Clinical snapshot

インレビックカプセル100mg

フェドラチニブ塩酸塩水和物カプセル

添付文書改訂 2026年05月01日

【警告】

  1. 1.1本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。

  2. 1.2本剤の投与により、ウェルニッケ脳症を含む重篤な脳症が発現し、死亡に至った症例が報告されている。本剤投与中及び必要に応じて本剤投与前にビタミンB1製剤の投与を行うこと。神経内科医との連携の下、神経学的症状を含む患者の状態を注意深く観察し、異常が認められた場合には、本剤の投与中止等の適切な対応を行うこと。

  3. 1.3本剤の投与により、敗血症等の重篤な感染症の発現が報告されていることから、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

骨髄線維症

用法・用量

通常、成人にはフェドラチニブとして1回400mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

使用上の注意

  1. 8.1ビタミンB1(チアミン)の欠乏によりウェルニッケ脳症があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、以下の事項に注意すること。

  2. 8.1.1本剤の投与開始前にビタミンB1濃度を測定すること。ビタミンB1の減少が認められる患者に対してはビタミンB1補充を行い、ビタミンB1濃度が回復するまで本剤投与を開始しないこと。

  3. 8.1.2本剤投与中はビタミンB1経口剤の投与を行い、ビタミンB1欠乏症の症状又は徴候が認められる場合など、必要に応じてビタミンB1濃度の測定を行うこと。

  4. 8.1.3嘔吐、下痢等からビタミンB1欠乏を含む低栄養状態等の悪化を引き起こす可能性があるため、制吐剤又は止瀉剤の予防投与を検討すること。

  5. 8.1.4神経内科医との連携の下、神経学的症状を含む患者の状態を注意深く観察すること。

  6. 8.2免疫抑制作用により、細菌、真菌、ウイルス又は原虫による感染症や日和見感染が発現又は悪化することがある。肝炎ウイルス、結核等が再活性化するおそれがあるので、本剤投与に先立って肝炎ウイルス、結核等の感染の有無を確認し、本剤の投与開始前に適切な処置の実施を考慮すること。本剤投与中は感染症の発現又は増悪に十分注意すること。

  7. 8.3骨髄抑制があらわれることがあるので、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。

  8. 8.4肝機能障害があらわれることがあるので、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行うこと。

  9. 8.5ぶどう膜炎があらわれることがあるので、眼の異常の有無を定期的に確認すること。また、眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)

結核を活動化させるおそれがある。

  1. 9.1.2感染症(敗血症、肺炎、ウイルス感染等)を合併している患者

免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.3B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)

B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎があらわれるおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1重度の腎機能障害のある患者(CLcr 15mL/min以上30mL/min未満)

本剤の開始用量を減量するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。

  1. 9.2.2中等度の腎機能障害のある患者(CLcr 30mL/min以上60mL/min未満)

患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)

患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

9.5 妊婦

妊娠又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(ラット)で、臨床曝露量の約0.08倍に相当する投与量で、胚・胎児毒性(着床後胚損失率の増加、胎児体重の低値、骨格変異の発現頻度増加)が認められている1),2)。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。本剤が乳汁に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

相互作用

  • 本剤は、主にCYP3Aで代謝され、一部はCYP2C19によっても代謝される。また、本剤はCYP3A、CYP2C19、CYP2D6、OCT2、MATE1及びMATE2-Kに対して阻害作用を示す。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
強いCYP3A阻害剤
• リトナビル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等
本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、強いCYP3A阻害作用のない薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する場合には、本剤を減量するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 これらの薬剤がCYP3Aを阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
中程度のCYP3Aかつ強いCYP2C19阻害剤
• フルコナゾール
本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 フルコナゾールがCYP3A及びCYP2C19を同時に阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
強い又は中程度のCYP3A誘導剤
• リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン等
本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP3A誘導作用のない薬剤への代替を考慮すること。 これらの薬剤がCYP3Aを誘導することにより、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
CYP3Aの基質となる薬剤
• ミダゾラム、フェンタニル、トリアゾラム等
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP3Aを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
CYP2C19の基質となる薬剤
• オメプラゾール、ランソプラゾール、ジアゼパム等
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP2C19を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
CYP2D6の基質となる薬剤
• メトプロロール、アミトリプチリン、ペルフェナジン等
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP2D6を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
OCT2、MATE1及びMATE2-Kの基質となる薬剤
• メトホルミン、プロカインアミド等
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がOCT2、MATE1及びMATE2-Kを阻害することにより、これらの薬剤の腎クリアランスが低下する可能性がある。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
アミラーゼ増加 頻度不明
そう痒症 頻度不明
リパーゼ増加 5%以上
上腹部痛 頻度不明
下痢(52.0%) 5%以上
体重増加 頻度不明
便秘 5%以上
味覚不全 頻度不明
呼吸困難 頻度不明
嘔吐(35.7%) 5%以上
四肢痛 頻度不明
尿路感染 頻度不明
悪心(50.2%) 5%以上
排尿困難 頻度不明
浮動性めまい 頻度不明
消化不良 頻度不明
無力症 頻度不明
疲労 5%以上
筋痙縮 頻度不明
腹痛 5%以上
膵炎 頻度不明
血中クレアチニン増加 5%以上
頭痛 5%以上
骨痛 頻度不明
高カリウム血症 頻度不明
高血圧 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

フェドラチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)2に対する阻害作用を有する低分子化合物である。フェドラチニブは、JAK2の下流のシグナル伝達分子(STAT等)のリン酸化を阻害すること等により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている24)。

18.2 抗腫瘍作用

JAK2 V617F変異を導入した骨髄細胞を同所移植した骨髄増殖性腫瘍モデルマウスにフェドラチニブを反復投与したとき、白血球数、ヘマトクリット値及び脾臓重量の減少等が認められた(in vivo)25)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回及び反復投与

日本人の骨髄線維症患者に本剤300注1)及び400mgを1日1回反復経口投与したときの、初回投与後及び反復投与28日目のフェドラチニブの薬物動態パラメータは下表のとおりであった3)。

用量
(mg)
測定日
(日)
例数 Cmax
(ng/mL)
Tmax
(h)
AUCtau
(ng・h/mL)
300注1) 1 3 1139
(42)
2.02
(2.00, 3.02)
8015
(59)
28 3 1685
(6)
3.00
(2.00, 4.00)
24710
(20)
400 1 3 3324
(21)
3.00
(1.95, 6.08)
22875
(15)
28 3 3698
(49)
2.67
(0.95, 4.00)
53816
(104)

Cmax及びAUCtauの値は、幾何平均値(幾何変動係数(CV%))を示す。Tmaxの値は中央値(最小値, 最大値)を示す。

また、日本人を含む骨髄線維症患者から得られた血漿中濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を実施した。本剤400mgを1日1回反復経口投与したときの、定常状態におけるフェドラチニブの日本人の薬物動態パラメータは下表のとおりであった4)。

CL/F
(L/h)
AUC0-24h
(ng・h/mL)
Cmax
(ng/mL)
Ctrough
(ng/mL)
t1/2
(h)
Tmax
(h)
9.6
(51.3)
41316
(51.3)
2417
(53.5)
1418
(58.1)
144.8
(38.3)
2
(1,7)

数値は幾何平均値(幾何変動係数(CV%))を示す。Tmaxの値は中央値(最小値, 最大値)を示す。

16.2 吸収

  1. 16.2.1食事の影響

健康成人(19例)に本剤500mg注1)を単回経口投与したとき、空腹時投与に対する低脂肪・低カロリー食及び高脂肪・高カロリー食摂取後投与における、フェドラチニブのCmaxの幾何平均値の比はそれぞれ1.12及び0.91、AUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.22及び1.19であった5)(外国人データ)。

16.3 分布

骨髄線維症患者に本剤400mgを単回経口投与したときの定常状態におけるみかけの分布容積の平均値は1771Lであった6)ことから、広範な組織への分布が示唆された。フェドラチニブのヒト血漿中タンパク結合率は92.6%であり、主にα1-酸性糖タンパク質に結合した7)。

16.4 代謝

フェドラチニブは主としてCYP3Aで代謝され、またCYP3Aに比べて寄与率は小さいがCYP2C19及びフラビン含有モノオキシゲナーゼ3によっても代謝されると考えられる8)。

16.5 排泄

**健康成人(6例)に14C標識したフェドラチニブ200mg注1)を単回経口投与したとき、放射能の総回収率は82.1%で、尿及び糞便中にそれぞれ5.15%及び76.9%が回収された。尿及び糞便中に回収された放射能に占める未変化体の割合はそれぞれ投与量の2.9%及び23.3%であった9)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者

健康成人(CLcr 90mL/min以上)、中等度腎機能障害患者(CLcr 30mL/min以上60mL/min未満)及び重度腎機能障害患者(CLcr 15mL/min以上30mL/min未満)に本剤300mg注1)を単回経口投与したとき、健康成人に対する中等度及び重度腎機能障害患者のAUCinfの幾何平均値の比は、フェドラチニブの総濃度(結合形及び非結合形を合わせた濃度)でそれぞれ1.51及び1.87、非結合形で1.08及び1.31であった10)(外国人データ)。

  1. 16.6.2肝機能障害患者

軽度肝機能障害患者(Child-Pugh分類A)、中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B)並びに軽度及び中等度肝機能障害患者に性別、年齢及び体重を対応させた健康成人に本剤300mg注1)を、重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C)並びに重度肝機能障害患者に性別、年齢及び体重を対応させた健康成人に本剤200mg注1)を単回経口投与したとき、健康成人に対する軽度、中等度及び重度肝機能障害患者のAUCinfの幾何平均値の比は、フェドラチニブの総濃度でそれぞれ1.07、1.14及び0.66、非結合形で1.03、0.92及び1.41であった11)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1ケトコナゾール(強いCYP3A阻害剤)

健康成人にケトコナゾール(200mg、1日2回14日間)反復経口投与注2)時、本剤300mg注1)を併用したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時におけるフェドラチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.93及び3.06であった12)(外国人データ)。生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション結果から、ケトコナゾール400mgを1日1回反復経口投与し、本剤400mgを併用で1日1回反復経口投与したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時における定常状態でのフェドラチニブのAUCの幾何平均値の比は1.95と推定された13)。

  1. 16.7.2フルコナゾール(中程度のCYP3Aかつ強いCYP2C19阻害剤)

健康成人にフルコナゾール200mgを1日1回14日間反復投与し(1日目は400mg投与)、9日目に本剤100mg注1)を併用したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時におけるフェドラチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.21及び1.70であった14)(外国人データ)。

  1. 16.7.3リファンピシン(強いCYP3A誘導剤)

健康成人にリファンピシン(600mg、1日1回10日間)反復投与時、9日目に本剤500mg注1)を併用投与したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時におけるフェドラチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ0.302及び0.195であった15)(外国人データ)。

  1. 16.7.4エファビレンツ(中程度のCYP3A誘導剤)

健康成人にエファビレンツ(600mg、1日1回10日間)反復投与時、9日目に本剤500mg注1)を併用投与したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時におけるフェドラチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ0.715及び0.532であった15)(外国人データ)。

  1. 16.7.5ミダゾラム(CYP3Aの基質)、オメプラゾール(CYP2C19の基質)、メトプロロール(CYP2D6の基質)

進行固形癌患者に本剤(500mg注1)、1日1回15日間)反復投与時、15日目にミダゾラム2mg、オメプラゾール20mg及びメトプロロール100mgをカクテル薬剤として併用投与したとき、カクテル薬剤単独投与時に対する本剤併用投与時のミダゾラム、オメプラゾール及びメトプロロールのCmaxの幾何平均値の比はそれぞれ1.82、1.12及び1.60、AUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ3.84、2.82及び1.77であった16)(外国人データ)。

  1. 16.7.6ジゴキシン(P-gpの基質)、ロスバスタチン(OATP1B1/1B3及びBCRPの基質)、メトホルミン(OCT2、MATE1及びMATE2-Kの基質)

健康成人に本剤600mg注1)を単回投与時、ジゴキシン0.25mg、ロスバスタチン10mg及びメトホルミン1000mgをカクテル薬剤として単回投与して併用したとき、カクテル薬剤単独投与時に対する本剤併用投与時のジゴキシン、ロスバスタチン及びメトホルミンのCmaxの幾何平均値の比はそれぞれ0.989、0.804及び0.880であり、AUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.113、1.016及び0.973であった。カクテル薬剤単独投与時に対する本剤併用投与時のメトホルミンの腎クリアランスの幾何平均値の比は、0.642であった17)(外国人データ)。

  1. 16.7.7生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション(エリスロマイシン(中程度のCYP3A阻害剤))

生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション結果から、健康成人にエリスロマイシン500mgを1日3回反復投与し、本剤400mgを併用で1日1回単回及び反復投与したとき、本剤単独投与時に対する併用投与時におけるフェドラチニブのAUCはそれぞれ1.85及び1.18と推定された13)。

16.8 その他

フェドラチニブはP-gpの基質である(in vitro)18)。

注1)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはフェドラチニブとして1回400mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。」である。

注2)経口剤は国内未承認