Clinical snapshot

シプロフロキサシン点滴静注液400mg「ニプロ」

シプロフロキサシン注射液

添付文書改訂 2023年12月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  • 〈効能共通〉
  1. 2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2ケトプロフェン(注射剤、坐剤)を投与中の患者

  3. 2.3チザニジン塩酸塩を投与中の患者

  4. 2.4ロミタピドメシル酸塩を投与中の患者

  • 〈炭疽以外〉
  1. 2.5妊婦又は妊娠している可能性のある女性
  • 〈複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、嚢胞性線維症、炭疽以外〉
  1. 2.6小児等

効能・効果

  • 成人

  • 〈適応菌種〉

本剤に感性のブドウ球菌属、腸球菌属、炭疽菌、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、緑膿菌、レジオネラ属

  • 〈適応症〉

敗血症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎、腹膜炎、胆嚢炎、胆管炎、炭疽

  • 小児

  • 一般感染症

  • 〈適応菌種〉

本剤に感性の炭疽菌、大腸菌、緑膿菌

  • 〈適応症〉

複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、炭疽

  • 嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染に伴う症状の改善

用法・用量

  • 成人

通常、シプロフロキサシンとして、1回400mgを1日2回、1時間かけて点滴静注する。患者の状態に応じて1日3回に増量できる。

  • 小児

  • 〈一般感染症〉

複雑性膀胱炎、腎盂腎炎:通常、シプロフロキサシンとして、1回6~10mg/kgを1日3回、1時間かけて点滴静注する。ただし、成人における1回量400mgを超えないこととする。 炭疽:通常、シプロフロキサシンとして、1回10mg/kgを1日2回、1時間かけて点滴静注する。ただし、成人における1回量400mgを超えないこととする。

  • 〈嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染に伴う症状の改善〉

通常、シプロフロキサシンとして、1回10mg/kgを1日3回、1時間かけて点滴静注する。ただし、成人における1回量400mgを超えないこととする。

使用上の注意

  1. 8.1本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。

  2. 8.1.1事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。

  3. 8.1.2投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。

  4. 8.1.3投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。

  5. 8.2大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、観察を十分に行うとともに、腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。

  6. 8.3本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、じん麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者

  2. 9.1.2うっ血性心不全、腎不全、ネフローゼ症候群等、ナトリウムの摂取が問題となる患者

本剤には塩化ナトリウムが含まれている。

  1. 9.1.3てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者

痙攣を起こすことがある。

  1. 9.1.4重症筋無力症患者

症状を悪化させることがある。

  1. 9.1.5QT延長を起こすおそれのある患者

QT延長を起こすことがある。

  1. 9.1.6大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者

必要に応じて画像検査の実施を考慮すること。海外の疫学研究において、フルオロキノロン系抗菌薬投与後に大動脈瘤及び大動脈解離の発生リスクが増加したとの報告がある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1高度の腎障害のある患者

慎重に投与すること。高い血中濃度が持続する。

9.5 妊婦

  • 〈炭疽以外〉
  1. 9.5.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
  • 〈炭疽〉
  1. 9.5.2妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性を考慮して投与すること。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。母乳中へ移行することが報告されている。

9.7 小児等

  • 〈複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、嚢胞性線維症、炭疽以外〉
  1. 9.7.1投与しないこと。動物実験(幼若イヌ、幼若ラット)で関節毒性が認められている。幼若ラット及び幼若ビーグル犬を用いた反復投与試験(経口)において、関節軟骨のびらん等が認められた。成熟動物(サル)を用いた反復静脈内投与試験においてはいずれの試験でも関節毒性は認められなかった。
  • 〈複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、嚢胞性線維症、炭疽〉
  1. 9.7.2本剤の投与についてはリスクとベネフィットを考慮し慎重に判断すること。関節障害が発現するおそれがある。複雑性尿路感染症又は腎盂腎炎の小児患者を対象とした臨床試験において、関節症と判断された被験者の割合はシプロフロキサシン9.3%(31/335例)、対照薬6.0%(21/349例)であった2)。低出生体重児、新生児又は乳児を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  1. 9.8.1腱障害があらわれやすいとの報告がある。

  2. 9.8.2腎機能に十分注意し、患者の状態を観察しながら用量並びに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること。本剤は主として腎臓から排泄され、高齢者では腎機能が低下していることが多い。

相互作用

  • 本剤はチトクロームP4501A2(CYP1A2)を阻害するので、本酵素で代謝される薬剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させるおそれがある。

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
ケトプロフェン(注射剤、坐剤)(カピステン等) 痙攣を起こすことがあるので、併用しないこと。 併用により、ニューキノロン系抗菌剤のGABAA受容体への阻害作用が増強され、痙攣が誘発されると考えられている。
てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者、腎障害のある患者では特に注意すること。
チザニジン塩酸塩(テルネリン) チザニジンのCmaxが7倍、AUCが10倍それぞれ上昇し、血圧低下、傾眠、めまい等があらわれたとの報告がある。チザニジンの作用を増強させるおそれがあるので、併用しないこと。 チザニジンの肝での代謝を阻害し、チザニジンの血中濃度を上昇させると考えられている。
ロミタピドメシル酸塩(ジャクスタピッド) ロミタピドの血中濃度が著しく上昇するおそれがある。 ロミタピドの代謝酵素(CYP3A4)が阻害されるおそれがある。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
テオフィリン
アミノフィリン水和物
テオフィリンのCmaxが17%、AUCが22%それぞれ上昇したとの報告がある3)。テオフィリンの作用を増強させる可能性があるので、併用する場合にはテオフィリンを減量するなど適切な処置を行うこと。 テオフィリンの肝での代謝を抑制し、クリアランスを減少させるためと考えられている。肝障害のある患者、高齢者では特に注意すること。
カフェイン
デュロキセチン塩酸塩
これらの薬剤の血中濃度が上昇することがある。 これらの薬剤の肝での代謝を抑制し、クリアランスを減少させるためと考えられている。
フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤
• ジクロフェナク、アンフェナク等プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤(ただし、ケトプロフェン(注射剤、坐剤)とは併用禁忌)
• ロキソプロフェン、プラノプロフェン、ザルトプロフェン等
痙攣を起こすおそれがある。症状が認められた場合、両剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 併用により、ニューキノロン系抗菌剤のGABAA受容体への阻害作用が増強され、痙攣が誘発されると考えられている。
てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者、腎障害のある患者では特に注意すること。
シクロスポリン 相互に副作用(腎障害等)が増強されるおそれがあるので、頻回に腎機能検査(クレアチニン、BUN等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること。 発現機序の詳細は不明であるが、相互に肝での代謝を抑制し、一方又は両方の血中濃度が上昇するためと考えられている。肝障害のある患者、高齢者では特に注意すること。
ワルファリン ワルファリンの作用を増強し、出血、プロトロンビン時間の延長等があらわれることがある。本剤を併用する場合は、プロトロンビン時間国際標準比(INR)値等を測定するなど、観察を十分に行うこと。 発現機序の詳細は不明であるが、ワルファリンの肝での代謝を抑制し、クリアランスを減少させるためと考えられている。
スルホニル尿素系血糖降下剤
• グリメピリド、グリベンクラミド等
スルホニル尿素系血糖降下剤の作用を増強し、低血糖があらわれることがある。 発現機序の詳細は不明であるが、グリベンクラミドの肝での代謝を阻害するとの報告4)がある。また、膵臓のβ細胞を用いたin vitro試験において、本剤がインスリン分泌作用を促進するとの報告がある。
ロピニロール塩酸塩 ロピニロールのCmaxが60%、AUCが84%それぞれ上昇したとの報告がある。ロピニロールの投与中に本剤を投与開始又は投与中止する場合には、必要に応じてロピニロールの用量を調節すること。 併用により、ロピニロールの肝での代謝が阻害されるためと考えられている。
メトトレキサート メトトレキサートの血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがある。併用する場合には患者の状態を十分に観察すること。 発現機序の詳細は不明であるが、メトトレキサートの腎尿細管からの排泄が阻害されるためと考えられている。
クラスIA抗不整脈薬
• キニジン、プロカインアミド等クラスⅢ抗不整脈薬
• アミオダロン、ソタロール等
本剤を併用した場合、QT延長がみられるおそれがある。 併用により、QT延長作用が相加的に増加するおそれがある。
クロザピン
オランザピン
経口剤においてクロザピン及びその代謝物の血中濃度が29%と31%それぞれ上昇したとの報告がある。左記薬剤の投与中に本剤を投与開始又は投与中止する場合には、必要に応じて左記薬剤の用量調節をすること。 併用により、左記薬剤の肝での代謝が阻害されるためと考えられている。
シルデナフィルクエン酸塩 シルデナフィルのCmax及びAUCがそれぞれ約2倍上昇したとの報告がある。 CYP3A4阻害によりクリアランスが減少するとの報告もあるが、発現機序の詳細は不明である。
フェニトイン フェニトインの血中濃度が低下したとの報告がある。本剤を併用する場合は、フェニトインの血中濃度を測定するなど、観察を十分に行うこと。 機序不明
副腎皮質ホルモン剤(経口剤、注射剤)
• プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン等
腱障害のリスクが増大するとの報告がある。これらの薬剤との併用は、治療上の有益性が危険性を上回る場合のみとすること。 機序不明

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P上昇 頻度不明
ALT上昇 1〜5%未満
AST上昇 1〜5%未満
BUN上昇 頻度不明
CK上昇 頻度不明
LDH上昇 頻度不明
γ-GTP上昇 頻度不明
クレアチニン上昇 1〜5%未満
じん麻疹 1〜5%未満
そう痒 1〜5%未満
プロトロンビン量増加 頻度不明
ヘマトクリット減少 頻度不明
ヘモグロビン減少 頻度不明
ほてり 頻度不明
めまい 1〜5%未満
モニリア症 頻度不明
一過性難聴 頻度不明
下痢 1〜5%未満
不安 頻度不明
不眠症 頻度不明
低血圧 頻度不明
倦怠感 頻度不明
光線過敏症 頻度不明
口内炎 頻度不明
味覚異常 頻度不明
呼吸困難 頻度不明
咽頭) 1〜5%未満
嗅覚錯誤 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嘔気 1〜5%未満
固定薬疹 頻度不明
失神 頻度不明
失調 頻度不明
好酸球増多 1〜5%未満
幻覚 頻度不明
悪夢 頻度不明
意識障害 頻度不明
振戦 頻度不明
末梢性ニューロパシー(しびれ感等) 頻度不明
注射部位反応(血管痛 1〜5%未満
浮腫(末梢 1〜5%未満
消化不良 頻度不明
溶血性貧血 頻度不明
激越 頻度不明
炎症等) 1〜5%未満
点状出血 頻度不明
無力症 頻度不明
無嗅覚 頻度不明
片頭痛 頻度不明
発汗 頻度不明
発熱 1〜5%未満
発疹 1〜5%未満
発赤(結節性紅斑) 頻度不明
白血球増加 頻度不明
白血球減少 頻度不明
眠気 頻度不明
眼内異物感 1〜5%未満
筋無力症 頻度不明
筋緊張亢進 頻度不明
筋肉痛 頻度不明
精神病 頻度不明
紅斑 1〜5%未満
結晶尿 頻度不明
耳鳴 頻度不明
胃不快感 1〜5%未満
背部痛 頻度不明
胸痛 頻度不明
腹痛 頻度不明
腹部膨満感 頻度不明
膵炎 頻度不明
血小板増加 頻度不明
血尿 頻度不明
血清病様反応 頻度不明
血管 1〜5%未満
視覚異常 頻度不明
貧血 1〜5%未満
赤血球減少 頻度不明
関節痛 頻度不明
関節障害 頻度不明
静脈炎 1〜5%未満
頭痛 1〜5%未満
頭蓋内圧亢進 頻度不明
頻脈 頻度不明
顔面 1〜5%未満
食欲不振 頻度不明
高血糖 1〜5%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

細菌のDNAジャイレースに作用し、DNA合成を阻害する。抗菌作用は殺菌的で溶菌作用が認められる。最小発育阻止濃度は最小殺菌濃度とほぼ一致し、細菌の対数増殖期だけでなく休止期にも作用する23)。

18.2 抗菌作用

  1. 18.2.1グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し広い抗菌スペクトルを有し、ブドウ球菌属、腸球菌属、炭疽菌、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、緑膿菌、レジオネラ属に対して優れた抗菌作用(in vitro)を示す。なお、ブドウ球菌属、腸球菌属、大腸菌、エンテロバクター属(Enterobacter cloacae)及び緑膿菌においては経口剤承認時に比べて感受性の低下傾向が認められている24),25),26),27),28)。

  2. 18.2.2臨床分離株に対する抗菌作用はグラム陽性菌においてMIC50が0.39~3.13μg/mL、グラム陰性菌においてはMIC50が≦0.025~1.56μg/mLである24)。

  3. 18.2.3黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌のマウス全身感染症モデルに静脈内及び経口投与した試験では、いずれの菌株においても静脈内投与の治療効果は経口投与より優れ、ED50値は約1/17~1/6倍である29)。

  4. 18.2.4雌雄アカゲザルに炭疽菌芽胞を吸入曝露させた後の肺炭疽に対する発症抑制効果が検討された。同菌株に対するMICは0.08μg/mLであった。吸入曝露24時間後よりシプロフロキサシンを30日間経口投与した結果、非治療群(10例中9例死亡:吸入曝露後3~8日以内)と比較し、シプロフロキサシン投与群(9例中1例死亡:投与終了後6日目)で有意な死亡率の低下が認められた30)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

日本人健康成人に1回200、300mgを1時間点滴静注した場合、血中未変化体濃度推移(1回200mg)及び薬物動態パラメータは以下のとおりである6),7)。

投与量 t1/2α
(hr)
t1/2β
(hr)
Cmax
(μg/mL)
Vc
(L)
Vss
(L)
CLtot
(L/hr)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
200mg 0.20
±0.01
3.5
±0.3
2.53
±0.16
29.1
±2.1
117.3
±16.0
30.3
±3.2
6.66
±0.73
300mg 0.12
±0.03
2.6
±0.3
3.33
±0.55
23.3
±7.4
111.8
±21.8
41.5
±9.3
7.49
±1.39

t1/2:半減期、Cmax:最高血中濃度、Vc:体循環分布容積 Vss:定常状態分布容積、CLtot:総クリアランス AUC:血中濃度時間曲線下面積

外国人健康成人に1回200~400mgを点滴静注した結果、本薬の薬物動態は400mgまで線形であることが示唆された8),9)。

  1. 16.1.2反復投与

日本人患者に1回400mgを1日2回又は1日3回1時間点滴静注反復投与した場合の投与開始3~6日目における薬物動態パラメータは以下のとおりである10)。

投与量 AUCτ,ss
(μg・hr/mL)
Cmax,ss
(μg/mL)
t1/2,ss※
(hr)
400mg 1日2回 25.8(23.4)
[21]
8.07(22.5)
[22]
2.44~8.10
[23]
400mg 1日3回 22.2(28.8)
[8]
8.14(24.1)
[8]
3.00~4.54
[8]

幾何平均(変動係数%)[例数] ※:範囲

  1. 16.1.3経口投与との比較

健康成人男子(20~22歳)6名を対象にシプロフロキサシン200mgを90分点滴静注により、シプロフロキサシン錠200mg及び300mg(100mg錠2錠または3錠)を経口投与により、クロスオーバー法にてそれぞれ単回投与した。シプロフロキサシン200mg点滴静注時の血中濃度は投与終了時に200mg経口投与時より1.5倍高いピーク値(Cmax)を示し、その後は比較的速やかに低下し、経口投与時と同様の推移で消失した。また、200mg点滴静注時のAUC0-∞は、経口投与時の1.2倍であった。なお、200mg点滴静注時の血中濃度を300mg経口投与時注1)と比較したとき、Cmaxは1.2倍、AUCは0.9倍であった。シプロフロキサシンの経口投与時のバイオアベイラビリティは、82.5%であった11)。

投与量 Cmax
(μg/mL)
tmax
(hr)
t1/2α
(hr)
t1/2β
(hr)
CLtot
(L/hr)
AUC
(μg・hr/mL)
300mg
経口投与
1.71
±0.17
0.98
±0.16
0.58
±0.14
3.40
±0.22
7.31
±0.50
200mg
経口投与
1.41
±0.09
0.98
±0.13
0.61
±0.10
3.49
±0.24
5.42
±0.21
200mg
点滴静注
(90分)
2.06
±0.07
1.50
±0.00
0.24
±0.05
3.89
±0.17
30.6
±1.3
6.60
±0.27

注1)経口剤の承認用量は、1回100~200mgを1日2~3回。炭疽に対しては1回400mgを1日2回。

16.3 分布

体液、組織内移行性は良好であり、喀痰、胆汁、死腔液、腹水への移行が認められた12),13),14)。 また、外国人で肺組織、胆汁、女性性器組織(腟、卵巣、卵管、子宮)、副鼻腔粘膜、前立腺で血中濃度と同程度若しくはそれ以上、腹膜及びその滲出液、腹水、皮膚、脂肪組織、扁桃で血中濃度と同程度の体液及び組織中濃度が認められている15)。

16.4 代謝

健康成人に1回300mgを1時間点滴静注した場合、血中及び尿中代謝物として脱エチレン体(M1)、N-硫酸抱合体(M2)、オキソ体(M3)の3種が検出されている。血中濃度推移から求めた未変化体に対する存在比はそれぞれ1.8%、4.8%、7.3%と低かった7)。

16.5 排泄

シプロフロキサシンは主として腎臓から排泄される。健康成人に1回300mgを1時間点滴静注した場合、投与量に対する投与後24時間までの尿中排泄率は未変化体:58.1%、代謝物M1:1.0%、M2:2.6%、M3:4.6%であり、未変化体と代謝物あわせて66.3%である7)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

  2. (1)クレアチニンクリアランス値(Ccr)により腎機能正常例(Ccr>90)(10例)、軽度障害者(61≦Ccr≦90)(11例)、中等度障害者(31≦Ccr≦60)(11例)及び、重度障害者(Ccr≦30)(10例)の4群に分け、1回400mg(重度障害者に対しては300mg)を8~12時間ごとにシプロフロキサシンを点滴静注にて反復投与したところ、腎機能低下に伴い血中濃度の上昇、半減期の延長及び尿中排泄率の低下が認められている16)(外国人データ)。

クレアチニンクリアランス投与量・投与間隔 Cmax
(mg/L)
1日目
AUC
(mg・hr/L)
1日目
AUC0-24c
(mg・hr/L)
5日目
t1/2
(hr)
1日目
CLtot
(L/hr/kg)
1日目
CLr
(L/hr/kg)
1日目
Ccr>90a
400mg8時間ごと
(10例)
3.80
(14)
10.2
(19)
32.5
(18)
4.59
(16)
0.45
(20)
0.234
(12)
61≦Ccr≦90a
400mg8時間ごと
(11例)
4.59
(20)b
15.4
(22)b
50.4
(22)b
5.23
(32)
0.33
(19)b
0.138
(80)
31≦Ccr≦60a
400mg12時間ごと
(11例)
5.35
(28)b
21.5
(26)b
48.3
(24)b
5.72
(13)b
0.23
(20)b
0.087
(47)b
Ccr≦30a
300mg12時間ごと
(10例)
4.28
(21)b
30.1
(28)b
66.3
(29)b
8.33
(30)b
0.13
(26)b
0.018
(86)b

幾何平均(変動係数%) a:単位 mL/min/1.73m2 b:p<0.05(vs. Ccr>90a group) c:AUC0-τ, ss×投与回数/日 Ccr:クレアチニンクリアランス(24時間内因性クレアチニンクリアランス試験による) CLr:腎クリアランス

  1. (2)血液透析を受けている慢性腎障害患者7例を対象として、シプロフロキサシン400mgをクロスオーバー法により、血液透析終了直後及び血液透析開始2時間前にそれぞれ単回点滴静注(1時間)した際の薬物動態パラメータは以下のとおりである。パラメータに両投与時期間で大差は認められず、血液透析により除去されたシプロフロキサシンは10%程度と考えられた17)(外国人データ)。
投与時期 Cmax
(mg/L)
AUC0-48
(mg・hr/L)
AUC
(mg・hr/L)
AUCnorm
(kg・hr/L)
t1/2
(hr)
Vss
(L)
CLtot
(L/hr)
CLr
(L/hr)
CLd
(L/hr)
血液透析後 7.01
(44)
39.4
(41)
44.7
(56)
8.84
(50)
12.5
(68)
129.2
(22)
8.95
(56)
0.10
(169)
1.18
(85)
血液透析
2時間前
5.71
(45)
34.6
(45)
38.4
(55)
7.65
(45)
11.4
(62)
160.4
(27)
10.4
(55)
0.11
(158)
2.44
(37)

幾何平均(変動係数%)、7例 CLd(dialysate clearance):血液透析によるクリアランス AUCnorm:体重当たりの投与量(mg/kg)で標準化したAUC

  1. 16.6.2小児等

小児患者を対象とした母集団薬物動態解析の結果、非嚢胞性線維症小児患者(体重30kg、クレアチニンクリアランス100mL/minを想定)におけるクリアランス及び分布容積の母集団平均値はそれぞれ0.60L/h/kg及び2.16L/kgであり、承認用法・用量を投与した際の薬物動態は、小児患者と成人患者とで明らかな差はないことが推定された18)(外国人データ)。

  1. 16.6.3高齢者

高齢者(70~76歳)に1回200mg1日1回1時間点滴静注(1例)、1回300mg1日2回1時間点滴静注(4例)した場合、健康成人と比較してAUCの増加、CLtotの低下が認められ、またCmaxの増加、Vssの低下が示唆された12),13)。

投与量 年齢
(歳)
t1/2α
(hr)
t1/2β
(hr)
Cmax
(μg/mL)
Vc
(L)
Vss
(L)
CLtot
(L/hr)
AUC0-∞
(μg・hr/mL)
200mg
1時間点滴
71 0.27 2.6 3.51 24.9 69.0 28.8 6.95
300mg
1時間点滴
70 0.11 2.7 3.53 24.8 97.2 29.8 10.08
71 0.30 3.5 5.71 24.3 77.6 22.6 13.29
75 0.71 3.6 3.13 73.5 108.8 24.4 12.31
76 0.47 3.5 5.16 36.6 75.4 19.5 15.37