Clinical snapshot

アナペイン注7.5mg/mL

ロピバカイン塩酸塩水和物注射剤

添付文書改訂 2023年08月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  • 〈効能共通〉
  1. 2.1本剤の成分又はアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 〈硬膜外麻酔〉
  1. 2.2大量出血やショック状態の患者[過度の血圧低下が起こることがある。]

  2. 2.3注射部位又はその周辺に炎症のある患者[化膿性髄膜炎症状を起こすことがある。]

  3. 2.4敗血症の患者[敗血症性の髄膜炎を生じるおそれがある。]

効能・効果

  • 〈アナペイン注7.5mg/mL〉

麻酔(硬膜外麻酔、伝達麻酔)

  • 〈アナペイン注10mg/mL〉

麻酔(硬膜外麻酔)

用法・用量

  • 〈アナペイン注7.5mg/mL〉

硬膜外麻酔には、通常、成人に1回20mL(ロピバカイン塩酸塩水和物(無水物として)150mg)までを硬膜外腔に投与する。 なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

伝達麻酔には、通常、成人に1回40mL(ロピバカイン塩酸塩水和物(無水物として)300mg)までを目標の神経あるいは神経叢近傍に投与する。 なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

  • 〈アナペイン注10mg/mL〉

通常、成人に1回20mL(ロピバカイン塩酸塩水和物(無水物として)200mg)までを硬膜外腔に投与する。 なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

使用上の注意

  • 〈効能共通〉
  1. 8.1まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、本剤の投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握するとともに、異常が認められた場合に直ちに救急処置のとれるよう、常時準備をしておくこと。なお、事前の静脈路確保が望ましい。

  2. 8.2本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、以下の点に留意すること。

  3. 8.2.1できるだけ必要最少量にとどめること。追加投与の際には特に注意すること。

  4. 8.2.2注射の速度はできるだけ遅くすること。

  5. 8.2.3注射針が、血管又はくも膜下腔に入っていないことを確かめること。血管内へ誤投与された場合、中毒症状が発現することがあり、また、くも膜下腔へ誤投与された場合、全脊椎麻酔となることがある。

  6. 8.2.4前投薬や術中に投与した鎮静薬、鎮痛薬等による呼吸抑制が発現することがあるので、これらの薬剤を使用する際は少量より投与し、必要に応じて追加投与することが望ましい。なお、高齢者、小児、全身状態が不良な患者、肥満者、呼吸器疾患を有する患者では特に注意し、異常が認められた際には、適切な処置を行うこと。

  7. 8.3注射針又はカテーテルが適切に位置していない等により、神経障害が生じることがあるので、穿刺に際し異常を認めた場合には本剤の注入を行わないこと。

  • 〈硬膜外麻酔〉
  1. 8.4本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、以下の点に留意すること。

  2. 8.4.1患者のバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数等)及び全身状態の観察を十分に行うこと。また、麻酔が消失するまで観察を行うことが望ましい。なお、術中は経皮的に動脈血酸素飽和度の測定(パルスオキシメーター等)を行うことが望ましい。

  3. 8.4.2試験的に注入(test dose)し、注射針又はカテーテルが適切に留置されていることを確認すること。

  4. 8.4.3麻酔範囲が予期した以上に広がることにより、過度の血圧低下、徐脈、呼吸抑制を来すことがあるので、麻酔範囲に注意すること。

  • 〈伝達麻酔〉
  1. 8.5本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、以下の点に留意すること。

  2. 8.5.1患者のバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数等)及び全身状態の観察を行うこと。

  3. 8.5.2血管の多い部位(頭部、顔面、扁桃等)に注射する場合には、吸収が速いので、できるだけ少量を投与すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.1.1全身状態が不良な患者

生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。

  1. 9.1.2心刺激伝導障害のある患者

症状を悪化させることがある。

  • 〈硬膜外麻酔〉
  1. 9.1.3中枢神経系疾患:髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄ろう等の患者及び脊髄・脊椎に腫瘍又は結核等のある患者

硬膜外麻酔により病状が悪化するおそれがある。

  1. 9.1.4血液凝固障害や抗凝血薬投与中の患者

やむを得ず投与する場合は観察を十分に行うこと。出血しやすく、血腫形成や脊髄への障害を起こすことがある。

  1. 9.1.5脊柱に著明な変形のある患者

やむを得ず投与する場合は患者の全身状態の観察を十分に行うこと。脊髄や神経根の損傷のおそれがあり、また麻酔範囲の予測も困難である。

  1. 9.1.6腹部腫瘤のある患者

投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行うこと。仰臥位性低血圧を起こすことがあり、麻酔範囲が広がりやすい。麻酔中はさらに増悪することがある。

  1. 9.1.7重症の高血圧症、心弁膜症等の心血管系に著しい障害のある患者

患者の全身状態の観察を十分に行うこと。血圧低下や病状の悪化が起こりやすい。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1重篤な腎機能障害のある患者

中毒症状が発現しやすくなる。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1重篤な肝機能障害のある患者

中毒症状が発現しやすくなる。

9.5 妊婦

  • 〈効能共通〉
  1. 9.5.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
  • 〈硬膜外麻酔〉
  1. 9.5.2妊娠後期の患者には、投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う等、慎重に投与すること。妊娠末期は、仰臥位性低血圧を起こしやすく、麻酔範囲が広がりやすい。麻酔中はさらに増悪することがある。
  • 〈伝達麻酔〉
  1. 9.5.3本剤を傍頸管ブロックに用いる場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

  2. 9.5.4傍頸管ブロックにより胎児の徐脈を起こすことが知られている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  • 〈硬膜外麻酔〉

投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う等、慎重に投与すること。一般に麻酔範囲が広がりやすく、生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下している。

相互作用

  • 本剤は、主として肝代謝酵素CYP1A2で代謝される。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
CYP1A2阻害剤
• フルボキサミン、エノキサシン等
本剤の血中濃度が上昇することがある。本剤とフルボキサミンとの併用で、本剤のクリアランスの低下が報告されている。また、他のCYP1A2代謝剤とエノキサシンとの併用でも同様のクリアランスの低下が報告されている。 本剤の代謝には主にCYP1A2が関与しているため、左記薬剤のようなCYP1A2阻害剤との併用で、本剤の代謝が阻害され、血中濃度が上昇するおそれがある。
クラスⅢ抗不整脈剤
• アミオダロン等
心機能抑制作用が増強するおそれがあるので、心電図検査等によるモニタリングを行うこと。 作用が増強することが考えられる。
他のアミド型局所麻酔薬 中毒症状が発現するおそれがある。 相加的に作用する。
全身麻酔薬 本剤を硬膜外麻酔として投与する場合に併用すると、血圧低下作用が増強されるおそれがある。 相互に作用を増強させる。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
SpO2低下 1〜5%未満
ホルネル症候群 1%未満
めまい 1%未満
下肢知覚異常 頻度不明
不安 頻度不明
低体温 1%未満
全身しびれ感 1%未満
口唇しびれ感 1%未満
呼吸困難 1%未満
嘔吐 1%未満
嘔気 1〜5%未満
尿閉 1%未満
徐脈 1〜5%未満
心室性不整脈 1%未満
悪寒 頻度不明
戦慄 1%未満
振戦 1%未満
排尿困難 1%未満
攣縮 1%未満
昏迷 1%未満
洞性不整脈 1%未満
異常感覚 1%未満
発熱 1%未満
硬結性紅斑 頻度不明
結膜充血 1%未満
耳鳴 1%未満
蕁麻疹 頻度不明
血圧上昇 頻度不明
血圧低下(37.9%) 5%以上
血管性浮腫 頻度不明
言語障害 1%未満
譫妄 1%未満
運動障害 1%未満
頭痛 1%未満
頻脈 1%未満
顔面潮紅 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ロピバカイン塩酸塩は、局所麻酔薬では最初のS(-)-エナンチオマーで、脂質親和性が比較的低く、アミド型の長時間作用性局所麻酔薬に属する15)。本薬はS(-)-エナンチオマーであるため、神経膜ナトリウムチャンネルに対する作用選択性が高く、心筋ナトリウムチャンネルへの作用は弱い16)。これに対し、同じ長時間作用性のブピバカイン塩酸塩はラセミ体でかつ脂質親和性が高いため、神経膜のナトリウムチャンネルばかりでなく心筋ナトリウムチャンネルへの作用も強く持続的である16)。また、ブピバカイン塩酸塩は脂質親和性が高いため、運動神経の厚い髄鞘・神経膜、並びに、血液脳関門を透過しやすく、持続的で強い運動神経遮断作用及び中枢作用(痙攣誘発作用)を示すと考えられる。これら作用様式の違いにより、髄鞘が無いか又は薄い痛覚神経に対する本薬の遮断作用はブピバカイン塩酸塩と同程度で、運動神経に対する遮断作用はブピバカイン塩酸塩に比べて弱く、高用量の静脈内投与時の痙攣誘発作用及び不整脈誘発作用はブピバカイン塩酸塩に比べて弱いと考えられる。

18.2 局所麻酔作用

  1. 18.2.1硬膜外麻酔作用及び伝達麻酔作用

イヌ17)及びヒツジ18)への硬膜外投与において、本薬(5及び7.5mg/mL)の硬膜外麻酔作用の持続時間はブピバカイン塩酸塩(5及び7.5mg/mL)と同程度であった。モルモット坐骨神経及び腕神経叢19)において、本薬(5mg/mL)の伝達麻酔作用の持続時間はブピバカイン塩酸塩(5mg/mL)と同程度であった。

  1. 18.2.2痛覚神経遮断作用及び運動神経遮断作用

ウサギ副交感神経標本において、ロピバカインはC線維(無髄線維;主として痛覚神経)の活動電位に対してブピバカインと同程度の抑制作用を示したが、A線維(有髄線維;主として運動神経)の活動電位に対する抑制作用はブピバカインに比べて弱かった20)。また、下腹部開腹手術患者にロピバカイン塩酸塩2mg/mL製剤を持続硬膜外投与した結果、安定した痛覚遮断効果が得られたが、投与終了時の運動神経遮断の程度は弱かったことから、術後鎮痛に有用であると考えられた21)。

18.3 中枢神経系及び心循環器系への影響

  1. 18.3.1高用量静脈内投与時の痙攣誘発作用及び不整脈誘発作用

静脈内投与試験における本薬の痙攣誘発作用(ラット22)、イヌ23)及びヒツジ24))及び不整脈誘発作用(イヌ23))はブピバカイン塩酸塩よりも弱かった。また、健康成人男子(外国人)に本剤を静脈内持続投与し、ブピバカイン塩酸塩と比較した結果、本剤は中枢神経系及び心循環器系への影響がブピバカイン塩酸塩よりも弱く、忍容性の高いことが認められた25),26)。

  1. 18.3.2硬膜外投与時の血圧低下作用

イヌへの硬膜外投与試験において、本薬(10mg/mL)は投与前値に比べて血圧を31%低下させ、ブピバカイン塩酸塩(7.5mg/mL)は25%低下させたが、両群間に統計的に有意な差は認められなかった27)。一方、患者を対象とした硬膜外麻酔試験において、本剤(5又は7.5mg/mL)は基準値に比べて血圧を約20%低下させ、その作用は同濃度のブピバカイン塩酸塩と同程度であった28)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1硬膜外投与

ロピバカイン塩酸塩150及び200mgを手術患者の硬膜外に投与したとき、血漿中未変化体濃度は約0.5時間後に最高濃度に達し、約5.5時間のみかけの半減期で血漿から消失した(図1及び表1)1),2)。

図1 ロピバカイン塩酸塩硬膜外投与時の血漿中濃度推移(平均値±標準偏差、n=11~12)

投与量 150mg、7.5mg/mL、20mL
(n=12)
200mg、10mg/mL、20mL
(n=11)
Tmax(hr) 0.53±0.31 0.36±0.26
Cmax(μg/mL) 1.06±0.32 2.06±0.61
T1/2(hr) 5.99±1.92 4.96±1.28
AUC0-∞(μg・hr/mL) 8.65±4.41 12.50±5.12

(平均値±標準偏差)

  1. 16.1.2腕神経叢投与

ロピバカイン塩酸塩を手術患者の腕神経叢に投与したとき、血漿中未変化体濃度は約0.7時間後に最高濃度に達し、約4.5時間のみかけの半減期で減少した3)。

図2 ロピバカイン塩酸塩腕神経叢投与時の血漿中濃度推移(平均値±標準偏差、n=9~10)

投与量 225mg、7.5mg/mL、30mL
(n=10)
300mg、7.5mg/mL、40mL
(n=9)
Tmax(hr) 0.71±0.31 0.57±0.26
Cmax(μg/mL) 1.89±0.50 2.70±1.01
T1/2(hr) 4.19±1.07 4.68±1.51
AUC0-∞(μg・hr/mL) 9.42±1.37 16.06±7.74

(平均値±標準偏差)

  1. 16.1.3静脈内投与

健康成人(外国人)にロピバカイン塩酸塩20、40、80mgを30分間かけて静脈内注入終了時注1)の体内動態は線形性を示すと考えられ、投与終了時の平均血漿中未変化体濃度は0.6、1.0、1.9μg/mL、消失半減期は1.7時間、定常状態分布容積は約40L、血漿クリアランスは約0.4L/分、腎クリアランスは約1.5mL/分であった4)。

16.2 吸収

健康成人(外国人)にロピバカイン塩酸塩150mgを硬膜外投与時のバイオアベイラビリティは約90%であり、硬膜外腔から体循環血への吸収は2相性で、吸収半減期はそれぞれ約14分と約4時間であった5)。

16.3 分布

健康成人(外国人)へのロピバカイン塩酸塩50mg静脈内投与後注1)の血漿蛋白結合率は94%であり6)、血清中の結合蛋白はα1-酸性糖蛋白及び血清アルブミンであった7)。血球への分布はわずかであった。 妊婦(外国人)にロピバカイン塩酸塩150mgを硬膜外投与したとき、臍帯静脈血漿中濃度は母体血漿中濃度の約30%で、ロピバカインの胎盤通過が認められた8)。

16.4 代謝

健康成人(外国人)に14C-ロピバカイン塩酸塩50mgを静脈内投与後注1)の尿中主代謝物は、芳香環の3位水酸化体で、その他に2位メチル水酸化体、N-脱プロピル体、4位水酸化体が検出され、未変化体は約1%であった9)。代謝にはチトクロームP450のCYP3A4及び1A2が関与する10),11)。

16.5 排泄

健康成人(外国人)に14C-ロピバカイン塩酸塩50mgを静脈内投与後注1)96時間までに、投与放射能の86%が尿中に、8%が糞中に排泄された9)。

16.7 薬物相互作用

健康成人(外国人)の成績では、フルボキサミン(CYP1A2の阻害剤)を経口併用時にロピバカイン40mgを静脈内持続注入(20分間)注1)したとき、ロピバカインのCLは約70%低下し、消失半減期は約2倍に延長(3.6時間)したが、最高血漿中濃度は1.5μg/mLと、ロピバカイン単独投与時(1.2μg/mL)に比し1.2倍に上昇した程度であった。臨床使用上問題となるような有害事象は発現しなかった11)。 また、ケトコナゾール(CYP3A4の阻害剤)を経口併用時にロピバカイン40mgを静脈内持続注入注1)しても、薬物動態パラメータに有意な変動はみられなかった11)。

注1)アナペイン注7.5mg/mLの効能・効果は麻酔(硬膜外麻酔、伝達麻酔)、アナペイン注10mg/mLの効能・効果は麻酔(硬膜外麻酔)である。