Clinical snapshot

フルデカシン筋注25mg

フルフェナジンデカン酸エステル注射液

添付文書改訂 2025年12月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある。]

  2. 2.2バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制剤の作用を延長し増強させる。]

  3. 2.3重症の心不全患者[症状を悪化させるおそれがある。]

  4. 2.4パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者[錐体外路症状が悪化するおそれがある。]

  5. 2.5アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)

  6. 2.6フェノチアジン系化合物及びその類似化合物に対し過敏症の既往歴のある患者

  7. 2.7妊婦又は妊娠している可能性のある女性

  8. 2.8クロザピンを投与中、あるいは投与を検討されている患者

効能・効果

統合失調症

用法・用量

通常成人には、フルフェナジンデカン酸エステルとして1回12.5mg~75mgを4週間隔で筋肉内注射する。 薬量及び注射間隔は病状又は本剤による随伴症状の程度に応じて適宜増減並びに間隔を調節する。 なお、初回用量は、可能な限り少量より始め、50mgを超えないものとする。

使用上の注意

  1. 8.1本剤による副作用の種類はフルフェナジン製剤のそれと同様のものであるが、本剤は持効性製剤であり、直ちに薬物を体外に排除する方法がないため、副作用の予防、副作用発現時の処置、過量投与等について十分留意する必要がある。

  2. 8.2眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。

  3. 8.3制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1皮質下部の脳障害(脳炎、脳腫瘍、頭部外傷後遺症等)の疑いがある患者

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。高熱反応があらわれるおそれがあるので、このような場合には全身を氷で冷やすか、又は解熱剤を投与するなど適切な処置を行うこと。

  1. 9.1.2血液障害のある患者

血液障害を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.3褐色細胞腫又はパラガングリオーマ、動脈硬化症あるいは心疾患の疑いのある患者

血圧の急速な変動が見られることがある。

  1. 9.1.4重症喘息、肺気腫、呼吸器感染症等の患者

呼吸抑制があらわれることがある。

  1. 9.1.5てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者

痙攣閾値を低下させることがある。

  1. 9.1.6高温環境にある患者

体温調節中枢を抑制するため、環境温度に影響されるおそれがある。

  1. 9.1.7脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者

Syndrome malin(悪性症候群)が起こりやすい。

  1. 9.1.8不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の患者

肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されている。

9.3 肝機能障害患者

肝機能障害を悪化させるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。本剤は動物実験で催奇形性は認められていないが、ラットにおいて死産児の増加が認められている。類似化合物(フルフェナジンエナント酸エステル)で動物における催奇形性が報告されている。また、妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。

9.6 授乳婦

投与中及び投与後一定期間は授乳しないことが望ましい。ラットで乳汁移行するとの報告がある。

9.7 小児等

幼児、小児では錐体外路症状、特にジスキネジアが起こりやすい。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。錐体外路症状、脱力感、運動失調、排泄障害が起こりやすい。

相互作用

  • 本剤は、主として肝代謝酵素CYP2D6で代謝される。

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
アドレナリン
(アナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)
(ボスミン)
アドレナリンの作用を逆転させ、重篤な血圧低下を起こすことがある。 アドレナリンはアドレナリン作動性α,β-受容体の刺激剤であり、本剤のα-受容体遮断作用により、β-受容体刺激作用が優位となり、血圧低下作用が増強される。
クロザピン
(クロザリル)
クロザピンは、原則として単剤で使用し、他の抗精神病薬とは併用しないこととされている。本剤は筋肉内投与後緩徐に血中に移行し、直ちに薬物を体外に排除する方法がないため、クロザピンと併用しないこと。 本剤が血中から消失するまでに時間を要する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
中枢神経抑制剤
(バルビツール酸誘導体・麻酔剤等)
睡眠(催眠)・精神機能抑制の増強、麻酔効果の増強・延長、血圧低下等を起こすことがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 相互に中枢神経抑制作用を増強させることがある。
降圧剤 起立性低血圧等を起こすことがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 相互に降圧作用を増強させることがある。
アトロピン様作用を有する薬剤 口渇、眼圧上昇、排尿障害、頻脈、腸管麻痺等を起こすことがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 相互にアトロピン様作用を増強させることがある。
アルコール
(飲酒)
眠気、精神運動機能低下等を起こすことがある。 相互に中枢神経抑制作用を増強させることがある。
ドンペリドン
メトクロプラミド
内分泌機能調節異常又は錐体外路症状が発現するおそれがある。 ともに中枢ドパミン受容体遮断作用を有する。
リチウム 心電図変化、重症の錐体外路症状、持続性のジスキネジア、突発性のSyndrome malin(悪性症候群)、非可逆性の脳障害を起こすおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。 機序は不明であるが、併用による抗ドパミン作用の増強等が考えられている。
ドパミン作動薬
(レボドパ製剤、ブロモクリプチンメシル酸塩)
相互に作用を減弱させるおそれがある。 ドパミン作動性神経において、作用が拮抗することによる。
有機燐殺虫剤 縮瞳、徐脈等の症状があらわれることがあるので、接触しないように注意すること。 本剤は有機燐殺虫剤の抗コリンエステラーゼ作用を増強し毒性を強めることがある。
アドレナリン含有歯科麻酔剤
(リドカイン・アドレナリン)
重篤な血圧低下を起こすことがある。 アドレナリンはアドレナリン作動性α,β-受容体の刺激剤であり、本剤のα-受容体遮断作用により、β-受容体刺激作用が優位となり、血圧低下作用が増強されるおそれがある。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
A/G比の上昇 頻度不明
ALP 頻度不明
ALT 頻度不明
AST 頻度不明
BUN上昇 頻度不明
CK上昇 頻度不明
LDH 頻度不明
γ-GTP上昇 頻度不明
アカシジア(静坐不能)(13.9%) 5%以上
アルブミン減少 頻度不明
ジスキネジア(口周部 1〜5%未満
ジストニア(眼球上転 1〜5%未満
パーキンソン症候群(振戦 5%以上
ビリルビン上昇 頻度不明
リンパ球減少 頻度不明
不安 1〜5%未満
不眠 5%以上
体幹側屈 1〜5%未満
体重増加 1〜5%未満
体重減少 1〜5%未満
便秘 5%以上
倦怠感 5%以上
光線過敏症 1〜5%未満
単球減少 頻度不明
口渇 5%以上
嘔吐 1〜5%未満
四肢等の不随意運動等) 1〜5%未満
射精不能 1〜5%未満
後弓反張 1〜5%未満
心悸亢進 1〜5%未満
心電図異常 頻度不明
悪心 頻度不明
抑うつ 1〜5%未満
昏迷 1〜5%未満
易刺激 1〜5%未満
月経異常 1〜5%未満
構音障害 1〜5%未満
流涎等)(18.5%) 5%以上
焦燥感 1〜5%未満
痙性斜頸 1〜5%未満
痙攣 1〜5%未満
発汗 1〜5%未満
発熱 頻度不明
発疹 1〜5%未満
眠気 1〜5%未満
眩暈 1〜5%未満
眼瞼痙攣 1〜5%未満
筋強剛 5%以上
総タンパクの減少 頻度不明
脈拍上昇 頻度不明
脱力感 1〜5%未満
脱毛 1〜5%未満
腹部膨満 1〜5%未満
興奮 1〜5%未満
舌のもつれ等) 1〜5%未満
舌突出 1〜5%未満
血圧低下 1〜5%未満
血小板減少 頻度不明
血小板減少性紫斑病 頻度不明
視覚障害 1〜5%未満
貧血 頻度不明
集中力障害 1〜5%未満
頭痛 1〜5%未満
頸後屈 1〜5%未満
頻脈 1〜5%未満
顆粒球減少 頻度不明
食欲亢進 1〜5%未満
鼻閉 1〜5%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

フルフェナジンデカン酸エステルは筋肉内投与後緩徐に血中へ移行し、移行後は速やかに加水分解されてフルフェナジンとなり、薬理作用を発現する2)。 フルフェナジンの作用機序は、まだ完全に明らかにされていないが、中枢神経系におけるドパミン作動性、ノルアドレナリン作動性神経等に対する抑制作用によると考えられている7)。

18.2 中枢ドパミン受容体遮断作用

マウス及びラットでは、筋肉内投与により、弁別回避反応に対する持続的抑制作用8),9)、メタンフェタミン誘発運動興奮に対する抑制作用10)及びアポモルフィン誘発常同行動に対する持続的抑制作用11)が認められた。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

統合失調症患者(6例)にフルフェナジンデカン酸エステル(FD)25mgを1回筋肉内投与後の血漿中フルフェナジン濃度は、1日目以降0.12~0.64ng/mLで推移し、投与後28日目には0.15~0.21ng/mLを示した1)。

FD25mg投与後の血漿中フルフェナジン濃度(GC/MS法)

  1. 16.1.2反復投与

統合失調症患者(4例)にFD25mgを4週間隔で筋肉内投与した試験では、血漿中フルフェナジン濃度は個体差はあるものの5回投与でほぼプラトーに達した。12回にわたる長期投与例においてもプラトーに達した後は血漿中濃度の上昇傾向は認められなかった1)。

FD長期投与例における血中フルフェナジン濃度(GC/MS法)

16.2 吸収

FDは筋肉内投与後緩徐に血中に移行する(外国人のデータ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1血液-脳関門通過性

雄ラットに14C-FDを筋肉内投与後、7日目の放射能濃度は、下垂体に血漿中濃度の13倍、線条体に11倍、以下大脳皮質、視床、海馬、橋・延髄、中脳視床下部、小脳の順に5.6~7.1倍の濃度が認められた2)。

  1. 16.3.2その他の組織への移行性

雄ラットに14C-FDを筋肉内投与後、7日目に放射能濃度は内側腸骨リンパ節で最高値を示し、次いでハーダー腺、肝臓、肺、腎臓、精巣上体、膵臓及び甲状腺で高値であった。投与後28日ではハーダー腺及び肝臓で高値を示し、次いで腎臓、内側腸骨リンパ節、甲状腺、肺及び脾臓で高値であった。投与後84日目には甲状腺と脾臓が7日目の37及び32%に、他の組織は15%以下に低下した。

16.4 代謝

  1. 16.4.1代謝部位及び代謝経路

FDは筋肉内投与後、エステラーゼによりフルフェナジンに変換される。その後は肝臓で代謝され、主代謝物として、7-ヒドロキシフルフェナジン及びフルフェナジンスルホキシドが同定された3)。7-ヒドロキシフルフェナジン及びフルフェナジンスルホキシドはフルフェナジン同様ドパミン受容体を遮断する作用を有する4)(外国人のデータ)。

  1. 16.4.2代謝酵素

CYP2D6

16.5 排泄

統合失調症患者(3例)にFD25mgを単回筋肉内投与後の累積尿糞中回収率(30日間)は10~23%であった3),5)(外国人のデータ)。