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ニカルジピン塩酸塩注射液10mg「サワイ」

ニカルジピン塩酸塩

添付文書改訂 2024年03月01日

【警告】

本剤を脳出血急性期の患者及び脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者に投与する場合には、緊急対応が可能な医療施設において、最新の関連ガイドラインを参照しつつ、血圧等の患者の状態を十分にモニタリングしながら投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  • 〈効能共通〉
  1. 2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 〈急性心不全〉
  1. 2.2高度な大動脈弁狭窄・僧帽弁狭窄、肥大型閉塞性心筋症、低血圧(収縮期血圧90mmHg未満)、心原性ショックのある患者[心拍出量及び血圧が更に低下する可能性がある。]

  2. 2.3発症直後で病態が安定していない重篤な急性心筋梗塞患者[広範囲、3枝病変による梗塞等の重篤な急性心筋梗塞患者では血行動態の急激な変化を生じることがあり、更に病態が悪化するおそれがある。]

効能・効果

  • 手術時の異常高血圧の救急処置

  • 高血圧性緊急症

  • 急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)

用法・用量

  • 〈手術時の異常高血圧の救急処置〉

本剤は、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニカルジピン塩酸塩として0.01~0.02%(1mL当たり0.1~0.2mg)溶液を点滴静注する。この場合1分間に、体重1kg当たり2~10μgの点滴速度で投与を開始し、目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。なお、急速に血圧を下げる必要がある場合には、本剤をそのまま体重1kg当たりニカルジピン塩酸塩として10~30μgを静脈内投与する。

  • 〈高血圧性緊急症〉

本剤は、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニカルジピン塩酸塩として0.01~0.02%(1mL当たり0.1~0.2mg)溶液を点滴静注する。この場合1分間に、体重1kg当たり0.5~6μgの点滴速度で投与する。なお、投与に際しては1分間に、体重1kg当たり0.5μgより開始し、目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。

  • 〈急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)〉

本剤は、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニカルジピン塩酸塩として0.01~0.02%(1mL当たり0.1~0.2mg)溶液を点滴静注する。この場合1分間に、体重1kg当たり1μgの点滴速度で投与する。なお、患者の病態に応じて1分間に、体重1kg当たり0.5~2μgの範囲で点滴速度を調節する。

使用上の注意

  • 〈効能共通〉
  1. 8.1本剤の作用には個人差があるので、血圧、心拍数等を十分に管理しながら慎重に投与すること。

  2. 8.2本剤の過剰投与により著明な低血圧を来した場合には投与を中止すること。また、速やかに血圧を回復させたい場合には昇圧剤(ノルアドレナリン)を投与すること。

  • 〈急性心不全〉
  1. 8.3血圧、心拍数、尿量、体液及び電解質、また可能な限り肺動脈楔入圧、心拍出量及び血液ガス等患者の全身状態を十分管理しながら投与すること。

  2. 8.4本剤の血管拡張作用による過度の血圧低下、動脈血酸素分圧の低下が発現することがあるので注意すること。特に本剤には血圧低下作用があることから、血圧がやや低く(収縮期血圧が100mmHg未満を目安)、循環血液量が相対的に減少しているような場合、厳重な血圧モニターを行い、更なる血圧低下が認められた場合には、投与を中止するなど必要な措置を講じること。

  3. 8.5本剤の投与により臨床症状が改善し、患者の状態が安定した場合(急性期の状態を脱した場合)には、漫然と投与することなく他の治療法に変更すること。投与期間は患者の反応性に応じて異なるが、急性心不全に対する24時間を超える使用経験が少ないので、これを超えて投与する必要が生じた場合には、血行動態及び全身状態等を十分に管理しながら慎重に投与すること。

  4. 8.6他の血管拡張薬との併用に際しては過度の血圧低下に注意すること。

  5. 8.7急性心筋梗塞による急性心不全に対して本剤を使用する場合は、血行動態及び全身状態等を十分に管理しながら慎重に投与すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.1.1脳出血急性期の患者

出血を促進させる可能性があるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

  1. 9.1.2脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者

頭蓋内圧を高めるおそれがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

  1. 9.1.3大動脈弁狭窄症の患者

症状を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.4遺伝性果糖不耐症の患者

本剤の添加剤D-ソルビトールが体内で代謝されて生成した果糖が正常に代謝されず、低血糖、肝不全、腎不全等が誘発されるおそれがある。

  • 〈急性心不全〉
  1. 9.1.5重篤な不整脈のある患者

一般にこのような患者では、不整脈を慎重に管理しながら治療する必要がある。

  1. 9.1.6血圧が低い患者

更なる血圧低下を来す可能性がある。

9.2 腎機能障害患者

一般に重篤な腎機能障害のある患者では、急激な降圧に伴い腎機能低下を来す可能性がある。

9.3 肝機能障害患者

本剤は肝臓で代謝される。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で、妊娠末期に投与すると高用量では胎児死亡の増加、分娩障害、出生児の体重減少及びその後の体重増加の抑制が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

低用量(例えば0.5μg/kg/分で点滴静注)から投与を開始し、経過を十分に観察しながら慎重に投与すること。生理機能(肝機能、腎機能等)が低下していることが多い。

相互作用

  • 本剤は、主としてCYP3A4で代謝される。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
他の血圧降下剤 血圧降下作用が増強されることがある。 両剤の薬理学的な相加作用等による。
• β-遮断剤• プロプラノロール 等 うっ血性心不全患者では、過度の血圧低下、心機能の低下があらわれることがある。必要に応じどちらかを減量又は投与を中止する。 両剤の薬理学的な相加作用による。
(1)血圧降下作用の増強
(2)陰性変力作用の増強1)
フェンタニール フェンタニール麻酔時、β-遮断剤と本剤の併用で血圧低下がみられることがある2)。必要に応じどちらかを減量又は投与を中止する。 機序不明
ジゴキシン ジゴキシンの作用を増強し3)、中毒症状(嘔気、嘔吐、めまい、徐脈、不整脈等)があらわれることがある。必要に応じジゴキシンを減量する。 本剤が、主に腎でのクリアランスを減少させ、ジゴキシンの血中濃度が上昇する。
ダントロレンナトリウム水和物 他のCa拮抗剤(ベラパミル等)の動物実験で心室細動、循環虚脱がみられたとの報告がある。 高カリウム血症を来すと考えられる。
タンドスピロンクエン酸塩 動物実験で血圧降下作用が増強されたとの報告がある。 タンドスピロンクエン酸塩は中枢性の血圧降下作用を有し、相加的な降圧作用を示す4)。
ニトログリセリン 動物実験で房室ブロックを起こしたとの報告がある。 機序不明
• 筋弛緩剤• パンクロニウム臭化物
• ベクロニウム臭化物 等
筋弛緩の作用が増強することがある。筋弛緩作用に注意し、異常が認められた場合には、両剤の減量若しくは投与を中止する。 本剤が神経筋接合部位において、シナプス前あるいは後にアセチルコリン放出を抑制させること、及び骨格筋の筋小胞体でのCa遊離抑制による筋自体の収縮力の低下等が考えられている5)。
• 免疫抑制剤• シクロスポリン
• タクロリムス水和物 等
免疫抑制剤の作用を増強し6)、中毒症状(特に腎機能異常)があらわれることがある。また、本剤の作用を増強し、血圧低下、頻脈等があらわれることがある。必要に応じ免疫抑制剤及び本剤を減量する。 本剤あるいは免疫抑制剤によりCYP3A4が阻害され、免疫抑制剤あるいは本剤の血中濃度が上昇する。
フェニトイン (1)フェニトインの作用を増強し、中毒症状(神経的)があらわれることがある。必要に応じフェニトインを減量する。
(2)本剤の作用が減弱されることがある。必要に応じ本剤を増量する。
(1)本剤の蛋白結合率が高いため、血漿蛋白結合競合により、遊離型フェニトインが上昇する。
(2)CYP3A4が誘導され、本剤の代謝が促進される7),8)。
リファンピシン 本剤の作用が減弱されることがある。必要に応じ本剤を増量する。 CYP3A4が誘導され、本剤の代謝が促進される。
シメチジン 本剤の作用が増強され、血圧低下、頻脈等があらわれることがある。必要に応じ本剤を減量する9)。 これらの薬剤によりCYP3A4が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する。
• HIVプロテアーゼ阻害剤• サキナビル
• リトナビル 等
本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 これらの薬剤によりCYP3A4が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する。
• アゾール系抗真菌薬• イトラコナゾール 等 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 これらの薬剤によりCYP3A4が阻害され、本剤の血中濃度が上昇する。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
BUN上昇 1〜5%未満
クレアチニン上昇 1〜5%未満
チアノーゼ(急性心不全時) 1〜5%未満
むかつき 1%未満
体温の上昇 1%未満
全身倦怠感 1%未満
動悸 1%未満
嘔吐 1%未満
嘔気 1%未満
尿量減少 1%未満
心係数の低下(急性心不全時) 1〜5%未満
心室性期外収縮 1%未満
心室頻拍(急性心不全時) 1〜5%未満
心電図変化 1〜5%未満
悪寒 1%未満
房室ブロック 頻度不明
皮疹 頻度不明
肝機能異常(AST・ALT等の上昇) 1〜5%未満
肺動脈圧の上昇(急性心不全時) 1〜5%未満
背部痛 1%未満
血中総コレステロールの低下 1%未満
血圧低下 1〜5%未満
血清カリウムの上昇 1%未満
静脈炎 頻度不明
頭痛 1%未満
頻脈 1〜5%未満
顔面潮紅 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ニカルジピン塩酸塩は、血管平滑筋細胞中へのCa2+の取り込みを抑制することにより、血管拡張作用を発揮する24)。ニカルジピン塩酸塩は、血管平滑筋において心筋の30,000倍強いCa拮抗作用を示し、血管選択性は他のCa拮抗薬(ニフェジピン、べラパミル、ジルチアゼム)より高かった25)。

18.2 血圧降下作用

  1. 18.2.1血圧降下作用

麻酔イヌにおいて、用量依存的な血圧降下作用を示し、その用量作用曲線の傾きは穏やかであった。このことより、血圧管理において過度の血圧低下を起こしにくく、調節性に優れることが示唆される26)。 無麻酔イヌにおいても、刺激伝導系を抑制することなく用量依存的な血圧降下作用を示した27)。

  1. 18.2.2異常高血圧抑制作用

麻酔イヌにおいて、麻酔時の偶発的な異常高血圧の発症の原因として考えられている内因性昇圧物質(ノルアドレナリン、アンジオテンシンII)による血圧上昇を用量依存的に抑制した26)。 昇圧物質(アンジオテンシンII)の持続投与により誘発した高血圧状態の無麻酔イヌにおいて、刺激伝導系に影響を及ぼすことなく、用量依存的に血圧を下降させた27)。

18.3 心血管系に対する作用

  1. 18.3.1心血行動態

麻酔イヌにおいて、強力な冠拡張作用を有し、冠血流量を増加させるとともに末梢血管抵抗を低下させ、後負荷を軽減することにより心筋酸素消費量を低下させる28)。

  1. 18.3.2各種麻酔状態での心血管系に対する作用

ペントバルビタール、GOF及びNLAのいずれかで麻酔したイヌ、サルにおいてもほぼ同等の降圧作用を示した。血圧を約30%低下させる用量では、ペントバルビタール麻酔、NLA麻酔下で、反射性の心拍数及び心収縮性の軽度の増加を起こしたが、GOF麻酔ではこれらに対し無影響であった。一方、血圧を50%以上低下させる高用量では、いずれの麻酔法においても、心収縮性の低下及び房室伝導の延長を起こした29),30)。

18.4 抗心不全作用

  1. 18.4.1抗心不全作用

冠動脈結紮により誘発した麻酔イヌ虚血性急性心不全モデル及び冠動脈結紮に加えアンジオテンシンIIの投与により誘発した麻酔イヌ急性心不全モデルにおいて、心収縮力を低下させることなく心拍出量及び一回拍出量を用量依存的に増加させ、後負荷軽減作用を発現することにより急性心不全状態を改善した31)。 急性心不全患者において、心拍数に影響を及ぼすことなく、心係数の増加、全末梢血管抵抗の減少、肺動脈楔入圧の下降が認められた21)。

  1. 18.4.2心筋代謝に対する作用

冠動脈結紮により誘発した麻酔イヌ虚血性急性心不全モデルにおいて抗心不全作用を発現するとともに冠動静脈間の酸素較差、二酸化炭素較差、pH較差及び心筋酸素消費量を減少させた。このとき、心筋乳酸摂取率に影響を与えなかった32)。

18.5 臓器循環及び血液ガス

麻酔ネコにおいて血圧を下降させると同時に、心拍出量を増加させ、脳、心臓をはじめとする各種臓器の血流量を増加させた33)。 麻酔下のイヌ34)において、血液ガス(Po2、Pco2、pH)にはほとんど変化を及ぼさなかった。

18.6 利尿作用

麻酔時のヒトにおいて、腎血流量及び糸球体濾過値を増加させ、尿量の増加を認めた35)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

  2. (1)健康成人 0.01~0.02mg/kg iv 単回投与10),11)

投与量(mg/kg iv) n t1/2β(min) AUC(ng・h/mL) Vdβ(mL/kg)
0.01 2 63 23.3 644
0.02 2 50 38.3 641
  1. (2)全身麻酔下の患者 0.01~0.03mg/kg iv 単回投与11)
投与量(mg/kg iv) n t1/2β(min) AUC(ng・h/mL) Vdβ(mL/kg)
0.01 7 28 21.8 321
0.02 5 22 29.8 495
0.03 4 45 68.7 609
  1. 16.1.2持続投与

  2. (1)健康成人 4mg/h(約1.1μg/kg/minの速度)で2時間持続投与を1日1回5日間連続投与12)

投与 t1/2β(min) CL tot(mL/kg/min) Vdβ(mL/kg)
1日目 109 10.7 1,683

(n=5)

  1. (2)高血圧性緊急症患者 0.5μg/kg/minで5~24時間持続静脈内投与遂時増量又は減量12)
t1/2β(min) CL tot(mL/kg/min) Vdβ(mL/kg)
160 14.2 3,083

(n=5)

  1. (3)急性心不全患者 1.0μg/kg/minで2時間持続静脈内投与13)
t1/2β(min) CL tot(mL/kg/min) Vd ss(mL/kg)
130 11.5 2,091

(n=5)

16.3 分布

血漿蛋白との結合率は、in vitro(健康成人)14)、in vitro(急性心不全患者)13)共に90%以上であった。

16.4 代謝

健康成人の尿中主代謝物は、M-11(N-ベンジル-N-メチルアミノ基が脱離、更にピリジン体に酸化された代謝物)の抱合体であった15)。ヒトにおいては、ニカルジピン塩酸塩は主としてCYP3A4で代謝される16)。