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シーエルセントリ錠150mg

マラビロク

添付文書改訂 2026年03月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

CCR5指向性HIV-1感染症

用法・用量

通常、成人にはマラビロクとして1回300mgを1日2回経口投与する。なお、投与に際しては必ず他の抗HIV薬を併用し、併用薬に応じて適宜増減すること。本剤は、食事の有無にかかわらず投与できる。

使用上の注意

  1. 8.1健康成人を対象とした臨床試験において、本剤によると疑われるアレルギー症状を伴う肝障害が1例報告されている。また、治療歴の有無に関わらずHIV感染患者を対象とした臨床試験において、肝機能検査異常の増加や肝障害が報告されたが、グレード3及び4注)の肝機能検査異常の増加は認められなかった。本剤投与後に肝炎あるいは全身性アレルギー症状(そう痒性皮疹、好酸球増加、IgE上昇等)が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 注)エイズ臨床試験グループ(ACTG)分類

  2. 8.2本剤の使用に際しては、国内外のガイドライン等の最新の情報を参考に、患者又は患者に代わる適切な者に、次の事項についてよく説明し同意を得た後、使用すること。

  • 本剤はHIV感染症の根治療法薬ではないことから、日和見感染症を含むHIV感染症の進展に伴う疾病を発症し続ける可能性があるので、本剤投与開始後の身体状況の変化については全て担当医に報告すること。

  • 担当医の指示なしに用量を変更したり、服用を中止したりしないこと。

  • 本剤の長期投与による影響については現在のところ不明であること。

  • 本剤は併用薬剤と相互作用を起こすことがあるため、服用中の全ての薬剤を担当医に報告すること。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合には、事前に担当医師に相談すること。

  1. 8.3ウイルスの指向性検査は、有用性が確立された高感度な方法により行うこと。ウイルスの指向性は、患者の治療歴又は保存検体の検査から推測することはできないため、最新の検体で指向性検査を実施すること。

  2. 8.4ウイルスの指向性が変化することがあるため、指向性検査後、直ちに治療を開始すること。

  3. 8.5ウイルス学的効果が認められなかった場合は、指向性検査の結果にかかわらず本剤の継続投与は推奨されない。

  4. 8.6本剤を含む抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で、免疫再構築症候群が報告されている。投与開始後、免疫機能が回復し、症候性のみならず無症候性日和見感染(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス、サイトメガロウイルス、ニューモシスチス等によるもの)等に対する炎症反応が発現することがある。また、免疫機能の回復に伴い自己免疫疾患(甲状腺機能亢進症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ブドウ膜炎等)が発現するとの報告があるので、これらの症状を評価し、必要時には適切な治療を考慮すること。

  5. 8.7本剤は、免疫細胞のCCR5コレセプターを阻害することから、感染症発症の危険性を増大させる可能性がある。本剤投与中は、感染症の徴候について十分な観察を行い、必要に応じて適切な処置を行うこと。

  6. 8.8本剤投与に伴う悪性腫瘍の増加は認められていないが、免疫機構に影響を及ぼす可能性があるため、悪性腫瘍発症の危険性が増大するおそれがある。

  7. 8.9めまい等があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1重篤な心疾患又はその既往歴のある患者

心筋虚血等をおこすおそれがある。

  1. 9.1.2B型・C型肝炎の患者

肝機能が悪化するおそれがある。

  1. 9.1.3起立性低血圧の既往歴のある患者

起立性低血圧をおこすおそれがある。

  1. 9.1.4降圧作用を有する併用薬の投与を受けている患者

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1重度の腎機能障害のある患者

患者の臨床症状等を十分に観察すること。ブーストした本剤とプロテアーゼ阻害剤を併用する時は、本剤の血中濃度が上昇し、起立性低血圧を起こす危険性が高まるおそれがある。特に強力なCYP3A4阻害作用を有するプロテアーゼ阻害剤と併用する時は注意すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。

  1. 9.2.2腎機能障害(Ccr<80mL/min)のある患者(重度の腎機能障害のある患者を除く)

本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

肝機能が悪化するおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6 授乳婦

授乳を避けさせること。動物実験(ラット)で乳汁への移行が報告されている。また、HIV感染女性患者は、乳児のHIV感染を避けるため、乳児に母乳を与えないことが望ましい。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

一般に生理機能が低下していることが多い。

相互作用

  • 本剤はCYP3A4の基質である。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
**HIVプロテアーゼ阻害剤
• アタザナビル硫酸塩
アタザナビル硫酸塩+リトナビル
ロピナビル・リトナビル
サキナビル+リトナビル
ダルナビルエタノール付加物+リトナビル
ネルフィナビルメシル酸塩
ホスアンプレナビルカルシウム水和物+リトナビル
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらのプロテアーゼ阻害剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
HIVプロテアーゼ阻害剤+非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)
• HIVプロテアーゼ阻害剤(tipranavir+リトナビルを除く)+エファビレンツ又はエトラビリン
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらのプロテアーゼ阻害剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
HIVプロテアーゼ阻害剤(tipranavir/リトナビルを除く)+リファブチン 本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらのプロテアーゼ阻害剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
NNRTI
• デラビルジンメシル酸塩
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
抗真菌剤
• イトラコナゾール
ケトコナゾール
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
抗菌剤
• クラリスロマイシン
テリスロマイシン
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
テラプレビル
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
nefazodone 本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、本剤の用量を150mg1日2回に減量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
NNRTI
• エファビレンツ
エトラビリン
本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、強力なCYP3A4阻害剤を併用せずにこれらの薬剤を併用投与する場合、本剤の用量を600mg1日2回に増量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が低下するおそれがある。
抗菌剤
• リファンピシン
本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、強力なCYP3A4阻害剤を併用せずにこれらの薬剤を併用投与する場合、本剤の用量を600mg1日2回に増量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が低下するおそれがある。
カルバマゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン
本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、強力なCYP3A4阻害剤を併用せずにこれらの薬剤を併用投与する場合、本剤の用量を600mg1日2回に増量すること。 これらの薬剤はCYP3A4の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が低下するおそれがある。
リファンピシン+エファビレンツ
本剤の血中濃度が著しく低下して至適水準を下回り、ウイルス学的効果の消失や本剤に対する耐性が生じる可能性があるので、本剤とこれらの薬剤の併用は推奨されない。 これらの薬剤等はCYP3A4の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が著しく低下するおそれがある。
セイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 本剤の血中濃度が著しく低下して至適水準を下回り、ウイルス学的効果の消失や本剤に対する耐性が生じる可能性があるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないように注意すること。 これらの薬剤等はCYP3A4の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が著しく低下するおそれがある。
降圧作用を有する薬剤
• アムロジピン
• オルメサルタン
• ビソプロロール等
本剤の血中濃度の上昇に相関して、起立性低血圧が発現することが確認されている。本剤と降圧作用を有する薬剤とを併用した場合に起立性低血圧が発現することを示す試験はないものの、降圧作用を有する薬剤を併用中の患者は、起立性低血圧及び低血圧に関連する症状の発現に十分注意する必要がある。 機序不明

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALT増加 頻度不明
AST増加 頻度不明
γGTP増加 頻度不明
アレルギー性結膜炎 頻度不明
インスリン抵抗性糖尿病 頻度不明
インフルエンザ 頻度不明
インフルエンザ様疾患 頻度不明
ウイルス感染 頻度不明
ウイルス負荷増加 頻度不明
うつ病 頻度不明
おくび 頻度不明
ざ瘡 頻度不明
そう痒症 頻度不明
ヘマトクリット減少 頻度不明
ヘモグロビン減少 頻度不明
ほてり 頻度不明
ミオパシー 頻度不明
リビドー減退 頻度不明
レイノー現象 頻度不明
レストレスレッグス症候群 頻度不明
レッチング 頻度不明
三叉神経痛 頻度不明
上気道うっ血 頻度不明
下痢 頻度不明
不正子宮出血 頻度不明
不眠症 頻度不明
乗物酔い 頻度不明
乳房圧痛 頻度不明
乳房腫瘤 頻度不明
乳頭痛 頻度不明
低音性連続性ラ音 頻度不明
体温上昇 頻度不明
体脂肪の再分布/蓄積 頻度不明
体重増加 頻度不明
体重減少 頻度不明
便秘 頻度不明
健忘 頻度不明
傾眠 頻度不明
全身性浮腫 頻度不明
冷汗 頻度不明
副鼻腔炎に伴う頭痛 頻度不明
勃起不全 頻度不明
動悸 頻度不明
口の感覚鈍麻 頻度不明
口の錯感覚 頻度不明
口唇のひび割れ 頻度不明
口唇水疱 頻度不明
口渇 頻度不明
口腔内潰瘍形成 頻度不明
味覚消失 頻度不明
味覚異常 頻度不明
呼吸困難 頻度不明
咳嗽 頻度不明
咽喉絞扼感 頻度不明
咽喉頭不快感 頻度不明
咽喉頭疼痛 頻度不明
咽頭紅斑 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嚥下障害 頻度不明
四肢痛 頻度不明
多幸気分 頻度不明
多飲症 頻度不明
夜間頻尿 頻度不明
失神 頻度不明
失見当識 頻度不明
好中球数減少 頻度不明
季節性鼻炎 頻度不明
尿失禁 頻度不明
弱視 頻度不明
徐脈 頻度不明
心電図QT延長 頻度不明
悪心 頻度不明
感情障害 頻度不明
感染性筋炎 頻度不明
感覚鈍麻 頻度不明
振戦 頻度不明
排便痛 頻度不明
易刺激性 頻度不明
末梢性ニューロパシー 頻度不明
歯痛 頻度不明
毛包炎 頻度不明
気分変動 頻度不明
気分循環性障害 頻度不明
注射部位反応 頻度不明
注射部位疼痛 頻度不明
注射部位硬結 頻度不明
浮動性めまい 頻度不明
消化不良 頻度不明
消化器痛 頻度不明
湿疹 頻度不明
炎症 頻度不明
無力症 頻度不明
爪の障害 頻度不明
爪変色 頻度不明
異常な夢 頻度不明
異常便 頻度不明
異常感 頻度不明
異常感覚 頻度不明
疲労 頻度不明
発声障害 頻度不明
発疹 頻度不明
白色便 頻度不明
白血球数減少 頻度不明
皮膚刺激 頻度不明
皮膚剥脱 頻度不明
皮膚灼熱感 頻度不明
真菌感染 頻度不明
眼乾燥 頻度不明
眼刺激 頻度不明
眼痛 頻度不明
着色尿 頻度不明
第一度房室ブロック 頻度不明
筋損傷 頻度不明
筋痙縮 頻度不明
筋痛 頻度不明
筋緊張 頻度不明
筋骨格痛 頻度不明
精神運動亢進 頻度不明
紅斑 頻度不明
耳感染 頻度不明
耳漏 頻度不明
耳痛 頻度不明
肋軟骨炎 頻度不明
肋骨骨折 頻度不明
肝脾腫大 頻度不明
肺気腫 頻度不明
肺障害 頻度不明
胃食道逆流性疾患 頻度不明
背部痛 頻度不明
胸痛 頻度不明
胸部不快感 頻度不明
脂肪織増加 頻度不明
脱毛症 頻度不明
腹痛 頻度不明
腹部不快感 頻度不明
腹部膨満 頻度不明
舌痛 頻度不明
良性前立腺肥大症 頻度不明
薬物不耐性 頻度不明
蛋白尿 頻度不明
血中カリウム増加 頻度不明
血中カリウム減少 頻度不明
血中クレアチニン増加 頻度不明
血中クレアチンホスホキナーゼ増加 頻度不明
血中コレステロール増加 頻度不明
血中トリグリセリド増加 頻度不明
血中鉄減少 頻度不明
血小板数減少 頻度不明
血尿 頻度不明
記憶障害 頻度不明
貧血 頻度不明
起立性低血圧 頻度不明
転倒 頻度不明
過角化 頻度不明
錯感覚 頻度不明
頚部痛 頻度不明
頭痛 頻度不明
頻脈 頻度不明
食欲亢進 頻度不明
食欲減退 頻度不明
骨盤痛 頻度不明
高トリグリセリド血症 頻度不明
高血糖 頻度不明
黄疸 頻度不明
鼓腸 頻度不明
鼓膜充血 頻度不明
鼡径部腫瘤 頻度不明
鼻乾燥 頻度不明
鼻咽頭炎 頻度不明
鼻閉 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

マラビロクは、HIVが細胞に侵入する際に利用する補受容体であるCC Chemokine Receptor 5(CCR5)阻害剤である。マラビロクは、細胞膜上のCCR5に選択的に結合し、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120とCCR5との相互作用を遮断することにより、CCR5指向性HIV-1の細胞内への侵入を阻害する。なお、マラビロクは、CXCR4指向性及びCCR5/CXCR4二重指向性HIV-1の細胞内への侵入を阻害しない20) 。

18.2 抗ウイルス作用

CCR5指向性HIV-1初代臨床分離株43株においてマラビロクの抗ウイルス活性を評価した結果、マラビロクのIC90値はウイルスのサブタイプ間で有意な差はなく、その平均値は血清補正後の非結合型濃度として0.57ng/mLであった。一方、CXCR4使用ウイルス注)に対する抗ウイルス作用は示さなかった。HIV-2に対するマラビロクの抗ウイルス活性は検討されていない20),21) 。 ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI:アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、テノホビル、ザルシタビン、ジドブジン)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI:デラビルジン、エファビレンツ、ネビラピン)、プロテアーゼ阻害剤(アンプレナビル、アタザナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル)、又はHIV融合阻害剤(enfuvirtide)とマラビロクを併用した場合、抗ウイルス活性に拮抗作用は認められなかった20) 。 注)CXCR4使用ウイルス:CXCR4指向性又はCCR5/CXCR4二重指向性ウイルス

18.3 耐性

  1. 18.3.1In vitro試験

CCR5指向性HIV-1臨床分離株2株を連続継代培養した結果、マラビロクに対する感受性が低下した変異株が分離された。これらのマラビロク耐性ウイルスはCCR5指向性を維持しており、CXCR4指向性又はCCR5/CXCR4二重指向性への変化は認められなかった22) 。

  1. (1)表現型耐性

マラビロク耐性ウイルスの特徴は、in vitro抗ウイルス作用試験でマラビロクが100%阻害作用を示さないことであった22) 。表現型耐性の指標として通常用いられるIC50値は、マラビロクに対する感受性の低下にもかかわらず変動しない場合があり、表現型耐性の判定には有用ではない。

  1. (2)遺伝子型耐性

アミノ酸残基の変異はgp120に集中していた。しかしながら、変異の部位は分離株ごとに異なっており、これらの変異とマラビロク感受性との関連は明らかではない22) 。

  1. (3)交差耐性

培養細胞を用いた系で、マラビロクは、NRTI、NNRTI、プロテアーゼ阻害剤及びenfuvirtideに耐性を有するHIV-1臨床分離株に対し、抗ウイルス活性を示した。In vitroで生じたマラビロク耐性ウイルスは、enfuvirtide及びサキナビルに対し、感受性を維持していた23) 。

  1. 18.3.2臨床試験

抗HIV薬による治療歴のあるCCR5指向性HIV-1感染患者を対象とした試験(試験A4001027及び試験A4001028)において、スクリーニング期からベースライン時までの間(4~6週間)で、7.6%の被験者のウイルスの指向性がCCR5指向性からCXCR4指向性又は二重/混合指向性へ変化した23),24) 。 また、抗HIV薬による治療歴のない患者を対象とした試験(試験A4001026)において、スクリーニング期からベースライン時までの間(4~6週間)で、3.6%の被験者のウイルスの指向性がCCR5指向性からCXCR4指向性又は二重/混合指向性へ変化した。

  1. (1)CXCR4使用ウイルスを伴う治療の失敗

マラビロクによる治療が成功しなかった患者の約60%において、治療失敗時にCXCR4使用ウイルスが検出された。これに対し、プラセボ群(最適背景療法の併用)の治療失敗例でCXCR4使用ウイルスが検出された患者数は6%であった。これらのCXCR4使用ウイルスの起源を検討するため、治療失敗時にCXCR4使用ウイルスが検出された20例(マラビロク群16例、プラセボ群4例)のウイルスのクローン分析を行った結果、CXCR4使用ウイルスは、指向性変異(CCR5指向性ウイルスがCXCR4指向性に変化した)によるのではなく、治療前の指向性検査では検出することのできなかったわずかな量のCXCR4使用ウイルスに由来することが示唆された。 ベースライン時にはCCR5指向性ウイルスを有したがその後CXCR4使用ウイルスが検出され治療が失敗した患者のうち38例で、投与中止後35日間以上の追跡観察を行った。これら38例のうち、最終観察までにCCR5指向性に戻らなかった症例は、3例のみであった。 CXCR4使用ウイルスが検出された治療失敗時の他の抗HIV薬に対する耐性パターンは、ベースライン時のCCR5指向性ウイルスと変わらなかった。したがって、抗HIV薬療法を選択する際には、ベースライン時には検出できないCXCR4使用ウイルスが、ベースライン時に検出されるCCR5指向性ウイルスと同じ耐性パターンを有している可能性を考慮する必要がある23),24) 。

  1. (2)CCR5指向性ウイルスを伴う治療の失敗

表現型耐性:マラビロクによる治療の失敗時にCCR5指向性ウイルスが検出された58例中、22例でマラビロクに対する感受性が低下したウイルスが認められた。一方、他の36例では感受性の低下はみられなかった。これらの症例では、コンプライアンスが不良であったことを示唆する血中濃度の低値あるいはばらつきが認められた。 遺伝子型耐性:V3ループのアミノ酸変異は多様であり、また現時点では検討例が少数のため、マラビロクに対する感受性低下と関連した特定の変異は明らかではない23),25),26) 。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回経口投与

健康成人男性12例に本剤300mgを空腹時単回経口投与した時、マラビロクは投与後1.5~5.0時間(中央値では3.0時間)に最高血漿中濃度(Cmax)に到達した。Cmax及び血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-inf)の幾何平均値(変数係数%)はそれぞれ736ng/mL(42%)及び2763ng・h/mL(29%)であり、終末相の消失半減期(t1/2)の算術平均値(変数係数%)は13.0時間(23%)であった。 健康成人を対象に本剤300mgを単回経口投与した時、マラビロクは投与後0.5~4時間(中央値では2時間)でCmaxに到達した3) 。 健康成人を対象にマラビロク1~1200mg注)を単回経口投与した時、マラビロクの薬物動態は投与量に比例しなかった4) (外国人データ)。

  1. 16.1.2反復経口投与

健康成人及びHIV感染患者にマラビロクを投与した時の定常状態の薬物動態パラメータを表1に示す5) (外国人データ)。

マラビロクの用量 例数 Cmax
(ng/mL)
AUC12
(ng・h/mL)
Cmin
(ng/mL)
健康成人
(第Ⅰ相)
300mg 1日2回 64 888 2908 43.1
無症候性
HIV感染患者
(第Ⅱa相)
300mg 1日2回 8 618 2550 33.6
治療歴のあるHIV感染患者
(第Ⅲ相)注1)
300mg 1日2回 94 266 1513 37.2
150mg 1日2回
(CYP3A4阻害剤併用)
375 332 2463 101

注1)患者の血漿中濃度データを用いた母集団薬物動態解析により各パラメータを推定した。

16.2 吸収

  1. 16.2.1食事の影響

健康成人を対象にマラビロク300mgを高脂肪食(朝食)と共に投与した時、マラビロクのCmax及びAUCは33%低下した6) 。HIV-1感染患者を対象とした海外臨床試験では食事制限を設定することなく有効性及び安全性が示されているため、マラビロクは食事の有無にかかわらず定められた用法及び用量を投与することができる6) (外国人データ)。

  1. 16.2.2バイオアベイラビリティ

健康成人にマラビロク100 mg注)を経口投与した時の絶対的バイオアベイラビリティは23%であり7) 、300mgでは33%と推定されている7) (外国人データ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1分布容積

健康成人にマラビロク100 mg注)を投与した時の分布容積は約194Lであった7) (外国人データ)。

  1. 16.3.2血漿蛋白結合率

In vitroでのマラビロクのヒト血漿蛋白結合率は約76%であった8),9) 。

  1. 16.3.3結合蛋白

In vitroで、マラビロクはアルブミン及びα1酸性糖蛋白と中等度の親和性を示す9) 。

16.4 代謝

  1. 16.4.1主な代謝酵素

ヒトにおける試験及びヒト肝ミクロソームと発現酵素系ミクロソームにおけるin vitro試験から、マラビロクは主にCYPを介し、HIV-1に対する効果を持たない代謝物に変換されることが示されている。In vitroで、主な代謝酵素はCYP3A4であり、CYP2C9、CYP2D6、及びCYP2C19の代謝への寄与は小さいことが示されている。

  1. 16.4.2In vivo試験

14C-マラビロク300mgを単回経口投与した時、血漿中には主として未変化体(マラビロク)が存在し、体循環している放射能の約42%を占めた。血漿中の主な代謝物はN-脱アルキル化によって形成される2級アミンであり、体循環している放射能の約22%を占めた。この極性代謝物に顕著な薬理活性はない。その他の代謝物はモノ酸化体であるが、血漿中の放射能としては微量成分であった4),7),10) (外国人データ)。

16.5 排泄

健康成人を対象にマラビロクを経口投与した時、定常状態におけるマラビロクの終末相の半減期は、14~18時間であった。14C-マラビロク300mgを単回投与したマスバランス試験において、投与後168時間で放射能の約20%が尿中に回収され、76%が糞便中に回収された。尿中及び糞便中へは主として未変化体として排泄され、それぞれ投与量の8%及び25%(平均値)であった。その他は代謝物として排泄された7) (外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

マラビロクの腎クリアランスは、CYP3A4を阻害する薬剤の非併用時では総クリアランスの約23%であるが、併用時では約70%を占める可能性がある。 腎機能障害患者における薬物動態のシミュレーション検討結果から、強力なCYP3A4阻害剤との併用時には、マラビロクの血中濃度が増加するため、投与量を減量する必要がある。

  1. (1)腎機能正常被験者6例、重度(Ccr<30mL/min)腎機能障害患者6例、及び週3回透析を行っている患者6例にマラビロク300mg単回投与を行った。AUCinf(変動係数%)は、腎機能正常被験者1348.4ng・h/mL(61%)、重度腎機能障害患者4367.7ng・h/mL(52%)、透析患者(透析後投与時)2677.4ng・h/mL(40%)、透析患者(透析前投与時)2805.5ng・h/mL(45%)であった。Cmax(変動係数%)はそれぞれ、335.6ng/mL(87%)、801.2ng/mL(56%)、576.7ng/mL(51%)、478.5ng/mL(38%)であった。なお、マラビロクの透析クリアランス(変動係数%)は36.4mL/min(33%)であった(外国人データ)。

  2. (2)腎機能正常被験者6例にマラビロク150mg(12時間毎)とサキナビル1000mg+リトナビル100mg BIDの併用、軽度(Ccr>50~≦80mL/min)腎機能障害患者6例にマラビロク150mg(24時間毎)とサキナビル1000mg+リトナビル100mg BIDの併用、中等度(Ccr≧30~≦50mL/min)腎機能障害患者6例にマラビロク150mg(48時間毎注))とサキナビル1000mg+リトナビル100mg BIDの併用にて7日間経口投与をした時、腎機能正常被験者と比べて軽度腎機能障害患者ではAUCtau、Cmaxはそれぞれ52%、21%上昇し、Cminは43%低下した。また、中等度腎機能障害患者ではAUCtauは16%上昇し、Cmax及びCminはそれぞれ29%、85%低下した。 したがって、腎機能障害があり、強力なCYP3A4阻害剤を投与している患者では、マラビロクの投与量を150mg QDに調整する必要がある。なお、投与間隔を24時間以上とした場合は、投与後24~48時間のマラビロクの曝露が不十分になる可能性がある(外国人データ)。

  3. 16.6.2肝機能障害患者

マラビロクは主に肝臓で代謝され消失する。軽度(Child-Pugh分類A:8例)又は中等度(Child-Pugh分類B:8例)の肝機能障害を有する患者にマラビロク300mgを単回投与した時のマラビロクの薬物動態が検討されている。肝機能の正常な被験者(8例)と比較して軽度の肝機能障害患者のCmax及びAUC(平均値)はそれぞれ11%及び25%、中等度の肝機能障害患者ではそれぞれ32%及び46%高い値を示した11) 。重度の肝機能障害を有する患者の薬物動態は検討されていない(外国人データ)。

  1. 16.6.3小児等

小児患者における本剤の薬物動態は確立されていない(外国人データ)。

  1. 16.6.4年齢

臨床第Ⅰ相、第Ⅱa相及び第Ⅲ相試験データを用いた母集団薬物動態解析の結果、年齢(16~65歳)の影響は認められなかった12),13) (外国人データ)。

  1. 16.6.5性別

臨床第Ⅰ相及び第Ⅱa相試験データを用いた母集団薬物動態解析の結果、性別(女性:96例、全集団の23.2%)はマラビロクの血中濃度には影響を及ぼさないことが示されている12) 。性別による用量調節は不要である(外国人データ)。

  1. 16.6.6人種

臨床第Ⅰ相及び第Ⅱa相試験データを用いた母集団薬物動態解析では、アジア人(95例)及び黒人(14例)が含まれた。母集団薬物動態解析においてアジア人と非アジア人(318例)で人種の影響を検討したところアジア人の曝露量が26.5%高いことが示されたが、薬物動態試験による白人(12例)とアジア人(12例)の比較では、両集団に薬物動態の相違は認められなかった12),14) 。人種に基づく用量調節は不要である(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1In vitro試験

  2. (1)分布・排泄に関わるトランスポーター

In vitroにおいてマラビロクはP糖蛋白質(P-gp)及びOATP1B1の基質であり、P-gpを阻害する(IC50:183μM)8) 。

  1. (2)代謝酵素阻害

in vitroで、臨床的に意味のある濃度でCYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4の活性を阻害しなかった10) 。

  1. 16.7.2併用薬がマラビロクの薬物動態に及ぼす影響

  2. (1)CYP3A4又は、CYP3A4及びP-gpを阻害する薬剤のケトコナゾール、リトナビル、サキナビル、ロピナビル・リトナビル、アタザナビル、ダルナビル、テラプレビルは、いずれもマラビロクのCmax及びAUCを増大させた(表2)。CYP3A4誘導薬剤のエファビレンツ、エトラビリン及びリファンピシンはマラビロクのCmax及びAUCを低下させた。

  3. (2)tipranavir+リトナビル(CYP3A4阻害及びP-gp誘導作用を有する)は、マラビロクの定常状態の薬物動態に影響を及ぼさなかった。 マラビロクの腎クリアランスはCYP3A4阻害剤の非併用時では、総クリアランスの約23%であった7) 。腎で消失する薬剤とマラビロクの消失が競合する可能性があるが、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤(トリメトプリムは腎カチオン輸送を阻害)及びテノホビル(腎で消失)は、マラビロクの薬物動態に影響を及ぼさなかった15) (外国人データ)。

併用薬及び用量 例数 マラビロクの用量注) マラビロクの薬物動態パラメータの比(併用薬の併用時/非併用時)及び90%信頼区間(影響なし=1.00)
Cmax AUCtau Cmin
CYP3A4又は、CYP3A4及びP-gpを阻害する薬剤
ケトコナゾール400mg QD16) 12 100mg BID 3.38
(2.38, 4.78)
5.00
(3.98, 6.29)
3.75
(3.01, 4.69)
リトナビル100mg BID16) 8 100mg BID 1.28
(0.79, 2.09)
2.61
(1.92, 3.56)
4.55
(3.37, 6.13)
サキナビル(ソフトゲルカプセル)+リトナビル
1000mg+100mg BID16)
11 100mg BID 4.78
(3.41, 6.71)
9.77
(7.87, 12.14)
11.3
(8.96, 14.1)
ロピナビル・リトナビル400 mg・100mg BID16) 11 300mg BID 1.97
(1.66, 2.34)
3.95
(3.43, 4.56)
9.24
(7.98, 10.7)
アタザナビル400mg QD16) 12 300mg BID 2.09
(1.72, 2.55)
3.57
(3.30, 3.87)
4.19
(3.65, 4.80)
アタザナビル+リトナビル
300mg+100mg QD16)
12 300mg BID 2.67
(2.32, 3.08)
4.88
(4.40, 5.41)
6.67
(5.78, 7.70)
ダルナビル+リトナビル
600mg+100mg BID16)
12 150mg BID 2.29
(1.46, 3.59)
4.05
(2.94, 5.59)
8.00
(6.35, 10.1)
テラプレビル750mg TID 14 150mg BID 7.81
(5.92, 10.32)
9.49
(7.94, 11.34)
10.17
(8.73, 11.85)
CYP3A4又は、CYP3A4及びP-gpを誘導する薬剤
エファビレンツ600mg QD16) 12 100mg BID 0.486
(0.377, 0.626)
0.552
(0.492, 0.620)
0.55
(0.43, 0.72)
エトラビリン200mg BID16) 14 300mg BID 0.400
(0.282, 0.566)
0.468
(0.381, 0.576)
0.609
(0.525, 0.707)
リファンピシン600mg QD16) 12 100mg BID 0.335
(0.260, 0.431)
0.368
(0.328, 0.413)
0.22
(0.17, 0.28)
ネビラピン注1)(+ラミブジン+テノホビル)
200mg BID(+150mg BID+300mg QD)16)
8 300mg 単回 1.54
(0.94, 2.51)
1.01
(0.65, 1.55)
-
CYP3A4又は、CYP3A4及びP-gpを阻害及び誘導する薬剤
ロピナビル・リトナビル+エファビレンツ
400mg・100mg BID+600mg QD16)
11 300mg BID 1.25
(1.01, 1.55)
2.53
(2.24, 2.87)
6.29
(4.72, 8.39)
サキナビル(ソフトゲルカプセル)+リトナビル+エファビレンツ
1000mg+100mg BID+600mg QD16)
11 100mg BID 2.26
(1.64, 3.11)
5.00
(4.26, 5.87)
8.42
(6.46, 10.97)
ダルナビル+リトナビル+エトラビリン
600mg+100mg BID+200mg BID16)
10 150mg BID 1.77
(1.20, 2.60)
3.10
(2.57, 3.74)
5.27
(4.51, 6.15)
tipranavir+リトナビル
500mg+200mg BID16)
12 150mg BID 0.86
(0.61, 1.21)
1.02
(0.850, 1.23)
1.80
(1.55, 2.09)
CYP3A4又は、CYP3A4及びP-gpを阻害及び誘導しない薬剤
ラルテグラビル400mg BID 17 300mg BID 0.79
(0.67, 0.94)
0.86
(0.80, 0.92)
0.90
(0.85, 0.96)

注1)マラビロク単独療法の試験成績との比較

  1. 16.7.3マラビロクが併用薬の薬物動態に及ぼす影響

マラビロクはジゴキシン(P糖蛋白の基質)の薬物動態に臨床的に意味のある影響を及ぼさなかった。 マラビロクは、ジドブジン(CYP以外による代謝及び腎で消失)又はラミブジン(主に腎で消失)の薬物動態に影響を及ぼさなかった17) 。マラビロクは、ミダゾラム、経口避妊薬(エチニルエストラジオール及びレボノルゲストレル)の薬物動態には臨床的に意味のある影響を及ぼさなかった17) 。また、尿中6β-ヒドロキシコルチゾール/コルチゾール比にも影響はなく、マラビロクはin vivoにおいてCYP3A4を誘導しないことが示唆された4) 。マラビロクの曝露量が増加した場合にマラビロクがCYP2D6を阻害する可能性は否定できないが、in vitro試験及び臨床試験成績から併用薬の薬物動態に影響を与える可能性は低いものと考えられる(外国人データ)。 注)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはマラビロクとして1回300mgを1日2回経口投与する。なお、投与に際しては必ず他の抗HIV薬を併用し、併用薬に応じて適宜増減すること。」である。