Clinical snapshot

マグセント注100mL

硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖

添付文書改訂 2022年02月01日

【警告】

  1. 1.1本剤の投与により高マグネシウム血症が起こり、マグネシウム中毒1),2) (血圧低下、中枢神経抑制、心機能抑制、呼吸麻痺等)が惹起されることがあるため、投与中は、慎重な観察(膝蓋腱反射、呼吸数の変動の確認あるいは血中マグネシウム濃度の測定等)を行うこと。

  2. 1.2本剤を投与する場合には、出産にあたって新生児に対する気管内挿管を含む必要十分な蘇生を実施できる体制等、新生児及び母体を含めた適切な周産期管理が可能な体制を確保すること3) 。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1重症筋無力症の患者〔アセチルコリン放出抑制による骨格筋弛緩をおこすおそれがある〕

  2. 2.2心ブロックの既往歴のある患者4) 〔洞房結節インパルス生成速度の遅延と伝導時間の持続を助長するおそれがある〕

  3. 2.3低張性脱水症の患者〔低張性脱水症が悪化するおそれがある〕

効能・効果

  • 切迫早産における子宮収縮の抑制

  • 重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療

用法・用量

  • 〈切迫早産における子宮収縮の抑制〉

初回量として、40mL(硫酸マグネシウム水和物として4g)を20分以上かけて静脈内投与した後、毎時10mL(1g)より持続静脈内投与を行う。なお、子宮収縮が抑制されない場合は毎時5mL(0.5g)ずつ増量し、最大投与量は毎時20mL(2g)までとする。子宮収縮抑制後は症状を観察しながら漸次減量し、子宮収縮の再発がみられないことが確認された場合には中止する。 本剤は持続注入ポンプを用いて投与すること。

  • 〈重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療〉

初回量として、40mL(硫酸マグネシウム水和物として4g)を20分以上かけて静脈内投与した後、毎時10mL(1g)より持続静脈内投与を行う。症状に応じて毎時5mL(0.5g)ずつ増量し、最大投与量は毎時20mL(2g)までとする。本剤は初回量投与の場合を除いて、持続注入ポンプを用いて投与すること。

使用上の注意

  • 〈効能共通〉
  1. 8.1本剤の投与前、投与中及び増量時は、慎重な観察(膝蓋腱反射、呼吸数の変動の確認、尿量の測定あるいは血中マグネシウム濃度のモニター等)を行い、副作用の発現に注意すること。

  2. 8.2投与中血糖値が一過性に上昇することがあるので注意すること。

  3. 8.3本剤とリトドリン塩酸塩(注射剤)を併用した母体から出生した早産児において、高カリウム血症のリスクが高いことが報告されているので、これらを併用した場合には、症状の有無にかかわらず新生児の心電図又は血清カリウム値のモニタリングを適切に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと7) 。

  • 〈切迫早産における子宮収縮の抑制〉
  1. 8.4切迫早産に対して本剤を分娩直前まで持続静脈内投与した場合、出生した新生児に高マグネシウム血症を起こすことがあるため、分娩前2時間は本剤を静脈内投与しないこと3),4) 。
  • 〈重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療〉
  1. 8.5子癇及び子癇の発症抑制を目的とし、本剤を分娩前2時間に投与する場合は、児に対する必要な対応を取ることができる状況下で投与し、出生した児の観察を十分行うこと。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1高マグネシウム血症の患者

マグネシウム中毒に注意し投与すること。

  1. 9.1.2低カルシウム血症の患者

低カルシウム血症を助長するおそれがある。

  1. 9.1.3カリウム欠乏傾向のある患者

低カリウム血症が誘発されるおそれがある。

  1. 9.1.4糖尿病の患者

ブドウ糖を含有している。

  1. 9.1.5尿崩症の患者

水、電解質異常の悪化又は誘発されるおそれがある。

  1. 9.1.6貧血症の患者

貧血症を助長するおそれがある。

  1. 9.1.7心疾患のある患者

洞房結節インパルス生成速度の遅延と伝導時間の持続のおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

マグネシウム排泄障害による高マグネシウム血症を惹起するおそれがある4),8) 。

9.5 妊婦

  1. **9.5.1マグネシウムイオンは容易に胎盤を通過するため、本剤を分娩前24時間以内に投与した場合は、新生児に呼吸障害、筋緊張低下、腸管麻痺等の高マグネシウム血症を引き起こす場合があるので、生後から24時間まで、もしくは48時間までの間は監視を行う。なお、このような症状があらわれた場合には、カルシウム剤の投与、蘇生及び気管内挿管法、間欠的陽圧換気法等により処置すること9) 。

  2. **9.5.2妊娠中の投与により、胎児に胎動低下が、新生児に心不全、高カリウム血症、低カルシウム血症があらわれることがある。

  3. **9.5.3妊娠中に長期投与した場合、出生時において児にくる病様の骨病変が認められることがある(国内の市販後に報告された症例のうち、確認できた母体への最短の投与期間は18日であった)。

  4. **9.5.4ラット生殖発生毒性試験の3×1000mg/kg/日投与群において、出生児の低体重、分化遅延及び波状肋骨の増加が認められた10) 。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。 本剤の投与中止後24時間は乳汁中のマグネシウム濃度が増大することがあるので注意すること4) 。

9.8 高齢者

用量に留意して慎重に投与すること。本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では、腎機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある。

相互作用

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
スルファミン剤 スルフヘモグロビン血症を起こすことがある。 機序不明
競合性(ツボクラリン等)及び脱分極性(サクシニルコリン等)筋弛緩剤 作用持続時間を延長することがある。 機序不明
• 子宮収縮抑制剤• リトドリン塩酸塩 CK上昇11) 、悪心、嘔吐、呼吸抑制12) 、循環器関連の副作用(心室頻拍、胸痛、心筋虚血13) )があらわれることがある。 機序不明
• 子宮収縮抑制剤• リトドリン塩酸塩(注射剤) 出生した早産児の高カリウム血症のリスクが高いことが報告されている7) 。 機序不明
カルシウム拮抗剤(ニフェジピン) 高度の低血圧3) 及び神経筋伝達遮断14) が増大する。 併用により神経筋遮断作用が増強される。
カルシウム塩 マグネシウムの作用を減弱させる15) 。 マグネシウム拮抗作用による。
バルビツレート、催眠剤、麻酔剤 呼吸抑制作用が増強することがある15) 。 併用により呼吸抑制作用が増強される。
アミノグリコシド系抗生剤 神経筋遮断作用が増強される。
マグネシウムを投与した母体から出生した新生児において、併用により呼吸停止を来たした症例の報告がある15),16) 。
併用により神経筋遮断作用が増強される。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALTの上昇] 1〜5%未満
うっ血性心不全 頻度不明
不整脈 1〜5%未満
中毒疹 1〜5%未満
乏尿 頻度不明
乳房うっ滞 頻度不明
乳汁漏出 頻度不明
低カルシウム血症 頻度不明
倦怠感 5%以上
凝血異常 頻度不明
反射減退 1〜5%未満
口渇 1〜5%未満
呼吸困難 1〜5%未満
嘔吐 1〜5%未満
嘔気 1〜5%未満
外陰浮腫 頻度不明
尿崩症 頻度不明
心悸亢進(動悸) 1〜5%未満
急性腎不全 頻度不明
意識障害 頻度不明
振戦 1〜5%未満
浮動性めまい 1〜5%未満
潮紅 1〜5%未満
無力症 1〜5%未満
熱感 5%以上
知覚減退(しびれ) 1〜5%未満
肝不全 頻度不明
肝機能障害[AST 1〜5%未満
胸痛 1〜5%未満
血管痛 1〜5%未満
複視 1〜5%未満
視力異常 1〜5%未満
調節障害 1〜5%未満
踵骨骨折 頻度不明
電解質異常 頻度不明
頭痛 1〜5%未満
食欲不振 1〜5%未満
高カリウム血症 頻度不明
高マグネシウム血症 1〜5%未満
鼻出血 1〜5%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

  • 〈切迫早産における子宮収縮の抑制〉

マグネシウムはCaチャネルを遮断し、細胞外から細胞内へのカルシウム流入を抑制する36) 。Na+、K+-ATPaseやCa2+-ATPaseを活性化し、細胞内から細胞外へのカルシウム流出を促進する37) 。イノシトール三リン酸(IP3)特異的なホスホリパーゼCの活性を抑制し、IP3産生を抑制して、細胞内カルシウム貯蔵部位(小胞体)からのIP3によるカルシウム放出を抑制する38) 。Ca2+-ATPaseを活性化し、細胞内で小胞体へのカルシウム取り込みを促進する37) 。細胞内遊離カルシウムが減り、カルモジュリンを介するミオシン軽鎖キナーゼが活性化されず、アクチンとミオシンの滑り込みによる筋収縮が抑制される39),40) 。

  • 〈重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療〉

硫酸マグネシウム水和物を筋注又は静注すると、血中のMg2+が増加してCa2+との平衡が破れて、中枢神経系の抑制と骨格筋弛緩が起こる。 本剤の急速静注の際に見られる麻酔様状態は、Mg2+が神経筋接合部におけるアセチルコリンの放出を阻害し、神経インパルスの伝達を遮断して骨格筋弛緩を起こすことによると考えられている。 また、この神経筋に対する作用は、カルシウムで拮抗される41) 。

18.2 子宮収縮抑制作用

硫酸マグネシウム水和物は単独投与で妊娠後期ラットの子宮自動運動及びアセチルコリン又はPGF2αによる誘発子宮収縮を抑制した。更に硫酸マグネシウム水和物とリトドリン塩酸塩の併用により、子宮平滑筋の収縮抑制作用は増強された(in vitro in situ)42) 。

薬物動態

16.1 血中濃度

  • 〈切迫早産における子宮収縮の抑制〉
  1. 16.1.1切迫早産患者10例に硫酸マグネシウム水和物4gを30~40分で静脈内投与後、1g/時を維持量として持続静脈内投与した。血清マグネシウム濃度は投与前1.91±0.06mg/dLから30分後に4.6±0.71mg/dLと急激に上昇した後、徐々に低下し、1時間後3.97±0.31mg/dL、3時間後3.65±0.26mg/dL及び48時間後3.88±0.54mg/dLの間を推移した34) 。

  2. 16.1.2切迫早産患者81例に対し、硫酸マグネシウム水和物静脈内投与1時間後に血清マグネシウム濃度を測定した結果は、下記のとおりである20) 。

時期 例数 (mg/dL):平均±SD(範囲)
投与前 81 2.2±0.7(1.3~5.0)
初回量(4g) 71 4.0±0.8(1.6~6.0)
維持量:1.0g/時 48 4.0±0.8(2.4~6.6)
維持量:1.5g/時 38 4.3±0.7(2.4~5.7)
維持量:2.0g/時 30 5.0±0.8(3.2~7.0)
維持量:2.5g/時注1) 12 6.0±2.5(3.9~13.4)
維持量:3.0g/時注1) 8 6.4±1.4(4.8~9.5)

注1)本剤の承認された維持量は、2.0g/時までである。

16.3 分布

ウサギに投与されたMg28は容易に胎盤組織に移行し、次いで胎児の各組織に取り込まれる。胎児組織におけるMg28の取り込みは、骨、腎臓、筋肉、肝臓、そして肺の順に高かった35) 。