Clinical snapshot

バンコマイシン塩酸塩点滴静注用0.5g「明治」

バンコマイシン塩酸塩

添付文書改訂 2026年04月01日

【警告】

本剤の耐性菌の発現を防ぐため、「5. 効能・効果に関連する注意」、「8. 重要な基本的注意」の項を熟読の上、適正使用に努めること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

  • 〈適応菌種〉

  • バンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

  • 〈適応症〉

敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、腹膜炎、化膿性髄膜炎

  • 〈適応菌種〉

  • バンコマイシンに感性のメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)

  • 〈適応症〉

敗血症、感染性心内膜炎、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、腹膜炎、化膿性髄膜炎

  • 〈適応菌種〉

  • バンコマイシンに感性のペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)

  • 〈適応症〉

敗血症、肺炎、化膿性髄膜炎

  • MRSA又はMRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症

用法・用量

通常、成人にはバンコマイシン塩酸塩として1日2g(力価)を1回0.5g(力価)6時間ごと又は1回1g(力価)12時間ごとに分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。 なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。 高齢者には、1回0.5g(力価)12時間ごと又は1回1g(力価)24時間ごとに、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。 なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。 小児、乳児には、1日40mg(力価)/kgを2~4回に分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。 新生児には、1回投与量を10~15mg(力価)/kgとし、生後1週までの新生児に対しては12時間ごと、生後1ヵ月までの新生児に対しては8時間ごとに、それぞれ60分以上かけて点滴静注する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、次のことに注意すること。

  2. 8.1.1感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うこと。

  3. 8.1.2投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状等を考慮し、適切な時期に、本剤の継続投与が必要か否か判定し、疾病の治療上必要な最低限の期間の投与にとどめること。

  4. 8.2本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。

  5. 8.2.1事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。

  6. 8.2.2投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。

  7. 8.2.3投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。

  8. 8.3投与期間中は血中濃度をモニタリングすることが望ましい。

  9. 8.4重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。

  10. 8.5第8脳神経障害があらわれることがあるので、聴力検査等観察を十分に行うこと。

  11. 8.6肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1テイコプラニン、ペプチド系抗生物質又はアミノグリコシド系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者(ただし、バンコマイシンに対し過敏症のある患者には投与しないこと)

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。

  1. 9.1.2ペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、テイコプラニンによる難聴又はその他の難聴のある患者

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。難聴が発現又は増悪するおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

腎機能障害の程度に応じた投与量・投与間隔の調節が必要となる。血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与すること。排泄が遅延し、蓄積する。

9.3 肝機能障害患者

肝障害が悪化することがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。ヒト母乳中に移行する。

9.7 小児等

血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与すること。腎の発達段階にあるため、特に低出生体重児、新生児においては血中濃度の半減期が延長し高い血中濃度が長時間持続するおそれがある。

9.8 高齢者

投与前及び投与中に腎機能検査を行い、腎機能低下の程度により投与量・投与間隔を調節し、血中濃度をモニタリングするなど慎重に投与すること。高齢者では腎機能が低下している場合が多い。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
• 全身麻酔薬• チオペンタール等 同時に投与すると、紅斑、ヒスタミン様潮紅、アナフィラキシー反応等の副作用が発現することがある。
全身麻酔の開始1時間前には本剤の点滴静注を終了すること。
全身麻酔薬には、アナフィラキシー作用、ヒスタミン遊離作用を有するものがあり、本剤にもヒスタミン遊離作用がある。しかし、相互作用の機序は不明である。
• 腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤• アミノグリコシド系抗生物質• アルベカシン硫酸塩
• トブラマイシン等
• 白金含有抗悪性腫瘍剤• シスプラチン
• ネダプラチン等
腎障害、聴覚障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。やむを得ず併用する場合は、慎重に投与すること。 機序:両剤共に腎毒性、聴器毒性を有するが、相互作用の機序は不明である。
危険因子:腎障害のある患者、高齢者、長期投与の患者等
• 腎毒性を有する薬剤• アムホテリシンB
• シクロスポリン等
腎障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。やむを得ず併用する場合は、慎重に投与すること。 機序:両剤共に腎毒性を有するが、相互作用の機序は不明である。
危険因子:腎障害のある患者、高齢者、長期投与の患者等

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P上昇 頻度不明
ALT上昇 頻度不明
AST上昇 頻度不明
BUN上昇 頻度不明
LAP上昇 頻度不明
LDH上昇 頻度不明
γ-GTP上昇 頻度不明
クレアチニン上昇 頻度不明
そう痒 頻度不明
ビリルビン上昇 頻度不明
下痢 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嘔気 頻度不明
好酸球増多 頻度不明
悪寒 頻度不明
注射部疼痛 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹 頻度不明
発赤 頻度不明
白血球減少 頻度不明
皮膚血管炎 頻度不明
線状IgA水疱症 頻度不明
腹痛 頻度不明
蕁麻疹 頻度不明
血小板減少 頻度不明
血管痛 頻度不明
貧血 頻度不明
静脈炎 頻度不明
顔面潮紅 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

バンコマイシンの作用は細菌の細胞壁合成阻害によるものであり、その抗菌作用は殺菌的である17)。更に細菌の細胞膜の透過性に変化を与える。

18.2 抗菌作用

  1. 18.2.1バンコマイシンは試験管内でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)に対して抗菌力を有す18),19)。また、MRSAを用いた試験管内継代培養試験において、バンコマイシンに対する耐性化は低い20)。

  2. 18.2.2バンコマイシンはペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)に対して抗菌力を有し、その作用は殺菌的である。

  3. 18.2.3バンコマイシンは試験管内でグラム陰性菌には抗菌力を示さない19)。

薬物動態

16.1 血中濃度

健康成人に単回点滴静注した時の血漿中濃度を図1に、薬物動態パラメータを表1に示す5)。

図1 血漿中濃度(健康成人、60分点滴)

記号 投与量
〔g(力価)〕
n Cmax
(μg/mL)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
T1/2
(hr)
0.5 6 23.0 85 4.29
1.0 49.5 166 5.23

(測定法:bioassay)(mean)

16.3 分布

  1. 16.3.1組織移行

骨髄血6)、骨組織6)、関節液6)、腹水7)に移行が認められた。また、髄液(髄膜炎時)8)にも移行が認められた。

  1. 16.3.2蛋白結合率

健康成人に1.0g(力価)点滴静注時の血清を用い、遠心限外ろ過法にて測定された血清蛋白結合率は34.3%であった5)。

16.4 代謝

本剤の代謝物は尿中では確認されていない。

16.5 排泄

主に糸球体ろ過により腎臓より未変化体として排泄された。健康成人における0.5g(力価)、1.0g(力価)(n=6)60分点滴静注時の累積尿中排泄率は、点滴終了後24時間までに投与量の約85%、72時間までに90%以上であった。総クリアランスは約100mL/minであった5)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

点滴静注時の血清中濃度を図2に、薬物動態パラメータを表2に示す。腎機能の低下に伴って、半減期の延長、AUCの増大が認められた9)。

図2 血清中濃度(腎機能障害患者、60分点滴)

記号 患者群 Ccr
(mL/min)
n Cmax
(μg/mL)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
T1/2α
(hr)
T1/2β
(hr)
健康
成人
70≦Ccr 4 34.53 90.4 0.32 3.08
腎障害
A群
50≦Ccr<70 4 22.60 95.4 0.43 7.41
腎障害
B群
30≦Ccr<50 5 22.85 163.2 0.70 10.73
腎障害
C群
15≦Ccr<30 4 24.99 374.8 0.49 20.22
腎障害
D群
Ccr<15 6 35.13 682.8 0.38 35.49

投与量:0.5g(力価)、60分点滴

〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕(mean)

  1. 16.6.2小児患者

点滴静注時の血漿中濃度を図3に、薬物動態パラメータを表3に示す10)。

図3 血漿中濃度(小児患者、60分点滴)

記号 No. 年齢 Cmax
(μg/mL)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
T1/2α
(hr)
T1/2β
(hr)
CL
(mL/min/kg)
Vc
(L/kg)



1
2
3
4
1歳
1歳10ヵ月
2歳1ヵ月
2歳9ヵ月
29.0
27.0
20.7
19.8
78
75
59
67
0.29
0.31
0.51
0.65
2.52
3.21
2.08
5.70
2.13
2.23
2.81
2.49
0.21
0.22
0.44
0.43
5 11歳 49.1 113 0.29 4.17 1.47 0.16
mean 29.1 78 0.41 3.54 2.23 0.29

投与量:10mg(力価)/kg×3~4回/日反復投与、60分点滴

〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕

  1. 16.6.3低出生体重児患者

点滴静注時の薬物動態パラメータを表4に示す。低出生体重児、特に体重1000g以下の超低出生体重児では消失半減期の延長が認められた11)。

No. 修正在胎
(週)
日齢
(日)
体重
(g)
SCr
(mg/dL)
投与量注1)
(mg/kg/日)
Cmax注2)
(μg/mL)
T1/2
(hr)
CL
(mL/kg/min)
Vc
(L/kg)
1
2
3
4
5
25
26
30
28
30
19
10
31
20
40
442
472
708
735
790
0.6
1.9
0.7
1.0
0.6
15×1
15×1
25×1
15×1
25×1
22.8
35.1
39.3
28.3
58.8
11.01
29.42
19.70
20.78
8.22
0.867
0.281
0.549
0.819
0.657
0.769
0.627
0.908
0.297
0.257
6
7
29
32
19
17
1064
1188
0.8
0.7
25×1
25×1
44.7
50.8
8.51
9.06
0.915
1.028
0.477
0.417
8
9
10
33
38
43
11
19
10
1512
1844
2060
0.7
0.4
0.5
17.5×2
17.5×2
20×2
46.5
25.2
62.2
8.19
10.32
7.99
0.753
0.982
0.745
0.359
0.875
0.212

注1)投与量;15~25mg(力価)/kg×5回反復投与、60分点滴 承認外用法・用量である。〔本剤の承認された用法・用量は、1回10~15mg(力価)/kgを生後1週までの新生児には12時間ごと、生後1ヵ月までの新生児には8時間ごとに60分以上かけて点滴静注する。〕

注2)2回投与時の成績

〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕

  1. 16.6.4高齢患者

点滴静注時の症例の内訳を表5に、血清中濃度を図4に、薬物動態パラメータを表6に示す12)。

No. 1 2 3 4 5 6
年齢(歳) 84 87 73 78 74 74
Ccr(mL/min) 19.3 21.0 34.4 51.3 62.6 62.7

図4 血清中濃度(高齢患者、60分点滴)

患者群 n 年齢
(歳)
体重
(kg)
Ccr
(mL/min)
Cmax
(μg/mL)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
T1/2
(hr)
高齢
患者
6 78.3 34.8 41.9 22.6 186 12.99
健康
成人
6 22.0 62.7 115.0 38.0 110 2.98

投与量注3):10mg(力価)/kg、60分点滴

注3)承認外用法・用量である。〔本剤の承認された用法・用量は、1回0.5g(力価)12時間ごと又は1回1g(力価)24時間ごとに60分以上かけて点滴静注する。〕

〔測定法:FPIA(蛍光偏光免疫測定法)〕(mean)

16.8 その他

  1. 16.8.1*血中濃度モニタリング

有効性を確保し、かつ副作用の発現を避けるため、長期間投与中の患者、低出生体重児、新生児及び乳児、高齢者、腎機能障害又は難聴のある患者、腎障害、聴覚障害を起こす可能性のある薬剤(アミノグリコシド系抗生物質等)を併用中の患者等については、血中濃度をモニタリングすることが望ましい。 国内外のガイドライン等では、AUCを指標とする投与設計を行うことが推奨されている13)。 点滴終了1~2時間後の血中濃度が60~80μg/mL以上、最低血中濃度が30μg/mL以上が継続すると、聴覚障害、腎障害等の副作用が発現する可能性があると報告されている14)(外国人データ)。