Clinical snapshot

ゲンタシン注40

ゲンタマイシン硫酸塩注射液

添付文書改訂 2026年04月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分並びに他のアミノグリコシド系抗生物質及びバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

  • 〈適応菌種〉

ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌

  • 〈適応症〉

敗血症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、中耳炎

用法・用量

通常、成人ではゲンタマイシン硫酸塩として1日3mg(力価)/kgを3回に分割して筋肉内注射または点滴静注する。増量する場合は、1日5mg(力価)/kgを限度とし、3〜4回に分割して投与する。 小児では、1回2.0〜2.5mg(力価)/kgを1日2〜3回筋肉内注射または点滴静注する。 点滴静注においては30分〜2時間かけて注入する。 なお、年齢、症状により適宜減量する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。

  2. 8.2本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。

  3. 8.2.1事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。

  4. 8.2.2投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。

  5. 8.2.3投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。

  6. 8.3眩暈、耳鳴、難聴等の第8脳神経障害があらわれることがあるので慎重に投与すること。特に腎機能障害患者、高齢者、長期間投与患者及び大量投与患者等では血中濃度が高くなりやすく、聴力障害の危険性がより大きくなるので、聴力検査を実施することが望ましい。アミノグリコシド系抗生物質の聴力障害は、高周波音に始まり低周波音へと波及するので、障害の早期発見のために、聴力検査の最高周波数である8kHzでの検査が有用である。

  7. 8.4急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を実施するなど観察を十分に行うこと。

  8. 8.5投与期間中は血中濃度をモニタリングすることが望ましい。特に、腎機能障害患者、低出生体重児、新生児、高齢者、長期間投与患者及び大量投与患者等では血中濃度が高くなりやすいので、注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1本人又はその血族がアミノグリコシド系抗生物質による難聴又はその他の難聴のある患者

難聴が発現又は増悪するおそれがある。

  1. 9.1.2重症筋無力症の患者

神経筋遮断作用がある。

  1. 9.1.3経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者

観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏症状があらわれることがある。

9.2 腎機能障害患者

投与量を減ずるか、投与間隔をあけて使用すること。高い血中濃度が持続し、腎障害が悪化するおそれがあり、また、第8脳神経障害等の副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

肝障害を悪化させるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがある。また、動物実験(モルモット)で新生仔に外有毛細胞の消失がみられたとの報告がある。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母乳中へ移行することが報告されている。

9.7 小児等

    1. 9.7.1小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
  • 〈低出生体重児、新生児〉

  1. 9.7.2やむを得ず投与する場合には投与間隔を延長するなど慎重に投与すること。低出生体重児や新生児では腎の発達が未熟であるため、高い血中濃度が長時間持続するおそれがある。また、本剤は添加剤としてベンジルアルコールを含有しており、外国において、低出生体重児へのベンジルアルコールの静脈内大量投与(一日平均投与量99~234mg/kg)によりGasping症候群が発現したとの報告がある。

9.8 高齢者

次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

  1. 9.8.1本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがあり、第8脳神経障害、腎障害等の副作用があらわれやすい。

  2. 9.8.2ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
• 腎障害を起こすおそれのある血液代用剤• デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン 等 腎障害が発現、悪化することがあるので、併用は避けることが望ましい。
腎障害が発生した場合には、投与を中止し、透析療法等適切な処置を行うこと。
機序は明確ではないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中濃度の上昇、近位尿細管上皮の空胞変性が生じるという報告がある。
• ループ利尿剤• エタクリン酸、アゾセミド、フロセミド 等 腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けることが望ましい。 機序は明確ではないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中濃度の上昇、腎への蓄積が起こるという報告がある。
• 腎毒性及び聴器毒性を有する薬剤• バンコマイシン塩酸塩、エンビオマイシン硫酸塩、白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン) 等 腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けることが望ましい。 両薬剤ともに腎毒性、聴器毒性を有するが相互作用の機序は不明。
• 麻酔剤、筋弛緩剤• ツボクラリン塩化物塩酸塩水和物、パンクロニウム臭化物、ベクロニウム臭化物、トルペリゾン塩酸塩、ボツリヌス毒素 等
• 筋弛緩作用を有する薬剤• コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム 等
呼吸抑制があらわれるおそれがある。
呼吸抑制があらわれた場合には、必要に応じ、コリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム製剤の投与等の適切な処置を行うこと。
両薬剤ともに神経筋遮断作用を有しており、併用によりその作用が増強される。
• 腎毒性を有する薬剤• シクロスポリン、タクロリムス水和物、アムホテリシンB、ホスカルネットナトリウム水和物、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム 等 腎障害が発現、悪化するおそれがある。 両薬剤ともに腎毒性を有するが、相互作用の機序は不明。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
カリウム等電解質の異常 1%未満
そう痒 頻度不明
ビタミンB群欠乏症状(舌炎 頻度不明
ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症 頻度不明
ビリルビン上昇 頻度不明
乏尿等) 1〜5%未満
出血傾向等) 頻度不明
口内炎 頻度不明
嘔吐 頻度不明
四肢のしびれ感 頻度不明
好酸球増多 1〜5%未満
妄想 頻度不明
尿所見異常 1〜5%未満
幻覚 頻度不明
悪心 1%未満
意識障害 頻度不明
浮腫 頻度不明
疼痛 頻度不明
痙攣 頻度不明
発熱 1%未満
発疹 1%未満
白血球減少 1%未満
硬結 頻度不明
神経炎等) 頻度不明
肝機能障害(AST・ALT・Al-Pの上昇等) 1〜5%未満
腎機能障害(BUN・クレアチニン上昇 1〜5%未満
血小板減少 1%未満
血尿 1%未満
貧血 1%未満
頭痛 1%未満
食欲不振 頻度不明
食欲不振 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

本剤は、細菌の蛋白合成を阻害する。

18.2 抗菌作用

本剤の抗菌作用は殺菌的であり、臨床分離株の緑膿菌、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、セラチア属、ブドウ球菌属、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属に抗菌作用を示す11),12) (in vitro)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1腎機能に異常のない成人感染症患者に、本剤60mg(力価)を筋肉内注射又は30分、1時間及び2時間点滴静注したときの血清中濃度及び薬物動態パラメータは表16-1に示したとおりであった。筋肉内注射6時間後に平均1.09μg/mL、点滴静注開始6~8時間後には平均0.68~1.45μg/mLに低下した2) 。
投与法 例数 Tmax
(hr)
Cmax
(μg/mL)
t1/2
(hr)
AUC
(μg・hr/mL)
筋肉内注射 4 0.54 5.09 2.49 20.69
点滴静注(30min) 3 0.5※ 6.66 3.27 27.09
点滴静注(1hr) 5 1.0※ 5.79 3.14 19.66
点滴静注(2hr) 5 2.0※ 5.17 4.33 22.05

※:点滴終了時

  1. 16.1.2健康成人男性に、本剤1.7mg(力価)/kg及び5mg(力価)/kgを30分点滴静注したとき、血清中濃度は点滴終了時にピークを示し、その後二相性に低下した。その消失パターンは用量間で類似(平行推移)していた3) 。

(注)本剤の承認された成人投与量は、1日3mg(力価)/kgを3分割[増量する場合は、1日5mg(力価)/kgを限度とし3〜4分割]である。

図16-1 健康成人に本剤を単回投与(30分点滴静注)したときの血清中ゲンタマイシン濃度推移(EMIT®) 算術平均値+標準偏差(n=8)、EMIT®:ホモジニアス酵素免疫測定法

用量 Tmax†
(hr)
Cmax‡
(μg/mL)
C8hr‡
(μg/mL)
AUC0-∞§
(μg・hr/mL)
t1/2
(hr)
1.7mg
(力価)/kg
0.5 13.0
(13%)
0.577
(21%)
29.8
(15%)
α:0.252
(41%)
β:2.11
(4%)
5mg
(力価)/kg
0.5 34.1
(8%)
1.80
(23%)
82.9
(9%)
α:0.301
(34%)
β:2.23
(7%)

幾何平均値及びCV%(n=8) ノンコンパートメントモデル解析。ただし、t1/2はゲンタマイシンC1(LC-MS/MS)濃度に基づく2-コンパートメントモデル解析 †:点滴終了時 ‡:Cmax及びC8hrはゲンタマイシン濃度(EMIT®) §:AUC0-∞はゲンタマイシン推定値(EMIT®相当値、ゲンタマイシンC1(LC-MS/MS)に基づく解析結果に換算係数1.7819を乗じた値)

16.3 分布

  1. 16.3.1体液・組織内移行

  2. (1)脳脊髄液中濃度

頭部外傷患者に本剤80mg(力価)を筋肉内注射したとき、投与1時間後に1.15〜1.50μg/mLの最高脳脊髄液中濃度を示した4) 。

  1. (2)胆汁中濃度

胆石の胆のう摘出後患者に本剤40mg(力価)を筋肉内注射したとき、胆汁中濃度は投与30分後に最高値7.2μg/mL又は投与2時間後に最高値5.0〜6.4μg/mLを示した4),5) 。

  1. (3)母乳中濃度

授乳婦に本剤80mg(力価)を筋肉内注射したとき、母乳中濃度はピーク時の血中濃度の約1/50の値(0.157μg/mL)であった6) 。

(注)本剤の承認された成人投与量は、1日3mg(力価)/kgを3分割[増量する場合は、1日5mg(力価)/kgを限度とし3〜4分割]である。

  1. 16.3.2血清蛋白結合

ヒト血清蛋白結合率は10μg/mLの濃度で3.4%であった7) (in vitro)。

16.4 代謝

ラット及びイヌの尿中に抗菌活性をもつ代謝産物は認められなかった7) 。

16.5 排泄

本剤の主排泄経路は尿中排泄であった。健康成人に本剤1mg(力価)/kgを筋肉内注射及び点滴静注(1時間及び2時間)したとき、投与開始6時間後までに点滴静注(1時間)で83.0%、点滴静注(2時間)で85.7%、筋肉内注射で96.5%が尿中に排泄された8) 。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1健康成人又は腎機能障害患者に本剤60mg(力価)を1時間点滴静注したときの血清中濃度及び薬物動態パラメータは表16-3に示したとおりであった。腎機能低下に伴いt1/2の延長、AUCの増大の傾向が認められた9) 。
クレアチニン・クリアランス
(mL/min)
例数 Cmax
(μg/mL)
t1/2
(hr)
AUC
(μg・hr/mL)
健康成人 3 5.1 1.11 10.75
60≦Ccr≦80 3 4.7 1.72 13.45
30≦Ccr<60 3 4.5 1.77 12.96
30>Ccr 1 5.8 7.13 53.54
  1. 16.6.2乳児、幼児、小児に本剤2.0又は2.5mg(力価)/kgを30分又は1時間点滴静注したときの血清中濃度及び薬物動態パラメータは表16-4に示したとおりであった。いずれの年齢区分においても、Cmaxの平均値は5〜10μg/mLに達し、投与終了6時間後には2μg/mL未満に低下した10) 。
点滴時間
(min)
用量 年齢区分 薬物動態パラメータ
Cmax
(μg/mL)
t1/2
(hr)
30 2.5mg
(力価)/kg
乳児 7.63(4) 1.84(2)
30 2.5mg
(力価)/kg
幼児 9.94(4) 1.46(4)
30 2.5mg
(力価)/kg
小児 9.84(4) 1.85(4)
60 2.0mg
(力価)/kg
乳児 5.28(3) 1.98(3)
60 2.0mg
(力価)/kg
幼児 5.33(2) 1.39(2)
60 2.0mg
(力価)/kg
小児 7.31(2) 1.35(2)
60 2.5mg
(力価)/kg
幼児 7.56(3) 1.68(2)
60 2.5mg
(力価)/kg
小児 8.58(2) 1.31(1)

測定方法:イムノアッセイ法 ( )内は例数

16.8 その他

  1. 16.8.1血中濃度モニタリング

アミノグリコシド系抗生物質による副作用発現の危険性は、最高血中濃度(筋肉内注射後15〜60分又は点滴静注終了時)あるいは最低血中濃度(次回投与直前値)が異常に高い場合に大きくなるといわれている。本剤の場合は、最高血中濃度が12μg/mL以上、最低血中濃度が2μg/mL以上が繰り返されると、腎障害や第8脳神経障害発生の危険性が大きくなるといわれている。 腎機能障害患者、低出生体重児、新生児、高齢者、長期間投与患者及び大量投与患者等では血中濃度が高くなりやすいので、特に最高血中濃度と最低血中濃度を測定し、投与量や投与間隔を調整することが望ましい。 例えば、異常に高い最高血中濃度が繰り返されている場合は投与量を減量し、異常に高い最低血中濃度が繰り返されている場合は投与間隔を延長するなど投与方法の調整を行う。