18.1 作用機序
胃腺の壁細胞の細胞膜上に存在する受容体へ、各種酸分泌刺激物質が結合することにより、壁細胞内において一連の胃酸分泌反応がおきる。この反応の最終過程では、壁細胞内からH+を放出し、代わりにK+を取り込むプロトンポンプと呼ばれる酵素H+,K+-ATPaseが働いている。オメプラゾールは、このプロトンポンプの働きを阻害することによって、胃酸分泌を抑制する31),32)。
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療におけるオメプラゾールの役割は胃内pHを上昇させることにより、併用されるアモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの抗菌活性を高めることにあると考えられる。
18.2 ヒトでの作用
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18.2.1胃酸分泌抑制作用
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(1)基礎分泌
胃潰瘍及び十二指腸潰瘍患者において、20mg投与により基礎胃酸分泌をそれぞれ93%及び94%抑制する33)。
- (2)効果発現時間
胃潰瘍患者にオメプラゾール20mgを1日1回朝食後に経口投与したとき、投与2〜6時間後より胃酸分泌抑制効果が認められた34)。
- (3)テトラガストリン刺激
健康成人において、20mg投与によりテトラガストリン(4μg/kg、筋注)刺激後2時間までの胃酸分泌を93%抑制する35)。
- (4)インスリン刺激
健康成人及び十二指腸潰瘍患者において、20mg投与によりインスリン(0.2U/kg、静注)刺激後2時間までの胃酸分泌を70~88%抑制する36)。
- (5)夜間分泌
健康成人において、20mg投与により夜間8時間の胃酸分泌を73%抑制する37)。
- (6)24時間分泌
胃潰瘍、十二指腸潰瘍患者及び健康成人において、20mg投与により24時間にわたり胃酸分泌を抑制する34),38),39)。
- 18.2.2ペプシン分泌抑制作用
健康成人において、20mg投与により夜間8時間のペプシン分泌を39%抑制する37)。
- 18.2.3食道内pHに及ぼす影響
逆流性食道炎患者において、20mg投与により24時間中に食道内pHが4以下を示す時間の割合は、投与前の32.6%に比し、投与後では0.7%に減少する。
- 18.2.4胃排出能に及ぼす影響
胃潰瘍、十二指腸潰瘍患者において、20mg投与により胃排出能にはほとんど影響を及ぼさない40)。
- 18.2.5内分泌ホルモンに及ぼす影響
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、Zollinger-Ellison症候群患者において、20~60mg投与により血清ガストリン値の上昇がみられることがあるが、投与終了後、投与前値への回復あるいは回復傾向が認められる40),41),42)。胃潰瘍及び十二指腸潰瘍患者において、20mg投与によりその他の内分泌ホルモンにはほとんど影響を及ぼさない43)。
18.3 動物での作用
- 18.3.1H+,K+-ATPase阻害作用
ウサギ31)及びラット32)の胃粘膜H+,K+-ATPaseに対し阻害作用を示す。
- 18.3.2胃酸分泌抑制作用
ウサギ分離胃底腺を用いたdibutyryl cyclic AMP刺激酸分泌に対して抑制作用を示す31)。
幽門結紮ラット、胃瘻ラット、迷走神経切断ラットにおけるペンタガストリン及びカルバコール刺激、Heidenhain pouchイヌにおけるヒスタミン刺激、胃瘻イヌにおけるペンタガストリン刺激による胃酸分泌に対し、強い抑制作用を示す44),45)。
- 18.3.3実験潰瘍に対する作用
ラットにおける水浸拘束ストレス、幽門結紮、インドメタシン、アスピリン、プレドニゾロン及びエタノール胃潰瘍並びにメピリゾール十二指腸潰瘍に対し、強い抗潰瘍作用を示す44),46)。また、酢酸胃及び十二指腸潰瘍に対しても治癒促進効果を示す44)。
18.4 ヘリコバクター・ピロリ除菌の補助作用
- 18.4.1ヘリコバクター・ピロリ感染動物モデルにおける除菌効果
マウスヘリコバクター・ピロリ感染モデルにおいて、アモキシシリン水和物単独、又はクラリスロマイシンとの2剤併用群では除菌率は低く(除菌率;各々6%)、オメプラゾールを添加することにより除菌率は著しく上昇し、アモキシシリン水和物とオメプラゾールの2剤併用で約50%、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン及びオメプラゾールの3剤併用では約80%であった47)。
16.1 血中濃度
- 16.1.1オメプラゾール単独投与時のデータ
健康成人(6例)にオメプラゾール10mg及び20mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後2.3時間で最高血漿中濃度に達し、消失半減期はそれぞれ2.8時間及び1.6時間であった1)。
| 投与量 |
Cmax(ng/mL) |
Tmax(hr) |
AUC0-10hr (ng・hr/mL) |
T1/2 (hr) |
| 10mg |
184.1±31.5 |
2.3±0.6 |
480.7±160.2 |
2.8 |
| 20mg |
406.2±152.0 |
2.3±0.2 |
1160.4±646.3 |
1.6 |
健康成人(6例)にオメプラゾール20mgを朝食前に1日1回7日間投与したとき、第7日目のCmax及び血中濃度曲線下面積(AUC)はいずれも第1日目の約1.4倍に増加した1)。
また、胃潰瘍患者(5例)及び十二指腸潰瘍患者(4例)にオメプラゾール20mgを1日1回朝食後に14日間投与したとき、第7日目のAUCは第1日目に比べ有意な増加が認められたが、第7日目と第14日目の間ではCmax、AUCのいずれも増加は認められなかった2)。
- 16.1.2オメプラゾール、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシン投与時のデータ
健康成人(11例)にオメプラゾール20mg、アモキシシリン水和物750mg(力価)及びクラリスロマイシン400mg(力価)を1日2回7日間反復経口投与後の血漿中オメプラゾール濃度は、投与約2.7時間後にCmaxを示し、約1.8時間の半減期で消失した3)。オメプラゾールのCmax及びAUCは、単回投与時に比して反復投与により上昇したが、投与4日目と7日目ではほぼ同様で、4日目までには定常状態に達した。
| Cmax(ng/mL) |
Tmax(hr) |
AUC0-∞ (ng・hr/mL) |
T1/2(hr) |
| 794±410 |
2.7±1.6 |
2936±1752 |
1.78±0.62 |
- 16.1.3生物学的同等性試験
オメプラゾール錠10mg「ケミファ」とオメプラゾン錠10mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(オメプラゾールとして10mg)健康成人男子に絶食単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、判定パラメータの対数値の平均値の差がlog(0.90)〜log(1.11)の範囲内であり、且つ、溶出試験で溶出挙動が類似していると判定されたことから、両剤の生物学的同等性が確認された4)。
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|
判定パラメータ |
参考パラメータ |
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|
AUC0-10 (ng・hr/mL) |
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
T1/2 (hr) |
|
| オメプラゾール錠10mg「ケミファ」 |
537.6±584.5 |
266.9±169.6 |
1.8±1.0 |
1.2±0.7 |
| オメプラゾン錠10mg |
559.1±623.9 |
279.0±182.6 |
1.8±0.8 |
1.6±1.6 |
(平均値±SD,n=29)
オメプラゾール錠20mg「ケミファ」とオメプラゾン錠20mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(オメプラゾールとして20mg)健康成人男子に絶食単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、判定パラメータの対数値の平均値の差がlog(0.90)〜log(1.11)の範囲内であり、且つ、溶出試験で溶出挙動が類似していると判定されたことから、両剤の生物学的同等性が確認された4)。
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判定パラメータ |
参考パラメータ |
|
|
AUC0-10 (ng・hr/mL) |
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
T1/2 (hr) |
|
| オメプラゾール錠20mg「ケミファ」 |
1523.4±1821.3 |
624.8±421.6 |
1.9±0.8 |
1.3±0.8 |
| オメプラゾン錠20mg |
1405.2±1570.7 |
597.6±403.8 |
2.3±1.0 |
1.2±0.7 |
(平均値±SD,n=30)
- 血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
- 16.3.1蛋白結合率
96〜98%(限外ろ過法)
16.4 代謝
外国人のデータでは、健康成人にオメプラゾールを経口投与したとき、血漿中の主代謝物はオメプラゾールスルホン及びヒドロキシオメプラゾールで、これらの代謝物はいずれも胃酸分泌抑制作用をほとんど示さなかった5),6)。また、ヒト肝ミクロソームによるin vitro試験の結果から、ヒドロキシ体及びスルホン体の生成にはそれぞれ主にCYP2C19及びCYP3A4が関与し、ヒドロキシ体への代謝クリアランスはスルホン体の4倍であると報告されている7)。CYP2C19には遺伝多型が存在し、遺伝学的にCYP2C19の機能を欠損する個体(PM)は日本人を含むモンゴル系人種で13~20%、コーカサス系人種で3~4%と報告されている8)。PMにおけるオメプラゾールの緩やかな代謝は、他のプロトンポンプ阻害剤9),10)と同様である。
16.5 排泄
外国人のデータでは、14C標識オメプラゾールを投与したとき、投与放射能の約80%が尿中に、約20%が糞中に排泄された5)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1血液透析
慢性透析患者を対象にオメプラゾールを1日1回20mg経口投与し、血漿中濃度を検討した試験において、血液透析による除去はほとんど認められず、透析日及び非透析日で体内薬物動態に影響はみられなかった11),12),13)。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1ジアゼパム、ワルファリン、フェニトイン
外国人のデータでは、ジアゼパム、ワルファリン(R-ワルファリン)、フェニトインがCYP2C19により代謝されるため、本剤との併用によってジアゼパム14)及びフェニトイン15)のクリアランスは、それぞれ27%及び15%低下し、ワルファリン16)の血中濃度は12%上昇したとの報告がある。
- 16.7.2その他の薬剤
オメプラゾールの血漿中濃度は、クラリスロマイシンとの併用により、Cmax及びAUCは約2倍に上昇した。一方、アモキシシリン水和物との併用は、オメプラゾールの血漿中動態に影響しなかった17)。