18.1 作用機序
胃壁細胞の細胞膜上に存在する受容体へ各種酸分泌刺激物質が結合することにより、胃壁細胞内において一連の胃酸分泌反応がおきる。この反応の最終過程では、胃壁細胞内からH+を放出し、代わりにK+を取り込むプロトンポンプと呼ばれる酵素が働いている。エソメプラゾールは、このプロトンポンプの働きを阻害することによって、胃酸分泌を抑制する。
18.2 ヒトでの作用
- 18.2.1胃内pHに及ぼす影響
健康成人において、エソメプラゾール10mg、20mg及び40mg投与により24時間中に胃内pHが4以上を示す時間の割合は、それぞれ48±23%、62±14%及び68±8%であった19)。
小児患者5例において、エソメプラゾール10mg及び20mg投与により12時間中に胃内pHが4以上を示す時間の割合は、51.2%~98.3%であった2)。
18.3 非臨床試験における作用
- 18.3.1プロトンポンプ阻害作用
ウサギ胃粘膜由来のプロトンポンプ(H+, K+-ATPase)に対して阻害作用を示した20)。
- 18.3.2胃酸分泌抑制作用
単離ウサギ胃底腺における胃酸産生に対して抑制作用を示した21)。
胃瘻ラット及びHeidenhain Pouchイヌにおいて、刺激薬に惹起された胃酸分泌に対して抑制作用を示した22),23)。
本剤の有効成分であるエソメプラゾールは、ラセミ体であるオメプラゾールの一方の光学異性体(S体)である。
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
健康成人男性被験者(n=24、CYP2C19のhomo EM、hetero EM及びPM注)が同数)にエソメプラゾール10mg及び20mgを空腹時に単回経口投与したときの未変化体の薬物動態パラメータは以下のとおりである1)。
| 投与量 |
Cmax(ng/mL) |
Tmax(hr) |
AUC(ng・hr/mL) |
T1/2(hr) |
| 10mg |
245.2 (186.5-328.1) |
2.50 (1.00-5.00) |
552.6a) (369.6-822.1) |
1.05a) (0.85-1.31) |
| 20mg |
490.5 (369.6-645.9) |
2.75 (0.75-6.00) |
1115.6 (801.3-1557.8) |
1.08 (0.91-1.26) |
Tmaxは中央値(最小値-最大値)、それ以外は幾何平均(95%信頼区間)、
a) n=23
- 16.1.2反復投与
健康成人男性被験者(n=24、CYP2C19のhomo EM、hetero EM及びPM注)が同数)にエソメプラゾール10mg及び20mgを1日1回5日間反復経口投与したときの第5日目(空腹時投与)の未変化体の薬物動態パラメータは以下のとおりである1)。
| 投与量 |
Cmax(ng/mL) |
Tmax(hr) |
AUC(ng・hr/mL) |
T1/2(hr) |
| 10mg |
376.5 (283.2-497.4) |
1.75 (1.00-5.00) |
822.1a) (556.1-1219.3) |
1.16a) (0.94-1.43) |
| 20mg |
884.2 (670.1-1167.5) |
2.25 (1.00-4.00) |
2068.9 (1485.2-2880.6) |
1.25 (1.06-1.46) |
Tmaxは中央値(最小値-最大値)、それ以外は幾何平均(95%信頼区間)、
a) n=23
投与3日目及び5日目のCmaxは同程度であったことから、反復投与開始後3日には血漿中エソメプラゾール濃度は定常状態に到達したと考えられた。投与5日目の投与後12時間における血漿中エソメプラゾール濃度はほぼ検出限界以下に低下し、1日1回反復投与しても累積は認められなかった1)。
- 16.1.3幼児及び小児
幼児及び小児患者にエソメプラゾール10mg及び20mgを1日1回5日間以上反復経口投与したところ、未変化体の薬物動態パラメータは以下のとおりであった2)。
被験者の 年齢及び体重 |
投与量 |
n |
エソメプラゾールの薬物動態パラメータ |
|
|
|
Cmax (ng/mL)a) |
Tmax(hr)b) |
AUCτ (ng・hr/mL)a) |
T1/2 (hr)c) |
|
|
|
1歳以上 10kg以上 20kg未満 |
10mg |
9 |
854 (141.7%) |
1.58 (1.03-5.92) |
2261 (42.6%)d) |
0.80 ±0.18d) |
1~11歳 20kg以上 |
10mg |
10 |
537 (110.4%) |
1.52 (0.92-6.00) |
995 (78.3%)e) |
0.97 ±0.55e) |
| 20mg |
10 |
1908 (41.5%) |
1.47 (0.93-1.52) |
3459 (50.9%) |
1.08 ±0.44 |
|
12~14歳 20kg以上 |
10mg |
9 |
311 (91.7%) |
1.57 (0.93-2.95) |
619 (105.5%) |
1.37 ±0.88 |
| 20mg |
10 |
981 (51.3%) |
1.75 (0.95-3.00) |
1918 (33.6%) |
1.06 ±0.25 |
|
a) 幾何平均値(変動係数) b) 中央値(最小値-最大値)
c) 平均値±標準偏差 d) n=7 e) n=9
注)homo EM:CYP2C191/1
hetero EM:CYP2C191/2又はCYP2C191/3
PM:CYP2C192/2、CYP2C192/3又はCYP2C193/3
16.3 分布
- 16.3.1血漿蛋白結合
エソメプラゾール(添加濃度:2又は20µmol/L)のヒト血漿蛋白結合率(in vitro)は97%であった3)。
16.4 代謝
in vitro肝代謝試験の結果から、ヒドロキシ体、5-O-脱メチル体の生成にはCYP2C19、スルホン体の生成にはCYP3A4が関与し、これら3種の代謝物への代謝クリアランスは同程度であると報告されている4)。エソメプラゾールのin vitro肝代謝において、ヒドロキシ体及び5-O-脱メチル体の生成に関与するCYP2C19の寄与率(代謝固有クリアランス:CLint)は73%であった4)。外国人のデータでは、健康成人に14C標識エソメプラゾールを単回経口投与したとき、血漿中の主代謝物はスルホン体及びヒドロキシ体であった3)。
16.5 排泄
外国人のデータでは、14C標識エソメプラゾールを単回経口投与したとき、投与放射能の約95%が48時間までに尿中及び糞中に排泄され、尿中排泄量と糞便中排泄量の比は約4対1であった3)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1高齢者
外国人のデータでは、エソメプラゾールを健康高齢被験者に1日1回5日間反復経口投与したとき、投与5日目のAUC及びCmaxは非高齢の症候性胃食道逆流症患者よりも高い傾向を示し、幾何平均の比(健康高齢/非高齢患者)は各々1.25(95%信頼区間:0.94-1.67)、1.18(同:0.91-1.52)であった5)。
- 16.6.2肝機能障害患者
外国人のデータでは、エソメプラゾールを肝機能障害患者に1日1回5日間反復経口投与したとき、AUCτは、肝機能低下のない症候性胃食道逆流症患者に比べ、重度の肝機能障害患者では約2.3倍高く、軽度~中程度の肝機能障害患者でもその比は1.4~1.8であった6)。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1ジアゼパム、フェニトイン又はワルファリン
発現系CYP2C19及びヒト肝ミクロソームを用いるin vitro試験において本薬はCYP2C19の活性を阻害した(Ki値:7.9及び8.6µM)が、CYP2A6、CYP1A2、CYP2D6、CYP2E1、CYP2C9及びCYP3A4の活性については阻害しないかわずかな阻害作用を示した7),8)。
外国人のデータでは、ジアゼパム、フェニトイン又はワルファリン(R-ワルファリン)(以上、CYP2C19の基質)と本剤の併用により、ジアゼパム、フェニトインのAUCはそれぞれ81%、13%増大し、R-ワルファリンの血漿中トラフ濃度は13%上昇した9)。
- 16.7.2その他の薬剤
エソメプラゾールとクラリスロマイシン及びアモキシシリン水和物の併用により、クラリスロマイシン及びアモキシシリン水和物の血漿中濃度に影響しなかったが、クラリスロマイシンの14位水酸化代謝物のAUCτは増大した。また、エソメプラゾールのAUCτは非併用時の約2倍に増大した9)。キニジン9)、ナプロキセン10)、ロキソプロフェンナトリウム11)、アスピリン12)と本剤の併用では相互作用は認められなかった。