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バルプロ酸ナトリウム徐放錠A200mg「トーワ」

バルプロ酸ナトリウム

添付文書改訂 2026年04月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  • 〈効能共通〉
  1. 2.1重篤な肝障害のある患者

  2. 2.2カルバペネム系抗生物質を投与中の患者

  3. 2.3尿素サイクル異常症の患者[重篤な高アンモニア血症があらわれることがある。]

  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 2.4妊婦又は妊娠している可能性のある女性

効能・効果

  • 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療

  • 躁病および躁うつ病の躁状態の治療

  • 片頭痛発作の発症抑制

用法・用量

  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉

通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1200mgを1日1~2回に分けて経口投与する。 ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。

  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉

通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日1~2回に分けて経口投与する。 なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。

使用上の注意

  • 〈効能共通〉
  1. 8.1重篤な肝障害(投与初期6ヵ月以内に多い)があらわれることがあるので、投与初期6ヵ月間は定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。その後も連用中は定期的に肝機能検査を行うことが望ましい。

  2. 8.2高アンモニア血症を伴う意識障害があらわれることがあるので、定期的にアンモニア値を測定するなど観察を十分に行うこと。

  3. 8.3連用中は定期的に腎機能検査、血液検査を行うことが望ましい。

  4. 8.4他のバルプロ酸ナトリウム製剤を使用中の患者において使用薬剤を本剤に切り替える場合、血中濃度が変動することがあるので、血中濃度を測定することが望ましい。

  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療〉
  1. 8.5*眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある。自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項3)を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。

  2. 8.6連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん重積状態があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。

  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 8.7患者の日常生活への支障がなくなったら一旦本剤の投与を中止し、投与継続の必要性について検討すること。症状の改善が認められない場合には、漫然と投与を継続しないこと。
  • 〈躁病および躁うつ病の躁状態の治療、片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 8.8*眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.1.1薬物過敏症の既往歴のある患者

  2. 9.1.2自殺企図の既往及び自殺念慮のある躁病及び躁うつ病の躁状態の患者

自殺企図や自殺念慮が悪化するおそれがある。

  1. 9.1.3尿素サイクル異常症が疑われる患者

以下のような患者においては、本剤投与前にアミノ酸分析等の検査を考慮するとともに、本剤投与中は、アンモニア値の変動に注意し、十分な観察を行うこと。重篤な高アンモニア血症があらわれるおそれがある。

  • 原因不明の脳症若しくは原因不明の昏睡の既往のある患者

  • 尿素サイクル異常症又は原因不明の乳児死亡の家族歴のある患者

  1. 9.1.4重篤な下痢のある患者

本剤は製剤学的にバルプロ酸ナトリウムの溶出を制御して徐放化させたものであり、服用後一定時間消化管内に滞留する必要があるので、血中濃度が十分に上昇しない可能性がある。

  1. 9.1.5腸管狭窄のある患者又は便秘のある患者

錠剤の通過が妨げられ、腸閉塞や潰瘍形成をきたすことがある。

  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療〉
  1. 9.1.6虚弱者
  • 投与を中止する場合には、徐々に減量するなど特に注意すること。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1腎機能障害患者

蛋白結合率の低下等の要因により、遊離型薬物濃度が上昇するおそれがある。

  1. 9.2.2血液透析患者

血液透析による本剤の除去や蛋白結合能の変化により遊離型薬物濃度が低下するおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1重篤な肝障害のある患者

投与しないこと。肝障害が強くあらわれ致死的になるおそれがある。

  1. 9.3.2肝機能障害又はその既往歴のある患者(重篤な肝障害のある患者を除く)

肝機能障害が強くあらわれるおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

妊娠する可能性のある女性に使用する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明し、本剤の使用が適切であるか慎重に判断すること。本剤で催奇形性が認められている。

9.5 妊婦

  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 9.5.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。
  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉
  1. 9.5.2妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。

  2. 9.5.3妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合、可能な限り単独投与することが望ましい。他の抗てんかん剤(特にカルバマゼピン)と併用時に、奇形を有する児を出産した例が本剤単独投与時と比較して多いとの疫学的調査報告がある。

  • 〈効能共通〉
  1. 9.5.4二分脊椎児を出産した母親の中に、本剤の成分を妊娠初期に投与された例が対照群より多いとの疫学的調査報告があり、また、本剤の成分を投与された母親に、心室中隔欠損等の心奇形や多指症、口蓋裂、尿道下裂等の外表奇形、その他の奇形を有する児を出産したとの報告がある。また、特有の顔貌(前頭部突出、両眼離開、鼻根偏平、浅く長い人中溝、薄い口唇等)を有する児を出産したとの報告がある。

  2. 9.5.5妊娠中の投与により、新生児に呼吸障害、肝障害、低フィブリノーゲン血症、低血糖、退薬症候(神経過敏、過緊張、痙攣、嘔吐)等があらわれるとの報告がある。

  3. 9.5.6海外で実施された観察研究において、妊娠中に抗てんかん薬を投与されたてんかん患者からの出生児224例を対象に6歳時の知能指数(IQ)[平均値(95%信頼区間)]を比較した結果、本剤を投与されたてんかん患者からの出生児のIQ[98(95-102)]は、ラモトリギン[108(105-111)]、フェニトイン[109(105-113)]、カルバマゼピン[106(103-109)]を投与されたてんかん患者からの出生児のIQと比較して低かったとの報告がある。なお、本剤の投与量が1,000mg/日(本研究における中央値)未満の場合は[104(99-109)]、1,000mg/日を超える場合は[94(90-99)]であった4)。

  4. 9.5.7海外で実施された観察研究において、妊娠中に本剤を投与された母親からの出生児508例は、本剤を投与されていない母親からの出生児655,107例と比較して、自閉症発症リスクが高かったとの報告がある[調整ハザード比:2.9(95%信頼区間:1.7-4.9)]5)。

  5. 9.5.8動物実験(マウス)で、本剤が葉酸代謝を阻害し、新生児の先天性奇形に関与する可能性があるとの報告がある6)。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中へ移行することがある。

9.7 小児等

  • 〈効能共通〉
  1. 9.7.1低出生体重児又は新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 9.7.2小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.8.1用量に留意して慎重に投与すること。本剤は、血漿アルブミンとの結合性が強いが、高齢者では血漿アルブミンが減少していることが多いため、遊離の薬物の血中濃度が高くなるおそれがある。
  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療〉
  1. 9.8.2投与を中止する場合には、徐々に減量するなど特に注意すること。
  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. 9.8.3高齢者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

相互作用

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
カルバペネム系抗生物質
• パニペネム・ベタミプロン
(カルベニン)
メロペネム水和物
(メロペン)
イミペネム水和物・シラスタチン
(チエナム)
• レレバクタム水和物・イミペネム水和物・シラスタチン
(レカルブリオ)
ビアペネム
(オメガシン)
ドリペネム水和物
(フィニバックス)
テビペネム ピボキシル
(オラペネム)
てんかんの発作が再発することがある。 バルプロ酸の血中濃度が低下する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
バルビツール酸剤
• フェノバルビタール等
バルプロ酸の作用が減弱、左記薬剤の作用が増強することがある。 左記薬剤がバルプロ酸の代謝を誘導し、バルプロ酸の血中濃度が低下する。また、左記薬剤の血中濃度を上昇させる7)。
フェニトイン
カルバマゼピン
バルプロ酸の作用が減弱、左記薬剤の作用が増強又は減弱することがある。 左記薬剤がバルプロ酸の代謝を誘導し、バルプロ酸の血中濃度が低下する。また、左記薬剤の血中濃度を上昇又は低下させる7)。
フェニトイン
ホスフェニトイン
フェノバルビタール
バルプロ酸による高アンモニア血症の発現リスクが高まるおそれがある。 機序は不明である。
エトスクシミド
アミトリプチリン
ノルトリプチリン
左記薬剤の作用が増強することがある。 左記薬剤の血中濃度を上昇させる。
クロバザム バルプロ酸の作用が増強されることがある。 機序は不明であるが、バルプロ酸の血中濃度が上昇する。
ラモトリギン 左記薬剤の消失半減期が約2倍延長するとの報告がある。 肝におけるグルクロン酸抱合が競合する。
ロラゼパム 左記薬剤の消失半減期が延長することがある。 肝におけるグルクロン酸抱合が競合する。
グルクロン酸抱合を誘導する薬剤
• リトナビル
• ニルマトレルビル・リトナビル
• ロピナビル・リトナビル配合剤等
バルプロ酸の作用が減弱することがある。 肝における本剤のグルクロン酸抱合が促進される。
ベンゾジアゼピン系薬剤
ジアゼパム等
ワルファリン
左記薬剤の作用が増強することがある。 遊離型の左記薬剤の血中濃度を上昇させる。
クロザピン 左記薬剤の副作用(心筋炎および好中球減少症)が増強する可能性がある。 機序は不明である。
サリチル酸系薬剤
アスピリン等
バルプロ酸の作用が増強されることがある。 遊離型バルプロ酸濃度が上昇する。また、バルプロ酸の代謝が阻害される。
エリスロマイシン
シメチジン
バルプロ酸の作用が増強されることがある。 左記薬剤が肝チトクロームP-450による薬物代謝を抑制し、バルプロ酸の血中濃度が上昇する。
クロナゼパム アブサンス重積(欠神発作重積)があらわれたとの報告がある。 機序は不明である。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P上昇 1〜5%未満
ALT上昇 1〜5%未満
AST上昇 1〜5%未満
カルニチン減少 頻度不明
めまい 1〜5%未満
下痢 1%未満
不眠 1%未満
不穏 1%未満
低フィブリノーゲン血症 1%未満
体重増加 1〜5%未満
便秘 頻度不明
倦怠感 1〜5%未満
傾眠 1〜5%未満
口内炎 頻度不明
口渇 1%未満
多嚢胞性卵巣 頻度不明
夜尿・頻尿 1%未満
失調 1〜5%未満
好酸球増多 1〜5%未満
尿失禁 頻度不明
悪心・嘔吐 1〜5%未満
感覚変化 1%未満
抑うつ 頻度不明
振戦 1%未満
月経異常(月経不順 頻度不明
歯肉肥厚 頻度不明
浮腫 1%未満
無月経) 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹 1〜5%未満
白血球減少 1〜5%未満
精子数減少注2) 頻度不明
精子運動性低下注2) 頻度不明
胃部不快感 1%未満
胸水(好酸球性を含む) 頻度不明
胸膜炎 頻度不明
脱毛 1%未満
腹痛 1%未満
血小板凝集能低下 頻度不明
血尿 1%未満
視覚異常 頻度不明
貧血 1〜5%未満
頭痛 1〜5%未満
食欲不振 1〜5%未満
食欲亢進 1%未満
高アンモニア血症 1〜5%未満
鼻血 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

本剤の投与により脳内GABA濃度、ドパミン濃度の上昇とともに、セロトニン代謝が促進されることが認められている。これらの事実から、本剤の抗てんかん作用は神経伝達物質の作用を介した脳内の抑制系の賦活作用に基づくと推定されている。34) 抗躁作用及び片頭痛発作の発症抑制作用についてもGABA神経伝達促進作用が寄与している可能性が考えられている。35),36)

18.2 薬理作用

  1. 18.2.1各種誘発痙攣に対する作用

最大電撃痙攣(マウス、ラット、ウサギ)、ストリキニーネ痙攣(マウス)、ピクロトキシン痙攣(マウス)、聴原発作(ラット)、無酸素痙攣(マウス)、ペンテトラゾール痙攣(マウス、ウサギ)、ベメグライド痙攣(マウス)を抑制する。37),38),39)

  1. 18.2.2全般てんかんモデルに対する作用

全般てんかんモデルの光誘発痙攣(ヒヒ)、聴原発作(マウス)を抑制する。40),41),42)

  1. 18.2.3部分てんかんモデルに対する作用

部分てんかんモデルのKindling痙攣(ネコ)を抑制する。43)

  1. 18.2.4海馬後放電及び扁桃核の発作性放電に及ぼす影響

海馬後放電及び扁桃核の発作性放電を抑制する(ウサギ)。37)

  1. 18.2.5中脳網様体刺激による筋肉微細振動の増強効果に及ぼす影響

中脳網様体刺激による筋肉微細振動の増強効果を鋭敏に抑制する(ウサギ)。37)

  1. 18.2.6躁病の動物モデルに対する作用

躁病の動物モデルと考えられる、デキサンフェタミンとクロロジアゼポキシドとの併用投与により生じる自発運動亢進作用を有意に抑制する(マウス、ラット)。44)

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

健康成人8例にバルプロ酸ナトリウム徐放錠A600mg(徐放錠200mgを1回3錠)及びバルプロ酸ナトリウム錠600mg(普通錠200mgを1回3錠)をそれぞれ単回経口投与したときの血清中バルプロ酸濃度の推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。 普通錠と比較してバルプロ酸ナトリウム徐放錠Aでは制御された溶出に由来する血中濃度の安定した持続性(服薬後6、12及び24時間のそれぞれの濃度は食後投与群:28.0、28.8及び16.3μg/mL、空腹時投与群:22.9、27.4及び16.8μg/mL)が認められた。10),11)

健康成人に単回経口投与したときの血清中濃度推移

tmax
(h)
Cmax
(μg/mL)
AUC0-∞
(μg・h/mL)
t1/2
(h)
CL注)
(L/h)
Vd
(L)
空腹時投与 10.26±1.51 27.9±5.3 863±271 12.92±3.34 0.79 14.00±2.03
食後投与 8.95±1.08 31.4±5.3 843±262 12.18±4.03 0.83 12.84±1.35

注)Vd、Kelより算出                    mean±S.D., n=8

  1. 16.1.2反復投与

健康成人各6例にバルプロ酸ナトリウム徐放錠A1回600mg(200mgを1回3錠)1日2回、計15回の反復投与及び1,200mg(200mgを1回6錠)1日1回、計8回の反復投与を行い、バルプロ酸の血漿中動態を検討した。 その結果、1回600mg 1日2回の反復投与では6~7日で血漿中濃度が定常状態に達し、最終回投与後のCmax及びCminはそれぞれ103.8及び85.4μg/mLであった。また、1,200mg 1日1回反復投与後の血漿中濃度の推移は以下のとおりであり、7日間で定常状態に達し、最終回投与後のCmax及びCminはそれぞれ103.9及び61.8μg/mLであった。12)

  1. 16.1.3バルプロ酸ナトリウム錠とバルプロ酸ナトリウム徐放錠Aの比較

健康成人にバルプロ酸ナトリウム錠又はバルプロ酸ナトリウム徐放錠A(各600mg)を経口投与したとき、AUCに有意差は認められなかったが、徐放効果を示す吸収速度定数、tmax及びCmaxでは両製剤間に有意差が認められた。10)

  1. 16.1.4クリアランス

バルプロ酸の吸収率を100%と仮定したとき、全身クリアランスは外国人健康成人(16~60歳)で6~8mL/h/kg、外国人小児てんかん患者(3~16歳)で13~18mL/h/kgとの報告がある。13) 外国人高齢者では、全身クリアランスは成人と差はないが、遊離型のクリアランスは低下するとの報告がある。14) バルプロ酸の全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿蛋白非結合率の影響を受ける。13),15)

  1. 16.1.5生物学的同等性試験
  • 〈バルプロ酸ナトリウム徐放錠A200mg「トーワ」〉

バルプロ酸ナトリウム徐放錠A200mg「トーワ」とデパケンR錠200mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(バルプロ酸ナトリウムとして200mg)健康成人男子に絶食及び食後単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。16)

  1. (1)絶食投与血漿中濃度推移
判定パラメータ 参考パラメータ
AUC0-48
(μg・h/mL)
Cmax
(μg/mL)
tmax
(h)
t1/2
(h)
MRT※0-48
(h)
バルプロ酸ナトリウム
徐放錠A200mg「トーワ」
329.0±66.2 12.77±2.18 11.7±1.4 15.90±3.42 20.49±1.58
デパケンR錠200mg 324.5±96.9 11.87±2.72 10.3±2.7 16.50±3.35 19.97±1.68

mean±S.D.,n=12

※MRT:平均血中滞留時間

血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。

  1. (2)食後投与血漿中濃度推移
判定パラメータ 参考パラメータ
AUC0-48
(μg・h/mL)
Cmax
(μg/mL)
tmax
(h)
t1/2
(h)
MRT※0-48
(h)
バルプロ酸ナトリウム
徐放錠A200mg「トーワ」
346.3±127.1 16.05±4.98 8.4±2.8 17.17±5.22 19.44±1.81
デパケンR錠200mg 351.4±116.3 13.89±4.28 9.8±2.0 17.77±5.30 20.20±1.46

mean±S.D.,n=24

※MRT:平均血中滞留時間

血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。

16.2 吸収

  1. 16.2.1バイオアベイラビリティ

バルプロ酸のバイオアベイラビリティは剤形の違いによらず約100%との報告がある。17)

  1. 16.2.2食事の影響

健康成人8例にバルプロ酸ナトリウム徐放錠A600mg(200mgを1回3錠)を空腹時及び食後に単回経口投与したとき、空腹時投与と食後投与では薬物動態パラメータに有意差はなく、食事の影響を受けずに安定した吸収が得られた。10)

16.3 分布

  1. 16.3.1体組織への分布

ラットに14C-バルプロ酸ナトリウム(100mg/kg)を経口投与したとき、投与30分後の体組織への分布は胃>小腸>肝臓>大腸>腎臓>肺>脳>心臓>睾丸>骨の順であった。11),18)

  1. 16.3.2血液-脳関門通過性

手術前の外国人脳腫瘍患者9例にバルプロ酸ナトリウム(600~1,600mg/日)を投与したとき、脳内濃度は、血漿中濃度の6.8~27.9%であった。19)

  1. 16.3.3血液-胎盤関門通過性

妊娠中のてんかん患者4例にバルプロ酸ナトリウム(600~1,200mg/日)を経口投与したとき、臍帯血中濃度は、母体血漿中濃度の1.7倍であった。20)

  1. 16.3.4母乳中への移行性

授乳期の患者2例にバルプロ酸ナトリウム(1,000~1,400mg/日)を投与したとき、母乳中濃度は、血中濃度の3~6%であった。21)

  1. 16.3.5髄液への移行性

てんかん患者3例にバルプロ酸ナトリウム錠を経口投与したとき、髄液中濃度は、血清中濃度の12%であった。22)

  1. 16.3.6蛋白結合率

バルプロ酸の血漿蛋白結合率は90%超であり、総血清中濃度がおよそ100μg/mL以上では結合が飽和するとの報告がある。17),23) 蛋白結合率が低下した場合、定常状態では平均総血漿中濃度は低下すると考えられるが、平均遊離型濃度は低下しないとされている。11),15),24)

添加濃度
(μg/mL)
20 50 100 150 200
結合率(%) 91.39±0.72 91.36±0.20 88.63±0.72 85.52±0.74 80.03±0.37

mean±S.D.

  1. 16.3.7分布容積

バルプロ酸の分布容積は0.1~0.4L/kgであり、ほぼ細胞外液に相当するとの報告がある。17)

16.4 代謝

バルプロ酸の大半は肝臓で代謝され、ヒトでは主に、グルクロン酸抱合、β-酸化、ω、ω1及びω2-酸化を受けることが報告されている。17) 関与する代謝酵素の割合はチトクロームP-450(CYP)が10%、グルクロン酸転移酵素(UGT)が40%、β-酸化が30~35%程度であることが報告されている。7) 4-en体の生成には主にCYP2A6、2B6、2C9分子種が、バルプロ酸のグルクロン酸抱合体の生成にはUGT2B7分子種が関与することが報告されている(in vitro)。25),26)

16.5 排泄

健康成人6例を対象にバルプロ酸ナトリウム徐放錠A又はバルプロ酸ナトリウム錠を600mg単回経口投与したとき、尿中への総排泄量は両製剤投与群間で差はなく、投与後5日以内に投与量の約60%(バルプロ酸当量)であった。尿中へは主に3-keto体として排泄され、以下バルプロ酸のグルクロン酸抱合体、3-OH体、2-propyl-glutaric acid、4-OH体、5-OH体、4-keto体、cis-2-en体、trans-2-en体の順であり、未変化体、3-en体、4-en体はほとんど排泄されなかった。27) なお、バルプロ酸の未変化体の尿中排泄率は1~3%との報告がある。28)

16.8 その他

  1. 16.8.1有効血中濃度
  • 〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療〉
  1. (1)有効血中濃度は40~120μg/mLと報告されているが、各種の報告があり、その下限は50μg/mLを示唆する報告や上限は150μg/mLとする報告もある。11)
  • 〈躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉
  1. (2)有効血中濃度は40~120μg/mLと報告されているが、各種の報告があり、その下限は50μg/mLを示唆する報告や上限は150μg/mLとする報告もある。急性期治療を目的としているため、原則的に血中濃度モニタリングは必須ではないが、本剤の用量増減時に臨床状態の変化があった場合や、予期した治療効果が得られない場合等には、必要に応じ血中濃度モニタリングを行い、用量調整することが望ましい。11)
  • 〈片頭痛発作の発症抑制〉
  1. (3)有効血中濃度が明確になっていないため、原則的に血中濃度モニタリングは必須ではないが、本剤の用量増減時に臨床状態の悪化があった場合等には、必要に応じ血中濃度モニタリングを行い、用量調整することが望ましい。11)

  2. 16.8.2生物学的同等性試験

  • 〈バルプロ酸ナトリウム徐放錠A100mg「トーワ」〉

バルプロ酸ナトリウム徐放錠A100mg「トーワ」は、バルプロ酸ナトリウム徐放錠A200mg「トーワ」を標準製剤としたとき、溶出挙動が同等と判断され、生物学的に同等とみなされた。29)