ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
-
2.2本剤の血中濃度が大幅に上昇するおそれがある以下の患者
-
2.2.1チトクロームP450(CYP)2D6の活性が通常の患者(Extensive Metabolizer、EM)で、以下に該当する患者
-
中等度以上の肝機能障害(Child-pugh分類B又はC)がある患者
-
軽度肝機能障害(Child-pugh分類A)があり、中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤を使用中の患者
-
軽度肝機能障害(Child-pugh分類A)があり、弱いCYP2D6阻害作用を有する薬剤と中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤の両方を使用中の患者
-
肝機能が正常であり、中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤と中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤の両方を使用中の患者
- 2.2.2CYP2D6の活性が低い患者(Intermediate Metabolizer、IM)で、以下に該当する患者
-
肝機能障害(Child-pugh分類A、B又はC)がある患者
-
肝機能が正常であり、中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤を使用中の患者
- 2.2.3CYP2D6の活性が欠損している患者(Poor Metabolizer、PM)で、以下に該当する患者
-
肝機能障害(Child-pugh分類A、B又はC)がある患者
-
肝機能が正常であり、中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤を使用中の患者
-
2.3QT延長のある患者(先天性QT延長症候群等)
-
2.4クラスIa(キニジン、プロカインアミド等)及びクラスIII(アミオダロン、ソタロール等)の抗不整脈薬又はベプリジル塩酸塩を使用中の患者
-
2.5妊婦又は妊娠している可能性のある女性
効能・効果
用法・用量
通常、CYP2D6 Extensive Metabolizer及びIntermediate Metabolizerの成人にはエリグルスタット酒石酸塩として1回100mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。
使用上の注意
- 8.1CYP2D6又はCYP3A阻害作用を有する薬剤等と併用した場合、本剤の血中濃度が高値となるおそれがあるため、本剤の使用にあたっては、次の点を患者に指導すること。
-
患者カード等を携帯し、他の医療機関・薬局を利用する場合には、本剤の使用を医師、歯科医師又は薬剤師に伝えること。
-
患者が併用するすべての医薬品等(CYP阻害作用を有する食品やサプリメントを含む)を担当医師に伝えること。
-
8.2患者が併用する薬剤について、CYP2D6又はCYP3A阻害作用を有する薬剤に該当するのか確認し、必要に応じて代替薬剤への切替えや本剤投与の中止を行うこと。
-
8.3本剤の血中濃度が大幅に上昇した場合、QT間隔、PR間隔、QRS間隔の延長のおそれがあるので、本剤投与開始時及び投与中は定期的に12誘導心電図(必要に応じてホルター心電図)を測定すること。
-
8.4酵素補充療法との併用に関する有効性及び安全性は確立されていない。
-
8.5めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意させること。
-
8.6鉄が不足している場合は、貧血の十分な改善効果を得るために、鉄分の補給を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1心疾患(うっ血性心不全、虚血性心疾患、心筋症、徐脈、心ブロック、重篤な心室性不整脈)のある患者
投与を避けることが望ましい。本剤の血中濃度が大幅に上昇した場合、QT間隔、PR間隔、QRS間隔の延長のおそれがある。
- 9.1.2失神の既往のある患者
投与を避けることが望ましい。本剤の血中濃度が大幅に上昇した場合、QT間隔、PR間隔、QRS間隔の延長のおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
腎機能障害患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.3 肝機能障害患者
- 9.3.1肝機能障害(Child-pugh分類A、B又はC)がある患者
以下の場合は本剤の血中濃度が大幅に上昇するおそれがあるため、投与しないこと。
-
CYP2D6の活性が低い患者(IM)
-
CYP2D6の活性が欠損している患者(PM)
- 9.3.2中等度以上の肝機能障害(Child-pugh分類B又はC)がある患者
CYP2D6の活性が通常(EM)であっても、本剤の血中濃度が大幅に上昇するおそれがあるため、投与しないこと。
-
9.3.3軽度肝機能障害(Child-pugh分類A)がある患者
-
(1)CYP2D6の活性が通常(EM)の場合、「7.用法及び用量に関連する注意」の項を参照し、用法及び用量の調整を行うこと。
-
(2)CYP2D6の活性が通常(EM)であっても、以下の場合は本剤の血中濃度が大幅に上昇するおそれがあるため、投与しないこと。
-
中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤を使用中の患者
-
弱いCYP2D6阻害作用を有する薬剤と中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤の両方を使用中の患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット)において、胎児の骨格異常及び脳室拡張が認められている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒトで哺乳中の児における影響は不明である。 動物実験(ラット)で乳汁移行が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。
相互作用
- 本剤は、主として薬物代謝酵素CYP2D6及び部分的にCYP3A4で代謝される。また、本剤はP糖タンパク質の基質である。 「2.禁忌」、「7.用法及び用量に関連する注意」、「8.重要な基本的注意」及び「10.相互作用」におけるCYP2D6又はCYP3A阻害作用を有すると考えられる薬剤の薬剤名は、下表のとおり。
| 薬剤名 | |
|---|---|
| CYP2D6阻害作用を有する薬剤 | • )強いCYP2D6阻害作用を有する薬剤• パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル) シナカルセト塩酸塩(レグパラ) テルビナフィン塩酸塩(ラミシール)等 • )中程度のCYP2D6阻害作用を有する薬剤• デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ) ミラベグロン(ベタニス)等 • )弱いCYP2D6阻害作用を有する薬剤• アビラテロン(ザイティガ) リトナビル(ノービア) セレコキシブ(セレコックス)等 |
| CYP3A阻害作用を有する薬剤 | • )強いCYP3A阻害作用を有する薬剤• クラリスロマイシン(クラリス) イトラコナゾール(イトリゾール) コビシスタット(スタリビルド) インジナビル硫酸塩エタノール付加物 (クリキシバン) リトナビル(ノービア) テラプレビル(テラビック) ボリコナゾール(ブイフェンド) ネルフィナビルメシル酸塩(ビラセプト) サキナビルメシル酸塩(インビラーゼ) 等 • )中程度のCYP3A阻害作用を有する薬剤• エリスロマイシン(エリスロシン) フルコナゾール(ジフルカン) アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ) シクロスポリン(サンディミュン) アプレピタント(イメンド) ジルチアゼム塩酸塩(ヘルベッサー)等 • )弱いCYP3A阻害作用を有する薬剤• シロスタゾール(コートリズム) ラニチジン(ザンタック) タクロリムス(グラセプター)等 |
注1)強い阻害作用を有する薬剤:典型基質のAUCを5倍以上上昇又はクリアランスを1/5以下に減少させると考えられる薬剤
注2)中程度の阻害作用を有する薬剤:典型基質のAUCを2倍以上5倍未満に上昇又はクリアランスを1/5から1/2以下に減少させると考えられる薬剤
注3)弱い阻害作用を有する薬剤:典型基質のAUCを1.25倍以上2倍未満に上昇又はクリアランスを1/2から1/1.25以下に減少させると考えられる薬剤
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
- 〈CYP2D6の活性が通常の患者(EM)で軽度肝機能障害(Child-pugh分類A)がある患者〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • 中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤 | 併用により本剤の血中濃度が上昇することによりQT延長等を生じるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP2D6阻害作用により本剤の代謝が阻害される。 |
| • 弱いCYP2D6阻害作用を有する薬剤と中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤の両方を併用 | 併用により本剤の血中濃度が上昇することによりQT延長等を生じるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP2D6及びCYP3A阻害作用により本剤の代謝が阻害される。 |
| • クラスIa抗不整脈薬• キニジン、プロカインアミド等 • クラスIII抗不整脈薬• アミオダロン、ソタロール等 • ベプリジル塩酸塩 |
併用によりQT延長等を生じるおそれがある。 | 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。 |
- 〈CYP2D6の活性が通常の患者(EM)で肝機能が正常な患者〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • 中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤と中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤の両方を併用 | 併用により本剤の血中濃度が上昇することによりQT延長等を生じるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP2D6及びCYP3A阻害作用により本剤の代謝が阻害される。 |
| • クラスIa抗不整脈薬• キニジン、プロカインアミド等 • クラスIII抗不整脈薬• アミオダロン、ソタロール等 • ベプリジル塩酸塩 |
併用によりQT延長等を生じるおそれがある。 | 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。 |
- 〈CYP2D6の活性が低い患者(IM)〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • 中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤 | 併用により本剤の血中濃度が上昇することによりQT延長等を生じるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP3A阻害作用により本剤の代謝が阻害される。 |
| • クラスIa抗不整脈薬• キニジン、プロカインアミド等 • クラスIII抗不整脈薬• アミオダロン、ソタロール等 • ベプリジル塩酸塩 |
併用によりQT延長等を生じるおそれがある。 | 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。 |
- 〈CYP2D6の活性が欠損している患者(PM)〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| • 中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤 | 併用により本剤の血中濃度が上昇することによりQT延長等を生じるおそれがある。 | これらの薬剤のCYP3A阻害作用により本剤の代謝が阻害される。 |
| • クラスIa抗不整脈薬• キニジン、プロカインアミド等 • クラスIII抗不整脈薬• アミオダロン、ソタロール等 • ベプリジル塩酸塩 |
併用によりQT延長等を生じるおそれがある。 | 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。 |
10.2 併用注意(併用に注意すること)
- 〈患者全体〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| グレープフルーツジュース | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。本剤の服用中はグレープフルーツジュースを飲用しないよう注意する。 | グレープフルーツジュースに含まれる成分がCYP3Aを阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。 |
| CYP3A誘導薬(リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等) | 本剤の血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。 | これらの薬剤のCYP3A誘導作用により、本剤の代謝が促進されるおそれがある。 |
| セントジョーンズワート | 本剤の血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。本剤の服用中はセントジョーンズワートを摂取しないよう注意する。 | セントジョーンズワートの肝代謝酵素誘導作用により、本剤の代謝が促進されるおそれがある。 |
| P糖タンパク質の基質薬(ジゴキシン、コルヒチン、ダビガトラン、フェニトイン等) | 本剤の併用によりジゴキシンの血中濃度が上昇することが報告されている。併用する場合は、これらの薬剤の用量に注意すること。 | 本剤がP糖タンパク質を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇するおそれがある。 |
| CYP2D6の基質薬(メトプロロール、三環系抗うつ剤(ノリトリプチリン、アミトリプチリン、イミプラミン)、フェノチアジン系薬剤、クラスIc抗不整脈薬(プロパフェノン、フレカイニド)等) | 本剤の併用によりメトプロロールの血中濃度が上昇することが報告されている。併用する場合は、これらの薬剤の用量に注意すること。 | 本剤がCYP2D6を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇するおそれがある。 |
- 〈CYP2D6の活性が通常の患者(EM)で軽度肝機能障害(Child-pugh分類A)がある患者〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| 中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤(CYP2D6阻害作用を有する薬剤を併用する場合を除く) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP3A阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
| 弱いCYP2D6阻害作用を有する薬剤(中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤を併用する場合を除く) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP2D6阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
| 弱いCYP3A阻害作用を有する薬剤(中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤を併用する場合を除く) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP3A阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
- 〈CYP2D6の活性が通常の患者(EM)で肝機能が正常な患者〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| 中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤(中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤を併用する場合を除く) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP2D6阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
| 中程度以上のCYP3A阻害作用を有する薬剤(中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤を併用する場合を除く) | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP3A阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
- 〈CYP2D6の活性が低い患者(IM)〉
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| 中程度以上のCYP2D6阻害作用を有する薬剤 | 本剤の血中濃度が上昇し、本剤の作用が増強されるおそれがある。 本剤の用法・用量の調整を行うこと。 |
これらの薬剤のCYP2D6阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| 上腹部痛 | 1〜5%未満 |
| 下痢 | 1〜5%未満 |
| 便秘 | 1〜5%未満 |
| 咳嗽 | 頻度不明 |
| 悪心 | 1〜5%未満 |
| 浮動性めまい | 1〜5%未満 |
| 消化不良 | 1〜5%未満 |
| 疲労 | 1〜5%未満 |
| 胃食道逆流性疾患 | 1〜5%未満 |
| 腹痛 | 1〜5%未満 |
| 腹部膨満 | 1〜5%未満 |
| 関節痛 | 1〜5%未満 |
| 頭痛 | 5%以上 |
| 鼓腸 | 1〜5%未満 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
ゴーシェ病はライソゾーム酵素であるグルコセレブロシダーゼの活性が低下することにより、グルコシルセラミドが主にマクロファージのライソゾームに蓄積し、肝及び脾の腫大、貧血及び血小板減少症、骨痛や骨の異常及び変形をもたらす。本剤はグルコシルセラミド合成酵素を選択的に阻害し、グルコシルセラミドの生成を抑制する19),20),21),22) 。
18.2 薬理作用
- 18.2.1グルコシルセラミド合成酵素阻害作用
ヒトメラノーマ細胞株から調製したミクロソームにおいて、グルコシルセラミド合成酵素を濃度依存的に阻害した(IC50値:19.6±0.68nmol/L)20) (in vitro)。
- 18.2.2グルコシルセラミド濃度低下作用
-
本剤を健康成人(外国人、男女)に50、200及び350mgの用量で1日2回反復投与したとき、血漿中グルコシルセラミド濃度は用量依存的に低下した23) 。
-
本剤は動物実験で正常ラット血漿中24) 及びイヌ末梢組織中25) のグルコシルセラミド濃度を低下させた。
-
本剤はD409V/nullゴーシェ病I型モデルマウスにおいて、組織へのグルコシルセラミドの経時的な蓄積を抑制した26) 。本剤は老齢のD409V/nullゴーシェ病I型モデルマウスにおいて、末梢組織及び血漿中に蓄積したグルコシルセラミドを減少させた27) 。
- 18.2.3ゴーシェ細胞数の低下作用
本剤はD409V/nullゴーシェ病I型モデルマウスにおいて、ゴーシェ病に典型的な活性化した腫大マクロファージ(ゴーシェ細胞)の数を低下させた28) 。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
日本人ゴーシェ病I型患者にエリグルスタット酒石酸塩50mgを単回経口投与注2) したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった。T1/2z(平均値±標準偏差)はCYP2D6の活性が低い患者(IM)及び通常の患者(EM)で、それぞれ7.62±0.299及び8.18±3.91時間であった1) 。
| CYP2D6 | N | Cmax(ng/mL) | Tmax(h)a) | AUC (ng・h/mL) |
|---|---|---|---|---|
| IM | 3 | 19.2±16.0 | 1.53 (1.50, 6.00) |
150±140 |
| EM | 6 | 7.58±4.22 | 1.25 (0.500, 1.50) |
40.0±24.2 |
平均±標準偏差
a)中央値(最小値, 最大値)
- 16.1.2反復投与
日本人ゴーシェ病I型患者にエリグルスタット酒石酸塩50、100又は150mg注2) を1日2回反復経口投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった1) 。
| 投与量a) (mg) |
測定時期 (週) |
CYP2D6 | N | Cmax (ng/mL) |
Tmax (h)b) |
AUC0-12 (ng・h/mL) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 50 | 2 | IM | 3 | 22.6±4.07 | 1.50 (1.47, 4.00) |
152±45.9 |
| 2 | EM | 6 | 12.1±9.81 | 1.24 (1.00, 4.03) |
60.4±43.2 | |
| 100 | 13 | EM | 1 | 36.8 | 1.00 | 277 |
| 150 | 13 | EM | 4 | 66.2±55.1 | 1.98 (0.50, 3.00) |
310±258 |
平均±標準偏差
a)1回あたりの投与量
b)中央値(最小値, 最大値)
- 16.1.3食事の影響
外国人健康成人(24例)にエリグルスタット酒石酸塩300mgを絶食下又は高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、絶食下に対する高脂肪食摂取後の血漿中未変化体濃度のCmax及びAUC0-lastの幾何平均値の比(食後/絶食下)とその90%信頼区間は、0.85[0.68, 1.07]及び1.05[0.89, 1.23]であった。絶食下及び高脂肪食摂取後におけるTmax(中央値(最小値, 最大値))は2.00(0.95, 4.00)及び3.00(1.00, 6.00)時間であった2) (外国人データ)。
- 16.1.4CYP2D6の遺伝子型別の薬物動態
ゴーシェ病I型患者における薬物動態について母集団薬物動態解析を用いて検討した結果、エリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回反復投与したとき、CYP2D6の活性が欠損している患者(PM)におけるCmax及びAUC0-12hは活性が通常の患者(EM)と比較してそれぞれ9.3及び11.2倍高く、活性が低い患者(IM)ではEMと比較してそれぞれ2.7及び2.8倍高くなると推定された。活性が過剰な患者(URM)ではいずれもEMの約47%程度と推定された。また、生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションから、PMにエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日1回反復投与したときのAUC0-24hはIMにエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回反復投与したときのAUC0-24hと同程度と推定された。
注)CYP2D6遺伝子型 URM:CYP2D61/1X2、CYP2D61/2X2 EM:CYP2D61/1、CYP2D61/10、CYP2D61/10X2、CYP2D61/2、CYP2D61/21、CYP2D61/4、CYP2D61/5、CYP2D62X2/5、CYP2D62/10、CYP2D62/5 IM:CYP2D610/10、CYP2D610/10X2、CYP2D65/10 PM:CYP2D65/14
16.2 吸収
外国人健康成人(10例)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを単回経口投与又は50mgを1時間かけて単回静脈内投与したとき、AUC0-∞から算出された絶対的バイオアベイラビリティ(平均値±標準偏差)は4.49±4.13%であった5) (外国人データ)。
16.3 分布
- 16.3.1タンパク結合率
ヒトにおけるエリグルスタット(0.01~1μmol/L)の血漿タンパク結合率(平均値、迅速平衡透析法)は、76.4~82.9%であった6) (in vitro)。
16.4 代謝
エリグルスタット酒石酸塩の代謝には主にCYP2D6及びCYP3A4が関与し、エリグルスタット酒石酸塩はCYP2D6及びCYP3Aに対する阻害作用(エリグルスタットのKiはそれぞれ5.8及び27.0μmol/L)が認められた。 エリグルスタット酒石酸塩はP糖タンパク質の基質であり、P糖タンパク質に対する阻害作用(エリグルスタットのIC50は22μmol/L)が認められた。血漿中において21種類の代謝物が確認され、そのうち血漿中総放射能の曝露量(AUC)に対する代謝物の曝露量の割合が10%以上の代謝物は6-カルボキシ体(15.9%)であった5) (in vitro、外国人データ)。
16.5 排泄
外国人健康成人(10例)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回5日間反復経口投与後に、14C-エリグルスタット酒石酸塩100mg(約100μCi)を単回経口投与したとき、投与放射能に対する総放射能の回収率は93.2%であり、尿中及び糞中排泄率(平均値±標準偏差)は41.8±5.12及び51.4±3.96%であった5) (in vitro、外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1肝機能障害者
CYP2D6の活性が通常(EM)である肝機能正常者、軽度肝機能障害者(Child-pugh分類A)、及び中等度肝機能障害者(Child-pugh分類B)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを単回経口投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった3) (外国人データ)。
| 患者集団 | N | Cmax (ng/mL) |
AUC (ng・h/mL) |
|---|---|---|---|
| 肝機能正常者 | 7 | 10.4±7.40 | 69.0±49.1 |
| 軽度肝機能障害者 | 6 | 22.4±30.2 | 172±293 |
| 肝機能正常者との幾何平均値の比 [90%信頼区間] |
1.22 [0.46-3.23] |
1.15 [0.41-3.19] |
|
| 中等度肝機能障害者 | 7 | 39.5±43.4 | 575±696 |
| 肝機能正常者との幾何平均値の比 [90%信頼区間] |
2.81 [1.10-7.17] |
5.16 [1.93-13.74] |
平均値±標準偏差
生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションから、CYP2D6 EMの軽度肝機能障害患者にエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回反復投与したときのエリグルスタットのCmax及びAUC0-12hは2.38倍及び2.85倍、1日1回反復投与したときのエリグルスタットのCmax及びAUC0-24hは1.84倍及び2.40倍、CYP2D6 EMの肝機能正常患者に比べ高くなると推定された。また、CYP2D6 EMの中等度肝機能障害患者にエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回反復投与したときのエリグルスタットのCmax及びAUC0-12hは6.41倍及び8.86倍、1日1回反復投与したときのCmax及びAUC0-24hは4.66倍及び8.72倍、CYP2D6 EMの肝機能正常患者に比べ高くなると推定された。
- 16.6.2腎機能障害者
CYP2D6の活性が通常(EM)である腎機能正常者(クレアチニンクリアランス80mL/min超)及び重度腎機能障害者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを単回経口投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった4) (外国人データ)。
| 患者集団 | N | Cmax (ng/mL) |
AUC (ng・h/mL) |
|---|---|---|---|
| 腎機能正常者 | 7 | 17.6±13.2 | 118±71.1 |
| 重度腎機能障害者 | 7 | 12.7±4.85 | 107±42.1 |
| 腎機能正常者との幾何平均値の比 [90%信頼区間] |
0.88 [0.46-1.67] |
0.99 [0.61-1.60] |
平均値±標準偏差
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1パロキセチン塩酸塩との薬物相互作用
外国人健康成人(36例、CYP2D6 EM:33例、IM:1例、URM:2例)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回とパロキセチン30mgを1日1回併用投与したとき、エリグルスタットのCmax及びAUC0-12hの幾何平均値の比(併用投与時/エリグルスタット酒石酸塩単独投与時)とその90%信頼区間は、7.31[5.85,9.13]及び8.93[7.15, 11.10]であった7) (外国人データ)。
- 16.7.2ケトコナゾールとの薬物相互作用
外国人健康成人(36例、CYP2D6 EM:34例、URM:2例)にエリグルスタット酒石酸塩100mgを1日2回とケトコナゾール400mgを1日1回併用投与したとき、エリグルスタットのCmax及びAUC0-12hの幾何平均値の比(併用投与時/エリグルスタット酒石酸塩単独投与時)とその90%信頼区間は、3.84[3.41, 4.33]及び4.27[3.87, 4.71]であった8) 。
- 16.7.3その他の薬剤との薬物相互作用
外国人健康成人にエリグルスタット酒石酸塩と各種薬剤を併用投与したときの薬物動態パラメータへの影響は以下のとおりであった9),10),11),12),13) 。
| エリグルスタット酒石酸塩の用法・用量注2) | 被併用薬とその用量 | 血漿中における測定対象 (例数:単独投与/併用投与) |
単独投与時と併用投与時の血漿中薬物動態パラメータの比較幾何平均値の比 (90%信頼区間) |
|
|---|---|---|---|---|
| Cmax | AUC | |||
| 100mg 1日1回 |
リファンピシンb)600mg i.v. | エリグルスタット(6例/6例) | 0.97 [0.86, 1.10] |
0.95h) [0.88, 1.03] |
| 150mg 1日1回 |
リファンピシンc)600mg i.v. | エリグルスタット(19例/19例) | 1.19 [0.98, 1.44] |
1.19 [0.98, 1.45] |
| 100mg 1日2回 |
リファンピシンb)600mg p.o. | エリグルスタット(6例/5例) | 0.05 [0.04, 0.06] |
0.04i) [0.03, 0.05] |
| 150mg 1日2回 |
リファンピシンc)600mg p.o. | エリグルスタット(19例/16例) | 0.16 [0.11, 0.22] |
0.15 [0.11, 0.21] |
| 100mg又は150mg 1日2回a) |
ジゴキシンd)0.25mg | ジゴキシン未変化体(28例/27例) | 1.70 [1.56, 1.84] |
1.49j) [1.33, 1.66] |
| 150mg 1日2回 |
メトプロロール酒石酸塩e)50mg | メトプロロール未変化体(14例/14例) | 1.53 [1.31, 1.79] |
2.08h) [1.82, 2.38] |
| 100mg 1日2回 |
経口避妊薬f)(エチニルエストラジオール0.035mg、ノルエチンドロン1.0mg) | エチニルエストラジオール未変化体(29例/29例) | 1.04 [1.00, 1.08] |
1.02k) [0.99, 1.06] |
| ノルエチンドロン未変化体(29例/29例) | 1.03 [0.96, 1.11] |
0.99k) [0.96, 1.03] |
||
| 100mg 1日1回 |
制酸薬g)(水酸化アルミニウム1600mg、水酸化マグネシウム1600mg、シメチコン160mg) | エリグルスタット(24例/23例) | 1.15 [0.99, 1.32] |
1.14h) [0.99, 1.30] |
| 制酸薬g)(炭酸カルシウム1000mg) | エリグルスタット(24例/21例) | 1.12 [0.96, 1.30] |
1.09h) [0.94, 1.26] |
|
| パントプラゾールg)40mg | エリグルスタット(24例/21例) | 1.08 [0.91, 1.27] |
1.09h) [0.92, 1.28] |
a)CYP2D6 PMには100mg、EM、IM、URMには150mgを投与 b)CYP2D6 PM:6例 c)CYP2D6 EM:12例、IM:2例、URM:5例 d)CYP2D6 EM:19例、IM:1例、PM:4例、URM:4例 e)CYP2D6 EM:8例、IM:5例、URM:1例 f)CYP2D6 EM:24例、PM:3例、URM:2例 g)CYP2D6 EM:22例、IM:2例 h)AUC0-∞、i)AUC0-12h、j)AUC0-last、k)AUC0-24h
- 16.7.4テルビナフィン及びフルコナゾール併用時の薬物相互作用
生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションから、CYP2D6の活性が通常の患者(EM)にエリグルスタット酒石酸塩100mgとテルビナフィン(250mg)及びフルコナゾール(400mg(負荷用量)+200mg)を併用投与したとき、エリグルスタットのCmax及びAUC0-12hはエリグルスタット酒石酸塩100mgを単独投与時と比べて、8.85及び11.7倍高くなると推定された14) 。
- 16.7.5心電図への影響
外国人健康成人(47例)に本剤200、800mg注3) 、モキシフロキサシン400mg及びプラセボを二重盲検クロスオーバー法により単回投与した。QTcF間隔のベースラインからの変化(プラセボとの差)の片側95%信頼区間の上限は本剤200mgで3.5msec、本剤800mgで9.3msecであった。同じデータを用いた線形混合効果モデルの結果、血中本薬未変化体濃度とPR、QRS及びQTcF間隔の平均変化の間に正の相関が認められた15) (外国人データ)。
注2)本剤の承認用法・用量は1回100mgを1日2回である。
注3)CYP2D6 EM又はIMに本剤100mgを1日2回投与し、中程度以上のCYP2D6阻害作用を有すると考えられる薬剤(パロキセチン、テルビナフィン)と中程度以上のCYP3A阻害作用を有すると考えられる薬剤(ケトコナゾール、フルコナゾール)の両方を併用した場合の血中本薬未変化体濃度は本剤800mg投与時の曝露量を上回ると想定される。また、CYP2D6 IMに本剤100mg1日1回を中程度以上のCYP3A阻害作用を有すると考えられる薬剤(ケトコナゾール、フルコナゾール)と併用した場合の血中本薬未変化濃度は本剤800mg投与時の曝露量が同程度以上になると想定される。さらに、CYP2D6 PMに本剤100mg1日1回を中程度以上のCYP3A阻害作用を有すると考えられる薬剤(ケトコナゾール、フルコナゾール)と併用した場合の血中本薬未変化体濃度は本剤800mg投与時の曝露量を上回ると想定される。