Clinical snapshot

ミリスロール注1mg/2mL

ニトログリセリン注射液

添付文書改訂 2023年11月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]

  3. 2.3高度な貧血の患者[血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。]

  4. 2.4ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者

効能・効果

  • 手術時の低血圧維持

  • 手術時の異常高血圧の救急処置

  • 急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)

  • 不安定狭心症

用法・用量

本剤は、注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖注射液、乳酸リンゲル液等で希釈し、ニトログリセリンとして0.005~0.05%(1mL当たり50~500μg)溶液を点滴静注する。 本剤は、通常1分間に体重1kg当たりニトログリセリンとして、効能又は効果ごとに下表に基づき投与する。

効能又は効果 用法及び用量
手術時の低血圧維持 1~5μg/kg/分の投与量で投与を開始し、目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。
手術時の異常高血圧の救急処置 0.5~5μg/kg/分の投与量で投与を開始し、目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。
急性心不全
(慢性心不全の急性増悪期を含む)
0.05~0.1μg/kg/分の投与量で投与を開始し、目的とする血行動態を得るまで血圧、左心室充満圧などの循環動態をモニターしながら5~15分ごとに0.1~0.2μg/kg/分ずつ増量し、最適点滴速度で維持する。
不安定狭心症 0.1~0.2μg/kg/分の投与量で投与を開始し、発作の経過及び血圧をモニターしながら約5分ごとに0.1~0.2μg/kg/分ずつ増量し、1~2μg/kg/分で維持する。効果がみられない場合には20~40μg/kgの静注を1時間ごとに併用する。なお、静注する場合は1~3分かけて緩徐に投与する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の作用には個人差がみられるので、本剤投与中は必ず並行して血圧のモニターを行うこと。急性心不全に対して本剤を用いる場合にはSwan-Ganzカテーテル等を使用し、肺動脈拡張期圧、肺動脈楔入圧等の血行動態をモニターしながら投与すること。また、循環機能検査、動脈血検査、尿量の検査をあわせて行うなど、患者の全身状態を十分に管理しながら投与すること。

  2. 8.2本剤の過剰投与により血圧が低下し過ぎた場合には投与を中止すること。また、速やかに血圧を回復させたい場合には昇圧剤を投与すること。

  3. 8.3手術後は、患者の血圧が完全に回復するまで管理を行うこと。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1メトヘモグロビン血症の患者

メトヘモグロビン血症をさらに悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.2頭部外傷又は脳出血の患者

頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。

  1. 9.1.3著しく血圧の低い患者

血圧低下をさらに悪化させるおそれがあるので、必要ならばドパミン塩酸塩等の昇圧剤を併用すること。

9.3 肝機能障害患者

副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が報告されている。

9.7 小児等

新生児及び乳幼児はメトヘモグロビン還元酵素活性が低いので、メトヘモグロビン血症を起こしやすい。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら用量に留意して慎重に投与すること。本剤は、主として肝臓で代謝されるが、高齢者では一般に肝機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続し、血圧低下等が発現するおそれがある。

相互作用

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
• シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ、レバチオ)
• バルデナフィル塩酸塩水和物(レビトラ)
• タダラフィル(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
併用により、降圧作用を増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤
• リオシグアト(アデムパス)
併用により、降圧作用を増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は、ともにcGMPの産生を促進することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
パンクロニウム パンクロニウムの神経筋遮断効果を延長することがある。 機序不明
利尿剤
他の血管拡張剤
血圧低下が増強されることがある。 ともに血圧低下作用を有する。
ヘパリン ヘパリンの作用を減弱するとの報告がある。 機序不明

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Pa02(動脈血酸素分圧)低下 頻度不明
あくび 頻度不明
メトヘモグロビン血症 頻度不明
不整脈 頻度不明
乏尿 頻度不明
代謝性アシドーシス 頻度不明
倦怠感 頻度不明
口内乾燥感 頻度不明
悪心・嘔吐 頻度不明
胸部不快感 頻度不明
脳浮腫 頻度不明
頭痛・頭重感 頻度不明
頻脈注1) 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ニトログリセリンは直接血管平滑筋に作用し、低用量では静脈の、高用量では静脈及び動脈の拡張作用を示すとされている11)。その機序として、ニトログリセリンが細胞内で一酸化窒素に変換され、グアニル酸シクラーゼを介してcGMPを増加することにより、細胞外へカルシウムが排出されること及び収縮蛋白のカルシウム感受性が低下することなどが考えられている12)。

18.2 GTNの人為低血圧効果

ニホンザルを使用し、麻酔下におけるGTNによる人為低血圧効果について検討した。 GTNは生理食塩水で希釈して120μg/mL溶液とし、点滴速度は平均動脈圧を50mmHgに維持するよう適宜調節した。 GTN注入後、動脈圧は速やかに低下し、拡張期圧より収縮期圧の低下の方が大であった。GTN投与中止後の動脈圧の回復は速やかで、投与中止後1時間で投与前値の90%まで戻った13)。

18.3 GTNの抗高血圧効果

高血圧自然発症ラット(SHR)及び正常血圧ラットを用いて麻酔下におけるGTNの抗高血圧効果について検討した。 GTN(0.3~100μg/kg)の静注はSHRの血圧を用量依存的に低下させた。 正常血圧ラットにおいても同様に降圧効果を示したが3μg/kg以上の用量における血圧の低下率はSHRの方が大きかった。 この結果はGTNが麻酔時の異常血圧上昇に対して有効であることを示すものである14)。

18.4 GTNの血管系に対する作用

GTNの人為低血圧及び抗高血圧効果はその血管拡張作用に基づくと思われる。この血管拡張作用をより明白にするため、単回静注による各臓器血流量の増大並びに摘出血管における血管拡張効果を検討した。 GTN(3~30μg/kg)の麻酔犬への静注により脳血流量、冠血流量、大腿動脈血流量の増加がみられ、静脈血管拡張作用による静脈還流量の低下がみられた。また、摘出ウサギ大動脈標本及び摘出イヌ冠動脈標本において、GTNはノルアドレナリン及びKClによる収縮を抑制した14)。

18.5 急性心不全犬における血行動態学的効果

ビーグル犬(9.0~12.0kg)をペントバルビタール麻酔下に僧帽弁腱索切断によって心不全状態とし、これに対するGTNの効果を検討した結果、次の様に各指標を変化させ心機能の改善がみられた15)。 1)左房圧の低下、2)全末梢血管抵抗の減少、3)心係数の増大、4)太い冠血管(左前下行枝)血流量の増大、5)肺動脈圧の低下

18.6 急性心不全犬に対するドパミンとの併用効果

ビーグル犬(9.0~12.0kg)をペントバルビタール麻酔下に冠動脈結紮し、ドパミン(3~5μg/kg/分)を持続静注して血圧を冠結紮前値に維持しながら、GTN(1及び3μg/kg/分)を併用した結果1μg/kg/分で左房圧、全末梢血管抵抗の改善に加え、心係数もドパミンによる改善傾向を維持した。また、心筋組織血流量は正常部及び虚血部ともに維持された15)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

ヒト(術中患者)にニトログリセリン(以下GTN)を静脈内投与(4μg/kg)したとき、未変化体であるGTNの血漿中濃度曲線は2相性を示し、急速に減少した。この際の半減期は、α相が約0.4分及びβ相が約5分であった3)。

  1. 16.1.2持続投与

ヒト(術中患者)にGTNを100分間静脈内持続注入し、持続注入時及び持続注入終了後のGTN及びグリセリルジニトレート(GDN)を測定した。持続注入終了後のGTNは半減期4.6分で速やかに減少した。また、GDNは、1,2-GDN、1,3-GDNともに半減期約35分で緩やかに減少した3)。 注:GDNはGTNの生体内における脱ニトロ化代謝物