Clinical snapshot

ニトプロ持続静注液30mg

ニトロプルシドナトリウム水和物注射液

添付文書改訂 2021年08月01日

【警告】

  1. 1.1*本剤は緊急時に適切な対応がとれる施設において循環器疾患治療や救急医療に十分な知識及び経験のある医師の下で使用すること。

  2. 1.2本剤の投与により過度の低血圧が急激にあらわれることがあり、場合によっては死に至る可能性があるので、必ず血圧を連続的にモニター(観血的動脈圧測定等)しながら、慎重に投与すること。

  3. 1.3*本剤の投与によりシアン中毒があらわれることがあり、場合によっては死に至ることがあるので、血圧、心拍数、心電図の他に血液ガス及び酸塩基平衡が常時測定できる十分な設備が整った施設において、慎重に投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1脳に高度な循環障害のある患者[脳循環が抑制されるおそれがある。]

  2. 2.2甲状腺機能不全の患者[代謝物のチオシアンにより甲状腺機能が低下する場合がある。]

  3. 2.3レーベル病(遺伝性視神経萎縮症)、たばこ弱視あるいはビタミンB12欠乏症の患者[シアンの解毒処理能力が低下している場合がある。]

  4. 2.4重篤な肝機能障害のある患者

  5. 2.5重篤な腎機能障害のある患者

  6. 2.6高度な貧血の患者[血圧低下により貧血症状(めまい等)を悪化させるおそれがある。]

  7. 2.7ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者

効能・効果

  • *手術時の低血圧維持

  • 手術時の異常高血圧の救急処置

  • 急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)

  • 高血圧性緊急症

用法・用量

  • *本剤は、5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニトロプルシドナトリウム水和物として0.06~0.1%(1mL当たり0.6~1mg)溶液を持続静注する。

  • 〈手術時の低血圧維持〉

通常、成人には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5µg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら投与速度を調節する。通常、2.5µg/kg/分以下の投与速度で目的とする血圧が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は3µg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。

  • 〈手術時の異常高血圧の救急処置〉

通常、成人には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5µg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら投与速度を調節する。通常、2.0µg/kg/分以下の投与速度で目的とする血圧が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は3µg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。

  • 〈急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症〉

通常、小児には1分間に体重1kg当たりニトロプルシドナトリウム水和物として0.5µg/kg/分の投与速度で投与を開始し、過度の血圧低下に注意しながら徐々に増量して目的とする血行動態を得るまで循環動態をモニターしながら投与速度を調節する。通常、3.0µg/kg/分以下の投与速度で目的とする血行動態が得られ、それを維持することができる。なお、最高投与速度は10µg/kg/分を限度とする。また、開始投与速度は年齢、症状により適宜減量する。

使用上の注意

  1. 8.1低血圧を必要とする手術ではECG、導尿等により、心機能や腎機能を監視すること。

  2. 8.2呼吸抑制があらわれることがあるので、呼吸管理に注意すること。また、本剤の投与により動脈血酸素分圧(PaO2)が低下することがあるので、本剤の投与中はPaO2又は動脈血酸素飽和度(SaO2)の監視を行い、必要に応じて吸入酸素濃度(FiO2)の調節を行うこと。なお、PaO2低下時に酸素吸入が行われていない場合は投与を中止し、速やかに酸素吸入を行うこと。

  3. 8.3投与終了後は、患者の血圧が完全に回復するまで管理を行うこと。

  4. 8.4本剤の投与で代謝物によるシアン中毒を生じるおそれがあるので、血圧や心拍数の他に、心電図、血液ガス及び酸塩基平衡をモニターすること。本剤の使用に際しては日局 チオ硫酸ナトリウム水和物、日局 亜硝酸アミル又は亜硝酸ナトリウム注1)をあらかじめ用意し、救急処置の準備をしておくことが望ましい。また、硬膜外麻酔等施行時の局所麻酔薬の副作用や全身麻酔覚醒時の症状の中には、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐等のように、シアン中毒時の自覚症状と類似するものがあるので、これらの症状があらわれた場合も血液ガス及び酸塩基平衡等を観察し、シアン中毒を疑わせる場合は同様の処置を行うこと。血中シアン濃度の上昇には個人差があり、特に肥満患者においては高値を示すことがあるので、投与速度に注意し、慎重に投与すること。なお、外国ではニトロプルシドナトリウム水和物の過量投与によるシアン中毒の死亡例も報告されている。

注1)亜硝酸ナトリウムについては医薬品として市販されていない。

  1. 8.5本剤の血圧降下作用は強く、また、個人差も見られるので、必ず血圧と心拍数を連続的に監視しながら投与速度に注意し、慎重に投与すること。なお、外国では血圧のモニターを怠った患者において過度の低血圧が強くあらわれることにより非可逆性の虚血性障害や、場合によっては死亡に至る可能性があると報告されている。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1頭部外傷又は脳出血による血腫などの頭蓋内圧亢進症の患者

頭蓋内圧を上昇させる。

  1. 9.1.2甲状腺機能の低下した患者

代謝物のチオシアンにより甲状腺機能が低下する場合がある。

  1. 9.1.3心機能障害のある患者

冠循環が抑制されるおそれがある。

  1. 9.1.4著しく血圧の低い患者

血圧低下をさらに悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.5本剤の添加剤カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 9.1.6極度な肥満の患者

血中シアン濃度が上昇するおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1重篤な腎機能障害患者

投与しないこと。腎循環が抑制されるおそれがある。

  1. 9.2.2腎機能障害患者(重篤な腎機能障害患者を除く)

腎循環が抑制されるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1重篤な肝機能障害患者

投与しないこと。肝循環が抑制されるおそれがある。

  1. 9.3.2肝機能障害患者(重篤な肝機能障害患者を除く)

肝循環が抑制されるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中に移行することが報告されている。

9.7 小児等

  • 〈手術時の低血圧維持、手術時の異常高血圧の救急処置〉

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  1. 9.8.175歳以上の高齢者

75歳以上の高齢者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

  1. 9.8.275歳未満の高齢者

手術患者を対象にして行われた臨床試験において、手術時の低血圧維持における主投与速度の平均は高齢者(65歳以上)で1.14µg/kg/分、非高齢者で1.45µg/kg/分と高齢者で遅かった。また、手術時の異常高血圧の救急処置においても、主投与速度の平均は高齢者で0.65µg/kg/分、非高齢者で1.36µg/kg/分と高齢者で遅かった。このように、高齢者では降圧維持に必要な投与速度が非高齢者に比べて遅く、本剤の血圧低下作用が強くあらわれやすいと考えられるので、低用量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。 また、手術時の低血圧維持の臨床試験において、高齢者にPaO2低下等の副作用発現率が高い傾向が認められているので注意すること。

相互作用

10.1 併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
• シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ、レバチオ)、バルデナフィル塩酸塩水和物(レビトラ)、タダラフィル(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
併用により、降圧作用が増強することがあるため、本剤投与前、投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分に注意すること。 本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤
• リオシグアト(アデムパス)
併用により、降圧作用が増強することがあるため、本剤投与前、投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分に注意すること。 本剤とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は、ともにcGMPの産生を促進することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
吸入麻酔剤(セボフルラン等) 血圧低下が増強されることがあるので、本剤の用量を調節するなど注意すること。 吸入麻酔剤の降圧作用及び圧反射機能の抑制作用によると考えられる。
降圧作用を有する薬剤(ニカルジピン塩酸塩、プラゾシン塩酸塩、エスモロール塩酸塩等) 血圧低下が増強されることがあるので、本剤の用量を調節するなど注意すること。 他の降圧作用を有する薬剤との相乗・相加作用によるものと考えられる。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALT上昇 等) 1〜5%未満
AST上昇 1〜5%未満
PaO2低下注3) 5%以上
一酸化炭素ヘモグロビン増加 頻度不明
不整脈 1〜5%未満
代謝性アシドーシス 1〜5%未満
心電図異常 1〜5%未満
肝機能検査値異常(ビリルビン上昇 1〜5%未満
頻脈 1〜5%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ニトロプルシドナトリウム水和物(SNP)の降圧作用は直接血管平滑筋を弛緩させることで得られ、血管内皮の有無に依存せず、容量血管と抵抗血管の両方に作用する。SNPの血管平滑筋弛緩の機序はSNPより遊離した一酸化窒素(NO)がcyclic GMPの生合成酵素であるグアニル酸シクラーゼを活性化させてcyclic GMPを産生し、これが筋小胞体のCa2+ポンプを活性化して細胞内のCa2+濃度を低下させていると考えられる7),8)。

18.2 人為低血圧効果

エンフルラン麻酔下のイヌにSNPを0.75~10µg/kg/分の投与速度で1時間静脈内持続投与すると、SNP投与直後より血圧は速やかに低下し、投与量に応じた降圧効果が得られ、投与終了後は投与前血圧に速やかに回復した。また、セボフルラン麻酔下のラット、ウサギ並びにニューロレプト(NLA)麻酔下のウサギを用いた試験においても同様の効果が認められた9),10),11),12)。

18.3 抗高血圧効果

セボフルラン麻酔下の高血圧自然発症ラット(SHR)にSNPを1.5~6.0µg/kg/分の投与速度で1時間静脈内持続投与すると、SNP投与直後より血圧は速やかに低下し、投与量に応じた降圧効果が得られた13)。

18.4 主要臓器循環

エンフルラン麻酔下のイヌにSNPを1~10µg/kg/分の投与速度で30分~2時間静脈内持続投与した時、脳、心、腎、肝の各主要臓器循環に問題となる影響は認められなかった12),14)。

薬物動態

16.1 血中濃度

健常人6例に0.5、1.0及び2.0µg/kg/分を各20分間ずつ投与し、1時間静脈内持続投与した時、未変化体の血漿中濃度は投与速度の増加に伴って上昇し、投与終了後は速やかに減少した。半減期は約1分であった1)。

未変化体の血漿中濃度

0.5µg/kg/分
終了時の濃度
(µg/mL)
1.0µg/kg/分
終了時の濃度
(µg/mL)
2.0µg/kg/分
終了時の濃度
(µg/mL)
T1/2
(min.sec)
AUC0→∞
(µg・min/mL)
0.0068±0.0011 0.0168±0.0032 0.0376±0.0082 1m02s±0m15s 1.278±0.200

平均値±標準偏差

16.3 分布

血漿蛋白結合率:ヒト血清 83.1~84.7%2)

16.4 代謝

代謝物としてシアンが生成されたが、更に速やかに生体内に存在するチオシアンに代謝され、シアンの半減期は約12分であった1)。

16.5 排泄

未変化体及びシアンの尿中排泄は認められず、チオシアンの尿中排泄量の増加が認められた1)。