-
〈製剤共通〉
-
下記におけるサイトメガロウイルス感染症
-
後天性免疫不全症候群
-
臓器移植(造血幹細胞移植も含む)
-
悪性腫瘍
-
臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制
-
〈ドライシロップ〉
-
症候性先天性サイトメガロウイルス感染症
【警告】
-
1.1本剤及び本剤の活性代謝物であるガンシクロビルの投与により、重篤な白血球減少、好中球減少、貧血、血小板減少、汎血球減少、再生不良性貧血及び骨髄抑制があらわれるので、頻回に血液学的検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。
-
1.2本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験において、一時的又は不可逆的な精子形成機能障害を起こすこと及び妊孕性低下が報告されていること、また、ヒトにおいて精子形成機能障害を起こすおそれがあることを患者に説明し慎重に投与すること。
-
1.3本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験において、催奇形性、遺伝毒性及び発がん性のあることが報告されているので、本剤も同様の作用があると考えられることを患者に説明し慎重に投与すること。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1好中球数500/mm3未満又は血小板数25,000/mm3未満等、著しい骨髄抑制が認められる患者[本剤の投与により重篤な好中球減少及び血小板減少が認められている。]
-
2.2バルガンシクロビル、ガンシクロビル又は本剤の成分、バルガンシクロビル、ガンシクロビルと化学構造が類似する化合物(アシクロビル、バラシクロビル等)に対する過敏症の既往歴のある患者
-
2.3*マリバビルを投与中の患者
-
2.4妊婦又は妊娠している可能性のある女性
効能・効果
用法・用量
-
〈サイトメガロウイルス感染症〉
-
初期治療
通常、成人にはバルガンシクロビルとして1回900mgを1日2回、食後に経口投与する。
- 維持治療
通常、成人にはバルガンシクロビルとして1回900mgを1日1回、食後に経口投与する。
- 〈臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制〉
通常、成人にはバルガンシクロビルとして1回900mgを1日1回、食後に経口投与する。 通常、小児にはバルガンシクロビルとして次式により算出した投与量を1日1回、食後に経口投与する。ただし、1日用量として900mgを超えないこと。推定糸球体ろ過量が150より高値の場合は150を用いること。
投与量(mg) =7×体表面積(m2)×推定糸球体ろ過量(mL/min/1.73m2)
- 〈症候性先天性サイトメガロウイルス感染症〉
通常、新生児及び乳児にはバルガンシクロビルとして1回16mg/kgを1日2回、経口投与する。
使用上の注意
- 〈効能共通〉
-
8.1本剤の投与による重篤な副作用が報告されていること及び本剤がサイトメガロウイルス感染症を完治させる薬剤でないことを念頭におき、本剤の使用にあたっては患者の精神面も含めて治療の要否を慎重に考えること。また、重大な副作用が発現するおそれのあること及びその内容を患者によく説明し同意を得た後投与すること。
-
8.2本剤は、吸収後、速やかに活性代謝物のガンシクロビルに変換される。本剤を投与する場合には、ガンシクロビル点滴静注製剤よりもAUCが高くなることがあるので、ガンシクロビル点滴静注製剤から本剤に変更する場合は、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。
-
8.3本剤の投与中は、血球数、血小板数等の血液学的検査を行うこと。
-
8.4本剤の活性代謝物であるガンシクロビルの投与により腎不全が発現することが報告されているので、血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスを慎重に観察すること。
-
8.5本剤及び本剤の活性代謝物であるガンシクロビルの投与により痙攣、鎮静、めまい、運動失調、錯乱が報告されているので、本剤投与中の患者には自動車の運転、危険を伴う機械の操作等に従事させないこと。
- 〈サイトメガロウイルス感染症〉
- 8.6サイトメガロウイルス網膜炎の投与期間については、国内外の学会のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。
- 〈症候性先天性サイトメガロウイルス感染症〉
- 8.7本剤を使用する際には、国内外の学会のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1薬剤等による白血球減少の既往歴のある患者
本剤の投与により重篤な好中球減少が認められている。
- 9.1.2血小板減少(25,000/mm3以上100,000/mm3未満)のある患者
本剤の投与により重篤な血小板減少が認められている。
- 9.1.3精神病、思考異常の既往歴のある患者、薬剤による精神病反応又は神経毒性を呈したことのある患者
精神神経系障害を悪化させるおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
ガンシクロビルの血中半減期の延長とクリアランスの低下の報告がある。
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害を悪化させるおそれがある。
9.4 生殖能を有する者
-
9.4.1妊娠する可能性のある女性が使用する場合、投与期間中は有効な避妊を行うよう指導すること。
-
9.4.2パートナーが妊娠する可能性のある男性が使用する場合、投与期間中及び投与後90日間は有効な避妊を行うよう指導すること。本剤の活性代謝物であるガンシクロビルで、マウスを用いた小核試験等において遺伝毒性が認められている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験(ウサギ、静脈内投与)で、妊孕性の低下、催奇形性(外形異常等)及び遺伝毒性があることが報告されている。
9.6 授乳婦
投与期間中は授乳しないことが望ましい。本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験(ラット)において、乳汁への移行が認められている。また、ガンシクロビルは動物実験(マウス)において発がん性が認められている。
9.7 小児等
- 〈効能共通〉
- 9.7.1長期投与による発がん性及び生殖毒性の可能性があることを慎重に考慮し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
- 〈症候性先天性サイトメガロウイルス感染症以外の効能〉
- 9.7.2低出生体重児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
- 〈サイトメガロウイルス感染症の発症抑制〉
- 9.7.3副作用の発現状況等を考慮し、必要に応じて投与量を調節すること2)。
- 〈症候性先天性サイトメガロウイルス感染症〉
- 9.7.4腎機能障害を有する患者には、本剤投与の適否を十分に検討の上、本剤を使用する場合には、頻回に血液学的検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。本剤は、主として腎臓から排泄されるため、これらの患者では、腎機能が正常な患者に比べて血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。
9.8 高齢者
腎機能障害例への投与を参考にし、用量を調節するなど、慎重に投与すること。本剤は、主として腎臓から排泄されるが、腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。
相互作用
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| *マリバビル(リブテンシティ) | *併用により、本剤の抗ウイルス作用が阻害されるおそれがある。 | *マリバビルは、本剤の活性化又はリン酸化に必要なウイルス由来のUL97を阻害する。 |
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| ジドブジン | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、ジドブジンのAUCが17%増加したとの報告がある。また、併用により有意ではないがガンシクロビルの血漿中濃度の低下傾向がみられたとの報告がある。ガンシクロビル及びジドブジンはいずれも好中球減少、貧血の原因となる可能性があるので、併用する場合は本剤又はジドブジンを減量すること。 | 相加的に本剤及び併用薬剤の双方の作用を増強させる。 |
| ジダノシン | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、ジダノシンの血漿中濃度が上昇したとの報告がある(ガンシクロビル3g/日、6g/日の経口投与で、ジダノシンのAUCが84%、124%増加、5mg/kg/日、10mg/kg/日の静脈内投与でAUCが38%、67%増加)。併用により、本剤の活性代謝物のガンシクロビルの血漿中濃度が臨床的に有意に増加したとの報告はないが、併用する場合はジダノシンの毒性を注意深く観察すること。 | 生物学的利用率の増加もしくは代謝の遅延が考えられる。 |
| イミペネム・シラスタチンナトリウム | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、痙攣が報告されている。 | 機序は不明である。 |
| 骨髄抑制作用のある薬剤及び腎機能障害作用のある薬剤 • ジアフェニルスルホン • ビンクリスチン硫酸塩 • ビンブラスチン硫酸塩 • ドキソルビシン塩酸塩 • ヒドロキシカルバミド • フルシトシン • アムホテリシンB • ペンタミジンイセチオン酸塩 • 核酸誘導体等 |
本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、毒性が増強するおそれがある。 | 相加的に本剤及び併用薬剤の双方の作用を増強させることが考えられる。 |
| スルファメトキサゾール・トリメトプリム | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとトリメトプリムの併用により、ガンシクロビルの腎クリアランスが16%低下し、血漿中消失半減期が15%延長したとの報告がある。しかし、ガンシクロビルのAUC及びCmaxに影響はなく臨床的に有意な変化とは考えられなかった。また、トリメトプリムのCminが12%上昇したとの報告がある。 | 機序は不明である。 |
| シクロスポリン | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、シクロスポリンの薬物動態に影響を与えたとの報告はないが、血清クレアチニン濃度が上昇するとの報告がある。 | 機序は不明である。 |
| プロベネシド | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、ガンシクロビルの腎クリアランスが20%低下し、その結果、曝露量が40%上昇したとの報告がある。 | 腎尿細管での分泌が競合する。 |
| ミコフェノール酸 モフェチル | 本剤の活性代謝物のガンシクロビルとの併用により、ガンシクロビル及びミコフェノール酸 モフェチルの代謝物であるグルクロン酸抱合体の血漿中濃度が上昇するおそれがあるが、ミコフェノール酸 モフェチルの活性代謝物の薬物動態に実質的な変化はないと考えられる。腎機能障害患者に、ミコフェノール酸 モフェチルと本剤(腎機能障害患者への推奨量)を併用する場合は、患者の症状に注意し慎重に投与すること。 | 腎尿細管での分泌が競合する。 |
| 免疫抑制剤 • プレドニゾロン • タクロリムス |
本剤との併用により、重篤な血小板減少が報告されている。 | 相加的に本剤及び併用薬剤の双方の作用を増強させることが考えられる。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| AST上昇・ALT上昇・ALP上昇・LDH上昇等の肝機能障害 | 頻度不明 |
| CK上昇 | 頻度不明 |
| アフタ性口内炎 | 頻度不明 |
| インポテンス | 頻度不明 |
| うつ病 | 頻度不明 |
| おくび | 頻度不明 |
| ざ瘡 | 頻度不明 |
| せん妄 | 頻度不明 |
| そう痒 | 頻度不明 |
| ニューモシスティスカリニ肺炎 | 頻度不明 |
| ミオクロヌス | 頻度不明 |
| リンパ節症(lymphadenopathy) | 頻度不明 |
| 上気道感染 | 頻度不明 |
| 上腹部痛 | 頻度不明 |
| 下痢 | 頻度不明 |
| 下肢浮腫 | 頻度不明 |
| 不安 | 頻度不明 |
| 不整脈 | 頻度不明 |
| 不眠症 | 頻度不明 |
| 両下肢痙直 | 頻度不明 |
| 乳房痛 | 頻度不明 |
| 低カリウム血症 | 頻度不明 |
| 低カルシウム血症 | 頻度不明 |
| 低ナトリウム血症 | 頻度不明 |
| 低色素性貧血 | 頻度不明 |
| 低蛋白血症 | 頻度不明 |
| 低血圧 | 頻度不明 |
| 低血糖 | 頻度不明 |
| 体重減少 | 頻度不明 |
| 便失禁 | 頻度不明 |
| 便秘 | 頻度不明 |
| 倦怠感 | 頻度不明 |
| 健忘症 | 頻度不明 |
| 傾眠 | 頻度不明 |
| 光線過敏性反応 | 頻度不明 |
| 剥脱性皮膚炎 | 頻度不明 |
| 副鼻腔うっ血 | 頻度不明 |
| 副鼻腔炎 | 頻度不明 |
| 口渇 | 頻度不明 |
| 口腔カンジダ症 | 頻度不明 |
| 味覚倒錯 | 頻度不明 |
| 呼吸困難 | 頻度不明 |
| 咳嗽 | 頻度不明 |
| 嘔吐 | 頻度不明 |
| 嚥下障害 | 頻度不明 |
| 多幸症 | 頻度不明 |
| 失明 | 頻度不明 |
| 好酸球増多 | 頻度不明 |
| 寝汗 | 頻度不明 |
| 尿路感染 | 頻度不明 |
| 弱視 | 頻度不明 |
| 思考異常 | 頻度不明 |
| 性欲減退 | 頻度不明 |
| 悪寒 | 頻度不明 |
| 悪心 | 頻度不明 |
| 悪液質 | 頻度不明 |
| 情緒不安 | 頻度不明 |
| 振戦 | 頻度不明 |
| 斑状丘疹 | 頻度不明 |
| 歩行異常 | 頻度不明 |
| 気管支炎 | 頻度不明 |
| 浮腫 | 頻度不明 |
| 消化不良 | 頻度不明 |
| 湿性咳嗽 | 頻度不明 |
| 潰瘍性口内炎 | 頻度不明 |
| 無力症 | 頻度不明 |
| 片頭痛 | 頻度不明 |
| 異夢 | 頻度不明 |
| 異常感覚 | 頻度不明 |
| 疲労 | 頻度不明 |
| 疼痛 | 頻度不明 |
| 発汗 | 頻度不明 |
| 発熱 | 頻度不明 |
| 発疹 | 頻度不明 |
| 白血球増加症 | 頻度不明 |
| 皮膚乾燥 | 頻度不明 |
| 皮膚炎 | 頻度不明 |
| 眩暈 | 頻度不明 |
| 眼出血 | 頻度不明 |
| 眼痛 | 頻度不明 |
| 硝子体混濁 | 頻度不明 |
| 神経質 | 頻度不明 |
| 神経障害 | 頻度不明 |
| 筋無力症 | 頻度不明 |
| 筋肉痛 | 頻度不明 |
| 粘膜障害 | 頻度不明 |
| 精神病 | 頻度不明 |
| 糖尿病 | 頻度不明 |
| 結膜炎 | 頻度不明 |
| 網膜剥離 | 頻度不明 |
| 網膜炎 | 頻度不明 |
| 緊張亢進 | 頻度不明 |
| 緑内障 | 頻度不明 |
| 耳痛 | 頻度不明 |
| 耳鳴 | 頻度不明 |
| 肝炎 | 頻度不明 |
| 肺炎 | 頻度不明 |
| 胃炎 | 頻度不明 |
| 胃腸障害 | 頻度不明 |
| 胆管炎 | 頻度不明 |
| 背痛 | 頻度不明 |
| 胸水 | 頻度不明 |
| 胸痛 | 頻度不明 |
| 脱毛 | 頻度不明 |
| 脱水 | 頻度不明 |
| 脾腫 | 頻度不明 |
| 腹水 | 頻度不明 |
| 腹痛 | 頻度不明 |
| 腹部腫脹 | 頻度不明 |
| 腹部膨満 | 頻度不明 |
| 舌障害 | 頻度不明 |
| 蕁麻疹 | 頻度不明 |
| 蜂巣炎 | 頻度不明 |
| 血中マグネシウム減少 | 頻度不明 |
| 血尿 | 頻度不明 |
| 血管拡張 | 頻度不明 |
| 視覚障害 | 頻度不明 |
| 躁病反応 | 頻度不明 |
| 運動失調 | 頻度不明 |
| 運動過多 | 頻度不明 |
| 鎮静 | 頻度不明 |
| 関節痛 | 頻度不明 |
| 難聴 | 頻度不明 |
| 霧視 | 頻度不明 |
| 静脈炎 | 頻度不明 |
| 頭痛 | 頻度不明 |
| 頻尿 | 頻度不明 |
| 頻脈 | 頻度不明 |
| 食欲不振 | 頻度不明 |
| 食欲減退 | 頻度不明 |
| 食道炎 | 頻度不明 |
| 骨痛 | 頻度不明 |
| 高血圧 | 頻度不明 |
| 高血糖 | 頻度不明 |
| 黄疸 | 頻度不明 |
| 鼓腸放屁 | 頻度不明 |
| 鼻咽頭炎 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
バルガンシクロビルは、ガンシクロビルのL-バリンエステル(プロドラッグ)であり、経口投与されたのち、腸管及び肝臓のエステラーゼにより速やかにガンシクロビルに変換される。プロドラッグ化により経口吸収性が大幅に改善され、高いAUCが得られる。ガンシクロビルはサイトメガロウイルス感染細胞内においてウイルス由来のプロテインキナーゼ(UL97)にリン酸化されてガンシクロビル一リン酸になり、さらにウイルス感染細胞に存在するプロテインキナーゼにリン酸化されて活性型のガンシクロビル三リン酸になる。ガンシクロビル三リン酸はウイルスDNAポリメラーゼの基質であるデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)の取り込みを競合的に阻害し、ガンシクロビル三リン酸がDNAに取り込まれ、ウイルスDNAの延長を停止又は制限することによってDNA鎖の複製を阻害する10),11),12)。
18.2 抗ウイルス作用
-
18.2.1ヒトサイトメガロウイルスの標準株(AD169, Towne, Major, BT1943, Davis)に対するin vitroにおけるガンシクロビルのIC50値は、0.4~7.0μmol/Lであった。また、臨床分離株(後天性免疫不全症候群、ヒトサイトメガロウイルス単核症及び腎移植患者等からの分離株)に対するin vitroでのガンシクロビルのIC50値は、0.08~14μmol/Lであった13),15),16),17),18)。
-
18.2.2マウスにマウスサイトメガロウイルスを接種し、感染後6時間目より、1~50mg/kgを1日2回、5日間皮下投与した実験では、ガンシクロビル投与群の生存率は25mg/kg以上の用量で75%以上であったが、対照(生理食塩液)群では10%であった14)。
18.3 薬剤耐性
免疫機能の低下した患者に発症したサイトメガロウイルス感染症の治療のためにバルガンシクロビルを長期投与した場合、ガンシクロビルに対する耐性ウイルスが検出される場合がある。耐性ウイルスには、ガンシクロビルのモノリン酸化に関与するウイルスキナーゼ(UL97)遺伝子又はウイルスDNAポリメラーゼ(UL54)遺伝子の変異がみられる。UL97遺伝子が変異したウイルスは、ガンシクロビルに対してのみ耐性を示し、一方、UL54遺伝子が変異したウイルスは、類似の作用機序を持つ他の抗ウイルス剤にも交差耐性を示す。 サイトメガロウイルス網膜炎と診断されたAIDS患者にバルガンシクロビルが投与され、148例の患者から分離した多形核白血球について、サイトメガロウイルスの遺伝子型変異解析を実施した結果、3、6、12、18ヵ月後のUL97耐性変異体の発現率は、それぞれ2.2%、6.5%、12.8%及び15.3%であった。 固形臓器移植患者に移植後10日以内から100日までバルガンシクロビルが経口投与され、移植後100日目に採血できた198例の血液サンプルから分離した多形核白血球について、遺伝子型変異解析を実施した結果、UL97耐性変異体は検出されなかった。また、移植後12ヵ月までにサイトメガロウイルス感染症が疑われた患者55名についても、UL97耐性変異体は検出されなかった19),20),21),22),23),24)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1サイトメガロウイルス網膜炎を発症している後天性免疫不全症候群(エイズ)患者における成績
バルガンシクロビルを初期治療期間(1回900mg、1日2回)または維持治療期間(1回900mg、1日1回)に反復経口投与した時の血漿中バルガンシクロビル濃度は低く、速やかにガンシクロビルに代謝された。
(◆:バルガンシクロビル、●:ガンシクロビル)
| 薬物動態パラメータ | ||||
|---|---|---|---|---|
| 初期治療期間 | 維持治療期間 | |||
| 投与量 | 1回900mg 1日2回 | 1回900mg 1日1回 | ||
| 測定対象 | バルガンシクロビル | ガンシクロビル | バルガンシクロビル | ガンシクロビル |
| AUC0-6h (μg・h/mL) |
0.492※※ | 32.3※※ | 0.427±0.0981 | 19.9±6.41 |
| AUC0-24h (μg・h/mL) |
- | - | 0.494※※ | 31.2±18.5 |
| Cmax (μg/mL) |
0.261※※ | 8.06※※ | 0.281±0.0717 | 6.03±2.31 |
| 消失半減期 (h) |
- | 2.73※ | - | 2.95±0.438 |
-:算出せず
※:n=1、※※:平均値(n=2)、その他は平均値±標準偏差(n=6)で示す。
- 16.1.2臓器移植患者における成績
移植(造血幹細胞、肝、腎移植)後サイトメガロウイルス感染及び感染症患者に1日1回、バルガンシクロビルを反復経口投与した時の血漿中バルガンシクロビルはほとんど検出されず、速やかに活性代謝物であるガンシクロビルに代謝された。バルガンシクロビルを経口投与した時の血漿中ガンシクロビルのCmaxはガンシクロビルを静脈内投与した時のCmaxより小さかったが、AUC0-24hはガンシクロビル静脈内投与時の1.6倍であった。
移植後CMV感染及び感染症患者に1日1回、バルガンシクロビル(900mg)を反復経口投与又はガンシクロビル(5mg/kg)を反復静脈内投与した時の血漿中バルガンシクロビル及びガンシクロビル濃度推移(推定クレアチニンクリアランスによる補正のため投与量を450mg(バルガンシクロビル)と2.5mg/kg(ガンシクロビル)に調整した腎移植患者を含む)
| 薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差) | |||
|---|---|---|---|
| バルガンシクロビル 経口投与 |
ガンシクロビル 静脈内投与 |
||
| バルガンシクロビル | ガンシクロビル | ガンシクロビル | |
| 投与量 | 900(又は450)mg 1日1回 |
5(又は2.5)mg/kg 1日1回 |
|
| AUC0-24h (μg・h/mL) |
0.520±0.258 | 51.1±18.4 | 32.4±11.5 |
| Cmax (μg/mL) |
0.206±0.121 | 6.74±2.58 | 7.17±2.75 |
| 生物学的利用率 (%) |
- | 69±14 | - |
| 消失半減期 (h) |
- | 5.13±1.12 | 5.16±1.31 |
- 16.1.3HIV及びサイトメガロウイルス陽性患者及び健康成人における成績
バルガンシクロビル900mgを経口投与した時、血漿中バルガンシクロビル濃度は低く、そのAUC0-24h及びCmaxは血漿中ガンシクロビルの値のそれぞれ約1%及び約3%であった。バルガンシクロビル900mgを経口投与した時の血漿中ガンシクロビルのAUC0-24hはガンシクロビル5mg/kgを静脈内投与した時のAUC0-24hと同程度であったが、Cmaxはガンシクロビル5mg/kgを静脈内投与時の約60%であった(外国人のデータ)。
CMV網膜炎を発症しているHIV/CMV陽性患者にバルガンシクロビルを反復経口投与又はガンシクロビルを反復静脈内投与した時の血漿中濃度推移
| ガンシクロビルの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差) | ||
|---|---|---|
| バルガンシクロビル 経口投与 |
ガンシクロビル 静脈内投与 |
|
| 投与量 | 900mg 1日1回 食後 |
5mg/kg 1日1回 |
| AUC0-24h (μg・h/mL) |
29.1±9.7 | 26.5±5.9 |
| Cmax (μg/mL) |
5.61±1.52 | 9.46±2.02 |
| 生物学的利用率 (%) |
59.4±6.1 | - |
| 消失半減期 (h) |
4.08±0.76 | 3.81±0.71 |
| 腎クリアランス (mL/min/kg) |
3.21±0.75 | 2.99±0.67 |
健康成人、HIV陽性患者、CMV網膜炎を発症しているHIV/CMV陽性患者及びCMV網膜炎を発症していないHIV/CMV陽性患者に単回又は反復投与した時の薬物動態パラメータ(複数試験結果)
- 16.1.4腎移植患者を対象とした成績
バリキサドライシロップ5000mg又は同錠450mgをバルガンシクロビルとして900mg、1日1回2日間反復経口投与した時の薬物動態を評価した。その結果、錠剤に対するドライシロップのガンシクロビルのAUC0-t及びCmaxの最小二乗幾何平均の比[90%信頼区間]は、それぞれ1.00[0.96, 1.04]及び0.95[0.89, 1.01]であった3)(外国人のデータ)。
- 16.1.5症候性先天性サイトメガロウイルス感染症患者を対象とした成績
日本人患者(23例)に、バルガンシクロビル16mg/kgを1日2回反復経口投与した時の投与6週目(投与後90分)の血漿中ガンシクロビル濃度(平均値±標準偏差)は、4.59±1.31μg/mLであった4)。
16.2 吸収
- 16.2.1生物学的利用率
健康成人及びHIV及びサイトメガロウイルス陽性患者にバルガンシクロビル900mgを食後に経口投与した時の生物学的利用率は約60%であった(外国人のデータ)。
- 16.2.2用量比例性
HIV及びサイトメガロウイルス陽性患者にバルガンシクロビルを食後に経口投与した時の血漿中ガンシクロビルのAUCは450~2625mgの投与量範囲において用量比例性を示した5)(外国人のデータ)。
- 16.2.3食事の影響
バルガンシクロビルを1日1回3日間、食後に875mg経口投与した時の血漿中ガンシクロビルのAUC及びCmaxは、空腹時の投与と比較してそれぞれ約30%及び約14%増加した。最高血漿中濃度到達時間は変わらなかった5)(外国人のデータ)。
16.3 分布
ガンシクロビルを静脈内投与した時の定常状態時の分布容積は0.680±0.161L/kgであった。ガンシクロビルの血漿蛋白結合率は0.5~51μg/mLの濃度範囲において1~2%であった(外国人のデータ)。
16.4 代謝
血漿中には主にガンシクロビルとして存在し、バルガンシクロビルは僅かに検出されたものの速やかに消失した。血漿中にはガンシクロビル以外の代謝物は検出されなかった。14C-ガンシクロビルを単回経口投与した時の尿及び糞中代謝物量はいずれも排泄量の1~2%程度であった(外国人のデータ)。
16.5 排泄
HIV及びサイトメガロウイルス陽性患者及び健康成人にバルガンシクロビル900mgを単回経口投与した時、主な排泄経路は糸球体ろ過及び尿細管分泌による尿中排泄であった。静脈内投与されたガンシクロビルの全身クリアランス及び腎クリアランスはそれぞれ3.07±0.64mL/min/kg及び2.99±0.67mL/min/kgであり、腎クリアランスは全身クリアランスの大部分を占めていた(外国人のデータ)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1腎機能障害患者
腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス70mL/min以下)にバルガンシクロビル900mgを単回経口投与した時、腎機能の低下に伴ってガンシクロビルの血漿からの消失は遅延し、AUCは増加した。クレアチニンクリアランスとガンシクロビルの経口クリアランスとの間に相関が認められ、患者の腎機能に対応する本剤(錠剤)の減量の目安を算出した。血液透析により血漿中に存在するガンシクロビルの約50%が除去された。なお、クレアチニンクリアランスが10mL/min未満の血液透析を受けている患者には、ドライシロップの投与を行うこと6)(外国人のデータ)。
| クレアチニンクリアランス (mL/min) |
例数 | ガンシクロビルの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差) | ||
|---|---|---|---|---|
| 経口クリアランス (mL/min) |
AUC0-ta) (μg・h/mL) |
消失半減期 (h) |
||
| 51~70 | 6 | 249±99 | 49.5±22.4 | 4.85±1.4 |
| 21~50 | 6 | 136±64 | 91.9±43.9 | 10.2±4.4 |
| 11~20 | 6 | 45±11 | 223±46 | 21.8±5.2 |
| ≦10 | 6 | 12.8±8 | 366±66 | 67.5±34 |
a)最終測定可能時点までのAUC
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1吸収過程における薬物相互作用
バルガンシクロビルの吸収過程にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されている。ラット小腸にバルガンシクロビル10mMを含む緩衝液を灌流した時、バルガンシクロビルの小腸透過係数に対するバラシクロビル、シクロスポリン、オメプラゾール、ネルフィナビル及びミコフェノール酸 モフェチルの影響は認められなかった。 これら薬剤をヒトにおいてバルガンシクロビルと併用投与した時の相互作用は不明である。