Clinical snapshot

ラパリムス錠1mg

シロリムス

添付文書改訂 2026年04月01日

【警告】

  • 〈効能共通〉
  1. 1.1本剤は、本剤及び適応疾患に十分な知識を持つ医師のもとで使用すること。

  2. 1.2本剤の投与により、間質性肺疾患が認められており、海外においては死亡に至った例が報告されている。投与に際しては咳嗽、呼吸困難、発熱等の臨床症状に注意するとともに、投与前及び投与中は定期的に胸部CT検査を実施すること。また、異常が認められた場合には適切な処置を行うとともに、投与継続の可否について慎重に検討すること。なお、小児に対する胸部CT検査の実施に際しては、診断上の有益性と被曝による不利益を考慮すること。

  3. 1.3肝炎ウイルスキャリアの患者では、本剤の投与期間中に肝炎ウイルスの再活性化を生じ、肝不全から死亡に至る可能性がある。本剤の投与期間中又は投与終了後は、定期的に肝機能検査を行うなど、肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。

  • 〈難治性脈管腫瘍及び難治性脈管奇形〉
  1. 1.4錠剤と顆粒剤は生物学的に同等ではないため、剤形の切替えに際しては、血中濃度を確認すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1本剤の成分又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2妊婦又は妊娠している可能性のある女性

  3. 2.3生ワクチンを接種しないこと

効能・効果

  • 〈ラパリムス錠1mg〉

  • リンパ脈管筋腫症

  • 下記の難治性脈管腫瘍及び難治性脈管奇形

  • リンパ管腫(リンパ管奇形)、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症 血管内皮腫、房状血管腫 静脈奇形、青色ゴムまり様母斑症候群 混合型脈管奇形、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

  • 〈ラパリムス顆粒0.2%〉

  • 下記の難治性脈管腫瘍及び難治性脈管奇形

  • リンパ管腫(リンパ管奇形)、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症 血管内皮腫、房状血管腫 静脈奇形、青色ゴムまり様母斑症候群 混合型脈管奇形、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

用法・用量

  • 〈リンパ脈管筋腫症〉 ラパリムス錠1mg

通常、成人にはシロリムスとして2mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回4mgを超えないこと。

  • 〈難治性脈管腫瘍及び難治性脈管奇形〉 ラパリムス錠1mg

通常、シロリムスとして、体表面積が1.0m2以上の場合は2mg、1.0m2未満の場合は1mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、血中トラフ濃度や患者の状態により投与量を調節するが、1日1回4mgを超えないこと。

  • ラパリムス顆粒0.2%

通常、シロリムスとして、体表面積が1.0m2以上の場合は2mg、0.6m2以上1.0m2未満の場合は1mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、血中トラフ濃度や患者の状態により投与量を調節するが、1日1回4mgを超えないこと。 体表面積が0.6m2未満の場合は、月齢に応じて開始用量を下記のとおりとし、1日1回経口投与する。以後は、血中トラフ濃度や患者の状態により投与量を調節するが、下記の最大用量を超えないこと。

月齢 1日あたり開始用量(最大1mgまで) 1日あたり最大用量(最大4mgまで)
3ヵ月未満 0.02mg/kg 0.08mg/kg
3ヵ月以上6ヵ月未満 0.04mg/kg 0.16mg/kg
6ヵ月以上12ヵ月未満 0.06mg/kg 0.24mg/kg
12ヵ月以上 0.08mg/kg 0.32mg/kg

使用上の注意

  1. 8.1間質性肺疾患(致命的な転帰をたどることがある)があらわれることがあるので、投与開始前及び投与開始後は以下の点に注意すること。また、患者に対し、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状があらわれた場合には、直ちに連絡するように指導すること。なお、小児に対する胸部CT検査の実施に際しては、診断上の有益性と被曝による不利益を考慮すること。

  2. 8.1.1投与開始前

胸部CT検査を実施し、咳嗽、呼吸困難、発熱等の臨床症状の有無と併せて、投与開始の可否を慎重に判断すること。

  1. 8.1.2投与開始後

定期的に胸部CT検査を実施し、肺の異常所見の有無を慎重に観察すること。咳嗽、呼吸困難、発熱等の臨床症状がみられた患者で、感染、腫瘍及びその他の医学的な原因が適切な検査で除外された場合には、間質性肺疾患の診断を考慮し、必要に応じて肺機能検査(肺拡散能力[DLCO]、酸素飽和度等)及び追加の画像検査を実施すること。

  1. 8.2本剤の免疫抑制作用により、細菌、真菌、ウイルスあるいは原虫による感染症や日和見感染が発現又は悪化する可能性があり、B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はHBs抗原陰性の患者においてB型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎があらわれることがある。本剤投与により、肝炎ウイルス、結核等が再活性化する可能性があるので、本剤投与に先立って肝炎ウイルス、結核等の感染の有無を確認し、本剤投与前に適切な処置をしておくこと。本剤投与中は感染症の発現又は増悪に十分注意すること。

  2. 8.3本剤投与により、悪性リンパ腫、悪性腫瘍(特に皮膚)を発現する可能性があるので、悪性腫瘍等の発現には注意すること。

  3. 8.4本剤投与により脂質異常があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に脂質検査を実施し、脂質異常がみられた場合は、適切な食事指導、運動指導を実施し、必要により高脂血症用剤を投与するなど適切な処置を行うこと。

  4. 8.5本剤投与により、創傷治癒不良のおそれがある。海外で肺移植患者において気管支吻合部離開例(致死的)が報告されているので、肺移植登録患者では本剤の投与を中止し、移植までに十分な休薬期間を確保すること。また、その他の手術時においても、創傷治癒不良の影響を考慮し、手術前の休薬期間を設けることが望ましい。創傷時には観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬し、適切な処置を行うこと。

  5. 8.6蛋白尿があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に尿蛋白を測定し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1肺に間質性陰影を認める患者

間質性肺疾患が発症、重症化するおそれがある。

  1. 9.1.2感染症を合併している患者

免疫抑制により感染症が悪化するおそれがある。

  1. 9.1.3肝炎ウイルス、結核等の感染又は既往歴を有する患者

本剤の投与期間中又は投与終了後は、定期的に肝機能検査を行うなど、肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。再活性化するおそれがある。また、肝炎ウイルスキャリアの患者では、本剤の投与期間中に肝炎ウイルスの再活性化を生じ、肝不全から死亡に至る可能性がある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1中等度(Child-Pugh分類 Grade B)以上の肝機能障害患者

投与量を半量から開始すること。血中濃度が上昇するおそれがある。

  1. 9.3.2軽度(Child-Pugh分類 Grade A)の肝機能障害患者

血中濃度が上昇するおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

妊娠可能な女性には、投与期間中及び投与終了後少なくとも12週間は、適切な避妊を行うよう指導すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。ラットにおける胚・胎児発生に関する試験において臨床推奨用量の曝露量以下で、初期吸収胚数、吸収胚数及び死亡胎児数の増加、生存胎児数の減少、胎児体重の低値、並びに主として椎骨の骨化遅延及び変異の増加が報告されている3) 。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物試験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。

9.7 小児等

  • 〈リンパ脈管筋腫症〉
  1. 9.7.118歳未満の患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
  • 〈難治性脈管腫瘍及び難治性脈管奇形〉
  1. 9.7.2錠剤を用いて、低出生体重児、新生児、乳児、体表面積が0.6m2未満の幼児又は小児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

  2. 9.7.3顆粒剤を用いて、低出生体重児又は新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

一般に生理機能が低下している。

相互作用

  • 本剤は、肝薬物代謝酵素CYP3A4により代謝され、また、本剤はP-糖蛋白の基質であり、本剤自体もCYP3A4を阻害する。CYP3A4又はP-糖蛋白阻害あるいは誘導作用を有する薬剤との併用により、本剤の薬物動態に影響を及ぼす。CYP3A4又はP-糖蛋白阻害あるいは誘導作用を有する薬剤については、他の類薬に変更する又は当該薬剤を休薬するなどを考慮し、CYP3A4又はP-糖蛋白に影響を及ぼす薬剤との併用は可能な限り避けること。

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
生ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン、経口生ポリオワクチン、乾燥BCG等) 免疫抑制下で生ワクチンを接種すると発症するおそれがあるので併用しないこと。 免疫抑制下で生ワクチンを接種すると増殖し、病原性をあらわす可能性がある。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
• シクロスポリン
• カルシウム拮抗剤• ジルチアゼム
• ニカルジピン
• ベラパミル
• 抗真菌剤• フルコナゾール
• イトラコナゾール
• ケトコナゾール
• ボリコナゾール等
• マクロライド系抗生物質• エリスロマイシン
• クラリスロマイシン等
• メトクロプラミド
• ブロモクリプチン
• シメチジン
• ダナゾール
• レテルモビル
• プロテアーゼ阻害剤• リトナビル等
本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。併用する場合には、本剤を減量することを考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。 本剤の代謝酵素(CYP3A4等)が阻害されると考えられる。
• ミカファンギンナトリウム 本剤のAUCが21%上昇したとの報告がある。併用する場合は患者の状態を慎重に観察し、本剤の副作用発現に注意し必要に応じて本剤の投与量を調節すること。 機序不明
• グレープフルーツジュース 本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤服用時は飲食を避けること。 グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することによると考えられる。
• アンジオテンシン変換酵素阻害剤等 血管性浮腫との関連性が示されている薬剤を服用している患者では、血管性浮腫(顔面、口唇、舌、咽頭の腫脹等)を発症するリスクが高まるおそれがある。 機序不明
• リファンピシン
• リファブチン
• 抗てんかん剤• カルバマゼピン
• フェノバルビタール
• フェニトイン
本剤の血中濃度が低下することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること。やむを得ず併用する場合には、本剤の有効性が減弱する可能性があることを考慮すること。 これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる。
• ロルラチニブ 本剤の血中濃度が低下し、有効性が減弱する可能性がある。 ロルラチニブがP-糖蛋白を誘導することによる。
• セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること。 セイヨウオトギリソウの代謝酵素誘導作用により本剤の代謝が促進されると考えられる。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P増加 1〜5%未満
ALT増加 5%以上
AST増加 5%以上
CRP増加 1%未満
LDL増加 1%未満
RSウイルス感染 1〜5%未満
γ-GTP増加 1〜5%未満
インフルエンザ 1%未満
そう痒性皮疹 1%未満
ヘモグロビン減少 1%未満
リンパ球減少症 1〜5%未満
上気道の炎症(23.3%) 5%以上
上気道感染 1〜5%未満
上腹部痛 5%以上
下気道感染 1%未満
下腹部痛 1〜5%未満
不整脈 1〜5%未満
不正子宮出血 1%未満
不眠症 1〜5%未満
不規則月経(14.3%) 5%以上
中耳の炎症 1〜5%未満
低γグロブリン血症 頻度不明
低カリウム血症 1〜5%未満
低酸素症 1%未満
体重増加 1%未満
体重減少 1〜5%未満
便秘 5%以上
倦怠感 5%以上
傾眠 1%未満
出血 1〜5%未満
副鼻腔炎 1〜5%未満
動悸 1〜5%未満
卵巣嚢胞 1〜5%未満
口の錯感覚 1%未満
口内乾燥 1〜5%未満
口唇炎 5%以上
口渇 1%未満
口腔ヘルペス 1〜5%未満
口腔内痛 1%未満
口腔咽頭痛 5%以上
味覚異常 1〜5%未満
呼吸困難 5%以上
呼吸障害(12.8%) 5%以上
咳嗽(10.5%) 5%以上
咽頭炎 5%以上
唾液腺炎 1〜5%未満
喉頭炎 1%未満
四肢痛 1%未満
圧痛 1%未満
外耳炎 1〜5%未満
外陰腟乾燥 1%未満
外陰部腟カンジダ症 1〜5%未満
多汗症 1%未満
好中球数減少 5%以上
好中球減少症 1%未満
小腸閉塞 1〜5%未満
尿生殖器出血 1〜5%未満
尿蛋白 1〜5%未満
急性呼吸不全 1%未満
性器出血 1〜5%未満
感染性腸炎 1〜5%未満
感覚鈍麻 1%未満
感覚障害 1%未満
憩室炎 1%未満
扁桃炎 1〜5%未満
手掌・足底発赤知覚不全症候群 1%未満
手皮膚炎 1%未満
挫傷 1〜5%未満
月経困難症 1〜5%未満
月経過多 1〜5%未満
月経障害 1〜5%未満
末梢性感覚ニューロパチー 1%未満
歯周炎 1〜5%未満
歯周病 1〜5%未満
歯槽骨炎 1%未満
歯痛 1〜5%未満
歯肉炎 1〜5%未満
歯肉痛 1%未満
歯肉膿瘍 1%未満
毛包炎 1%未満
毛細血管拡張症 1〜5%未満
気分変化 1〜5%未満
気管支炎(14.3%) 5%以上
気管支痙攣 1%未満
気胸 1〜5%未満
気道感染 1%未満
浮動性めまい 5%以上
浮腫 1%未満
消化不良 1〜5%未満
湿疹 1〜5%未満
点状出血 1%未満
無月経 1〜5%未満
無精子症 頻度不明
爪囲炎 1%未満
爪甲脱落症 1%未満
爪破損 1〜5%未満
爪線状隆起 1〜5%未満
異常感 1%未満
疲労 5%以上
疼痛(17.3%) 5%以上
発声障害 1〜5%未満
発熱(17.3%) 5%以上
白癬感染 1%未満
白血球数減少 5%以上
白血球減少症 1〜5%未満
白血球百分率数異常 1%未満
皮下出血 1〜5%未満
皮下血腫 1%未満
皮膚びらん 1〜5%未満
皮膚感染 1〜5%未満
皮膚潰瘍 1%未満
皮膚炎 1〜5%未満
皮膚腫瘤 1%未満
眼乾燥 1〜5%未満
眼痛 1〜5%未満
眼瞼浮腫 1〜5%未満
筋力低下 1%未満
筋痙縮 1〜5%未満
筋肉痛 1%未満
筋骨格硬直 1%未満
筋骨格障害 5%以上
粘膜の炎症 1〜5%未満
紅斑 1〜5%未満
細菌尿 1〜5%未満
細菌感染 1%未満
結膜炎 1〜5%未満
耳不快感 1%未満
耳出血 1%未満
耳痛 1%未満
肝機能異常 1〜5%未満
肺出血 1〜5%未満
胃炎 1〜5%未満
胃腸炎 5%以上
胃腸障害 5%以上
胃食道逆流性疾患 1%未満
胆嚢炎 1%未満
背部痛 5%以上
胸痛 1〜5%未満
胸部不快感 1%未満
脱毛症 1%未満
腟分泌物 1〜5%未満
腟感染 1%未満
腸炎 1〜5%未満
腹痛(12.0%) 5%以上
腹部不快感 1〜5%未満
腹部膨満 1〜5%未満
膀胱炎 1〜5%未満
色素沈着障害 1〜5%未満
蕁麻疹 1〜5%未満
血中ビリルビン増加 1〜5%未満
血小板数増加 1%未満
血尿 1%未満
記憶障害 1%未満
貧血 1〜5%未満
貨幣状湿疹 1%未満
閉経期症状 1%未満
関節痛 1〜5%未満
関節腫脹 1%未満
限局性浮腫 1%未満
霰粒腫 1%未満
頭痛(21.1%) 5%以上
頭部不快感 1%未満
顎下腺腫大 1%未満
顎痛 1%未満
食欲減退 5%以上
高尿酸血症 1%未満
高血圧 5%以上
高血糖 頻度不明
麦粒腫 1〜5%未満
鼓腸 1〜5%未満
鼡径部痛 1〜5%未満
鼻出血 1〜5%未満
鼻咽頭炎(24.1%) 5%以上
鼻漏 1〜5%未満
鼻粘膜障害 1%未満
鼻閉 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

  1. 18.1.1本剤は、LAMでみられるmTORの恒常的な活性化を阻害することによって、LAM平滑筋様細胞増殖シグナル伝達を阻害し、細胞周期のG0/G1からS期への進行を抑制することで細胞増殖を抑制すると考えられている26),27),28) 。

  2. 18.1.2本剤は、脈管異常でみられるPI3K/AKT/mTOR経路の異常活性を抑制することによって、リンパ管内皮細胞の増殖・遊走抑制作用、血管内皮細胞増殖因子の発現抑制及びp70S6 kinaseのリン酸化抑制作用を示すと考えられた29),30) 。

18.2 脈管形成・細胞増殖・遊走の抑制作用

  1. 18.2.1本剤は、in vitro試験において、LAM患者から採取したLAM平滑筋様細胞の増殖を抑制した26) 。

  2. 18.2.2本剤は、マウスLAMモデルにおいて、肺組織の破壊及び肺胞空胞面積の拡大を抑制した31) 。

  3. 18.2.3LAM細胞又はTSC遺伝子欠損細胞では、VEGFや肺組織破壊、嚢胞形成を促すマトリックスメタロプロテアーゼが増加するが、本剤はLAM細胞又はTSC遺伝子欠損細胞におけるVEGF及びマトリックスメタロプロテアーゼの増加を抑制した4),31) 。

  4. 18.2.4本剤は、in vitro試験において、ヒト皮膚微小血管内皮細胞の構成細胞であるリンパ管内皮細胞、ヒトリンパ管奇形患者由来のリンパ管内皮細胞及びマウスの血管内皮腫細胞の増殖を濃度依存性に抑制した。また、本剤はヒトリンパ管内皮細胞の遊走を抑制した29),30),32) 。

  5. 18.2.5本剤は、in vivo試験において、エマルジョン化した不完全フロイントアジュバント誘発性リンパ管内皮腫瘍、マウス血管内皮腫細胞移植、マウス静脈奇形及びマウス転移性膵臓腫瘍細胞移植の各腫瘍モデルで、本剤を経口もしくは腹腔内投与したとき、これらの動物モデルでみられた腫瘍細胞の増殖を抑制した。また、本剤はこれらの腫瘍細胞のリンパ管新生や血管新生を抑制した32),33),34) 。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1定常状態時の薬物動態

錠剤2mg/日で定常状態にある日本人リンパ脈管筋腫症患者10例に錠剤2mgを食後単回投与したときの血中濃度は、投与後平均2.75時間に最高濃度平均22.4ng/mLを示し、消失半減期は平均47.7時間であった8) 。

図1 定常状態にある患者に、錠剤2mgを食後投与したときの血中濃度の推移及び薬物動態パラメータ

  1. 16.1.2血中トラフ濃度の推移

体表面積0.6m2以上の小児を含む難治性リンパ管疾患患者11例に錠剤を52週間投与し、血中トラフ濃度を測定した。開始用量として、錠剤1mg/日(体表面積1.0m2未満)又は2mg/日(体表面積1.0m2以上)を経口投与し、その後、目標血中トラフ濃度を5~15ng/mLとして、投与量を適宜調節した(最大投与量は1日4mg)。平均血中トラフ濃度は、投与2週後で5ng/mLを超え、52週後まで目標血中トラフ濃度を維持した9) 。

時点 1週後 2週後 4週後 12週後 24週後 52週後
全体 5.4±1.8
(11例)
5.6±1.6
(11例)
5.5±1.8
(11例)
7.4±2.0
(11例)
8.4±2.2
(11例)
8.9±3.3
(9例)
体表面積1.0m2以上 5.0±1.7
(8例)
5.5±1.6
(8例)
5.7±2.0
(8例)
7.3±1.5
(8例)
8.3±2.5
(8例)
9.6±3.4
(7例)
体表面積1.0m2未満 6.6±2.1
(3例)
5.8±2.0
(3例)
5.2±1.3
(3例)
7.6±3.6
(3例)
8.8±1.5
(3例)
6.6±1.3
(2例)

(ng/mL) 平均値±標準偏差

乳幼児を含む難治性脈管腫瘍・脈管奇形患者13例に本剤を52週間投与し、血中トラフ濃度を測定した。開始用量を1日1回体重30kg以上の場合、錠剤2mg又は顆粒剤1.4mg、30kg未満の場合、顆粒剤を月齢に応じて次のとおりとし、血中トラフ濃度を5~15ng/mLとなるよう投与量を適宜調節した10) 。 3ヵ月未満:0.02mg/kg/日 3ヵ月以上6ヵ月未満:0.04mg/kg/日 6ヵ月以上12ヵ月未満:0.06mg/kg/日 1歳以上:0.08mg/kg/日、ただし1.4mg/日を超えない。

製剤 層別 1週後 2週後 4週後 12週後 24週後 52週後
全体 5.5±2.4
(13例)
5.7±1.7
(13例)
5.8±2.0
(13例)
6.6±3.0
(13例)
6.6±1.5
(12例)
7.8±3.6
(13例)
錠剤 30kg以上 5.7±1.1
(4例)
6.2±1.0
(4例)
6.0±1.1
(4例)
6.5±1.0
(4例)
6.6±1.8
(3例)
9.7±5.0
(4例)
顆粒剤 30kg以上 2.9
(1例)
3.4
(1例)
4.1
(1例)
5.3
(1例)
8.8
(1例)
7.7
(1例)
30kg未満かつ体表面積0.6m2以上 6.4±4.1
(3例)
6.2±2.5
(3例)
6.7±2.8
(3例)
6.8±4.1
(3例)
5.7±0.8
(3例)
9.7±2.2
(3例)
1歳以上かつ体表面積0.6m2未満 5.5±2.7
(4例)
5.8±1.9
(4例)
4.8±2.4
(4例)
7.2±4.7
(4例)
6.7±1.9
(4例)
5.2±1.5
(4例)
1歳未満 5.3
(1例)
4.1
(1例)
7.7
(1例)
5.2
(1例)
7.1
(1例)
5.1
(1例)

(ng/mL) 平均値±標準偏差

  1. 16.1.3錠剤と顆粒剤の比較

日本人健康成人に錠剤1mgを2錠又は顆粒剤2mgを、クロスオーバー法により空腹時単回経口投与した結果、AUCt、Cmaxともに生物学的同等性の判定基準であるlog(0.80)~log(1.25)を満たさず、生物学的に同等と判定できなかった。顆粒剤は錠剤に対して、AUCtで1.48倍(幾何平均の比)、Cmaxで2.30倍(幾何平均の比)であった1) 。

製剤 Cmax
(ng/mL)
tmaxa)
(h)
AUCt
(ng・h/mL)
t1/2
(h)
錠剤 6.9±1.8 2.0(1.5, 4.0) 111±24 46.5±19.9
顆粒剤 16.2±5.5 1.8(1.0, 2.0) 165±40 56.8±19.9

平均値±標準偏差 a)中央値(最小値, 最大値)

パラメータ 幾何平均の比 90%信頼区間
下限 上限
AUCt 1.48 1.22 1.80
Cmax 2.30 1.90 2.78

:顆粒剤/錠剤

  1. 16.1.4母集団薬物動態解析(錠剤と顆粒剤の比較)

日本人データ(1282検体)を用いた母集団薬物動態解析の結果、錠剤に比し、顆粒剤の定常状態における血中トラフ濃度が1.23倍(90%信頼区間:1.09~1.37)高かった2) 。

16.2 吸収

  1. 16.2.1シロリムス楕円錠

健康成人24例にシロリムス楕円錠10mg注2) を空腹時及び高脂肪食摂取直後に単回投与したところ、高脂肪食摂取後ではtmax、Cmax及びAUCがそれぞれ32%(19分)、65%及び23%増加した11) (外国人データ)。

  1. 16.2.2シロリムス液剤

健康成人22例にシロリムス液剤15mg注2) を空腹時及び高脂肪食摂取直後に単回投与したところ、高脂肪食摂取後ではtmax、Cmax及びAUCがそれぞれ254%増加、34%減少及び35%増加した12) (外国人データ)。

16.3 分布

ヒト全血中の3H標識シロリムスの分布(放射活性比:平均値)は、赤血球中で94.5%、血漿で3.1%、リンパ球で1.0%、顆粒球で1.0%であった。全血/血漿比は11.1であった13) (in vitroデータ)。 健康成人27例に本剤15mg注2) を単回経口投与したときの全血/血漿比は106であった14) (外国人データ)。

16.4 代謝

本剤はCYP3A4により広範に代謝され、またP-糖蛋白の基質である。本剤の主要な代謝物は、CYP3A4によるO-脱メチル化した代謝物と、水酸化による代謝物であった15),16) 。

16.5 排泄

健康成人男性に14C標識シロリムス42mg注2) を単回投与したときの尿中及び糞中への排泄量は、それぞれ2.2%、91.0%であった17) (外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1肝機能障害患者

軽度肝機能障害被験者(Child-Pugh分類 Grade A)13例、中等度肝機能障害被験者(Child-Pugh分類 Grade B)5例、重度肝機能障害被験者(Child-Pugh分類 Grade C)9例、肝機能正常被験者27例を対象に、シロリムス液剤15mg注2) を単回投与したとき、軽度、中等度、重度肝機能障害被験者では、肝機能正常被験者と比較してAUC∞はそれぞれ48%、96%、210%増大し、見かけのクリアランス(CL/F)はそれぞれ32%、36%、67%減少し、t1/2はそれぞれ25%、89%、168%延長した14),18) (外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1ジルチアゼム

健康成人18例にシロリムス液剤10mg注2) とジルチアゼム120mgを単回併用投与したとき、単独投与時に比べシロリムスのCmax、tmax及びAUCがそれぞれ43%、29%及び60%増加したが、シロリムスはジルチアゼムの薬物動態に影響を及ぼさなかった19)(外国人データ)。

  1. 16.7.2ベラパミル

健康成人25例にシロリムス液剤2mg、1日1回とベラパミル180mg、1日2回を反復併用投与したとき、単独投与と比べシロリムスのCmax、tmax及びAUC24hがそれぞれ134%、8%及び116%増加し、S(-)ベラパミルのCmax及びAUC12hがそれぞれ46%及び48%増加、tmaxが24%低下した20)(外国人データ)。

  1. 16.7.3エリスロマイシン

健康成人24例にシロリムス液剤2mg、1日1回とエリスロマイシン800mg、1日3回を反復併用投与したとき、単独投与と比べシロリムスのCmax及びAUCが約4倍に、tmaxは40%増加し、エリスロマイシンのCmax、tmax及びAUCがそれぞれ63%、29%及び69%増加した21)(外国人データ)。

  1. 16.7.4ケトコナゾール

健康成人23例にケトコナゾール200mg/日、10日間反復投与中にシロリムス液剤5mg注2) を単回併用投与したとき、単独投与と比べシロリムスのCmax、tmax及びAUCがそれぞれ342%、38%及び990%増加したが、シロリムスはケトコナゾールの薬物動態に影響を及ぼさなかった22)(外国人データ)。

  1. 16.7.5リファンピシン

健康成人14〜16例にリファンピシン600mg、1日1回反復投与中にシロリムス液剤20mg注2) を単回併用投与したとき、単独投与と比べシロリムスのCmax及びAUCがそれぞれ71%及び82%低下したが、tmaxに対する影響は認められなかった23)(外国人データ)。

  1. 16.7.6シクロスポリン

健康成人24例にシロリムス錠剤10mg注2) とシクロスポリン300mg(100mgカプセル)を単回併用投与したとき、単独投与に比べシロリムスのCmax及びAUCがそれぞれ512%及び148%増加したが、シロリムスはシクロスポリンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。また、健康成人22例にシクロスポリン300mg単回投与4時間後にシロリムス錠剤10mg注2) を投与したとき、単独投与と比べシロリムスのCmax及びAUCは共に33%増加した24) (外国人データ)。

注2)承認最大用量は、錠剤は4mg、顆粒剤は体表面積0.6m2以上は4mg、体表面積0.6m2未満は月齢ごとの開始用量(0.02~0.08mg/kg)の4倍又は4mgを超えない量である。