難治性の慢性咳嗽
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能・効果
用法・用量
通常、成人にはゲーファピキサントとして1回45mgを1日2回経口投与する。
使用上の注意
本剤による咳嗽の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、漫然と投与しないこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1スルホンアミド系薬剤に過敏症の既往歴のある患者
交叉過敏症があらわれる可能性がある。本剤の有効成分であるゲーファピキサントは、スルホンアミド基を有する。
9.2 腎機能障害患者
腎機能検査を定期的に実施することが望ましい。なお、味覚異常は曝露量依存的に増加する傾向が認められている。
- 9.2.1重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者
ゲーファピキサントの曝露量の上昇が認められた。
- 9.2.2透析を必要とする末期腎不全患者
推奨される用法及び用量の調節を設定するための十分なデータは得られていない。
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラット及びウサギにおいて胎盤移行が認められた。臨床用量(1回45mgを1日2回投与)の約12倍(ラット)の曝露量では、胎児体重の軽度の減少が認められた。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラットで乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
18歳未満の患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
腎機能に注意し、必要に応じて用法及び用量を調節すること。本剤は腎排泄型の薬剤である。一般に腎機能が低下していることが多いので、本剤による副作用のリスクが増加するおそれがある。
相互作用
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| 上気道感染 | 頻度不明 |
| 上腹部痛 | 頻度不明 |
| 下痢 | 頻度不明 |
| 口の感覚鈍麻 | 頻度不明 |
| 口の錯感覚 | 頻度不明 |
| 口内乾燥 | 5%以上 |
| 口腔咽頭痛 | 頻度不明 |
| 味覚不全(40.4%)注1) | 5%以上 |
| 味覚消失注1) | 5%以上 |
| 味覚減退注1) | 5%以上 |
| 味覚障害注1) | 5%以上 |
| 咳嗽 | 頻度不明 |
| 悪心 | 5%以上 |
| 流涎過多 | 頻度不明 |
| 浮動性めまい | 頻度不明 |
| 消化不良 | 頻度不明 |
| 食欲減退 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
ゲーファピキサントは選択的P2X3受容体拮抗薬である10)。ゲーファピキサントはP2X2/3受容体サブタイプに対する拮抗作用も有している。P2X3受容体は、気道の迷走神経のC線維上にみられるATP依存性イオンチャネルである11),12)。C線維は炎症又は化学刺激物質に反応して活性化される。ATPは炎症条件下で気道粘膜細胞から放出される。細胞外ATPのP2X3受容体への結合は、C線維による侵害シグナルとして感知される。C線維の活性化は、患者が咳嗽の衝動として感じ、咳嗽反射を惹起させる。P2X3受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽が抑制される。
18.2 P2X受容体に対する拮抗作用
ゲーファピキサントは、遺伝子組換えヒトP2X3受容体及びヒトP2X2/3受容体を発現させた細胞株において、α,β-MeATP誘発細胞内カルシウム流出を阻害した(それぞれIC50値=13~43nM及び23~166nM)。また、ゲーファピキサントの作用は、その他の遺伝子組換えヒトP2X受容体(P2X1、P2X2、P2X4及びP2X7)に対し検討した10μMまで認められず、P2X3含有受容体に対して選択的であった(in vitro試験)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
健康成人男性(14例)にゲーファピキサント50mgを空腹時単回経口投与した際の血漿中ゲーファピキサントの薬物動態パラメータ及び濃度推移をそれぞれ表1及び図1に示す1)。
| 例数 | Tmax注2) (hr) |
Cmax注3) (ng/mL) |
AUC0-∞注3) (ng・hr/mL) |
t1/2注4) (hr) |
|---|---|---|---|---|
| 14 | 1.50 (1.50-4.00) |
489 (437~548) |
4,260 (3,790~4,770) |
6.93 (9.32) |
注2)中央値(最小値-最大値)
注3)最小二乗平均に基づく幾何平均(95%信頼区間)
注4)幾何平均(幾何平均に基づく変動係数%)
図1 健康成人男性にゲーファピキサント50mgを空腹時単回経口投与した際のゲーファピキサントの血漿中濃度推移算術平均+標準偏差
-
16.1.2反復投与
-
(1)健康成人
健康成人男性にゲーファピキサント15、30、50mgを食後に1日2回15日間反復経口投与した際、血漿中ゲーファピキサント濃度は投与後3日目までに定常状態に到達し、AUC0-12hr及びCmaxに基づく累積係数は1.21~1.49であった。15~50mgの用量範囲で1日2回反復経口投与した際、AUC0-12hr及びCmaxは用量比例性を示した1)。
| 用量 | 例数 | Tmax注5) (hr) |
Cmax注6) (ng/mL) |
AUC0-12hr注6) (ng・hr/mL) |
t1/2注7) (hr) |
|---|---|---|---|---|---|
| 15mg | 6 | 2.50 (1.50-3.00) |
166 (144~190) |
1,220 (1,100~1,350) |
6.90 (10.1) |
| 30mg | 6 | 1.75 (1.00-3.00) |
359 (312~412) |
2,420 (2,190~2,690) |
6.88 (9.08) |
| 50mg | 5 | 4.00 (3.00-4.00) |
558 (482~645) |
3,920 (3,520~4,370) |
6.97 (9.24) |
注5)中央値(最小値-最大値)
注6)最小二乗平均に基づく幾何平均(95%信頼区間)
注7)幾何平均(幾何平均に基づく変動係数%)
- (2)治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者
母集団薬物動態解析の結果、治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者(14例)にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与した際の定常状態における血漿中AUC0-12hr及びCmaxの幾何平均は、それぞれ3,832ng・hr/mL及び538ng/mLであった2)。
16.2 吸収
- 16.2.1吸収率
健康成人男性に[14C]ゲーファピキサント50mgを単回経口投与した際のゲーファピキサントの吸収率は78%以上であった3)(外国人データ)。
- 16.2.2食事の影響
健康成人男性にゲーファピキサント50mgを空腹時及び高脂肪食摂取後に単回経口投与した際、ゲーファピキサントのAUC0-∞及びCmaxに対する臨床的に意味のある食事の影響は認められなかった1)。本剤は、食事とは関係なく投与可能である。
16.3 分布
母集団薬物動態解析に基づき、ゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与した際の定常状態における見かけの分布容積の平均は138Lと推定された4)。 ゲーファピキサントのヒト血漿蛋白結合率は低く(55%)、血液/血漿濃度比は1.1であった(in vitro試験)。ラットにおいて、中枢神経系への移行性は低かった5)(in vivo試験)。
16.4 代謝
ゲーファピキサントの消失における代謝の寄与は小さく、CYP又はUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)の阻害剤又は誘導剤との併用により臨床的に意味のある薬物相互作用が生じる可能性は低いと考えられる。[14C]ゲーファピキサント50mgを単回経口投与した際、血漿中の主成分は未変化体であり(87%)、血漿中代謝物は投与放射能の10%未満であった3)(外国人データ)。
16.5 排泄
ゲーファピキサントの主要な消失経路は腎排泄であり、全身クリアランスにおける尿細管分泌クリアランスの寄与は約46%と推定されている。[14C]ゲーファピキサント50mgを単回経口投与した際、投与放射能に対し、尿中には未変化体が約64%及び代謝物が約12%、糞中には未変化体が約20%及び代謝物が約2%排泄された3)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1腎機能障害
ゲーファピキサントの主要な消失経路は腎排泄である。臨床薬理試験(腎機能障害者18例)並びに第Ⅰ、Ⅱ及びⅢ相試験のデータ(1,677例)を用いた母集団薬物動態解析から得られた腎機能障害の重症度別のゲーファピキサントの血漿中薬物動態パラメータを表3に示す。
| 腎機能障害の重症度注8) | 臨床薬理試験 | 母集団薬物動態解析 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 用量 | AUC0-∞ (ng・hr/mL) |
Cmax (ng/mL) |
用量 | 定常状態時の AUC0-12hr注10) (ng・hr/mL) |
定常状態時の Cmax注10) (ng/mL) |
|
| 正常 | 50mg 単回投与 |
2,280注9) | 160注9) | 45mg 1日2回 |
3,820 | 508 |
| 軽度 | 4,260注9),注11) | 221注9),注11) | 4,470 | 554 | ||
| 中等度 | 6,350注9) | 272注9) | 5,570 | 644 | ||
| 重度 | 8,580注9) | 318注9) | 7,220 | 785 | ||
| 非血液透析下の末期腎不全 | 10,100注12) | 292注12) | - | - | - | |
| 血液透析下の末期腎不全 | 7,810注12) | 214注12) | - | - | - |
注8)正常:eGFR 90mL/min/1.73m2以上 軽度:eGFR 60mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満 中等度:eGFR 30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満 重度:eGFR 15mL/min/1.73m2以上30mL/min/1.73m2未満
注9)自然対数変換後のデータを用いた線形回帰による平均値
注10)幾何平均
注11)本試験には軽度腎機能障害者は組み入れられなかったため、当該被験者での曝露量は正常な腎機能を有する被験者及び中等度腎機能障害者から補間した。
注12)最小二乗平均に基づく幾何平均
軽度又は中等度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2以上)はゲーファピキサントの曝露量に対して臨床的に意味のある影響を及ぼさなかった。 治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者を含めた母集団薬物動態解析の結果、重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者では腎機能正常者と比較し、ゲーファピキサントのAUC0-12hr及びCmaxの幾何平均はそれぞれ89%及び54%増加すると予測された6)。腎機能正常者と同程度の曝露量を維持するため、重度腎機能障害で透析を必要としない患者に対しては本剤の用法及び用量を調節すること。
- 16.6.2肝機能障害
ゲーファピキサントは主に腎排泄されるため、ゲーファピキサントの曝露量に対する肝機能障害の影響はないと考えられる。
- 16.6.3年齢、性別、人種、体重
年齢、性別、人種及び体重はゲーファピキサントの薬物動態に対して臨床的に意味のある影響を及ぼさなかった。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1In vitro試験
ゲーファピキサントは排出トランスポーターである多剤・毒素化合物排出蛋白(MATE)1、MATE2-K、P-糖蛋白(P-gp)及び乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質である。ゲーファピキサントがCYPを阻害又は誘導する可能性は低いため、CYPによって代謝される薬剤に影響を及ぼさないと考えられる。ゲーファピキサントはMATE1、MATE2-K、有機カチオントランスポーター(OCT)1、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1及びOATP1B3に対して阻害作用を示すが、ゲーファピキサント45mg 1日2回の投与ではこれらの阻害作用により臨床的に意味のある薬物相互作用が生じる可能性は低いと考えられる。
-
16.7.2臨床薬物相互作用試験
-
(1)オメプラゾール
ゲーファピキサント50mg(単回経口投与)及びプロトンポンプ阻害剤であるオメプラゾール40mg(1日1回反復経口投与)を併用した際、ゲーファピキサントのAUC0-∞及びCmaxの幾何平均比(ゲーファピキサント及びオメプラゾール併用/ゲーファピキサント単独)(90%信頼区間)は、それぞれ0.97(0.90~1.05)及び0.91(0.82~1.02)であり、ゲーファピキサントの薬物動態に対して臨床的に意味のある影響は認められなかった7)(外国人データ)。
- (2)ピタバスタチン
ゲーファピキサント45mg(1日2回反復経口投与)及びOATP1Bの基質であるピタバスタチン1mg(単回経口投与)を併用した際、ピタバスタチンのAUC0-∞及びCmaxの幾何平均比(ゲーファピキサント及びピタバスタチン併用/ピタバスタチン単独)(90%信頼区間)はそれぞれ0.97(0.93~1.02)及び0.98(0.90~1.07)であり、ピタバスタチンの薬物動態に対して臨床的に意味のある影響は認められなかった8)(外国人データ)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、1回45mgを1日2回経口投与である。