失が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。なお、意識消失により自動車事故に至った例も報告されている。

  4. 8.4鎮痛剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意すること。

  5. 8.5本剤は徐放性製剤であることから、急激な血中濃度の上昇による重篤な副作用の発現を避けるため、服用に際して割ったり、砕いたり又はかみ砕いたりしないように指示すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.118歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者

投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。

  1. 9.1.2てんかんのある患者、痙攣発作を起こしやすい患者又は痙攣発作の既往歴のある患者(治療により十分な管理がされていないてんかん患者を除く)

本剤投与中は観察を十分に行うこと。痙攣発作を誘発することがある。

  1. 9.1.3薬物乱用又は薬物依存傾向のある患者

厳重な医師の管理下に、短期間に限って投与すること。依存性を生じやすい。

  1. 9.1.4呼吸抑制状態にある患者

呼吸抑制を増強するおそれがある。

  1. 9.1.5脳に器質的障害のある患者

呼吸抑制や頭蓋内圧の上昇を来すおそれがある。

  1. 9.1.6オピオイド鎮痛剤に対し過敏症の既往歴のある患者(本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者を除く)

  2. 9.1.7ショック状態にある患者

循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1高度な腎機能障害のある患者

投与しないこと。高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある。

  1. 9.2.2腎機能障害のある患者(高度な腎機能障害のある患者を除く)

高い血中濃度が持続するおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1高度な肝機能障害のある患者

投与しないこと。高い血中濃度が持続し、作用及び副作用が増強するおそれがある。

  1. 9.3.2肝機能障害のある患者(高度な肝機能障害のある患者を除く)

高い血中濃度が持続するおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。胎盤関門を通過し、退薬症候が新生児に起こる可能性がある。なお、動物実験で、器官形成、骨化及び出生児の生存に影響を及ぼすことが報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。静脈内投与(国内未承認)の場合、0.1%が乳汁中に移行することが知られている。

9.7 小児等

  1. 9.7.112歳未満の小児

投与しないこと。海外において、12歳未満の小児で死亡を含む重篤な呼吸抑制のリスクが高いとの報告がある。

  1. 9.7.212歳以上の小児

12歳以上の小児に対する有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

  1. 9.7.3肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する小児

投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。生理機能が低下していることが多く、代謝・排泄が遅延し副作用があらわれやすい。

相互作用

  • 本剤は主として肝代謝酵素CYP2D6及びCYP3A4により代謝される。

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
モノアミン酸化酵素阻害剤
• セレギリン塩酸塩• エフピー
• ラサギリンメシル酸塩• アジレクト
• サフィナミドメシル酸塩• エクフィナ
外国において、セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)を含む中枢神経系(攻撃的行動、固縮、痙攣、昏睡、頭痛)、呼吸器系(呼吸抑制)及び心血管系(低血圧、高血圧)の重篤な副作用が報告されている。モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中の患者又は投与中止後14日以内の患者には投与しないこと。また、本剤投与中止後にモノアミン酸化酵素阻害剤の投与を開始する場合には、2~3日間の間隔をあけることが望ましい。 相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。
ナルメフェン塩酸塩水和物
• セリンクロ
離脱症状を起こすおそれがある。本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなり、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状が発現するおそれがある。ナルメフェンを投与中の患者又は投与中止後1週間以内の患者には投与しないこと。 ナルメフェンのμオピオイド受容体拮抗作用により、本剤に対して競合的に阻害する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
オピオイド鎮痛剤
中枢神経抑制剤
• フェノチアジン系薬剤、催眠鎮静剤 等
痙攣閾値の低下や呼吸抑制の増強を来すおそれがある。 本剤と相加的に作用が増強されると考えられる。
三環系抗うつ剤
セロトニン作用薬
• 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)等
セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある。
また、痙攣発作の危険性を増大させるおそれがある。
相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。
リネゾリド セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある。
また、痙攣発作の危険性を増大させるおそれがある。
リネゾリドの非選択的、可逆的モノアミン酸化酵素阻害作用により、相加的に作用が増強され、また、中枢神経のセロトニンが蓄積すると考えられる。
**メチルチオニニウム塩化物水和物(メチレンブルー) **セロトニン症候群(錯乱、激越、発熱、発汗、運動失調、反射異常亢進、ミオクローヌス、下痢等)があらわれるおそれがある。 **メチルチオニニウム塩化物水和物のモノアミン酸化酵素阻害作用によりセロトニン作用が増強される。
アルコール 呼吸抑制が生じるおそれがある。 本剤と相加的に作用が増強されると考えられる。
カルバマゼピン 同時あるいは前投与で本剤の鎮痛効果を下げ作用時間を短縮させる可能性がある。 本剤の代謝酵素が誘導されるため。
キニジン 相互に作用が増強するおそれがある。 機序不明
ジゴキシン 外国において、ジゴキシン中毒が発現したとの報告がある。 機序不明
クマリン系抗凝血剤
• ワルファリン
出血を伴うプロトロンビン時間の延長、斑状出血等の抗凝血作用への影響がみられたとの報告がある。 機序不明
オンダンセトロン塩酸塩水和物 本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがある。 本剤の中枢におけるセロトニン作用が抑制されると考えられる。
ブプレノルフィン、
ペンタゾシン等
本剤の鎮痛作用を減弱させるおそれがある。また、退薬症候を起こすおそれがある。 本剤が作用するμオピオイド受容体の部分アゴニストであるため。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P増加 頻度不明
ALT増加 1%未満
AST増加 1%未満
BUN増加 1%未満
CK増加 1%未満
LDH増加 1%未満
イレウス 頻度不明
うつ病 頻度不明
おくび 1%未満
クレアチニン増加 1%未満
ジスキネジー 頻度不明
そう痒症 1〜5%未満
トリグリセリド増加 頻度不明
ビリルビン増加 1%未満
ふらつき感 頻度不明
ヘマトクリット減少 頻度不明
ヘモグロビン減少 1%未満
ほてり 1%未満
リンパ球減少 1%未満
上腹部痛 1%未満
下痢 1%未満
不安 1%未満
不快感 頻度不明
不快気分 1%未満
不整脈 頻度不明
不眠症 1〜5%未満
不随意性筋収縮 頻度不明
両手のしびれ感 頻度不明
体位性めまい 頻度不明
体重減少 1%未満
便秘 5%以上
倦怠感 1〜5%未満
健忘 1%未満
傾眠 5%以上
全身性そう痒症 1%未満
冷感 1%未満
冷汗 1%未満
動悸 1%未満
協調運動異常 頻度不明
口の錯感覚 頻度不明
口内乾燥 1%未満
口内炎 1%未満
口唇炎 1%未満
口渇 5%以上
口腔咽頭不快感 1%未満
口腔咽頭痛 頻度不明
味覚異常 1%未満
呼吸困難 頻度不明
咽喉乾燥 頻度不明
嘔吐 5%以上
四肢痛 1%未満
回転性めまい 1%未満
多汗症 1〜5%未満
失神 頻度不明
好中球増加 1%未満
好酸球増加 1%未満
好酸球減少 頻度不明
寝汗 1%未満
尿潜血陽性 1%未満
尿糖陽性 1%未満
尿蛋白陽性 1%未満
尿酸増加 1%未満
尿量減少 1%未満
尿閉 頻度不明
幻覚 頻度不明
徐脈 頻度不明
心電図QT延長 1%未満
悪夢 1%未満
悪寒 1%未満
悪心 5%以上
感覚鈍麻 1%未満
抑うつ気分 頻度不明
振戦 1〜5%未満
排尿困難 1%未満
散瞳 頻度不明
易刺激性 1%未満
末梢性浮腫 1%未満
気分動揺 頻度不明
活動性低下 1%未満
浮動性めまい 5%以上
浮腫 1〜5%未満
消化不良 1%未満
湿疹 1%未満
激越 頻度不明
無力症 1%未満
無感情 1%未満
熱感 頻度不明
異常感 1〜5%未満
異常行動 1%未満
疲労 頻度不明
疼痛 頻度不明
発声障害 1%未満
発熱 1%未満
発疹 1%未満
白血球増加 1%未満
眼振 頻度不明
睡眠障害 1%未満
筋骨格硬直 1%未満
精神運動亢進 頻度不明
耳鳴 1%未満
肝機能異常 1%未満
胃炎 1%未満
胃腸音異常 頻度不明
胃食道逆流性疾患 1%未満
背部痛 頻度不明
胸内苦悶 頻度不明
胸部不快感 1%未満
脱水 1%未満
腹痛 1%未満
腹部不快感 1〜5%未満
腹部膨満感 1%未満
膀胱炎 1%未満
落ち着きのなさ 1%未満
蒼白 頻度不明
蕁麻疹 1%未満
薬疹 1%未満
血圧上昇 1%未満
血圧低下 1%未満
血小板減少 頻度不明
視力障害 頻度不明
視調節障害 1%未満
言語障害 頻度不明
記憶障害 頻度不明
譫妄 1%未満
赤血球減少 1%未満
起立性低血圧 1%未満
転倒 1%未満
錯乱 頻度不明
錯感覚 頻度不明
錯覚 頻度不明
鎮静 頻度不明
関節痛 1%未満
霧視 頻度不明
頭痛 1〜5%未満
頭重感 頻度不明
頻尿・夜間頻尿 1%未満
頻脈 頻度不明
食欲減退 5%以上
高血圧 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

トラマドール塩酸塩及び活性代謝物M1は、μオピオイド受容体の作動作用に加え、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用を併せ持つことで、侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛を抑制すると考えられる。

18.2 オピオイド受容体結合に対する作用

ラット脳を用いた受容体結合実験において、トラマドール塩酸塩はδ及びκオピオイド受容体よりもμオピオイド受容体に高い結合親和性を示した。M1塩酸塩のラットμオピオイド受容体に対する結合親和性は、モルヒネ塩酸塩に劣るもののトラマドール塩酸塩より高かった12)(in vitro)。

18.3 ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み系に対する作用

ラット脳を用いた取り込み実験において、トラマドール塩酸塩はノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み系を抑制した。これらの再取り込み系に対するM1塩酸塩の抑制作用は、トラマドール塩酸塩と同程度あるいは弱かった12)(in vitro)。

18.4 侵害受容性疼痛に対する抑制作用

  1. 18.4.1マウス及びラットを用いたライシング法、ホットプレート法及びテールフリック法による侵害刺激実験において、トラマドール塩酸塩は経口、腹腔内又は皮下投与で鎮痛効果を示した。代謝物M1の塩酸塩をラットに静脈内投与した場合、テールフリック法による侵害刺激反応をトラマドール塩酸塩よりも低用量から抑制した13)。

  2. 18.4.2マウスを用いたテールフリック法による侵害刺激法において、トラマドール塩酸塩を腹腔内投与した時の鎮痛作用はオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン塩酸塩で抑制された。一方、α2-アドレナリン受容体拮抗薬であるヨヒンビン塩酸塩及びセロトニン2型受容体拮抗薬であるリタンセリンは、マウスにトラマドール塩酸塩をくも膜下腔内に投与した時の鎮痛作用を抑制した14)。

18.5 神経障害性疼痛に対する抑制作用

ラットの坐骨神経を部分結紮した神経障害性疼痛モデルにおいて、トラマドール塩酸塩は経口投与で抗アロディニア作用を示した15)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1健康成人

  2. (1)健康成人男性10例にトラマドール塩酸塩徐放錠を空腹時に単回経口投与したとき、トラマドール及び活性代謝物モノ-O-脱メチル体(M1)の血漿中濃度は投与後9~12時間でCmaxに達した後、6~8時間のt1/2,βで低下した。血漿中トラマドール及びM1のCmax及びAUC0-∞はいずれも用量に比例して増加した1)。トラマドール塩酸塩徐放錠を単回経口投与後のトラマドール及びM1の血漿中濃度推移

パラメータ トラマドール
100mg 200mg 300mg
Cmax(ng/mL)
tmax(hr)
t1/2,β(hr)
AUC0-∞(ng・hr/mL)
123±39
9.5±2.8
6.44±1.07
2640±1020
257±89
9.6±3.2
6.63±1.99
5500±2480
444±117
11.6±1.3
6.97±1.08
9720±2820
パラメータ M1
100mg 200mg 300mg
Cmax(ng/mL)
tmax(hr)
t1/2,β(hr)
AUC0-∞(ng・hr/mL)
25.9±5.9
11.5±4.0
7.02±1.37
610±159
56.1±13.8
9.6±3.6
7.34±1.89
1290±260
86.8±26.1
12.0±0.0
7.93±1.51
2090±520

平均値±標準偏差(n=10)

  1. (2)健康成人男性24例に、トラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を単回又はトラマドール塩酸塩カプセル(50mg)を1日4回、空腹時に経口投与したときのトラマドール及びM1の血漿中濃度推移を比較した。両製剤を投与したときのトラマドール及びM1のCmax及びAUC0-∞に差は認められなかった1)。トラマドール塩酸塩徐放錠を単回経口投与又はトラマドール塩酸塩カプセルを1日4回経口投与後のトラマドール及びM1の血漿中濃度推移
パラメータ トラマドール
徐放錠
200mg
カプセル
50mg×4回
Cmax(ng/mL)
AUC0-∞(ng・hr/mL)
283±66
5880±1660
308±67
5810±1770
パラメータ M1
徐放錠
200mg
カプセル
50mg×4回
Cmax(ng/mL)
AUC0-∞(ng・hr/mL)
59.8±23.0
1370±450
63.6±21.8
1370±400

平均値±標準偏差(n=24)

  1. (3)健康成人男性9例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200及び300mg)を1日1回5日間食後経口投与したとき、投与2日目から最終投与日のトラフ値はいずれの用量においてもほぼ一定の値を示し、投与3日目には定常状態に達しているものと推察された1)。

16.2 吸収

  1. 16.2.1食事の影響

  2. (1)標準食 健康成人男性12例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を空腹時及び食後30分に単回経口投与したとき、血漿中トラマドール及びM1濃度推移に差はなく、食事の影響は認められなかった1)。

  3. (2)高脂肪高カロリー食 健康成人男性29例にトラマドール塩酸塩徐放錠(200mg)を空腹時及び食後に単回経口投与したとき、食後の血漿中トラマドール及びM1のCmaxは空腹時と比べて約50%上昇したが、AUC0-∞は変わらなかった(外国人によるデータ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1組織への移行

14C-トラマドール塩酸塩を雄性ラットに30mg/kg経口投与した後、放射能濃度はほとんどの組織で投与後1~2時間で最高値に達した。投与後1時間の組織中濃度は肝臓、腎臓及び肺で高く、それぞれ血漿中濃度の約15、13及び11倍であった。脳内の放射能濃度は血漿の約2倍高かった。各組織からの放射能の消失は血漿と同様に速やかであり、放射能濃度は投与後24時間で最高値の10%以下に低下した2)。

  1. 16.3.2血漿タンパク結合

14C-トラマドール塩酸塩の血漿タンパク結合率は、0.2~10μg/mLの範囲で19.5~21.5%であり、結合率に濃度依存性は認められなかった3)(in vitro)。

16.4 代謝

  1. 16.4.1トラマドールの主な代謝経路は、O-及びN-脱メチル化(第一相反応)並びにそれらの代謝物のグルクロン酸又は硫酸抱合(第二相反応)であった4)。

  2. 16.4.2トラマドールのO-脱メチル化反応にはCYP2D6が、N-脱メチル化反応にはCYP3A4が主に関与していた5)。

16.5 排泄

健康成人男性6例にトラマドール塩酸塩カプセル25、50又は100mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後24時間までの尿中排泄率に用量間で差はなく、投与量の12~16%が未変化体として、12~15%がモノ-O-脱メチル体(M1)、15~18%がM1の抱合体として排泄された6)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

腎機能障害患者21例(クレアチニンクリアランス:80mL/min以下)にトラマドール塩酸塩100mgを静脈内投与したとき、血清中トラマドールのt1/2,β及びAUC0-∞は健康成人のそれぞれ最大で1.5倍及び2倍であった(外国人によるデータ)。

  1. 16.6.2肝機能障害患者

肝硬変患者12例にトラマドール塩酸塩カプセル50mgを経口投与したとき、健康成人と比較して血清中トラマドールのCmax及びAUC0-∞は顕著に増加し、t1/2,βは約2.6倍に延長した(外国人によるデータ)。

  1. 16.6.3高齢者

健康高齢者20例(66~82歳)にトラマドール塩酸塩カプセル50mgを経口投与したときの血清中トラマドール濃度は、健康非高齢者8例(22~47歳)の結果と同様の推移を示した。一方、後期高齢者(75歳以上、8例)では、前期高齢者(65歳以上75歳未満、12例)に比べ、血清中トラマドールのCmax、AUC0-∞及び尿中排泄量が30~50%増加し、t1/2,β及びMRTが約1時間延長した(外国人によるデータ)。