Clinical snapshot

チャンピックス錠0.5mg

バレニクリン酒石酸塩

添付文書改訂 2020年10月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助

用法・用量

通常、成人にはバレニクリンとして第1~3日目は0.5mgを1日1回食後に経口投与、第4~7日目は0.5mgを1日2回朝夕食後に経口投与、第8日目以降は1mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。なお、本剤の投与期間は12週間とする。

使用上の注意

  1. 8.1医師等により、禁煙治療プログラムに基づいた指導の下に本剤を適切に使用すること。

  2. 8.2禁煙は治療の有無を問わず様々な症状(不快、抑うつ気分、不眠、いらだたしさ、欲求不満、怒り、不安、集中困難、落ち着きのなさ、心拍数の減少、食欲増加、体重増加等)を伴うことが報告されており2)、基礎疾患として有している精神疾患の悪化を伴うことがある。

  3. 8.3抑うつ気分、不安、焦燥、興奮、行動又は思考の変化、精神障害、気分変動、攻撃的行動、敵意、自殺念慮及び自殺が報告されている。本剤との因果関係は明らかではないが、これらの症状があらわれることがあるので、本剤を投与する際には患者の状態を十分に観察すること。なお、本剤中止後もこれらの症状があらわれることがある。また、これらの症状・行動があらわれた場合には本剤の服用を中止し、速やかに医師等に連絡するよう患者に指導すること。

  4. 8.4めまい、傾眠、意識障害等があらわれ、自動車事故に至った例も報告されているので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

  5. 8.5本剤の投与の有無にかかわらず、禁煙により生じる生理的な変化のため、下記のような薬剤の薬物動態や薬力学が変化し、用量調節が必要になる場合がある。 テオフィリン、ワルファリン、インスリン等 また、喫煙によりCYP1A2の活性が誘導されるため、禁煙を開始後、CYP1A2の基質となる薬剤の血漿濃度が上昇する可能性がある。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1統合失調症、双極性障害、うつ病等の精神疾患のある患者

精神症状を悪化させることがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1重度の腎機能障害のある患者

血中濃度が高くなるおそれがある。

  1. 9.2.2血液透析を受けている患者

本剤を投与する際には十分に観察を行うこと。血中濃度が高くなるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。バレニクリン15mg/kg/日をラットの妊娠~授乳期間中に経口投与したところ、出生児に体重及び受胎能の低下と聴覚性驚愕反応の亢進が認められた。また、妊娠ウサギにバレニクリン30mg/kg/日を経口投与したところ、胎児の体重低下が認められた。

9.6 授乳婦

授乳中の女性には、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への本剤の移行は不明であるが、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。

9.7 小児等

国内では小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

腎機能を確認し、重度腎機能障害が認められた場合には、用量調節を行うこと。本剤は主として腎排泄される。また、高齢者では腎機能が低下していることが多い。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
シメチジン
本剤は主として腎排泄される。シメチジンとの併用により、本剤の腎クリアランスが低下して全身曝露量が増加するおそれがあるので、重度の腎機能障害のある患者で併用する場合は注意すること。 シメチジンが尿細管における本剤の輸送を阻害し、腎クリアランスを低下させる。また、本剤は腎排泄される。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALP上昇 5%以上
ALT上昇 5%以上
いびき 頻度不明
イレウス 頻度不明
おくび 頻度不明
ざ瘡 5%以上
そう痒症 5%以上
ほてり 5%以上
めまい 5%以上
リビドー減退 5%以上
一過性健忘 頻度不明
上気道感染 5%以上
下痢 5%以上
不安 5%以上
不快気分 頻度不明
不眠症(16.3%) 5%以上
体重増加 頻度不明
便秘 5%以上
倦怠感 5%以上
健忘 頻度不明
傾眠 5%以上
副鼻腔うっ血 頻度不明
動悸 頻度不明
協調運動異常 頻度不明
口内乾燥 5%以上
口内炎 頻度不明
口渇 5%以上
吐血 頻度不明
味覚異常 5%以上
呼吸困難 頻度不明
咳嗽 5%以上
咽喉刺激感 5%以上
嗄声 頻度不明
嗜眠 5%以上
嘔吐 5%以上
嘔気(28.5%) 5%以上
多尿 頻度不明
多汗症 頻度不明
多飲症 頻度不明
心房細動 頻度不明
心拍数増加 頻度不明
心電図ST部分下降 頻度不明
心電図T波振幅減少 頻度不明
思考異常 頻度不明
性機能不全 頻度不明
感情不安定 5%以上
感覚鈍麻 頻度不明
抑うつ 5%以上
振戦 5%以上
攻撃的行動 頻度不明
敵意 頻度不明
易刺激性 5%以上
暗点 頻度不明
月経過多 頻度不明
末梢性浮腫 頻度不明
構語障害 頻度不明
歯肉痛 頻度不明
気分変動 頻度不明
気管支炎 頻度不明
気道うっ血 頻度不明
注意力障害 5%以上
浮腫 頻度不明
消化不良 5%以上
激越 5%以上
無力症 5%以上
狭心症 頻度不明
異常な夢(13.0%) 5%以上
痙攣 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹 5%以上
眼痛 頻度不明
睡眠障害 5%以上
筋痙攣 5%以上
筋痛 5%以上
精神緩慢 頻度不明
精神障害 頻度不明
糖尿 頻度不明
紅斑 頻度不明
結膜炎 頻度不明
羞明 頻度不明
耳鳴 頻度不明
肝機能検査値異常(AST上昇 5%以上
胃不快感 5%以上
胃炎 頻度不明
胃食道逆流性疾患 5%以上
背部痛 頻度不明
胸痛 5%以上
胸部不快感 頻度不明
腹痛 5%以上
腹部膨満 5%以上
落ち着きのなさ 5%以上
血中ビリルビン上昇) 5%以上
血便排泄 頻度不明
血小板数減少 頻度不明
記憶障害 頻度不明
軟便 5%以上
関節痛 頻度不明
関節硬直 頻度不明
頭痛(11.6%) 5%以上
頻尿・夜間頻尿 5%以上
食欲不振 5%以上
食欲亢進 5%以上
高血圧 5%以上
鼓腸 5%以上
鼻漏 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

バレニクリンは、α4β2ニコチン受容体に対して高い結合親和性をもつ、ニコチン受容体の部分作動薬である。バレニクリンが脳内のα4β2ニコチン受容体に結合すると、ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制する(拮抗作用)。同時に、ニコチンの作用で放出されるよりも少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する(刺激作用)。

18.2 ニコチン受容体結合能

バレニクリンはヒト大脳皮質のα4β2ニコチン受容体に高親和性に結合するが(Ki値=0.15nmol/L)、その他検討したニコチン受容体(α3β4、α7、α1βγδ受容体)やムスカリン受容体及びコリントランスポーターにはほとんど結合しなかった34),35)。

18.3 ニコチン受容体部分作動薬作用

  1. 18.3.1バレニクリンは、ニコチンと同様、アフリカツメガエル卵母細胞やヒト胎児腎細胞に発現させたヒトα4β2ニコチン受容体の内向き電流を惹起し、ラット線条体切片やラット側坐核のドパミン遊離及びドパミン代謝回転を亢進させたが、その作用はニコチンより弱かった34),36),37),38)。

  2. 18.3.2バレニクリンは、ニコチンと併用するとニコチン作用を抑制した。特に、ラット側坐核におけるニコチンによるドパミン遊離作用を抑制した34),36),37),38)。

18.4 ニコチン摂取の抑制作用

バレニクリンはニコチン依存ラットにおけるニコチン自己摂取行動を抑制した39)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

健康成人男性喫煙者14例にバレニクリン0.25、0.5、1及び2mgを食後単回投与した時の最高血漿中濃度(Cmax)はそれぞれ1.32、2.45、4.97及び9.96ng/mL、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)はそれぞれ26.2、50.0、104及び226ng・h/mLであり、用量の増加に伴い増加した。最高血漿中濃度到達時間(Tmax)の平均値はいずれの投与量においても約3時間であった。血漿中濃度半減期(t1/2)の平均値は0.25、0.5、1及び2mg投与に対し、それぞれ13.1、14.5、18.4及び19.3時間であった9)。

投与量
(mg)
n Cmax
(ng/mL)
Tmax
(h)
t1/2
(h)
AUC
(ng・h/mL)
0.25 12 1.32±0.11 2.75±1.06 13.1±2.10 26.2±3.88
0.5 11 2.45±0.24 2.36±0.92 14.5±2.40 50.0±5.88
1 12 4.97±0.56 2.75±0.75 18.4±3.15 104±10.8
2 11 9.96±1.25 3.09±1.38 19.3±2.17 226±46.9

(平均値±標準偏差) 注)本剤の承認用量は1回1mgまでである。

  1. 16.1.2反復投与

健康成人男性喫煙者12例にバレニクリン0.5及び1mg1日2回を14日間反復経口投与した時、バレニクリン濃度は投与4日目には定常状態に達し、単回投与試験の結果から予想される蓄積を上回る値は認められなかった10)。

薬物動態
パラメータ
0.5mg投与群(n=8) 1mg投与群(n=8)
投与1日目 投与14日目 投与1日目 投与14日目
AUCτa)(ng・h/mL) 21.79±3.02 58.48±10.38 42.68±6.14 116.00±29.27
Cmaxa)(ng/mL) 2.62±0.32 5.94±1.06 5.29±0.89 11.95±2.86
Tmaxa)(h) 3.13±0.99 3.50±0.93 2.50±0.93 3.13±0.64
t1/2(h) NA 27.98±4.52 NA 24.21±3.46
Racτa) 2.700±0.400 2.697±0.316
CLr(mL/min) 79.02±14.84 83.70±14.86 99.25±23.66 90.46±19.97

(平均値±標準偏差) a)1日2回投与の1回目投与間隔(0~12時間)における値 NA:算出せず Racτ:累積係数は投与14日及び1日目の投与のAUC0-12から算出した CLr:腎クリアランス

16.2 吸収

  1. 16.2.1食事の影響

健康成人喫煙者12例にバレニクリン1mgを空腹時及び食後に単回経口投与し、薬物動態を比較した。Cmax及びAUCは空腹時投与と食後投与の間で同等の値を示したことから、バレニクリンの薬物動態に対する食事の影響はない11)(外国人データ)。

16.3 分布

ヒト血漿蛋白結合率は低く(20%以下)、高齢者及び腎機能障害患者の試験から得られたヒト血漿蛋白結合率も同様であった12)。

16.4 代謝

In vitroにおいてヒト肝ミクロソーム分画及びヒトリコンビナントUGTとバレニクリンをインキュベーションした時、ヒト肝ミクロソームでは代謝されず、UGT2B7によりN-カルバモイルグルクロン酸抱合体のみが生成された13),14)。

16.5 排泄

  1. 16.5.1バレニクリンの腎排泄は主として糸球体濾過によるものであるが、有機カチオントランスポーターOCT-2を介した尿細管からの分泌排泄も一部寄与している14)。

  2. 16.5.2健康成人男性(外国人)6例に14C-標識バレニクリン1mgを単回経口投与した時、投与148時間後までに投与放射能の87.1%及び0.9%が、それぞれ尿中及び糞中に排泄された。尿中に排泄された放射能のほとんどが未変化体(投与放射能の80.5%、尿中に排泄された放射能の91.6%)であったことから、経口投与されたバレニクリンの吸収率は高く、肝代謝をほとんど受けずに主として未変化体として尿中排泄される15)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

軽度の腎機能障害を有する被験者(クレアチニン・クリアランス(CLCR)推定値:50mL/分<CLCR≤80mL/分)では、バレニクリンの薬物動態に対する腎機能障害の影響は認められなかった。中等度(CLCR推定値:30mL/分≤CLCR≤50mL/分)及び重度(CLCR推定値:CLCR<30mL/分)の腎機能障害を有する被験者では、腎機能が正常な被験者(CLCR推定値:CLCR>80mL/分)と比較してバレニクリンの全身曝露量がそれぞれ1.5倍及び2.1倍に増加した。また、週3回3時間の透析を行っている腎疾患を有する被験者では、バレニクリンの全身曝露量が2.7倍に増加した。なお、血液透析での除去率を検討した結果、血液透析は健康被験者における腎機能とほぼ同程度の排泄効果があると考えられた16)(外国人データ)。

薬物動態
パラメータ
試験群 対照群 幾何平均値(LS平均) 比a)
(%)
比の
90%信頼区間
試験群 対照群
AUC0-τb)
(ng・h/mL)
軽度
中等度
重度
透析患者c)
正常 58.68
84.38
114.91
150.79
55.55 105.64
151.92
206.88
271.48
(79.35,140.65)
(114.11,202.26)
(155.38,275.43)
(203.91,361.44)
Cmax
(ng/mL)
軽度
中等度
重度
透析患者c)
正常 3.67
4.83
6.10
7.30
3.99 91.92
120.98
152.97
183.03
(70.33,120.15)
(92.56,158.13)
(117.04,199.94)
(140.04,239.23)

LS平均:最小2乗平均 a)(試験群/対照群)×100 b)0.5mg1日1回投与後のAUC0-24 c)透析患者:週3回の血液透析を行っている腎疾患患者

  1. 16.6.2肝機能障害患者

バレニクリンはその大部分が未変化体として尿中に排泄され、ほとんど肝代謝を受けないことから、バレニクリンの薬物動態は肝障害の影響を受けないことが予測される。

  1. 16.6.3高齢者

健康高齢男女喫煙者16例(65~75歳)にバレニクリンを反復投与(1mg1日1回又は1日2回7日間)した時、バレニクリンの高齢喫煙者における薬物動態は、非高齢喫煙者と同様であった12)(外国人データ)。

  1. 16.6.4小児

12~17歳の喫煙者22例にバレニクリン0.5及び1mgを単回投与した時、バレニクリンの薬物動態はほぼ用量に比例し、全身曝露量及び腎クリアランスは、健康成人被験者と同様であった17)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1In vitro試験

バレニクリンは肝ミクロソームによるチトクロームP450酵素(1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4/5)の基質代謝を阻害しなかった(IC50>6,400ng/mL)。また、バレニクリンはヒト肝細胞のチトクロームP450酵素1A2及び3A4の活性を誘導しなかった。ヒト腎トランスポーター(hOCT-2、hOAT-1、hOAT-3、hOCTN-1又はhOCTN-2)を発現させたヒト胎児腎細胞への取り込みを検討した結果、バレニクリンはhOCT-2の基質であることが示され、シメチジン(1mM、OCT-2の阻害剤)によってバレニクリンの取り込みは部分的に阻害された18),19)。

  1. 16.7.2臨床試験

  2. (1)シメチジン

健康成人喫煙者12例にシメチジンを反復投与(300mg1日4回5日間)し、2日目にバレニクリン2mgを単回併用投与した時のバレニクリンの薬物動態は、バレニクリン単独投与時に比べて全身曝露量が約29%増加し(90%信頼区間:21.5%、36.9%)、投与48時間後までの腎クリアランスは約25%低下した20)(外国人データ)。 注)本剤の承認用量は1回1mgまでである。

  1. (2)その他の薬剤

メトホルミン、ジゴキシン及びワルファリンとの相互作用について臨床成績により検討しているが、バレニクリン併用による薬物動態学的相互作用は認められなかった21),22),23)(外国人データ)。

  1. 16.7.3他の禁煙補助薬(ニコチン代替療法)との併用

喫煙者22例に経皮吸収ニコチン製剤(21mg/日)とバレニクリン(1mg1日2回)を併用反復投与(ニコチン14日間反復貼付期間中3日目からバレニクリン反復投与)した時、ニコチンの薬物動態に対する影響はなかったが、14日目に測定した最高血圧の平均値に統計学的に有意な低下(平均2.6mmHg)が認められた。副作用は経皮吸収ニコチン製剤単独投与群17例中14例(82.4%)、併用投与群22例中17例(77.3%)に認められた。嘔気、頭痛、嘔吐、浮動性めまい、消化不良及び疲労は併用投与群で多く認められ、その発現率は経皮吸収ニコチン製剤単独投与群で嘔気7例(41.2%)、頭痛4例(23.5%)、嘔吐2例(11.8%)、浮動性めまい1例(5.9%)、消化不良1例(5.9%)及び疲労3例(17.6%)、併用投与群で嘔気14例(63.6%)、頭痛11例(50.0%)、嘔吐7例(31.8%)、浮動性めまい7例(31.8%)、消化不良5例(22.7%)及び疲労6例(27.3%)であったが、いずれの有害事象も安全性上の問題は認められなかった。なお、これらの有害事象は他の試験のバレニクリン単独投与でも認められている。また、本試験で検討したニコチン代替療法を含め、本剤を他の禁煙補助薬と併用した場合の安全性及び有効性に関する試験は行われていない24)(外国人データ)。