尿素サイクル異常症
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分又はフェニル酪酸ナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者
効能・効果
用法・用量
通常、フェニル酪酸グリセロールとして1日4.5mL/m2(体表面積)を開始用量とし、3回から6回に分けて、食事若しくは栄養補給とともに又は食直後に経口投与する。その後は患者の状態に応じて適宜増減するが、1日量は11.2mL/m2(体表面積)を超えないこと。
使用上の注意
本剤の活性代謝物であるフェニル酢酸の血中濃度の上昇により、神経学的事象(嘔吐、悪心、頭痛、傾眠、錯乱等)が生じるおそれがある。血中アンモニア濃度の高値を伴わずに神経学的事象を認めた場合には、血中フェニル酢酸濃度の高値を疑い、本剤を減量する等、適切な処置を行うこと。特に乳幼児や小児では血中フェニル酢酸濃度が上昇するおそれがあるため、注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1膵外分泌機能不全又は腸管吸収不良のある患者
血中アンモニア濃度等、患者の状態を慎重に観察し、本剤の投与量を調節すること。消化管における本剤からフェニル酪酸への代謝能が低下し、適切な血中アンモニア濃度のコントロールが得られなくなるおそれがある。
- 9.1.2先天性のβ酸化異常を有する患者
血中アンモニア濃度等、患者の状態を慎重に観察し、本剤の投与量を調節すること。フェニル酪酸からフェニル酢酸への代謝能の低下により、血中フェニル酢酸濃度が低下し、適切な血中アンモニア濃度のコントロールが得られなくなるおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
本剤の代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血中濃度が上昇するおそれがある。腎機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.3 肝機能障害患者
神経学的事象の発現の有無や血中アンモニア濃度等、患者の状態を慎重に観察し、本剤の投与量を調節すること。肝臓におけるフェニル酢酸からフェニルアセチルグルタミンへの代謝能の低下により、血中フェニル酢酸濃度が上昇するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠ラットに本剤を投与したとき、胎児に尾の異常が認められた。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。
相互作用
- 本剤はリパーゼの基質である。また、本剤はCYP3Aに対する誘導作用を有する。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • CYP3Aの基質となる薬剤• シクロスポリン キニジン ミダゾラム 等 |
これらの薬剤の作用が減弱するおそれがある。 | 本剤の肝薬物代謝酵素(CYP3A)誘導作用により、これらの薬剤の代謝が促進され、血中濃度が低下する。 |
| • プロベネシド | 本剤の代謝物であるフェニルアセチルグルタミンの血中濃度が上昇するおそれがある。 | フェニルアセチルグルタミンの尿中排泄を阻害する可能性がある。 |
| • オルリスタット | 本剤の作用が減弱するおそれがある。 | リパーゼ阻害作用により、本剤からのフェニル酪酸の遊離が低下する可能性がある。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| ALT増加 | 頻度不明 |
| AST増加 | 頻度不明 |
| γ-GTP増加 | 1%未満 |
| アニオンギャップ増加 | 頻度不明 |
| アミノ酸濃度減少 | 1%未満 |
| アンモニア増加 | 1%未満 |
| ウイルス性消化管感染 | 1%未満 |
| おくび | 頻度不明 |
| ざ瘡 | 頻度不明 |
| そう痒性皮疹 | 1%未満 |
| トランスアミナーゼ上昇 | 1%未満 |
| ビタミンD減少 | 頻度不明 |
| プロトロンビン時間延長 | 1%未満 |
| ほてり | 1%未満 |
| リンパ球数減少 | 頻度不明 |
| レッチング | 頻度不明 |
| 上腹部痛 | 頻度不明 |
| 下痢 | 頻度不明 |
| 不規則月経 | 1%未満 |
| 二酸化炭素減少 | 1%未満 |
| 会話障害 | 1%未満 |
| 低アルブミン血症 | 1%未満 |
| 低カリウム血症 | 1%未満 |
| 低比重リポ蛋白増加 | 1%未満 |
| 体重増加 | 頻度不明 |
| 体重減少 | 頻度不明 |
| 便意切迫 | 1%未満 |
| 便秘 | 頻度不明 |
| 傾眠 | 1%未満 |
| 口内乾燥 | 頻度不明 |
| 口内炎 | 1%未満 |
| 口腔内不快感 | 頻度不明 |
| 口腔咽頭痛 | 頻度不明 |
| 味覚不全 | 1%未満 |
| 咽喉刺激感 | 1%未満 |
| 嗜眠 | 頻度不明 |
| 嘔吐 | 頻度不明 |
| 四肢痛 | 1%未満 |
| 多汗症 | 1%未満 |
| 好中球減少症 | 1%未満 |
| 心室性不整脈 | 1%未満 |
| 心電図QT延長 | 1%未満 |
| 心電図異常 | 1%未満 |
| 悪心 | 頻度不明 |
| 抑うつ気分 | 1%未満 |
| 振戦 | 頻度不明 |
| 排便困難 | 1%未満 |
| 月経中間期出血 | 頻度不明 |
| 末梢性浮腫 | 1%未満 |
| 末梢腫脹 | 1%未満 |
| 浮動性めまい | 頻度不明 |
| 消化不良 | 頻度不明 |
| 消化器痛 | 1%未満 |
| 湿疹 | 1%未満 |
| 無月経 | 1%未満 |
| 爪線状隆起 | 1%未満 |
| 甲状腺機能低下症 | 1%未満 |
| 異常便 | 頻度不明 |
| 疲労 | 頻度不明 |
| 発声障害 | 1%未満 |
| 発熱 | 1%未満 |
| 発疹 | 頻度不明 |
| 白血球数増加 | 1%未満 |
| 皮膚臭異常 | 頻度不明 |
| 空腹 | 頻度不明 |
| 筋痙縮 | 1%未満 |
| 精神運動亢進 | 1%未満 |
| 肝石灰化 | 1%未満 |
| 肝酵素上昇 | 1%未満 |
| 胃食道逆流性疾患 | 1%未満 |
| 胆道仙痛 | 1%未満 |
| 背部痛 | 1%未満 |
| 脂肪便 | 1%未満 |
| 脱毛症 | 1%未満 |
| 腎結石症 | 1%未満 |
| 腹痛 | 頻度不明 |
| 腹部不快感 | 1%未満 |
| 腹部膨満 | 頻度不明 |
| 膀胱痛 | 1%未満 |
| 血中カリウム増加 | 1%未満 |
| 血中トリグリセリド増加 | 1%未満 |
| 血中重炭酸塩減少 | 1%未満 |
| 血小板増加症 | 1%未満 |
| 貧血 | 1%未満 |
| 足底筋膜炎 | 1%未満 |
| 軟便 | 1%未満 |
| 過小食 | 1%未満 |
| 錯乱状態 | 1%未満 |
| 錯感覚 | 1%未満 |
| 関節腫脹 | 1%未満 |
| 頭痛 | 頻度不明 |
| 食欲亢進 | 頻度不明 |
| 食欲減退 | 頻度不明 |
| 食物嫌悪 | 頻度不明 |
| 鼓腸 | 頻度不明 |
| 鼻出血 | 1%未満 |
| 鼻閉 | 1%未満 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
尿素サイクル異常症患者では、残余窒素の尿素としての排泄が不十分であることにより高アンモニア血症を呈する。フェニル酪酸グリセロールはグリセロール骨格に3分子のフェニル酪酸が結合しており、ヒト生体内で加水分解されてフェニル酪酸が生成され、さらにフェニル酪酸はβ酸化により速やかにフェニル酢酸に代謝される。フェニル酢酸はグルタミンと結合し、フェニルアセチルグルタミンとして尿中に排泄される10),21) 。αケトグルタル酸からグルタミン酸を経てグルタミンが生合成される過程で、アンモニア2分子が取り込まれるため、フェニル酪酸1分子により残余窒素2原子が排泄される。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
健康成人に、本剤をフェニル酪酸3g/m2に相当するモル当量で単回経口投与したときの本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミンの薬物動態パラメータは、以下のとおりであった7) (外国人データ)。
| 測定対象 | 例数 | Cmax (μg/mL) |
AUC0-48h (μg・h/mL) |
tmax (h) |
t1/2 (h) |
|---|---|---|---|---|---|
| フェニル酪酸 | 22 | 37.01 (58.7) |
138.4 (59.0) |
2.0 [1.0, 4.0] |
1.9 (87.1)a) |
| フェニル酢酸 | 22 | 14.92 (46.0) |
70.9 (50.8) |
4.0 [3.0, 6.0] |
− |
| フェニルアセチルグルタミン | 22 | 30.18 (29.7) |
301.6 (32.0) |
4.0 [3.0, 6.0] |
− |
平均値(変動係数%)、tmax:中央値[範囲]、−:算出なし a)14例
- 16.1.2反復投与
健康成人に、本剤100mg/kgを1日2回、7日間反復経口投与したときの本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミンの薬物動態パラメータは、以下のとおりであった8) (外国人データ)。
| 測定対象 | 評価 時点 |
例数 | Cmax (μg/mL) |
AUC0-12h (μg・h/mL) |
tmax (h) |
t1/2 (h) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| フェニル酪酸 | 1日目 | 8 | 21.26 (83.07) |
84.24 (78.65) |
3.0 [2.0, 4.0] |
1.61 (25.14)a) |
| 15日目 | 8 | 26.24 (47.50) |
103.64 (42.09) |
3.0 [2.0, 4.0] |
2.11, 2.14 | |
| フェニル酢酸 | 1日目 | 8 | 11.81 (68.72) |
50.63 (79.59) |
6.0 [4.0, 6.0] |
− |
| 15日目 | 8 | 21.92 (62.88) |
99.16 (88.59) |
4.0 [3.0, 4.0] |
1.89 (19.20)b) |
|
| フェニルアセチルグルタミン | 1日目 | 8 | 34.00 (33.47) |
233.85 (37.50) |
6.0 [4.0, 6.0] |
4.14, 4.40 |
| 15日目 | 8 | 44.33 (32.57) |
332.60 (25.79) |
4.0 [4.0, 6.0] |
6.32 (64.33)c) |
平均値(変動係数%)、tmax:中央値[範囲]、2例の場合は個別値、−:算出なし a)5例、b)3例、c)4例
16.2 吸収
- 16.2.1食事の影響
健康成人8例に、本剤100mg/kgを食後及び空腹時に単回経口投与したとき、空腹時投与に対する食後投与の本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミンのCmax及びAUC0-12hの幾何平均値の比(食後投与/空腹時投与)とその90%信頼区間は、Cmaxでそれぞれ1.075[0.57, 2.04]、0.849[0.52, 1.39]及び0.959[0.80, 1.15]、AUC0-12hでそれぞれ0.879[0.49, 1.56]、0.673[0.36, 1.24]及び0.907[0.75, 1.09]であった8) (外国人データ)。
16.3 分布
- 16.3.1分布容積
本剤の海外臨床試験成績より得られた尿素サイクル異常症患者79例を対象とした母集団薬物動態解析の結果、本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニアルアセチルグルタミンの見かけの分布容積は、それぞれ12.4L、30.8L及び23.4Lと推定された。
- 16.3.2タンパク結合
14C標識されたフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミン(検討された濃度範囲はそれぞれ1~250μg/mL、5~500μg/mL及び1~250μg/mL)のヒト血漿タンパク結合率はそれぞれ80.6~98.0%、37.1~65.6%及び7.3~12.0%であった9) (in vitro)。
16.4 代謝
フェニル酪酸グリセロールはリパーゼにより加水分解を受け、グリセロールとフェニル酪酸に代謝される(in vitro)。フェニル酪酸はβ酸化によりフェニル酢酸に代謝され、グルタミンと抱合されてフェニルアセチルグルタミンとなる10) 。
16.5 排泄
日本人成人尿素サイクル異常症患者6例に本剤を投与したとき、投与量の74.2%がフェニルアセチルグルタミンとして尿中に排泄された11) 。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1肝機能障害を有する患者
肝機能障害の程度の異なる治験参加者(Child-Pugh scoresに基づいて分類)に本剤100mg/kgを1日2回、7日間反復経口投与したときの、本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミンの薬物動態パラメータは以下のとおりであった8) (外国人データ)。
| 測定対象 | 肝機能 | 例数 | Cmax (μg/mL) |
AUC0-12h (μg・h/mL) |
|---|---|---|---|---|
| フェニル酪酸 | 正常 | 8 | 29.80±14.15 | 113.12±47.61 |
| 軽度 (Child-Pugh分類A) |
8 | 42.81±25.53 | 126.57±68.64 | |
| 中等度 (Child-Pugh分類B) |
8 | 41.83±26.22 | 175.65±128.45 | |
| 重度 (Child-Pugh分類C) |
8 | 44.33±21.50 | 192.08±82.90 | |
| フェニル酢酸 | 正常 | 8 | 25.52±16.05 | 127.29±112.77 |
| 軽度 (Child-Pugh分類A) |
8 | 33.15±14.66 | 154.39±118.60 | |
| 中等度 (Child-Pugh分類B) |
8 | 30.85±19.82 | 212.83±211.73 | |
| 重度 (Child-Pugh分類C) |
8 | 53.08±64.49 | 433.60±739.55 | |
| フェニルアセチルグルタミン | 正常 | 8 | 46.27±15.07 | 342.30±88.27 |
| 軽度 (Child-Pugh分類A) |
8 | 37.67±9.33 | 255.61±96.75 | |
| 中等度 (Child-Pugh分類B) |
8 | 38.10±15.20 | 305.34±185.22 | |
| 重度 (Child-Pugh分類C) |
8 | 43.09±15.27 | 354.98±180.48 |
平均値±標準偏差
- 16.6.2小児
本剤の海外臨床試験より得られた尿素サイクル異常症患者79例を対象とした母集団薬物動態解析の結果、フェニル酢酸の見かけのクリアランスは3歳未満、3歳以上6歳未満、6歳以上12歳未満、12歳以上18歳未満で、それぞれ7.1L/h、10.9L/h、16.4L/h、24.4L/hであり、本剤投与後の定常状態の血漿中フェニル酢酸濃度は、年齢が低いほど高値を示すことが予測された12) 。 また、2歳未満の小児尿素サイクル異常症患者に本剤を反復経口投与したときの本剤の1日投与量及び投与1日目の本剤の主要な代謝物であるフェニル酪酸、フェニル酢酸及びフェニルアセチルグルタミンの薬物動態パラメータは以下のとおりであった(外国人データ)。
| 患者年齢 | 1カ月齢未満 | 1カ月齢以上 2カ月齢未満 |
2カ月齢以上 2歳未満 |
|
|---|---|---|---|---|
| 例数 | 10 | 6 | 10 | |
| 1日投与量(g/m2/日) | 9.20 [6.4, 12.0] |
9.42 [4.4, 17.2] |
9.87 [4.7, 12.8] |
|
| フェニル酪酸 | Cmax (μg/mL) |
34.77 (121.5) |
65.37 (91.0) |
42.44 (86.5) |
| AUClast (μg・h/mL) |
365.73 (124.4) |
389.18 (74.5) |
280.94 (104.5) |
|
| フェニル酢酸 | Cmax (μg/mL) |
154.4 (71.9) |
50.23 (59.0) |
36.52 (87.0) |
| AUClast (μg・h/mL) |
1830.40 (68.5) |
472.48 (107.1) |
246.13 (96.9) |
|
| フェニルアセチルグルタミン | Cmax (μg/mL) |
117.7 (44.9) |
76.1 (36.4) |
62.45 (43.7) |
| AUClast (μg・h/mL) |
1688.5 (79.0) |
876.74 (52.1) |
583.84 (48.9) |
1日投与量は中央値[範囲]、薬物動態パラメータは平均値(変動係数%)
16.7 薬物相互作用
-
16.7.1臨床薬物相互作用試験
-
(1)ミダゾラム
健康成人24例に本剤4.4gを1日3回経口投与し、ミダゾラム(CYP3A基質)3mgを単回経口併用投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対する併用投与時のミダゾラムのCmax及びAUClastの最小二乗幾何平均値の比は、それぞれ0.74及び0.68であった13) 。
- (2)セレコキシブ
健康成人28例に本剤4.4gを1日3回経口投与し、セレコキシブ(CYP2C9基質)200mgを単回経口併用投与したとき、セレコキシブ単独投与時に対する併用投与時のセレコキシブのCmax及びAUClastの最小二乗幾何平均値の比は、それぞれ0.88及び0.92であった。
-
16.7.2その他
-
(1)CYP阻害作用
フェニル酪酸はCYP2D6に対して阻害作用を示した(Ki:240μg/mL)14) (in vitro)。
- (2)トランスポーター阻害作用
フェニル酢酸はOAT1に対して阻害作用を示した(IC50:180μg/mL)15) (in vitro)。