Clinical snapshot

アルプロスタジル注10μg「F」

アルプロスタジル

添付文書改訂 2023年12月01日

【警告】

〈動脈管依存性先天性心疾患〉 本剤投与により無呼吸発作が発現することがあるので、呼吸管理設備の整っている施設で投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1重篤な心不全の患者

  2. 2.2出血(頭蓋内出血、消化管出血、喀血等)している患者

  3. 2.3妊婦又は妊娠している可能性のある女性

  4. 2.4本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

  • 慢性動脈閉塞症(バージャー病、閉塞性動脈硬化症)における四肢潰瘍ならびに安静時疼痛の改善

  • 下記疾患における皮膚潰瘍の改善

  • 進行性全身性硬化症 全身性エリテマトーデス

  • 糖尿病における皮膚潰瘍の改善

  • 振動病における末梢血行障害に伴う自覚症状の改善ならびに末梢循環・神経・運動機能障害の回復

  • 動脈管依存性先天性心疾患における動脈管の開存

  • 経上腸間膜動脈性門脈造影における造影能の改善

用法・用量

効能・効果 用法・用量
慢性動脈閉塞症(バージャー病、閉塞性動脈硬化症) 通常、成人1日1回1~2mL(アルプロスタジルとして5~10μg)をそのまま又は輸液に混和して緩徐に静注、又は点滴静注する。
なお、症状により適宜増減する。
進行性全身性硬化症
全身性エリテマトーデス
糖尿病における皮膚潰瘍
振動病
動脈管依存性先天性心疾患 輸液に混和し、開始時アルプロスタジル5ng/kg/minとして持続静注し、その後は症状に応じて適宜増減して有効最小量とする。
経上腸間膜動脈性門脈造影 通常、成人には1回1mL(アルプロスタジルとして5μg)を生理食塩液で10mLに希釈し、造影剤注入30秒前に3~5秒間で経カテーテル的に上腸間膜動脈内に投与する。

使用上の注意

  • 〈慢性動脈閉塞症(バージャー病、閉塞性動脈硬化症)、進行性全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、振動病、糖尿病における皮膚潰瘍〉
  1. 8.1本剤による治療は対症療法であり、投与中止後再燃することがあるので注意すること。

  2. 8.2心不全、肺水腫、胸水があらわれることがあるので、循環状態(血圧、脈拍等)を十分に観察すること。特に高齢者は心機能等生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

  • 〈糖尿病における皮膚潰瘍〉
  1. 8.3糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法、経口血糖降下剤、インスリン等の治療を行った上での適用を考慮すること。

  2. 8.4外用の糖尿病性潰瘍治療剤では十分な効果が期待されない患者に対して適用を考慮すること。

  3. 8.5投与中は経過を十分に観察し、4週間連日投与して効果が認められない場合には、他の適切な治療に切り替えること。

  • 〈経上腸間膜動脈性門脈造影〉
  1. 8.6肝硬変がある場合には、十分な造影能が得られない可能性がある。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

    1. 9.1.1心不全の患者(重篤な心不全の患者を除く)

心不全の増強傾向があらわれることがある。

  1. 9.1.2緑内障、眼圧亢進のある患者

眼圧を亢進させるおそれがある。

  1. 9.1.3胃潰瘍の合併又はその既往歴のある患者

既往のある患者に胃出血をおこすおそれがある。

  1. 9.1.4間質性肺炎の患者

間質性肺炎を増悪することがある。

  1. 9.1.5出血傾向のある患者

出血を助長するおそれがある。

  • 〈経上腸間膜動脈性門脈造影〉
  1. 9.1.6重度の食道静脈瘤が認められている患者

門脈圧を上昇させるおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1腎不全の患者

腎不全を増悪することがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット、in vitro)で子宮収縮作用が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。

9.7 小児等

動脈管依存性先天性心疾患以外の小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

  • 〈動脈管依存性先天性心疾患〉
  1. 9.7.1新生児に投与する場合は、以下の事項を考慮すること。
  • 呼吸管理設備の整っている施設で投与すること。本剤投与により無呼吸発作が発現することがある。

  • 重篤な疾患を有する新生児への投与なので、観察を十分に行い慎重に投与すること。なお、副作用が発現した場合は、投与中止、注入速度の減速など適切な処置を講ずること。

  • 有効最小量で維持すること。過量投与により副作用発現率が高まるおそれがある。

  • 観察を十分に行い、必要以上の長期投与は避けること。長期投与により長管骨膜に肥厚がみられるとの報告がある。

9.8 高齢者

減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
抗凝血剤
• ワルファリンカリウム等
出血傾向の増強をきたすおそれがある。 本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これらの薬剤との併用によりその作用を増強するおそれがある。
血小板機能を抑制する薬剤
• アスピリン
チクロピジン塩酸塩
シロスタゾール等
出血傾向の増強をきたすおそれがある。 本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これらの薬剤との併用によりその作用を増強するおそれがある。
血栓溶解剤
• ウロキナーゼ等
出血傾向の増強をきたすおそれがある。 本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これらの薬剤との併用によりその作用を増強するおそれがある。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
こわばりそう痒感 1%未満
めまい倦怠感しびれ(感) 1%未満
低ナトリウム血症四肢腫脹 頻度不明
出血(鼻出血 頻度不明
口内炎(アフタを含む) 頻度不明
咳嗽呼吸困難喘息注) 頻度不明
嘔気腹痛嘔吐下痢腹部膨満感・不快感 1%未満
四肢疼痛(増強を含む)気分不良浮腫視力低下脱毛 1%未満
好酸球増多 1%未満
悪寒振戦痙攣 頻度不明
熱感 1%未満
発汗 頻度不明
発熱頭痛 1%未満
発疹そう痒感 1%未満
発赤胸痛注)動悸頻脈 1%未満
皮下出血 頻度不明
眼底出血 頻度不明
結膜出血 頻度不明
腎不全の増悪注) 頻度不明
蕁麻疹 1%未満
血圧上昇注) 頻度不明
血圧降下注)血管炎顔面潮紅胸部絞扼感注) 1%未満
血尿等) 頻度不明
血管痛発赤 1%未満
食欲不振便秘口腔腫脹感 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

本剤の有効成分はPGE1であり、PGE1は血管拡張作用に基づく血流増加作用及び血小板凝集抑制作用を有する。脂肪粒子を薬物担体とすることにより、以下のような特徴が認められた。

  • ハムスター頰袋微小血管を損傷させた後、Lipo PGE1を投与した時の方が、損傷前に投与した時より顕著で持続的な血栓形成抑制作用を示した4)。

  • 薬物担体としての脂肪粒子が正常及び糖尿病ラットの腸間膜細動脈、毛細血管内皮細胞及び自然発症高血圧ラットの胸部病変大動脈内皮細胞に付着し、エンドサイトーシスされていることが電顕的に観察された3)。

  • 3Hで標識したLipo PGE1を自然発症高血圧ラットに静脈内投与したときの血管内分布は、病変血管において3H-PGE1に比べ有意に高かった3)。

  • 3Hで標識したLipo PGE1をラットに静脈内投与後の血漿中PGE1未変化体の割合は、3H-PGE1-CD投与時に比べ有意に高かった2)。

18.2 血管拡張作用

血流増加作用、血圧降下作用を指標に血管拡張作用をPGE1-CDと比較検討した結果は以下のとおりである。

  • 正常ラット及びストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいて、PGE1-CDより強い血流増加作用を示し、その作用は糖尿病ラットにおいてより顕著であった5)。

  • イヌにおいて、著明な血圧降下作用を示さない用量でPGE1-CDより強い血流増加作用を示した6)。

  • ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット及び自然発症高血圧ラットにおいて、PGE1-CDより著明な強い血圧降下作用を示した。これは病態の進行あるいは慢性化に伴いより顕著となった5)。

  • ラット新生児動脈管に対し、PGE1-CDより強く持続的な動脈管拡張作用を示した7)。

18.3 血小板凝集抑制作用

  1. 18.3.1ハムスター頰袋微小血管でのADP誘発血栓形成に対して、正常又は損傷血管のいずれにおいてもPGE1より強い血栓形成抑制作用及び持続性を示した4)。

  2. 18.3.2ラットのラウリン酸による末梢動脈閉塞症モデルにおいて、PGE1-CDより強い病態進行の抑制を示した8)。

  3. 18.3.3ラットex vivo系において、cyclic-AMP量を増加させPGE1-CDより強い血小板凝集抑制作用を示した9)。

18.4 経上腸間膜動脈性門脈造影能に対する作用

  1. 18.4.1イヌにおいて、前腸間膜動脈内投与により、用量依存的な門脈血流量の増加作用が認められた10)。

  2. 18.4.2イヌにおいて、前腸間膜動脈内投与により、造影剤注入時における造影剤の漏れの減少及び門脈本幹への到達時間の短縮、門脈造影径の増大並びに門脈分枝の識別性の改善が認められた11)。

薬物動態

16.1 血中濃度

Lipo PGE1(脂肪粒子にPGE1を溶解した製剤)を健康成人に点滴静注で投与した直後の血中PGE1をRIA2抗体法にて測定したが、微量定量であること、その代謝が速いこと等の理由により信頼性の高い数値を得ることはできなかった1)。 3Hで標識したLipo PGE1(5µg PGE1/kg)をラットに静脈内投与後の血液、血漿中放射能濃度は、投与後30秒でそれぞれ24.74ng eq.PGE1/mL、39.82ng eq.PGE1/mLを示した後、いずれも4相性の推移で消失し、投与後8時間には投与後30秒の濃度の1%以下であった2)。また、イヌでもほぼ同様な推移が認められた2)。

16.3 分布

3Hで標識したLipo PGE1をラットに静脈内投与後の組織内放射能濃度は大部分の組織において5分以内に最高濃度を示し、その後の消失は血漿に比べやや緩慢であった。高濃度を示した組織は、腎、肝及び肺であり、中枢神経系、眼球及び精巣は最も低かった。また、反復投与しても特定組織への残存は認められなかった2)。自然発症高血圧ラットへの静脈内投与後の血管内分布は、病変血管において3H-PGE1に比べ有意に高かった3)。

16.4 代謝

3Hで標識したLipo PGE1をラットに静脈内投与後の血漿中PGE1未変化体の割合は、3H-PGE1-CD(PGE1-CD:アルプロスタジルアルファデクス)投与時に比べ有意に高かった。主な代謝物は13,14-dihydro-15-keto-PGE1であった2)。

16.5 排泄

3Hで標識したLipo PGE1をラットに静脈内投与後の主な排泄経路は尿中であり、投与後168時間までに尿中へ59%、糞中へ24%、呼気中へ約8%が回収された。胆汁中へは、48時間までに投与量の約28%が排泄され、その一部は腸肝循環することが示された2)。