Clinical snapshot

アドリアシン注用50

ドキソルビシン塩酸塩

添付文書改訂 2022年11月01日

【警告】

  1. 1.1本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。 適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の電子添文を参照して十分注意すること。 また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

  2. 1.2本剤の小児悪性固形腫瘍での使用は、小児のがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1心機能異常又はその既往歴のある患者[心筋障害があらわれることがある。]

  2. 2.2本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

  • ドキソルビシン塩酸塩通常療法 下記諸症の自覚的及び他覚的症状の緩解 悪性リンパ腫 肺癌 消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等) 乳癌 膀胱腫瘍 骨肉腫

以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法 乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法) 子宮体癌(術後化学療法、転移・再発時化学療法) 悪性骨・軟部腫瘍 悪性骨腫瘍 多発性骨髄腫 小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)

  • M-VAC療法 尿路上皮癌

用法・用量

  • 〈ドキソルビシン塩酸塩通常療法〉
  1. 6.1肺癌、消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、骨肉腫

  2. 6.1.11日量、ドキソルビシン塩酸塩として10mg(0.2mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回4~6日間連日静脈内ワンショット投与後、7~10日間休薬する。 この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。

  3. 6.1.21日量、ドキソルビシン塩酸塩として20mg(0.4mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回2~3日間静脈内にワンショット投与後、7~10日間休薬する。 この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。

  4. 6.1.31日量、ドキソルビシン塩酸塩として20~30mg(0.4~0.6mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回、3日間連日静脈内にワンショット投与後、18日間休薬する。 この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。

  5. 6.1.4総投与量はドキソルビシン塩酸塩として500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

  6. 6.2悪性リンパ腫

  7. 6.2.1上記6.1.1~6.1.3に従う。

  8. 6.2.2他の抗悪性腫瘍剤との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、以下のとおりとする。

  9. (1)ドキソルビシン塩酸塩として1日1回25~50mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内投与し、繰り返す場合には少なくとも2週間以上の間隔をあけて投与する。

  10. (2)ドキソルビシン塩酸塩として、1日目は40mg(力価)/m2(体表面積)、8日目は30mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内投与し、その後20日間休薬する。この方法を1クールとし、投与を繰り返す。

  • 投与に際しては、日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液により希釈する。なお、年齢、併用薬、患者の状態に応じて適宜減量する。また、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
  1. 6.3乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  2. 6.3.1*シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、13日間又は20日間休薬する。 この方法を1クールとし、4クール繰り返す。 なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

  3. 6.4子宮体癌(術後化学療法、転移・再発時化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  4. 6.4.1シスプラチンとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与し、その後休薬し3週毎繰り返す。 なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

  5. 6.5悪性骨・軟部腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  6. 6.5.1イホスファミドとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20~30mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回3日間連続で静脈内投与し、その後休薬し3~4週毎繰り返す。 なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。 本剤単剤では6.1.3、6.1.4に従う。

  7. 6.6悪性骨腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  8. 6.6.1シスプラチンとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回3日間連続で静脈内投与または点滴静注し、その後3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。 なお、疾患、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

  9. 6.7多発性骨髄腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  10. 6.7.1ビンクリスチン硫酸塩、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムとの併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量ドキソルビシン塩酸塩として9mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液に希釈して24時間持続静注する。これを4日間連続で行う。その後休薬し、3~4週毎繰り返す方法を1クールとする。 なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

  11. 6.8小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

  12. 6.8.1他の抗悪性腫瘍剤との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、以下のとおりとする。

  13. (1)1日20~40mg(力価)/m2(体表面積)を24時間持続点滴 1コース20~80mg(力価)/m2(体表面積)を24~96時間かけて投与し、繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。1日投与量は最大40mg(力価)/m2(体表面積)とする。

  14. (2)1日1回20~40mg(力価)/m2(体表面積)を静注または点滴静注 1コース20~80mg(力価)/m2(体表面積)を投与し、繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。1日投与量は最大40mg(力価)/m2(体表面積)とする。

  • 投与に際しては、日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、必要に応じて輸液により希釈する。なお、年齢、併用薬、患者の状態に応じて適宜減量する。また、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。

    1. 6.9膀胱腫瘍
  1. 6.9.11日量、ドキソルビシン塩酸塩として30~60mg(力価)を20~40mLの日局生理食塩液に1~2mg(力価)/mLになるように溶解し、1日1回連日または週2~3回膀胱腔内に注入する。 また、年齢・症状に応じて適宜増減する。 (ドキソルビシン塩酸塩の膀胱腔内注入法) ネラトンカテーテルで導尿し、十分に膀胱腔内を空にしたのち同カテーテルより、ドキソルビシン塩酸塩30~60mg(力価)を20~40mLの日局生理食塩液に1~2mg(力価)/mLになるように溶解して膀胱腔内に注入し、1~2時間膀胱把持する。
  • 〈M-VAC療法〉
  1. 6.10尿路上皮癌

  2. 6.10.1メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩及びシスプラチンとの併用において、通常、ドキソルビシン塩酸塩を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、成人1回30mg(力価)/m2(体表面積)を静脈内に注射する。 なお、年齢、症状により適宜減量する。 標準的な投与量及び投与方法は、メトトレキサート30mg/m2を1日目に投与した後、2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/m2、ドキソルビシン塩酸塩30mg(力価)/m2及びシスプラチン70mg/m2を静脈内に注射する。15日目及び22日目に、メトトレキサート30mg/m2及びビンブラスチン硫酸塩3mg/m2を静脈内に注射する。これを1クールとして4週毎に繰り返すが、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2以下とする。

使用上の注意

  • 〈効能共通〉
  1. 8.1本剤はドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤とは有効性、安全性、薬物動態が異なる。本剤をドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤の代替として使用しないこと。 また、本剤をドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤と同様の用法・用量で投与しないこと。

  2. 8.2骨髄機能抑制、心筋障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、心機能検査等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。なお、本剤の投与にあたってはG-CSF製剤等の適切な使用に関しても考慮すること。

  3. 8.3本剤の総投与量が500mg/m2を超えると重篤な心筋障害を起こすことが多くなるので注意すること。

  4. 8.4本剤と他の抗悪性腫瘍剤を併用した患者に、二次性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)が発生することがあるので注意すること。

  5. 8.5感染症、出血傾向の発現又は悪化に十分注意すること。

  • 〈多発性骨髄腫、小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、腎芽腫等)〉
  1. 8.624時間持続静脈内注射を実施する場合、直接末梢静脈に投与すると薬液の漏出による局所の組織障害を起こすおそれがあるので、中心静脈カテーテルを留置して中心静脈より投与すること。また、血管内留置カテーテルによる感染症の合併に十分注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1骨髄機能抑制のある患者

骨髄機能をより強く抑制するおそれがある。

  1. 9.1.2感染症を合併している患者

骨髄機能抑制により感染症が悪化するおそれがある。

  1. 9.1.3水痘患者

致命的な全身障害があらわれるおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(ラット)で、消化器系、泌尿器系及び心臓血管系に催奇形作用が報告されている。

9.6 授乳婦

授乳を避けさせること。ヒト乳汁中へ移行することが報告されている1)。

9.7 小児等

  1. 9.7.1副作用の発現に特に注意すること。

  2. 9.7.2治療終了後も定期的な心機能検査を実施することが望ましい。本剤投与後に遅発性心毒性の発現のリスクが高いとの報告がある。

  3. 9.7.3低出生体重児、新生児を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者では特に心毒性、骨髄機能抑制があらわれやすく、また、本剤は主として肝臓で代謝されるが、高齢者では肝機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
投与前の心臓部あるいは縦隔への放射線照射
潜在的に心毒性を有する抗悪性腫瘍剤
• アントラサイクリン系薬剤等
心筋障害が増強されるおそれがある。 心筋に対する蓄積毒性が増強される。
他の抗悪性腫瘍剤
放射線照射
骨髄機能抑制等の副作用が増強することがある。 副作用が相互に増強される。
パクリタキセル 本剤投与前にパクリタキセルを投与すると、骨髄抑制等の副作用が増強されるおそれがあるので、併用する場合は、パクリタキセルの前に本剤を投与すること。 本剤投与前にパクリタキセルを投与すると、本剤の未変化体の血漿中濃度が上昇する。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
下痢 1〜5%未満
不整脈 1〜5%未満
倦怠感 1〜5%未満
口内炎 5%以上
心電図異常 5%以上
悪心・嘔吐 5%以上
排尿痛 5%以上
残尿感 頻度不明
気胸・血胸(肺転移症例) 頻度不明
発熱 1〜5%未満
発疹 1〜5%未満
肝障害 1〜5%未満
胸痛 1〜5%未満
脱毛 5%以上
膀胱炎 5%以上
色素沈着 1〜5%未満
蛋白尿 頻度不明
血尿 1〜5%未満
頭痛 1〜5%未満
頻尿 5%以上
頻脈 1〜5%未満
食欲不振 5%以上
鼻出血 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

腫瘍細胞のDNAとcomplexを形成することによって、DNA polymerase反応、RNA polymerase反応を阻害し、DNA、RNAの双方の生合成を抑制することによって抗腫瘍効果を示す16),17)。

18.2 抗腫瘍性

動物実験(マウス、ラット)において移植癌に対して広い抗癌スペクトラムを有し、Ehrlich ascites carcinoma、Sarcoma180、Hepatoma MH-134、Lymphoma6C3HED・OG、L-1210、吉田肉腫に対して強い抗腫瘍効果を示した18)。 また、動物実験(ラット)においてマイトマイシンC、5-FU等の他剤に耐性となった吉田肉腫に対しても抗腫瘍効果を示した19)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

癌患者8名にアドリアマイシン(ADM)50mg/m2を急速静脈内投与した場合の未変化体(ADM)と活性代謝物アドリアマイシノール(ADM-OH)の血中濃度推移及び薬物動態パラメータは下記のとおりである2)(外国人データ)。 (ただし、血中濃度推移は代表的患者の成績である。)

半減期(hr) CL
(L/hr)
Vd
(L/kg)
AUC0~∞
(nmol・min/mL)
T1/2α T1/2β T1/2γ
0.041
±0.02
0.79
±1.13
25.8
±11.4
60.4
±23.4
24.0
±12.0
1.79
±1.17

mean±S.D.

16.3 分布

  1. 16.3.1体組織への分布

ラットに3H-アドリアマイシン(2.3μCi/mg)を静脈内投与し経時的に臓器内濃度を測定した。 臓器内濃度は脾臓>肺>腎臓>肝臓>心臓の順に高く、脳への分布は極めて少なかったが、他の臓器へは強く吸着され、持続的であった3)。

  1. 16.3.2蛋白結合率
添加濃度(μg/mL) 0.1 1
血漿蛋白結合率(%) 83.0 83.9

16.4 代謝

アドリアマイシンは、細胞内に存在するNADPH依存性のaldo-ketoreductase及びmicrosomal glycosidaseによりそれぞれadriamycinolとdeoxyadriamycin aglyconeを生じる。更にdeoxyadriamycinol aglycone、demethyldeoxyadriamycinol aglyconeに代謝され、硫酸、グルクロン酸抱合体を形成する。なお、in vitroにおいて、adriamycinolは未変化体よりも弱い活性を有する4)。また、代謝物は投与後速やかに血中に出現する5),6)(外国人データ)。

16.5 排泄

癌患者7名に3H-アドリアマイシン0.5mg/kgを静脈内投与し、尿中及び糞中の放射能を測定したところ、尿中排泄は最初の24時間で投与量の11.5%、次の24時間で3.5%が排泄され、7日間の総排泄率は22.7%であった。また、糞中への7日間の総排泄率は14~45%であった7)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1肝機能障害患者

肝機能障害を有する患者では未変化体及び代謝物の血中濃度が肝機能障害のない患者に比して高く、かつ持続することが認められている5),6)(外国人データ)。