-
慢性骨髄性白血病
-
再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
【警告】
本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において,造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また,本剤による治療開始に先立ち,患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し,同意を得てから投与を開始すること。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
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2.2妊婦又は妊娠している可能性のある女性
効能・効果
用法・用量
-
〈慢性骨髄性白血病〉
-
(1)慢性期
通常,成人にはダサチニブとして1日1回100mgを経口投与する。 なお,患者の状態により適宜増減するが,1日1回140mgまで増量できる。
- (2)移行期又は急性期
通常,成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。 なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90mgを1日2回まで増量できる。
- 〈再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病〉
通常,成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。 なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90mgを1日2回まで増量できる。
使用上の注意
-
8.1骨髄抑制があらわれることがあるので,本剤投与中は,定期的に血液検査(血球数算定,白血球分画等)を行うこと。 血液検査は投与開始前と投与後の2ヵ月間は毎週,その後は1ヵ月毎に,また,患者の状態に応じて適宜行うこと。 これらの血球減少は疾患の病期にも依存し,慢性期慢性骨髄性白血病に比べて移行期・急性期慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の患者での頻度が高い。本剤の投与にあたってはG-CSF製剤の適切な使用に関しても考慮すること。
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8.2血小板減少時に出血が生じることがあるので,定期的に血液検査と患者の観察を十分に行うこと。
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8.3感染症があらわれることがあるので,定期的に血液検査を実施し,観察を十分に行うこと。
-
8.4QT間隔延長が報告されているため,適切な心電図モニタリングを行うこと。
-
8.5Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがあるので,本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し,本剤投与前に適切な処置を行うこと。
-
8.6腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるので,血清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど,患者の状態を十分に観察すること。
-
8.7心不全,心筋梗塞があらわれることがあるので,適宜心機能検査を行うなど観察を十分に行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1イマチニブに忍容性のない慢性骨髄性白血病患者
前治療の副作用の内容を確認してから投与すること。本剤を使用する際には,慎重に経過観察を行い,副作用発現に注意すること。イマチニブの投与中止の原因となった副作用と同様の副作用が起こるおそれがある。
- 9.1.2間質性肺疾患の既往歴のある患者
間質性肺疾患を増悪させるおそれがある。
- 9.1.3QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者
QT間隔延長が起こるおそれがある。
- 9.1.4血小板機能を抑制する薬剤あるいは抗凝固剤を投与中の患者
出血傾向を増強するおそれがある。
- 9.1.5心疾患の既往歴又は危険因子を有する患者
心臓の副作用(急性心不全,うっ血性心不全,心筋症,拡張機能障害,駆出率低下,左室機能不全及び致死的な心筋梗塞等)が発現するおそれがある。
- 9.1.6B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性,かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
本剤の投与開始後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど,B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害患者に投与する場合には十分注意すること。本剤は主に肝臓で代謝されるため,肝機能障害患者では高い血中濃度が持続するおそれがある。肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては,投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。外国において,妊娠中に本剤を服用した患者で,児の奇形及び胎児水腫等の胎児毒性が報告されている。また,動物実験において,ヒトでの臨床用量で得られる血漿中濃度以下で,ラットで胚致死作用及び胎児毒性,ウサギで胎児毒性が報告されている。
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。本剤のヒト乳汁中への移行については不明である。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。なお,臨床試験において,65歳未満の患者と比較し,65歳以上の患者で胸水,呼吸困難,疲労,食欲障害,咳嗽,下部消化管出血,心嚢液貯留,体重減少,浮動性めまい,腹部膨満,及びうっ血性心不全の発現頻度が高かった。
相互作用
- CYP3A4を時間依存的に阻害し,CYP3A4で主に代謝される薬剤の代謝クリアランスを低下させる可能性がある。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| *CYP3A4阻害剤 • アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール,ケトコナゾール等) マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン,クラリスロマイシン,テリスロマイシン等) HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル,アタザナビル硫酸塩,ネルフィナビルメシル酸塩等) • エンシトレルビル フマル酸グレープフルーツジュース |
本剤とケトコナゾールの併用により,本剤のCmax及びAUCはそれぞれ4倍及び5倍増加した。CYP3A4阻害作用のない又は低い代替薬の使用が推奨される。CYP3A4阻害作用の強い薬剤との併用が避けられない場合は,有害事象の発現に十分注意して観察を行い,本剤を減量して投与することを考慮すること。 | これらの薬剤等がCYP3A4活性を阻害し,本剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
| CYP3A4誘導剤 • デキサメタゾン,フェニトイン,カルバマゼピン,リファンピシン,フェノバルビタール等セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort, セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 |
本剤の血中濃度が低下する可能性がある。リファンピシン8日間投与後に本剤を投与した場合,本剤のCmax及びAUCはそれぞれ81%及び82%低下した。CYP3A4誘導作用の強い薬剤との併用は推奨されない。CYP3A4誘導剤を処方する場合,誘導作用のない又は低い代替薬を考慮すること。 | これらの薬剤等がCYP3A4を誘導し,本剤の血中濃度を低下させる可能性がある。 |
| 制酸剤(水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤) | 本剤と制酸剤の同時投与は避けること。 制酸剤の投与が必要な場合には,本剤投与の少なくとも2時間前又は2時間後に投与すること。 |
本剤の吸収が抑制され,血中濃度が低下する可能性がある。 |
| H2受容体拮抗剤 • ファモチジン等プロトンポンプ阻害剤 • オメプラゾール等 |
H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されない。ファモチジン投与10時間後に本剤を投与したときの本剤のCmax及びAUCはそれぞれ63%及び61%低下し,オメプラゾールを4日間投与し,最終投与22時間後に本剤を投与したときの本剤のCmax及びAUCはそれぞれ42%及び43%低下した。本剤投与中は,これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮すること。 | 本剤の吸収が抑制され,血中濃度が低下する可能性がある。 |
| CYP3A4の基質となる薬剤 • シンバスタチン シクロスポリン ピモジド キニジン硫酸塩水和物 タクロリムス水和物 エルゴタミン酒石酸塩 ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩等 |
CYP3A4の基質となる薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。本剤とシンバスタチンの併用により,シンバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ37%及び20%上昇した。本剤を治療係数が低いCYP3A4の基質となる薬剤と併用する場合には注意すること。 | 本剤のCYP3A4阻害作用によりこれら薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
| QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤 • イミプラミン塩酸塩 ピモジド等 |
QT間隔延長作用を増強する可能性がある。 | 本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため,併用により作用が増強する可能性がある。 |
| 抗不整脈薬 • キニジン硫酸塩水和物 プロカインアミド塩酸塩 ジソピラミド ソタロール塩酸塩等 |
QT間隔延長作用を増強する可能性がある。 | 本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため,併用により作用が増強する可能性がある。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| AST上昇,ALT上昇,LDH上昇 | 頻度不明 |
| リンパ球数減少 | 頻度不明 |
| 下痢(24.2%),悪心 | 頻度不明 |
| 不安,感情不安定,錯乱状態,リビドー減退 | 頻度不明 |
| 不眠症,抑うつ気分,無感情 | 頻度不明 |
| 乳房痛,女性化乳房,月経困難症,不正子宮出血,性器潰瘍形成,不規則月経,腟分泌物 | 頻度不明 |
| 低血圧,高血圧,ほてり,血腫 | 頻度不明 |
| 体重増加 | 頻度不明 |
| 出血(肺出血,歯肉出血,結膜出血,鼻出血,皮下出血,点状出血,カテーテル留置部位出血) | 頻度不明 |
| 味覚異常,浮動性めまい,意識消失,傾眠,肋間神経痛,感覚鈍麻,振戦,手根管症候群,体位性めまい,頚椎症性神経炎,頚腕症候群,片頭痛,脳腫瘤,大脳石灰化 | 頻度不明 |
| 呼吸困難,低酸素症,発声障害,咽喉頭疼痛,上気道の炎症,咽頭紅斑,咽喉頭不快感,湿性咳嗽,鼻漏,痰貯留,鼻炎,胸膜炎,鼻痛 | 頻度不明 |
| 咳嗽 | 頻度不明 |
| 回転性めまい | 頻度不明 |
| 失神,健忘,痙攣,脳卒中,一過性脳虚血発作,末梢性ニューロパチー,視神経炎 | 頻度不明 |
| 心拡大,動悸,頻脈,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症,洞性徐脈,上室性期外収縮,心室性期外収縮,左室肥大,不整脈,第一度房室ブロック,心房頻脈,脚ブロック,心肥大,心筋症,左房拡張,心電図ST部分下降 | 頻度不明 |
| 心機能障害,狭心症,心膜炎,心室性不整脈,心室性頻脈,心筋炎,急性冠動脈症候群,肺性心,心房細動,心房粗動,心電図異常T波 | 頻度不明 |
| 感染,鼻咽頭炎,気管支炎,膀胱炎,サイトメガロウイルス感染,毛包炎,胃腸炎,ヘルペスウイルス感染,眼感染,インフルエンザ,膣カンジダ症,尿路感染,気管支肺炎,蜂巣炎,帯状疱疹,爪白癬,外耳炎,足部白癬,上気道感染,歯肉感染,感染性腸炎,副鼻腔炎 | 頻度不明 |
| 感染性小腸結腸炎 | 頻度不明 |
| 挫傷 | 頻度不明 |
| 水疱形成,色素沈着障害,光線過敏性反応,急性熱性好中球性皮膚症,脂肪織炎,手足症候群 | 頻度不明 |
| 流涙増加 | 頻度不明 |
| 無力症,温度変化不耐症 | 頻度不明 |
| 甲状腺機能低下症,血中甲状腺刺激ホルモン増加,BNP増加,CRP増加,脱水,総蛋白増加,食欲不振,血中尿酸増加,血中アルブミン減少,総蛋白減少,糖尿病 | 頻度不明 |
| 発熱,表在性浮腫(浮腫,眼瞼浮腫,咽頭浮腫,顔面腫脹,末梢性浮腫,顔面浮腫,腫脹,口腔浮腫)(26.3%),倦怠感 | 頻度不明 |
| 発疹 | 頻度不明 |
| 移植片対宿主病,過敏症 | 頻度不明 |
| 筋痛,CK上昇 | 頻度不明 |
| 筋肉の炎症,横紋筋融解,腱炎,投与中止に伴う筋骨格系疼痛 | 頻度不明 |
| 粘膜炎,大腸炎,嚥下障害,上部消化管潰瘍,膵炎,タンパク漏出性胃腸症 | 頻度不明 |
| 紅斑,ざ瘡,脱毛症,湿疹,そう痒症,紫斑,皮膚乾燥,多汗症,爪の障害,丘疹,皮膚剥脱,皮膚肥厚,全身性そう痒症,蕁麻疹,皮膚色素脱失,皮膚嚢腫,皮膚炎,皮脂欠乏性湿疹,結節性紅斑,毛髪変色,脂漏性皮膚炎,皮膚潰瘍,皮下結節,手掌・足底発赤知覚不全症候群 | 頻度不明 |
| 結節性紅斑 | 頻度不明 |
| 網状赤血球数減少,発熱性好中球減少症,播種性血管内凝固,CD4リンパ球数増加,プロトロンビン時間延長,網状赤血球数増加,APTT延長,白血球数増加,好中球数増加,血小板数増加,リンパ球数増加,好酸球数増加,INR増加,単球数減少,プロトロンビン時間短縮,CD4リンパ球数減少,リンパ節症,鉄欠乏性貧血,血中フィブリノゲン増加,フィブリン分解産物増加 | 頻度不明 |
| 耳不快感,耳管閉塞,耳鳴,聴力低下 | 頻度不明 |
| 肺浸潤,肺臓炎,肺高血圧症,喘息,気管支痙攣,急性呼吸窮迫症候群 | 頻度不明 |
| 胆嚢炎,ビリルビン上昇,Al-P上昇,γ-GTP上昇,脂肪肝 | 頻度不明 |
| 胆汁うっ滞,肝炎 | 頻度不明 |
| 胸痛,悪寒,疲労,熱感,疼痛,胸部不快感,口渇,異常感,末梢冷感,限局性浮腫,インフルエンザ様疾患 | 頻度不明 |
| 腫瘍熱,体重減少,尿沈渣異常,潜血,血中アミラーゼ増加,尿中ウロビリン陽性,尿中ブドウ糖陽性,血中トリグリセリド増加,血中葉酸減少,ビタミンB12減少 | 頻度不明 |
| 腹痛,腹部膨満,口唇炎,歯肉炎,胃不快感,異常便,変色便,胃炎,痔核,口唇水疱,心窩部不快感,口内乾燥,歯肉腫脹,口唇乾燥,口の感覚鈍麻,便秘,嘔吐,口内炎,びらん性胃炎,歯痛,裂肛,齲歯,腸炎,腸憩室,消化不良,胃潰瘍,歯肉痛,裂孔ヘルニア,鼡径ヘルニア,歯周炎,肛門周囲痛,逆流性食道炎,唾液腺痛,胃異形成,痔出血,口の錯感覚,腹壁障害,口腔粘膜びらん,腹部不快感,食道炎,歯根嚢胞 | 頻度不明 |
| 血尿,蛋白尿,夜間頻尿,クレアチニン上昇,血中尿素増加,頻尿,血中クレアチニン減少 | 頻度不明 |
| 血栓性静脈炎,網状皮斑,血栓症/塞栓症(肺塞栓症,深部静脈血栓症) | 頻度不明 |
| 赤芽球癆 | 頻度不明 |
| 関節痛,四肢痛,背部痛,筋力低下,筋骨格硬直,側腹部痛,関節腫脹,骨関節炎,滑液嚢腫,腱痛,CK減少,筋痙縮,頚部痛,筋骨格痛,変形性脊椎炎,滑膜炎,顎関節症候群,腱鞘炎,椎間板突出,骨痛 | 頻度不明 |
| 電解質異常(リン,カリウム,カルシウム注),マグネシウム,ナトリウム,クロール) | 頻度不明 |
| 霧視,角膜炎,眼球乾燥,結膜充血,羞明,アレルギー性結膜炎,結膜炎,白内障,眼脂,後嚢部混濁,網膜症,飛蚊症,眼圧上昇 | 頻度不明 |
| 頭痛 | 頻度不明 |
| 高コレステロール血症 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合する。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC,LCK,YES,FYN),c-KIT,EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害する(IC50=0.2~28nM)16)。
18.2 抗腫瘍作用
-
18.2.1In vitro試験
-
(1)ダサチニブは,慢性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病の両細胞型を含む4種のヒトBCR-ABL依存性白血病細胞に対し細胞障害作用又は増殖阻害作用を示した(IC50≤1nM)17)。
-
(2)ダサチニブは,BCR-ABLの過剰発現,BCR-ABLキナーゼドメインの変異,SRCファミリーキナーゼ(FYN,LYN,HCK)を含む代替情報伝達経路の活性化及び多剤耐性遺伝子の過剰発現がその要因である非臨床及び臨床由来の広範なイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病細胞株に対しても増殖阻害活性を示した17)。
-
18.2.2In vivo試験
ダサチニブ(5~50mg/kg)は,イマチニブ感受性及び耐性のヒト慢性骨髄性白血病細胞を皮下移植した重症複合免疫不全症(SCID)マウスにおいて,治癒あるいは腫瘍増殖遅延作用を示した18)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1反復投与
慢性期慢性骨髄性白血病の日本人患者にダサチニブ50mg,70mg又は90mgを1日2回#反復経口投与後,ダサチニブは速やかに吸収され,血漿中濃度は投与後1時間付近で最高血漿中濃度(Cmax)に到達した。Cmax到達後,血漿中濃度はおおむね4~5時間の消失半減期(t1/2)で比較的速やかに低下した。Cmax及び投与間隔当たりの血漿中濃度時間曲線下面積(AUC0-12h)は投与量に依存して増加した1)。
:慢性期慢性骨髄性白血病の承認用法用量は1日1回100mgである。
| 1回投与量 (mg) |
投与日 | n | Cmaxa (ng/mL) |
AUC0-12ha (ng・h/mL) |
t1/2b (h) |
Tmaxc (h) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 50 | 1 | 7 | 94.10 (37) |
283.17 (28) |
4.90 (1.86) |
0.97 (0.50, 1.05) |
| 28 | 5 | 117.83 (50) |
342.87 (41) |
4.53 (1.30) |
0.93 (0.50, 1.07) |
|
| 70 | 1 | 7 | 113.89 (53) |
304.78 (53) |
3.85 (0.36) |
0.95 (0.50, 1.97) |
| 28 | 7 | 129.14 (72) |
398.80 (55) |
3.99 (1.17) |
0.98 (0.50, 1.97) |
|
| 90 | 1 | 4 | 150.55 (57) |
384.75 (30) |
3.51 (0.65) |
0.75 (0.48, 1.00) |
| 28 | 2 | 65.90 | 285.95 | 11.70 | 0.52 (0.50, 0.53) |
a 幾何平均値(変動係数 %) b 算術平均値(標準偏差) c 中央値(最小,最大)
固形癌の日本人患者にダサチニブ100mg,150mg又は200mg#を1日1回反復経口投与後,ダサチニブは速やかに吸収され,血漿中濃度は投与後0.5~3.3時間で最高血漿中濃度(Cmax)に到達した2)。
:承認1日最大用量は180mgである。
| 1回投与量 (mg) |
投与日 | n | Cmaxa (ng/mL) |
AUCa (ng・h/mL) |
t1/2b (h) |
Tmaxc (h) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 100 | 1 | 9 | 139.83 (54) |
537.98 (33) |
4.77 (0.61) |
1.0 (0.5, 4.0) |
| 14 | 5 | 137.03 (55) |
499.69 (36) |
5.75 (1.67) |
1.0 (0.5, 3.0) |
|
| 150 | 1 | 3 | 127.10 (83) |
544.36 (54) |
4.68 (0.84) |
1.0 (1.0, 1.0) |
| 14 | 4 | 166.43 (109) |
694.90 (77) |
5.04 (1.19) |
1.0 (1.0, 1.0) |
|
| 200 | 1 | 4 | 124.48 (69) |
595.62 (56) |
7.62 (4.11) |
1.3 (0.5, 3.0) |
| 14 | 2 | 102.61 (127) |
716.27 (114) |
7.95 (5.62) |
2.3 (1.5, 3.0) |
a 幾何平均値(変動係数 %) b 算術平均値(標準偏差) c 中央値(最小,最大) AUC:投与1日目はAUC(INF)及び投与14日目はAUC(TAU)を示す。
- 16.1.2母集団薬物動態解析
慢性骨髄性白血病患者及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者1216例を対象とした母集団薬物動態解析の結果,初発の慢性期慢性骨髄性白血病の日本人患者26例に対する100mg1日1回経口投与時の定常状態におけるCmax,AUC0-24h及びトラフ濃度(Cmin)の推定値は,それぞれ91.0ng/mL,456ng・h/mL及び2.21ng/mLであった3)。
| 例数 | 平均値(変動係数%) | ||
|---|---|---|---|
| Cmin(ng/mL) | Cmax(ng/mL) | AUC0-24h(ng・h/mL) | |
| 26 | 2.21(46%) | 91.0(64%) | 456(49%) |
母集団薬物動態解析により推定された個別値から算出
- 16.1.3生物学的同等性試験
- 〈ダサチニブ錠20mg「サワイ」〉
ダサチニブ錠20mg「サワイ」とスプリセル錠20mgを健康成人男性にそれぞれ1錠(ダサチニブとして20mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中ダサチニブ濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された4)。
| Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
T1/2 (hr) |
AUC0-24hr (ng・hr/mL) |
|
|---|---|---|---|---|
| ダサチニブ錠20mg「サワイ」 | 32.76±12.76 | 0.8±0.3 | 3.9±1.2 | 87.75±26.58 |
| スプリセル錠20mg | 32.48±15.62 | 1.0±0.9 | 4.0±1.0 | 88.19±29.47 |
(Mean±S.D., n=85)
- 〈ダサチニブ錠50mg「サワイ」〉
ダサチニブ錠50mg「サワイ」とスプリセル錠50mgを健康成人男性にそれぞれ1錠(ダサチニブとして50mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中ダサチニブ濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された4)。
| Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
T1/2 (hr) |
AUC0-24hr (ng・hr/mL) |
|
|---|---|---|---|---|
| ダサチニブ錠50mg「サワイ」 | 72.67±25.63 | 0.9±0.5 | 4.6±0.7 | 214.43±50.01 |
| スプリセル錠50mg | 70.14±28.11 | 1.0±0.6 | 4.6±0.9 | 202.43±73.04 |
(Mean±S.D., n=53)
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
- 16.2.1食事の影響
健康成人54例を対象に薬物動態に及ぼす食事の影響を検討した結果,絶食時投与と比較して高脂肪食を摂取後に100mgを単回経口投与した時のAUCの平均値は,14%増加した(海外データ)5)。
16.3 分布
白血病患者における見かけの分布容積は大きく,ダサチニブは血管外に広く分布することが示唆された。In vitro試験において,ヒト血漿に対するダサチニブ及び活性代謝物の蛋白結合率は,100~500ng/mLの濃度範囲でそれぞれ約96%及び93%であり,濃度に依存しなかった6)。
16.4 代謝
ダサチニブは主にCYP3A4により代謝され,活性代謝物は主にこのCYP3A4を介して生成される。その他にも,ダサチニブはフラビン含有モノオキシゲナーゼ酵素3(FMO-3)及びUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)により代謝される。ヒト肝ミクロソームを用いた試験では,ダサチニブは時間依存的な弱い阻害作用を示した。 ダサチニブと同程度の薬理活性を示す代謝物のAUCはダサチニブの約5%である。したがって,この活性代謝物はダサチニブを服用することにより観察される薬理作用にあまり寄与しないと考えられる。また,この他にも薬理活性を有していない代謝物が数種類存在する7),8)。
16.5 排泄
主要な消失経路は糞便中への排泄である。[14C]ダサチニブを単回経口投与後,10日以内に投与放射能の約4%が尿中に,約85%が糞便中に排泄された。尿中及び糞便中に排泄された未変化体は,投与放射能のそれぞれ0.1%及び19%であり,尿中及び糞便中に排泄された放射能の大部分が代謝物であった(海外データ)9)。
16.6 特定の背景を有する患者
ダサチニブの薬物動態に対する年齢及び性別の影響は認められていない(海外データ)10)。