Clinical snapshot

ドキシル注20mg

ドキソルビシン塩酸塩 リポソーム注射剤

添付文書改訂 2025年02月01日

【警告】

  • 〈効能共通〉
  1. 1.1従来のドキソルビシン塩酸塩製剤の代替として本剤を投与しないこと。

  2. 1.2本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、本剤投与が適切と判断される症例についてのみ実施すること。

  3. 1.3ドキソルビシン塩酸塩が有する心毒性に注意すること。ドキソルビシン塩酸塩の総投与量が500mg/m2を超えると、心筋障害によるうっ血性心不全が生じる可能性がある。ドキソルビシン塩酸塩の総投与量については、他のアントラサイクリン系薬剤や関連化合物による前治療又は併用を考慮すること。また、縦隔に放射線療法を受けた患者又はシクロホスファミドなどの心毒性のある薬剤を併用している患者では、より低い総投与量(400mg/m2)で心毒性が発現する可能性があるので注意すること。本剤投与開始前、及び本剤投与中は頻回に心機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

  4. 1.4心血管系疾患又はその既往歴のある患者には、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること。

  5. 1.5重度の骨髄抑制が生じることがあるため、頻回に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。

  6. 1.6ほてり、潮紅、呼吸困難、胸部不快感、熱感、悪心、息切れ、胸部及び咽喉の絞扼感、低血圧等を含む急性のinfusion reactionが認められている。これらの症状は、多くの患者で投与中止又は終了後、数時間から1日で軽快し、また、投与速度の減速により軽快することもある。一部の患者では、重篤で致死的なアレルギー様又はアナフィラキシー様のinfusion reactionが報告されている。緊急時に十分な対応のできるよう治療薬と救急装置を準備した上で投与を開始し、infusion reaction発現の危険性を最小限にするため投与速度は1mg/分を超えないこと。このようなinfusion reactionが生じた場合は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

  • 〈がん化学療法後に増悪した卵巣癌〉
  1. 1.7本剤の卵巣癌患者への投与は、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の臨床試験成績等を踏まえて、有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

従来のドキソルビシン塩酸塩製剤又は本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

  • がん化学療法後に増悪した卵巣癌

  • エイズ関連カポジ肉腫

用法・用量

  • 〈がん化学療法後に増悪した卵巣癌〉

通常、成人にはドキソルビシン塩酸塩として1日1回50mg/m2を1mg/分の速度で静脈内投与し、その後4週間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。

  • 〈エイズ関連カポジ肉腫〉

通常、成人にはドキソルビシン塩酸塩として1日1回20mg/m2を1mg/分の速度で静脈内投与し、その後2~3週間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤はドキソルビシン塩酸塩をリポソームに封入した製剤であることから、本剤の有効性、安全性、薬物動態等は従来のドキソルビシン塩酸塩製剤と異なる。本剤を従来のドキソルビシン塩酸塩製剤の代替として使用しないこと。また、本剤を従来のドキソルビシン塩酸塩製剤と同様の用法及び用量で投与しないこと。

  2. 8.2ドキソルビシン塩酸塩が有する心毒性に注意し、本剤投与開始前、及び本剤投与中は頻回に、心機能検査(心電図、心エコー、放射性核種スキャン、心内膜心筋生検等)を行うなど患者の状態を十分に観察すること。また、ドキソルビシン塩酸塩の総投与量が500mg/m2を超えると急性左室不全が生じる可能性があるので注意すること。

  3. 8.3骨髄抑制が生じた結果、感染症、発熱性好中球減少症又は出血がおこることがあるので、頻回に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。

  4. 8.4急性のinfusion reaction(ほてり、潮紅、胸部不快感、呼吸困難、悪心、熱感、背部痛、頻脈、そう痒症、鼻漏、腹痛、動悸、血圧上昇、顔面腫脹、頭痛、悪寒、胸痛、胸部及び咽喉の絞扼感、発熱、発疹、チアノーゼ、失神、気管支痙攣、喘息、無呼吸、低血圧、息切れ等を特徴とする)があらわれることがある。これらの症状は、投与中止又は終了後、数時間から1日で軽快することが多く、また、投与速度の減速により軽快することもある。一方、重篤で致死的なアレルギー様又はアナフィラキシー様のinfusion reactionがあらわれることがあるので、緊急時に十分な対応のできるよう治療薬と救急装置を準備した上で投与を開始し、infusion reaction発現の危険性を最小限にするため投与速度は1mg/分を超えないこと。

  5. 8.5肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与前及び投与中は肝機能検査を定期的に行い、患者の状態を十分観察すること。

  6. 8.6本剤を含め、トポイソメラーゼⅡ阻害剤を投与した患者で、二次性急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群が報告されている。

  7. 8.7本剤の投与に際しては、アレルギー歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1心血管系疾患又はその既往歴のある患者

心筋障害があらわれることがある。

  1. 9.1.2骨髄抑制のある患者

骨髄機能をより強く抑制するおそれがある。エイズ関連カポジ肉腫患者では、HIVや併用薬等により、また、卵巣癌患者では前治療等の影響により、本剤の投与開始前から骨髄抑制が認められる場合がある。

  1. 9.1.3大豆アレルギーのある患者

本剤の添加剤に大豆由来の成分が含まれている。

9.3 肝機能障害患者

副作用が強くあらわれるおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

  1. 9.4.1*妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後8カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

  2. 9.4.2*男性には、本剤投与中及び最終投与後6カ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること。

  3. 9.4.3*生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。

9.5 妊婦

*妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(ラット1)、ウサギ2))で胎児毒性及び流産誘発作用が報告されている。

9.6 授乳婦

*授乳を避けさせること。従来のドキソルビシン塩酸塩製剤でヒト乳汁中へ移行することが報告されている3)。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者では特に心毒性、骨髄抑制があらわれやすい。また、肝機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続するおそれがある。

相互作用

  • 本剤は、従来のドキソルビシン塩酸塩製剤で相互作用が知られている薬剤と相互作用を示す可能性がある。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
本剤投与前の心臓部あるいは縦隔への放射線照射
潜在的に心毒性を有する抗悪性腫瘍剤
• アントラサイクリン系薬剤等
心筋障害が増強されるおそれがある。 心筋に対する蓄積毒性が増強される。
他の抗悪性腫瘍剤 骨髄抑制等の副作用が増強することがある。 副作用が相互に増強される。
放射線照射 骨髄抑制等の副作用が増強することがある。
本剤の投与で、放射線照射の前治療に起因する皮膚反応が再発することがある。
副作用が相互に増強される。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALP増加 頻度不明
ALT増加 頻度不明
AST増加 頻度不明
AST減少 頻度不明
CK増加 頻度不明
CK減少 頻度不明
LDH増加 頻度不明
LDH減少 頻度不明
γ-GTP増加 頻度不明
γ-GTP減少 頻度不明
インフルエンザ 頻度不明
インフルエンザ様疾患 頻度不明
ウイルス性肝炎 頻度不明
そう痒症 頻度不明
ヘマトクリット減少 頻度不明
ヘルペス性口内炎 頻度不明
リンパ球数増加 頻度不明
リンパ球数減少 頻度不明
上室性期外収縮 頻度不明
上気道感染 頻度不明
上腹部痛 頻度不明
下痢 頻度不明
不眠症 頻度不明
低体温 頻度不明
体部白癬 頻度不明
体重減少 頻度不明
便秘 頻度不明
倦怠感 頻度不明
側腹部痛 頻度不明
凍瘡 頻度不明
創傷感染 頻度不明
動悸 頻度不明
単球数増加 頻度不明
単球数減少 頻度不明
口唇びらん 頻度不明
口唇炎 頻度不明
口腔感染 頻度不明
味覚異常 頻度不明
咳嗽 頻度不明
咽喉頭炎 頻度不明
咽喉頭疼痛 頻度不明
咽頭の炎症 頻度不明
咽頭不快感 頻度不明
咽頭炎 頻度不明
喀血 頻度不明
嗅覚錯誤 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嚥下障害 頻度不明
四肢痛 頻度不明
外耳炎 頻度不明
多汗症 頻度不明
大動脈弁閉鎖不全症 頻度不明
女性外陰部潰瘍 頻度不明
好中球数増加 頻度不明
好酸球数増加 頻度不明
季節性アレルギー 頻度不明
小腸閉塞 頻度不明
尿pH上昇 頻度不明
尿中ケトン体陽性 頻度不明
尿中ブドウ糖陽性 頻度不明
尿中蛋白陽性 頻度不明
尿路感染 頻度不明
尿道痛 頻度不明
尿道障害 頻度不明
左脚ブロック 頻度不明
帯状疱疹 頻度不明
平均赤血球ヘモグロビン濃度減少 頻度不明
心室肥大 頻度不明
心拍数増加 頻度不明
心電図PQ間隔延長 頻度不明
心電図ST-T変化 頻度不明
心電図ST-T部分下降 頻度不明
心電図ST部分下降 頻度不明
性器発疹 頻度不明
悪寒 頻度不明
悪心 頻度不明
感染 頻度不明
感覚鈍麻 頻度不明
末梢性感覚ニューロパチー 頻度不明
歯周病 頻度不明
歯痛 頻度不明
歯肉炎 頻度不明
歯肉腫脹 頻度不明
毛包炎 頻度不明
注射部位反応 頻度不明
洞性不整脈 頻度不明
洞性頻脈 頻度不明
流涙増加 頻度不明
浮動性めまい 頻度不明
消化不良 頻度不明
潮紅 頻度不明
点状出血 頻度不明
熱傷 頻度不明
熱感 頻度不明
爪の障害 頻度不明
片頭痛 頻度不明
疲労 頻度不明
痔核 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹 頻度不明
白内障 頻度不明
白血球数増加 頻度不明
皮膚感染 頻度不明
眼の障害 頻度不明
眼乾燥 頻度不明
眼脂 頻度不明
硝子体浮遊物 頻度不明
第一度房室ブロック 頻度不明
筋痛 頻度不明
筋骨格硬直 頻度不明
紅斑 頻度不明
結膜炎 頻度不明
総蛋白増加 頻度不明
総蛋白減少 頻度不明
耐糖能障害 頻度不明
耳痛 頻度不明
耳鳴 頻度不明
肛門周囲痛 頻度不明
肩部痛 頻度不明
胃不快感 頻度不明
背部痛 頻度不明
胸痛 頻度不明
胸部不快感 頻度不明
脱毛症 頻度不明
腹痛 頻度不明
腹部不快感 頻度不明
腹部膨満 頻度不明
膀胱炎 頻度不明
舌変色 頻度不明
色素沈着障害 頻度不明
苔癬様皮膚炎 頻度不明
蛋白尿 頻度不明
血中Cl増加 頻度不明
血中Cl減少 頻度不明
血中K増加 頻度不明
血中K減少 頻度不明
血中Na増加 頻度不明
血中Na減少 頻度不明
血中アルブミン減少 頻度不明
血中クレアチニン増加 頻度不明
血中クレアチニン減少 頻度不明
血中ビリルビン増加 頻度不明
血中ビリルビン減少 頻度不明
血中尿素増 頻度不明
血中尿素減少 頻度不明
血圧上昇 頻度不明
血小板数増加 頻度不明
角膜炎 頻度不明
起立性低血圧 頻度不明
足部白癬 頻度不明
過敏症 頻度不明
過角化 頻度不明
関節痛 頻度不明
陰部そう痒症 頻度不明
頭痛 頻度不明
頻尿 頻度不明
食欲不振 頻度不明
駆出率減少 頻度不明
高カリウム血症 頻度不明
高ビリルビン血症 頻度不明
高血圧 頻度不明
鼻出血 頻度不明
鼻咽頭炎 頻度不明
鼻漏 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

*本剤の有効成分であるドキソルビシン塩酸塩は、細胞の2本鎖DNAを架橋することによって、DNA合成とRNA合成反応を阻害し、更にトポイソメラーゼⅡ阻害作用により、DNA鎖を切断することによって抗腫瘍作用を示す10),11),12)。

18.2 *薬理作用

  1. 18.2.1本剤は卵巣癌細胞株を移植した担癌マウスにおいて腫瘍の増大を抑制した13),14)。

  2. 18.2.2本剤はエイズ関連カポジ肉腫患者から分離した初代培養カポジ肉腫細胞に対して増殖抑制作用を示した15)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1*各種固形癌患者

各種固形癌患者15例を対象に、本剤30、40及び50mg/m2を4週ごとに静脈内投与したとき、血漿中ドキソルビシン濃度推移は同用量範囲において線形性を示した。また、コース間における血漿中ドキソルビシンの蓄積は認められなかった6)。

用量(mg/m2) 30 40 50
例数 6 3 6
Cmax(μg/mL) 19.3±2.5 25.6±2.9 34.1±3.3
AUC(μg・hr/mL) 2513±784 3228±790 4663±1062
t1/2(hr) 89.5±24.0 86.3±14.7 95.3±25.3
CL(L/hr/m2) 0.013±0.005 0.013±0.004 0.011±0.002
Vc(L/m2) 1.57±0.19 1.57±0.17 1.47±0.13

1-コンパートメントモデル解析、平均値±標準偏差

固形癌患者における本剤投与時の血漿中ドキソルビシン濃度推移(平均値±標準偏差)

  1. 16.1.2*エイズ関連カポジ肉腫患者

患者23例において、クロスオーバー法により3週間の休薬期間を設け、本剤10又は20mg/m2を30分間かけてそれぞれ単回静脈内投与したときの血漿中ドキソルビシンの薬物動態パラメータは以下のとおりであった7)。(外国人データ)

パラメータ(単位) 用量
10mg/m2 20mg/m2
Cmax(μg/mL) 4.12±0.215 8.34±0.49
CL(L/hr/m2) 0.056±0.01 0.041±0.004
Vss(L/m2) 2.83±0.145 2.72±0.120
AUC(μg・hr/mL) 277±32.9 590±58.7
t1/2α(hr) 4.7±1.1 5.2±1.4
t1/2β(hr) 52.3±5.6 55.0±4.8

n=23、平均値±標準誤差

本剤投与時の血漿中ドキソルビシンの薬物動態は、10~20mg/m2の範囲で線形性を示した。本剤投与後の血漿中ドキソルビシン濃度は2相性の消失を示し、α相半減期(t1/2α)が約5時間、β相半減期(t1/2β)が約55時間であった。

16.3 分布

*ドキソルビシン塩酸塩投与時の分布容積(700~1,100L/m2)と比較して、本剤投与時の血漿中ドキソルビシンの分布容積(Vss)は約3L/m2と小さく、本剤のほとんどが血液中に存在していることが示唆された。本剤の血漿蛋白結合率は測定されていないが、ドキソルビシンの血漿蛋白結合率は約70%である7)。 患者11例において、本剤20mg/m2投与48及び96時間後に病変部位及び正常部位の皮膚を採取し、ドキソルビシン濃度を測定した結果、投与48時間後では病変部位のドキソルビシン濃度は正常部位に比べて中央値で19倍(範囲:3~53倍)高値であった。しかし、この濃度は病変部位と正常部位に含まれる血液含量の差について補正しておらず、補正された比は1~22倍であると推測された。以上より、正常部位に比べて病変部位に高濃度のドキソルビシンが分布することが示唆された。(外国人データ)

16.4 代謝

*本剤10又は20mg/m2を投与したとき、ドキソルビシンの主代謝物であるドキソルビシノールが低濃度で血漿中に認められた(範囲:0.8~26.2ng/mL)7)。(外国人データ)

16.5 排泄

*本剤20mg/m2投与時の全身クリアランス(CL)は0.041L/hr/m2であり、ドキソルビシン塩酸塩投与時のCL(24~35L/hr/m2)と比較して小さい7)。(外国人データ)