18.1 作用機序
黄色ブドウ球菌由来DNAジャイレース、トポイソメレースⅣに対して阻害活性を示した。また、ヒト由来トポイソメレースⅡ阻害作用は弱かった17)。
18.2 抗菌スペクトルと抗菌活性
パズフロキサシンは、好気性、通性嫌気性及び偏性嫌気性のグラム陽性菌並びにグラム陰性菌に対して広い抗菌スペクトルを有し、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、バクテロイデス属、プレボテラ属に対し抗菌活性を示した。
また、セファゾリン(CEZ)若しくはセフタジジム(CAZ)耐性腸内細菌科菌群、アンピシリン(ABPC)耐性インフルエンザ菌、イミペネム(IPM)、ゲンタマイシン(GM)単剤あるいはCAZを加えた2、3剤に耐性を示す緑膿菌、IPM分解性βラクタメース産生セラチア・マルセスセンス及び緑膿菌に対して抗菌活性を示した。
肺炎球菌ではPSSP、PISP、PRSPに対してペニシリン耐性の有無注5)にかかわらず同等の抗菌活性を示した18)。
注5)CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)の判定基準に基づき、ペニシリンGに対するMICが0.06μg/mL以下の場合をPSSP、0.125~1μg/mLの場合をPISP、2μg/mL以上の場合をPRSPと判定した。
18.3 殺菌効果
黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌に対して、殺菌的に作用した。また、緑膿菌の初期静止期、対数増殖期、定常期に作用させたときはいずれの時期でもCAZ、GMより強い殺菌効果を示した。黄色ブドウ球菌の定常期ではCAZ、GMと同様に殺菌効果がみられなかったが、初期静止期、対数増殖期に作用させたときは、CAZより強い殺菌効果を示した19)。
18.4 耐性菌の選択
黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌において自然耐性菌出現頻度は低かった。継代培養法でのMIC上昇度は黄色ブドウ球菌ではIPM、GM、シプロフロキサシン(CPFX)より小さく、また、緑膿菌ではCAZより小さかった19)。
緑膿菌によるラットポーチ内感染系では、耐性菌選択頻度はIPMと有意差はなく、CAZに比べ有意(p<0.01)に低かった17)。
18.5 実験的感染症モデルに対する治療効果
黄色ブドウ球菌によるマウス全身感染、大腸菌によるマウス全身感染、肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリスによるマウス全身感染に対して優れた治療効果を示した。また、GM、CAZ、IPM単剤耐性及びIPM、GM耐性菌を含む緑膿菌によるマウス全身感染に対して優れた治療効果を示した19),20)。
黄色ブドウ球菌と緑膿菌によるマウス混合全身感染に対してCAZ、IPM、CPFX、バンコマイシン(VCM)、アルベカシン(ABK)より優れた治療効果を示した17)。
緑膿菌によるマウス呼吸器感染、マウス尿路感染、ラット背部皮下ディスク感染及び熱傷感染モデルに対して優れた治療効果を示した19)。
16.1 血中濃度
本剤を健康成人に単回投与したときの薬物動態パラメータ注1)は以下のとおりである2),3)。
投与量 (mg) |
症例数 |
T1/2注2) (hr) |
Tmax (hr) |
Cmax (μg/mL) |
AUC0→∞ (μg・hr/mL) |
| 300 |
5 |
1.65±0.27 |
0.5 |
8.99±0.59 |
13.3±2.5 |
| 500 |
6 |
1.88±0.26 |
0.5 |
11.0±2.4 |
21.7±3.0 |
| 1000 |
8 |
3.0±0.3 |
1.1±0.0 |
18.45±1.49 |
59.42±4.43 |
平均±S.D.
注1)投与量300mg及び500mg:2-コンパートメントモデルに基づく解析
投与量1000mg:モデルに依存しない解析により算出
注2)投与量300mg及び500mg:β相の半減期(T1/2β)
単回投与時の血清中濃度推移
16.3 分布
-
16.3.1組織内移行
-
(1)喀痰・肺組織
1回500mg、30分点滴静注時の最高喀痰中濃度は点滴開始0.5~2.5時間後に2.49~6.24μg/g(n=4)であり、また、点滴開始1.5時間後の肺組織内濃度は平均7.95μg/g(n=5)であった4)。
- (2)胆道
1回500mg、30分点滴静注時の胆管胆汁中最高濃度は点滴開始1.5~4.5時間後に5.47~29.9μg/mL(n=3)であり5)、また、胆嚢組織内濃度は点滴開始1.0~2.5時間後に9.85~35.5μg/g(n=4)であった4)。
- (3)胸水・腹水
1回500mg、1時間点滴静注時の胸水中濃度は点滴開始7時間後に1.43μg/mL(n=1)、1回300mg、1時間点滴静注時の腹水中濃度は点滴開始4時間後に1.87μg/mL(n=1)を示した5)。
- (4)創膿汁・熱傷皮膚組織
1回500mg、30分点滴静注時の創膿汁中濃度は点滴開始1.5時間後に2例平均で4.73μg/mLであり4)、また、点滴開始1.5時間後の熱傷皮膚組織エスカー部分の濃度は4例平均で4.54μg/gであった6)。
- (5)女性性器組織
1回300mg、30分点滴静注時の女性性器の各組織濃度は点滴開始0.83時間後で5.00~13.9μg/g(n=1)であり、骨盤死腔液中濃度は点滴開始2時間後の平均で3.18μg/mL(n=4)であった7)。
- (6)髄液
1回500mg、30分点滴静注1.5時間後の髄液中濃度は3例平均で0.33μg/mLであった2)。
- (7)好中球・組織培養細胞
好中球及び組織培養細胞(胎児小腸細胞、胎児肺正常2倍体細胞及び成人肝細胞)の浮遊液にパズフロキサシン溶液を添加した4種類の混合液(薬剤濃度:1μg/mL)を培養後、細胞内及び細胞外液の薬剤濃度を測定し、各細胞におけるC/E ratio(細胞外薬剤濃度に対する細胞内薬剤濃度の比率)を算出した結果、平均でそれぞれ7.1(n=14)、7.4(n=9)、3.4(n=12)及び2.1(n=3)であった8)。
16.4 代謝
-
16.4.1本剤はヒト肝ミクロソームを用いた試験において、CYP1A2に対し1000μmol/Lで約37%の阻害作用を示したが、CYP2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4に対しては阻害作用を示さなかった。
-
16.4.2本剤投与後の代謝物はグルクロン酸抱合体が胆汁中及び尿中に認められた。しかし、それ以外の代謝物の濃度は低く、健康成人に400mgを30分点滴静注にて単回投与した場合、投与24時間までのグルクロン酸抱合体の尿中排泄率5.71%を含めた本剤の尿中排泄率は99.7%と高く、生体内で光学異性化も示さないことから、本剤は代謝を受け難い薬剤と考えられた9)。
16.5 排泄
健康成人に50~500mgを30分点滴静注にて単回投与した場合又は1000mgを1時間点滴静注にて単回投与した場合の投与24時間までの尿中排泄率は約90%であった。1回300mgを1日2回(最終日は1回)で5日間、1回500mgを1日2回(1日目及び最終日は1回)で6日間、又は1回1000mgを1日2回(1日目及び最終日は1回)で6日間反復投与した場合の累積尿中排泄率も約90%で推移した。また、1回500mgを1日3回(最終日は1回)5日間反復投与時にも尿中回収率の上昇傾向を認めなかった3),10)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1高齢者
本剤を高齢者(65歳以上)に単回投与したときの薬物動態パラメータ注3)は以下のとおりである3),11)。
投与量 (mg) |
症例数 |
T1/2注4) (hr) |
Cmax (μg/mL) |
AUC0→∞ (μg・hr/mL) |
| 500 |
10 |
2.04±0.27 |
18.3±3.5 |
37.2±6.3 |
| 1000 |
10 |
3.0±0.4 |
25.74±5.61 |
73.18±15.10 |
平均±S.D.
注3)投与量500mg:2-コンパートメントモデルに基づく解析
投与量1000mg:モデルに依存しない解析により算出
注4)投与量500mg:β相の半減期(T1/2β)
高齢者(65歳以上)に500mgを30分点滴静注にて単回投与した場合の投与24時間までの尿中排泄率は平均83.5%であった11)。
- 16.6.2腎機能低下患者
Ccr13.6(mL/min)の患者1例に300mgを30分点滴静注にて単回投与したときのCmax、AUC0→∞、T1/2βはそれぞれ10.3μg/mL、51.5μg・hr/mL、7.36時間であった。
Ccr13.6(mL/min)の患者に1回500mgを1日1回点滴静注にて反復投与したときのCss,max、AUC0→24をシミュレーションにて算出した結果、それぞれ30.2μg/mL、451.5μg・hr/mLであった。
Ccr20~30(mL/min)の患者に1回500mgを1日2回点滴静注にて反復投与したときのCss,max、AUC0→24をシミュレーションにて算出した結果、それぞれ22.1~30.3μg/mL、269.2~470.6μg・hr/mLであった12)。
- 16.6.3血液透析施行患者
血液透析施行患者3例に300mgを30分点滴静注にて単回投与したときのCmax、AUC0→∞はそれぞれ12.5~13.3μg/mL、196~269μg・hr/mLであった。また、投与開始24時間後より血液透析を4時間施行した場合、本剤は59~66mgが除去され、見かけ上の血清中濃度半減期(T1/2d)は非透析時の半減期(T1/2β)17.9~23.2時間から2.78~4.00時間に短縮された12)。
のう胞腎感染症の血液透析施行患者4例に週3回の血液透析後、300mgを30分点滴静注投与したとき、初回投与時のCmax、AUC0→∞及びT1/2はそれぞれ7.76~13.04μg/mL、258~662μg・hr/mL及び22.0~47.2時間であった。また、3回目投与の約64時間後より血液透析を4時間施行した場合、透析開始前から透析終了1時間後までの本剤の除去率は37.5~51.7%であった13)。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1プロベネシドによる影響
健康成人3例にプロベネシド1gを経口投与し、2時間後に本剤200mgを30分点滴静注した。更に、点滴終了2時間後にプロベネシド0.5gを経口投与した。その結果、本剤の血清中半減期は約2倍に延長し、AUCは2.4倍に増加したが、最高血清中濃度に大きな変化は認められなかった10)。