18.1 作用機序
バンコマイシンの作用は細菌の細胞壁合成阻害によるものであり、その抗菌作用は殺菌的である。更に細菌の細胞膜の透過性に変化を与える。18),19)
18.2 抗菌作用
-
18.2.1バンコマイシンは試験管内でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)に対して抗菌力を有す。また、MRSAを用いた試験管内継代培養試験において、バンコマイシンに対する耐性化は低い。20),21),22)
-
18.2.2バンコマイシンはペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)に対して抗菌力を有し、その作用は殺菌的である。23)
-
18.2.3バンコマイシンは試験管内でグラム陰性菌には抗菌力を示さない。21)
16.1 血中濃度
健康成人に単回点滴静注した時の血漿中濃度を図1に、薬物動態パラメータを表1に示す。5)
図1 血漿中濃度(健康成人、60分点滴)
| 記号 |
投与量 〔g(力価)〕 |
n |
Cmax (μg/mL) |
AUC0-∞ (μg・hr/mL) |
T1/2 (hr) |
| ● |
0.5 |
6 |
23.0 |
85 |
4.29 |
| ○ |
1.0 |
49.5 |
166 |
5.23 |
|
(測定法:bioassay)(mean)
16.3 分布
- 16.3.1組織移行
骨髄血、骨組織、関節液、腹水に移行が認められた。また、髄液(髄膜炎時)にも移行が認められた。6),7),8)
- 16.3.2蛋白結合率
健康成人に1.0g(力価)点滴静注時の血清を用い、遠心限外ろ過法にて測定された血清蛋白結合率は34.3%であった。5)
16.5 排泄
主に糸球体ろ過により腎臓より未変化体として排泄された。健康成人における0.5g(力価)、1.0g(力価)(各6例)60分点滴静注時の累積尿中排泄率は、点滴終了後24時間までに投与量の約85%、72時間までに90%以上であった。総クリアランスは約100mL/minであった。5),9)
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1腎機能障害患者
点滴静注時の血清中濃度を図2に、薬物動態パラメータを表2に示す。腎機能の低下に伴って、半減期の延長、AUCの増大が認められた。10)
図2 血清中濃度(腎機能障害患者、60分点滴)
| 記号 |
患者群 |
Ccr (mL/min) |
n |
Cmax (μg/mL) |
AUC0-∞ (μg・hr/mL) |
T1/2α (hr) |
T1/2β (hr) |
| ○ |
健康 成人 |
70≦Ccr |
4 |
34.53 |
90.4 |
0.32 |
3.08 |
| ● |
腎障害 A群 |
50≦Ccr<70 |
4 |
22.60 |
95.4 |
0.43 |
7.41 |
| △ |
腎障害 B群 |
30≦Ccr<50 |
5 |
22.85 |
163.2 |
0.70 |
10.73 |
| ▲ |
腎障害 C群 |
15≦Ccr<30 |
4 |
24.99 |
374.8 |
0.49 |
20.22 |
| □ |
腎障害 D群 |
Ccr<15 |
6 |
35.13 |
682.8 |
0.38 |
35.49 |
投与量:0.5g(力価)、60分点滴
〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕(mean)
- 16.6.2小児患者
点滴静注時の薬物動態パラメータを表3に示す。11)
| 記号 |
No. |
年齢 |
Cmax (μg/mL) |
AUC0-∞ (μg・hr/mL) |
T1/2α (hr) |
T1/2β (hr) |
CL (mL/min/kg) |
Vc (L/kg) |
○ ● △ ▲ |
1 2 3 4 |
1歳 1歳10ヵ月 2歳1ヵ月 2歳9ヵ月 |
29.0 27.0 20.7 19.8 |
78 75 59 67 |
0.29 0.31 0.51 0.65 |
2.52 3.21 2.08 5.70 |
2.13 2.23 2.81 2.49 |
0.21 0.22 0.44 0.43 |
| □ |
5 |
11歳 |
49.1 |
113 |
0.29 |
4.17 |
1.47 |
0.16 |
|
mean |
- |
29.1 |
78 |
0.41 |
3.54 |
2.23 |
0.29 |
投与量:10mg(力価)/kg×3~4回/日反復投与、60分点滴
〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕
- 16.6.3低出生体重児患者
点滴静注時の薬物動態パラメータを表4に示す。低出生体重児、特に体重1000g以下の超低出生体重児では消失半減期の延長が認められた。12)
| No. |
修正在胎 (週) |
日齢 (日) |
体重 (g) |
SCr (mg/dL) |
投与量注1) (mg/kg/日) |
Cmax注2) (μg/mL) |
T1/2 (hr) |
CL (mL/kg/min) |
Vc (L/kg) |
1 2 3 4 5 |
25 26 30 28 30 |
19 10 31 20 40 |
442 472 708 735 790 |
0.6 1.9 0.7 1.0 0.6 |
15×1 15×1 25×1 15×1 25×1 |
22.8 35.1 39.3 28.3 58.8 |
11.01 29.42 19.70 20.78 8.22 |
0.867 0.281 0.549 0.819 0.657 |
0.769 0.627 0.908 0.297 0.257 |
6 7 |
29 32 |
19 17 |
1064 1188 |
0.8 0.7 |
25×1 25×1 |
44.7 50.8 |
8.51 9.06 |
0.915 1.028 |
0.477 0.417 |
8 9 10 |
33 38 43 |
11 19 10 |
1512 1844 2060 |
0.7 0.4 0.5 |
17.5×2 17.5×2 20×2 |
46.5 25.2 62.2 |
8.19 10.32 7.99 |
0.753 0.982 0.745 |
0.359 0.875 0.212 |
注1)投与量;15~25mg(力価)/kg×5回反復投与、60分点滴
承認外用法・用量である。〔本剤の承認された用法・用量は、1回10~15mg(力価)/kgを生後1週までの新生児には12時間ごと、生後1ヵ月までの新生児には8時間ごとに60分以上かけて点滴静注する。〕
注2)2回投与時の成績
〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕
- 16.6.4高齢患者
点滴静注時の症例の内訳を表5に、薬物動態パラメータを表6に示す。13)
| No. |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
| 年齢(歳) |
84 |
87 |
73 |
78 |
74 |
74 |
| Ccr(mL/min) |
19.3 |
21.0 |
34.4 |
51.3 |
62.6 |
62.7 |
| 患者群 |
n |
年齢 (歳) |
体重 (kg) |
Ccr (mL/min) |
Cmax (μg/mL) |
AUC0-∞ (μg・hr/mL) |
T1/2 (hr) |
高齢 患者 |
6 |
78.3 |
34.8 |
41.9 |
22.6 |
186 |
12.99 |
健康 成人 |
6 |
22.0 |
62.7 |
115.0 |
- |
110 |
2.98 |
投与量注3):10mg(力価)/kg、60分点滴
注3)承認外用法・用量である。〔本剤の承認された用法・用量は、1回0.5g(力価)12時間ごと又は1回1g(力価)24時間ごとに60分以上かけて点滴静注する。〕
〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕(mean)
16.8 その他
- 16.8.1血中濃度モニタリング
有効性を確保し、かつ副作用の発現を避けるため、長期間投与中の患者、低出生体重児、新生児及び乳児、高齢者、腎機能障害又は難聴のある患者、腎障害、聴覚障害を起こす可能性のある薬剤(アミノグリコシド系抗生物質等)を併用中の患者等については、血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
国内外のガイドライン等では、AUCを指標とする投与設計を行うことが推奨されている。14)
点滴終了1~2時間後の血中濃度が60~80μg/mL以上、最低血中濃度が30μg/mL以上が継続すると、聴覚障害、腎障害等の副作用が発現する可能性があると報告されている(外国人データ)。9),15)