Clinical snapshot

アブラキサン点滴静注用100mg

パクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)

添付文書改訂 2025年06月01日

【警告】

  1. 1.1本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

  2. 1.2骨髄抑制(主に好中球減少)等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。

  3. 1.3本剤の投与方法、適応症、薬物動態等が他のパクリタキセル製剤と異なることを理解して投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1重篤な骨髄抑制のある患者[骨髄抑制は用量制限毒性(Dose Limiting Toxicity)であり、感染症を伴い、重篤化する可能性がある。]

  2. 2.2感染症を合併している患者[骨髄抑制により、感染症を増悪させるおそれがある。]

  3. 2.3本剤又はパクリタキセル、アルブミンに対し過敏症の既往歴のある患者

  4. 2.4妊婦又は妊娠している可能性のある女性

効能・効果

  • 乳癌

  • 胃癌

  • 非小細胞肺癌

  • 治癒切除不能な膵癌

用法・用量

*乳癌にはA法又はE法を、胃癌にはA法又はD法を、非小細胞肺癌にはB法を、治癒切除不能な膵癌にはC法を使用する。 A法: 通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回260mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 B法: 通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、これを1コースとして、投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 C法: ゲムシタビンとの併用において、通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回125mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 D法: 通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 E法: 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の使用にあたっては、下記を患者に説明し、理解を得るよう努めること。
  • 疾病の治療における本剤の必要性

  • 本剤は添加物としてヒト血液由来成分を含有しているため、感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、ヒト血漿を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないこと

  1. 8.2本剤の添加物である人血清アルブミンの原料となる血漿については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体及び抗HIV-2抗体が陰性であることを確認している。さらに、プールした試験血漿については、HBV-DNA、HCV-RNA及びHIV-1-RNAについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。人血清アルブミンの製造工程である、Cohn低温エタノール分画法及び60±0.5℃ 10~11時間の液状加熱処理は、HIVをはじめとする各種ウイルスに対し、除去・不活化効果を有することが確認されているが、本剤投与による感染症発生の可能性は否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。

  2. 8.3添加物に使用している人血清アルブミンの現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19などのウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。

  3. 8.4現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)などが伝播したとの報告はない。しかしながら、本剤の添加物である人血清アルブミンの製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJDなどの伝播のリスクを完全には排除できないので、本剤投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。

  4. 8.5骨髄抑制などの重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うこと。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。なお、白血球減少が軽度であっても著明な好中球減少を発現する症例を認めていることから、血液検査の際には、白血球分画の測定を実施すること。また、本剤の投与にあたってはG-CSF製剤の適切な使用に関しても考慮すること。

  5. 8.6末梢神経障害が高頻度に起こるので、患者の状態を十分に観察すること。使用が長期間にわたると発現頻度が高くなる傾向にあるので、投与は慎重に行うこと。

  6. 8.7重篤な過敏反応が起こることがあるので、観察を十分に行い、重篤な過敏症状(呼吸困難、胸痛、低血圧、頻脈、徐脈、潮紅、血管浮腫、発汗等)があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。本剤投与中は頻回にバイタルサイン(血圧、脈拍数)のモニタリングを行うなど、患者の状態を十分に観察すること。

  7. 8.8低血圧、高血圧、徐脈等が起こることがあるので、本剤投与中は頻回にバイタルサイン(血圧、脈拍数)のモニタリングを行うなど、患者の状態を十分に観察すること。重篤な刺激伝導障害があらわれた場合には、適切な処置を行い、その後の本剤投与に際しては継続的に心電図のモニタリングを行うなど、患者の状態を十分に観察すること。

  8. 8.9関節痛及び筋肉痛が高頻度に起こるので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には鎮痛剤投与等の適切な処置を行うこと。

  9. 8.10発熱が起こることがあるので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には感染に対する管理を十分に行い、解熱剤投与等の適切な処置を行うこと。

  10. 8.11投与初期又は比較的低用量の投与でも副作用があらわれることがあるので、使用上の注意に十分注意すること。

  11. 8.12出血傾向の発現又は増悪に十分注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1骨髄抑制のある患者

骨髄抑制が増強するおそれがある。

  1. 9.1.2間質性肺疾患のある患者

症状を増悪させるおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

腎機能が低下しているので、副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

代謝機能等が低下しているので、副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

  1. **9.4.1妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後6カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

  2. **9.4.2男性には、本剤投与中及び最終投与後3カ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること。

  3. 9.4.3生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット)において催奇形性作用、胚・胎児死亡が報告されている。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が他のパクリタキセル製剤にて報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

用量並びに投与間隔に留意し、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなどして注意すること。一般に生理機能が低下していることが多く骨髄抑制等があらわれやすい。

相互作用

  • 本剤は主として薬物代謝酵素CYP2C8及びCYP3A4で代謝される。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
放射線照射 パクリタキセルに胸部への放射線照射を併用した場合に、重篤な食道炎又は肺臓炎が発現したとの報告がある。併用する場合には、患者の状態に注意し、食道炎や肺陰影等が出現した場合には、本剤の投与及び放射線照射を直ちに中止し、適切な処置を行うこと。 機序は不明であるが、動物試験(マウス)でパクリタキセルによる放射線感受性増加が認められている。
放射線照射 骨髄抑制等を増強することがあるので、併用する場合には、患者の状態を観察しながら、本剤を減量するか又は投与間隔を延長すること。 骨髄抑制等の予想される副作用項目が重複している。
抗悪性腫瘍剤 骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長すること。 骨髄抑制等の予想される副作用が重複している。
シスプラチン パクリタキセルをシスプラチンの後に投与した場合、逆の順序で投与した場合より骨髄抑制が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、本剤をシスプラチンの前に投与すること。 パクリタキセルをシスプラチンの後に投与した場合、パクリタキセルのクリアランスが低下し、パクリタキセルの血中濃度が上昇する。
シスプラチン 末梢神経障害が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長すること。 末梢神経障害が予想される副作用として重複している。
ドキソルビシン塩酸塩 パクリタキセルをドキソルビシンの前に投与した場合、逆の順序で投与した場合より骨髄抑制が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、本剤をドキソルビシンの後に投与すること。 パクリタキセルをドキソルビシンの前に投与した場合、ドキソルビシンのクリアランスが低下し、ドキソルビシンの血中濃度が上昇する。
ドキソルビシン塩酸塩 心毒性が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長すること。 胆汁排泄の競合により、ドキソルビシン及びその代謝物であるドキソルビシノールの血中濃度が上昇する。
ビタミンA、アゾール系抗真菌剤(ミコナゾール等)、マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン等)、ステロイド系ホルモン剤(エチニルエストラジオール等)、ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネルブロッカー(ニフェジピン等)、シクロスポリン、ベラパミル塩酸塩、キニジン硫酸塩水和物、ミダゾラム、ラパチニブトシル酸塩水和物 骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある。併用療法を行う場合には、患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長すること。 併用薬剤がCYP2C8、CYP3A4等を阻害し、パクリタキセルの代謝が阻害され、パクリタキセルの血中濃度が上昇する。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
Al-P上昇 頻度不明
ALT上昇 頻度不明
AST上昇 頻度不明
γ-GTP上昇 頻度不明
アルブミン減少 頻度不明
うつ病 頻度不明
カリウム上昇 頻度不明
カリウム低下 頻度不明
カルシウム低下 頻度不明
クレアチニン上昇 頻度不明
しゃっくり 頻度不明
そう痒症 頻度不明
ナトリウム低下 頻度不明
ビリルビン上昇 頻度不明
めまい 頻度不明
下痢 頻度不明
不安 頻度不明
不整脈 頻度不明
不眠症 頻度不明
乳房痛 頻度不明
低血圧 頻度不明
体重減少 頻度不明
便秘 頻度不明
倦怠感(36.7%) 頻度不明
光線過敏症 頻度不明
反射減弱 頻度不明
口内乾燥 頻度不明
口内炎 頻度不明
口唇炎 頻度不明
味覚異常 頻度不明
呼吸困難 頻度不明
咳嗽 頻度不明
咽喉頭痛 頻度不明
喀血 頻度不明
嗜眠 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嚥下障害 頻度不明
四肢痛 頻度不明
好酸球数増多 頻度不明
尿失禁 頻度不明
尿糖陽性 頻度不明
尿蛋白陽性 頻度不明
強皮症様変化 頻度不明
徐脈 頻度不明
悪寒 頻度不明
悪心(31.9%) 頻度不明
手足症候群 頻度不明
振戦 頻度不明
注射部位反応 頻度不明
注意力障害 頻度不明
流涙 頻度不明
浮腫 頻度不明
消化不良 頻度不明
潮紅 頻度不明
無力症 頻度不明
爪の異常 頻度不明
疼痛 頻度不明
発声障害 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹 頻度不明
皮膚乾燥 頻度不明
眼乾燥 頻度不明
眼痛 頻度不明
筋力低下 頻度不明
筋痙縮 頻度不明
筋肉痛 頻度不明
結膜炎 頻度不明
総蛋白減少 頻度不明
耳痛 頻度不明
背部痛 頻度不明
胸壁痛 頻度不明
胸水 頻度不明
胸痛 頻度不明
脱毛(症)(64.8%) 頻度不明
脱水(症) 頻度不明
腹痛 頻度不明
腹部膨満(感) 頻度不明
舌痛 頻度不明
色素沈着 頻度不明
蕁麻疹 頻度不明
血糖値上昇 頻度不明
視力異常 頻度不明
角膜炎 頻度不明
運動失調 頻度不明
関節痛 頻度不明
頭痛 頻度不明
頻脈 頻度不明
顔面腫脹 頻度不明
食欲不振 頻度不明
骨痛 頻度不明
高血圧 頻度不明
黄斑浮腫 頻度不明
鼻出血 頻度不明
鼻炎 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

微小管蛋白重合を促進することにより微小管の安定化・過剰形成を引き起こし、紡錘体の機能を障害することにより細胞分裂を阻害して抗腫瘍活性を発揮する13),14)。

18.2 抗腫瘍効果

ヌードマウスの皮下に移植されたヒト乳癌組織(MX-1)及びヒト膵癌由来細胞株(AsPC-1)に対し、腫瘍退縮効果あるいは腫瘍増殖抑制効果が認められている15),16)。

薬物動態

16.1 血中濃度

日本人進行固形癌患者に本剤80~300mg/m2注2)を30分間点滴静注したときの血漿中パクリタキセル濃度は多相性の消失を示し、AUC及びCmaxは80~300mg/m2まで用量依存的な増加を示した。消失半減期は16.5~40.2時間であった1)。

16.3 分布

ラットに本剤の3H標識体を投与した24時間後における組織内放射能濃度は、脳を除く各臓器・組織で高く、速やかに移行した。また、前立腺、肝臓、肺、精嚢、膵臓、脾臓、消化管、腎臓で血液・血漿より高かった。120時間後における放射能が高かった組織は肝臓、肺、精巣及び卵巣であった2)。

16.4 代謝

ヒトにおいては、パクリタキセルは主にCYP2C8により6α-ヒドロキシパクリタキセルに代謝され、CYP3A4により3´-p-ヒドロキシパクリタキセルに代謝される。また、これら2種の代謝物はそれぞれCYP3A4及びCYP2C8により更に6α, 3´-p-ジヒドロキシパクリタキセルに代謝されることが知られている3)。 これらの代謝物は、外国人乳癌患者の尿中、糞中及び血漿中にも認められた4)。

16.5 排泄

外国人乳癌患者に本剤260mg/m2を30分間点滴静注したときの未変化体パクリタキセルの尿中排泄量の平均値は約4%であり、これは腎外での消失が主な排泄経路であることを示している。代謝物である6α-ヒドロキシパクリタキセル及び3´-p-ヒドロキシパクリタキセルの尿中排泄率は総投与量の1%以下であった。糞中には総投与量の約20%が排泄された4)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1肝機能障害患者

AST及びビリルビンに基づいて肝機能障害の程度を分類し、その障害の程度に応じ3用量(130mg/m2、200mg/m2、260mg/m2)注2)を設定し、本剤の薬物動態について検討した5)。

肝機能障害の程度 投与量
(n)
AUCinf
(ng・hr/mL)
CL
(L/hr/m2)
AST かつ ビリルビン
>ULN-
<10×ULN
>ULN-
≦1.25×ULN
260mg/m2
(5)
11983±4335 23.8±7.5
1.26-2.0×ULN 200mg/m2
(4)
8660±2891 24.9±7.0
2.01-5.0×ULN 130mg/m2
(5)
7146±1326 18.7±3.1

ULN:基準値上限。AUCinf及びCLは平均±標準偏差を示した。 AST≧10×ULNあるいはビリルビン>5.0×ULNの肝機能障害患者については検討されていない。

注2)本剤の承認用量はA法:260mg/m2、B法、D法及びE法:100mg/m2、C法:125mg/m2である。