- 〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌
- 〈適応症〉
肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腹膜炎
アンピシリンナトリウムスルバクタムナトリウム
2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2伝染性単核症の患者[アンピシリンの投与により発疹が高頻度に発現したとの報告がある。]
本剤に感性のブドウ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌
肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腹膜炎
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日6g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、重症感染症の場合は必要に応じて適宜増量することができるが、1回3g(力価)1日4回(1日量として12g(力価))を上限とする。
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日3g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。
通常小児にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日60~150mg(力価)/kgを3~4回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。 静脈内注射に際しては、日局注射用水、日局生理食塩液又は日局ブドウ糖注射液に溶解し、緩徐に投与する。 なお、点滴による静脈内投与に際しては、補液に溶解して用いる。
8.1本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。
8.1.1事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
8.1.2投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
8.1.3投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
8.2無顆粒球症、貧血(溶血性貧血を含む)、血小板減少等の重篤な血液障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。
8.3急性腎障害、間質性腎炎等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。
8.4肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しない。
9.1.2セフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.3本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー反応を起こしやすい体質を有する患者
9.1.4経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
本剤0.75g製剤、1.5g製剤及び3g製剤にナトリウムがそれぞれ57.5mg(2.5mEq)、115mg(5mEq)及び230mg(10mEq)含まれていることに留意すること。
本剤の投与量及び投与間隔を調節する等、慎重に投与すること。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。アンピシリンの大量(3,000mg/kg/日)投与でラットに催奇形性が報告されている。アンピシリン及びスルバクタムは胎盤を通過することが報告されている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母乳中へ移行することが報告されている1)。
9.7.1低出生体重児及び新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.21歳以下の乳児では慎重に投与すること。下痢・軟便の発現頻度が高い。
次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
9.8.1一般的に生理機能が低下していることが多く副作用が発現しやすい。
9.8.2ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| アロプリノール | アンピシリンとの併用により、発疹の発現が増加するとの報告がある2)。 | 機序不明だが薬剤性の発疹がアロプリノールとアンピシリンを併用していた67例の入院患者のうち22.4%に認められ、アンピシリン単独服用例の1,257例では7.5%に認められた。またアンピシリンを併用しないアロプリノール服用患者283例のうち2.1%が薬剤性発疹を経験したという報告がある。 |
| 抗凝血薬 | ペニシリン注射液が血小板の凝集・凝固に影響を与え、出血傾向を増強するおそれがある。 | 抗凝血作用とペニシリン注射液の血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される可能性がある。 |
| 経口避妊薬 | アンピシリンとの併用により避妊効果が減弱したとの報告がある。 | 本剤は腸内細菌叢を変化させる可能性があり、それにより経口避妊薬の腸肝循環による再吸収を抑制すると考えられている。 |
| メトトレキサート | ペニシリンとの併用により、メトトレキサートのクリアランスが減少するおそれがある。 | メトトレキサートの尿細管分泌が阻害され、体内からの消失が遅延し、メトトレキサートの毒性が増強する可能性がある。 |
| プロベネシド | 併用により、本剤の血中濃度上昇、血中濃度半減期の延長、本剤の持つ毒性リスクの上昇のおそれがある。 | プロベネシドの尿細管分泌抑制作用により本剤の排泄が遅延するおそれがある。 |
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| Al-P上昇 | 1%未満 |
| ALT上昇 | 頻度不明 |
| AST上昇 | 頻度不明 |
| LAP上昇 | 1%未満 |
| γ-GTP上昇 | 1%未満 |
| カンジダ症 | 頻度不明 |
| そう痒感 | 1%未満 |
| ビタミンB群欠乏症状(舌炎 | 頻度不明 |
| ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症 | 1%未満 |
| ビリルビン値上昇 | 1%未満 |
| 下痢・軟便 | 1%未満 |
| 低カリウム血症 | 頻度不明 |
| 出血傾向等) | 1%未満 |
| 口内炎 | 頻度不明 |
| 口内炎 | 頻度不明 |
| 多形紅斑 | 頻度不明 |
| 好酸球増多 | 頻度不明 |
| 悪心・嘔吐 | 1%未満 |
| 痙攣等の神経症状 | 頻度不明 |
| 発熱 | 1%未満 |
| 発疹 | 1%未満 |
| 白血球減少 | 1%未満 |
| 神経炎等) | 頻度不明 |
| 腹部不快感 | 1%未満 |
| 蕁麻疹 | 1%未満 |
| 関節痛 | 頻度不明 |
| 食欲不振 | 頻度不明 |
| 黄疸 | 1%未満 |
| 黒毛舌 | 頻度不明 |
スルバクタムがβ-ラクタマーゼのⅠc、Ⅱ、Ⅲ及びⅣ型を強く、Ⅰa及びⅤ型を軽度に不可逆的に不活化するため、アンピシリンがこれらの酵素により加水分解されることを防ぎ、アンピシリン耐性菌にも抗菌力を示す15)。アンピシリンは、細菌のペプチドグリカン架橋形成を阻害して細胞壁合成を妨げ、殺菌的に作用する16),17)。
18.2.1ブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属、インフルエンザ菌のβ-ラクタマーゼ産生・アンピシリン耐性菌及び肺炎球菌に対し、強い抗菌力を示す18),19),20)(in vitro試験)。
18.2.2β-ラクタマーゼ高度産生のブドウ球菌属、大腸菌、又はプロテウス属によるマウス単一感染モデルにおいて、アンピシリンより強い治療効果を示す19),20)。 また、β-ラクタマーゼ高度産生のアンピシリン耐性インフルエンザ菌とアンピシリン感受性肺炎球菌のマウス混合感染モデルにおいてアンピシリンより強い治療効果を示す20)。
健常成人6名に注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム0.75g(力価)又は1.5g(力価)をクロスオーバー法により静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの血清中濃度は、静注後5分で、0.75g(力価)投与時スルバクタム18.7μg/mL、アンピシリン39.2μg/mL、1.5g(力価)投与時スルバクタム40.0μg/mL、アンピシリン78.8μg/mLであった。 スルバクタムとアンピシリンの濃度半減期(t1/2)はいずれも約1時間であり、両薬物の血中動態は良く近似していた3)。
16.3.1成人患者3例に注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム1.5g(力価)を静注した時のスルバクタム及びアンピシリンの胆汁中濃度は、静注後1時間でそれぞれ平均3.6μg/mL、19.8μg/mLであった4)。
16.3.2成人患者の喀痰5)、腹腔内滲出液6)、子宮・付属器組織7)、骨盤死腔滲出液7)、並びに小児患者の髄液8)、膿汁9)などへの移行は下表のとおりスルバクタム及びアンピシリンとも良好であることが認められた。
| 体液・組織 | 投与量(力価) | 薬物濃度(μg/mL又はμg/g) | |
|---|---|---|---|
| スルバクタム | アンピシリン | ||
| 喀痰 | 3g | 2.40 | 1.50 |
| 腹腔内滲出液 | 1.5g | 1.82 | 2.71 |
| 子宮・付属器 | 1.5g | 7.06~15.4 | 6.6~27 |
| 骨盤死腔滲出液 | 1.5g | 11.6~16.4 | 19.1~21.6 |
| 髄液(小児) | 100mg/kg | 17.2 | 16.0 |
| 膿汁(小児) | 66.7mg/kg | 1.34 | 2.66 |
健常成人6名に注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム0.75g(力価)又は1.5g(力価)を静注した時の投与後0~1時間の尿中濃度(平均値)は、0.75g投与でスルバクタム約2,000μg/mL及びアンピシリン約4,000μg/mL、1.5g投与でスルバクタム約4,000μg/mL及びアンピシリン約10,000μg/mLと、高い値を示した。投与後24時間までのスルバクタム、アンピシリンの累積尿中排泄率は0.75g投与、1.5g投与ともスルバクタム、アンピシリンいずれも約80%であった3)。スルバクタム、アンピシリンともほとんど代謝されず未変化体として主に尿中に排泄される10)。
16.6.1腎機能障害患者
(1)海外の報告によれば、中等度ないし高度腎機能が低下している患者(10例)ではスルバクタム及びアンピシリンのt1/2が延長する11),12)。
(2)日本人市中肺炎患者47例(クレアチニンクリアランス(CLcr):34.6~176mL/min)から得られた222点の血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を行った。その結果、腎機能(CLcr)はスルバクタム及びアンピシリンのクリアランスの有意な変動因子であり、腎機能(CLcr)の低下によりスルバクタム及びアンピシリンのt1/2は延長し、濃度-時間曲線下面積(AUC)が上昇する傾向が認められた。腎機能が異なる患者に対して下表のとおり投与間隔を調整したとき、いずれの腎機能障害患者においても同様の最高濃度(Cmax)及びAUCの推定値が得られた13),14)。
| CLcr (mL/min) |
投与間隔 | スルバクタム | アンピシリン | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Cmax (μg/mL) |
AUC0-48 (μg・h/mL) |
t1/2 (h) |
Cmax (μg/mL) |
AUC0-48 (μg・h/mL) |
t1/2 (h) |
||
| 90~60 | 1日4回、 6時間ごと |
68.6~74.2 | 650~861 | 1.09~1.33 | 139~151 | 1260~1670 | 1.20~1.42 |
| 59~30 | 1日4回、 6時間ごと |
74.4~85.1 | 872~1380 | 1.34~1.96 | 151~173 | 1690~2690 | 1.43~2.02 |
| 59~30 | 1日3回、 8時間ごと |
73.3~81.5 | 655~1050 | 1.34~1.96 | 149~166 | 1270~2030 | 1.43~2.02 |
| 29~15 | 1日2回、 12時間ごと |
79.5~86.4 | 718~1120 | 2.00~3.03 | 162~176 | 1400~2190 | 2.06~3.06 |
| 14~5 | 1日1回、 24時間ごと |
83.1~90.7 | 599~1190 | 3.16~6.28 | 170~185 | 1160~2310 | 3.20~6.27 |
注:腎機能が異なる患者に注射用アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム3g(力価)を30分かけて点滴静注したときの血漿中スルバクタム及びアンピシリン濃度推移シミュレーションから得られた薬物動態パラメータ(PKパラメータの下限値及び上限値は、それぞれCLcrの区分の上限値及び下限値に対応している)