内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
【警告】
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能・効果
用法・用量
フルベストラントとの併用において、通常、成人にはカピバセルチブとして1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
使用上の注意
- *8.1高血糖、糖尿病があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあるので、投与開始前及び投与中は定期的に空腹時血糖値及びHbA1cの測定を行うこと。本剤投与中は血糖値、HbA1cの測定に加えて、ケトン体の測定を実施することが望ましい。 本剤の使用にあたっては、患者に対し高血糖について十分に説明するとともに、高血糖の症状(口渇、頻尿、多尿、体重減少等)があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- *9.1.1糖尿病若しくはその既往を有する患者又は血糖コントロールが不良な患者高血糖又は糖尿病が発現又は悪化し、糖尿病性ケトアシドーシスを発現するリスクが高くなるおそれがある。臨床試験においては、1型糖尿病又はインスリンの投与を必要とする2型糖尿病患者及びHbA1c≧8.0%の患者は除外された。
9.2 腎機能障害患者
- 9.2.1重度の腎機能障害のある患者
重度の腎機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.3 肝機能障害患者
本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇する可能性がある。なお、肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.4 生殖能を有する者
-
9.4.1妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。
-
9.4.2生殖可能な男性に投与する場合には、造精機能の低下があらわれる可能性があることを考慮すること。ラット及びイヌを用いた反復投与毒性試験において、AUC比較で臨床曝露量の1.3倍(ラット)又は0.9倍(イヌ)の曝露量で雄生殖器への影響(精巣精細管変性/萎縮性変化、精巣上体精子数減少、細胞残渣等)が認められ、4週間の休薬後においても回復性は認められなかった。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。ラットにおける胚・胎児発生試験において、AUC比較で臨床曝露量の約0.7倍に相当する用量で胚致死作用及び胎児発育抑制が認められた。
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。授乳中のラット新生児において本剤の曝露が確認されており、成長への悪影響が認められている。ヒト乳汁中への移行に関するデータはないが、本剤が乳汁に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
相互作用
- 本剤は、主にCYP3Aにより代謝され、CYP3Aに弱い阻害作用を示す。また、本剤はMATE1、MATE2-K及びOCT2に阻害作用を示す。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| 強いCYP3A阻害剤 イトラコナゾール クラリスロマイシン ボリコナゾール 等 |
本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、CYP3A阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する場合には、本剤を減量するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| グレープフルーツ含有食品 |
本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| 中程度のCYP3A阻害剤 ベラパミル エリスロマイシン フルコナゾール 等 |
本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、CYP3A阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する場合には、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| 強いCYP3A誘導剤 カルバマゼピン フェニトイン リファンピシン 等 |
本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 |
| セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 | 本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 |
| 中程度のCYP3A誘導剤 モダフィニル フェノバルビタール リファブチン 等 |
本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。 | これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 |
| CYP3Aの基質となる薬剤 ミダゾラム カルバマゼピン シクロスポリン 等 |
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 | 本剤がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| MATE1、MATE2-K及びOCT2の基質となる薬剤 メトホルミン プロカインアミド 等 |
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 | 本剤がMATE1、MATE2-K及びOCT2を阻害するため、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 | 頻度不明 |
| グリコヘモグロビン増加 | 頻度不明 |
| そう痒症 | 頻度不明 |
| リンパ球減少症 | 1%未満 |
| 下痢(67.3%) | 頻度不明 |
| 口内炎 | 頻度不明 |
| 味覚不全 | 頻度不明 |
| 嘔吐 | 頻度不明 |
| 好中球減少症 | 1%未満 |
| 尿路感染 | 頻度不明 |
| 心電図QT延長 | 1%未満 |
| 急性腎障害 | 頻度不明 |
| 悪心(27.3%) | 頻度不明 |
| 消化不良 | 頻度不明 |
| 無力症 | 頻度不明 |
| 疲労 | 頻度不明 |
| 発熱 | 頻度不明 |
| 発疹(34.1%) | 頻度不明 |
| 白血球数減少 | 頻度不明 |
| 白血球減少症 | 1%未満 |
| 皮膚乾燥 | 頻度不明 |
| 皮膚炎 | 1%未満 |
| 粘膜の炎症 | 頻度不明 |
| 糸球体濾過率減少 | 1%未満 |
| 腎不全 | 1%未満 |
| 腎機能障害 | 1%未満 |
| 薬疹 | 頻度不明 |
| 血中クレアチニン増加 | 頻度不明 |
| 血小板減少症 | 1%未満 |
| 貧血 | 頻度不明 |
| 過敏症 | 1%未満 |
| 頭痛 | 頻度不明 |
| 食欲減退 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
カピバセルチブは、AKTのキナーゼ活性を阻害する15)。カピバセルチブは、AKT及びその下流のシグナル伝達分子を阻害することにより、腫瘍増殖抑制効果を示すと考えられている16)。
18.2 抗腫瘍作用
- 18.2.1In vitro
カピバセルチブは、PIK3CA/PTEN遺伝子変異陽性、PIK3CA遺伝子変異陽性、及びPTEN遺伝子変異陽性の乳癌由来細胞株に対して増殖抑制作用を示した17)。
- 18.2.2In vivo
カピバセルチブは、PIK3CA/PTEN遺伝子変異陽性、PIK3CA遺伝子変異陽性、AKT1遺伝子変異陽性、及びPTEN遺伝子変異陽性の乳癌患者由来腫瘍組織片を皮下移植したヌードマウス等において、腫瘍増殖抑制作用を示した18)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回及び反復投与
日本人進行固形癌患者(5例)にカピバセルチブのカプセル剤注1)400mgを単回経口投与し、3~7日間経過した後、カピバセルチブのカプセル剤注1)400mgを1日2回連日反復経口投与注2)したときの、初回投与後及び反復投与8日目のカピバセルチブの血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった1)。
図 日本人進行固形癌患者にカピバセルチブのカプセル剤注1)400mgを単回及び1日2回連日反復経口投与注2)したときの血漿中カピバセルチブ濃度推移(平均値±標準偏差)
| 投与時期 | 例数 | Cmax (ng/mL) |
tmax(h)a | AUC(0-12h) (ng・h/mL) |
t1/2(h) |
|---|---|---|---|---|---|
| 単回投与 | 5例 | 1,062 (28%) |
1.97 (0.98, 2.17) |
3,586 (22%) |
10.2 (16%) |
| 反復投与8日目 | 5例 | 2,094 (57%) |
2.00 (0.93, 2.00) |
9,666 (44%) |
- |
a:中央値(最小値, 最大値)、-:算出せず
また、進行固形癌患者におけるカピバセルチブのCmax及びAUCは80~800mgの用量範囲注2)で概ね用量に比例して増加した2)(外国人データ)。
16.2 吸収
- 16.2.1絶対バイオアベイラビリティ
健康成人(6例)に本剤400mgを単回経口投与及びカピバセルチブ100µgを静脈内投与注3)したときの絶対バイオアベイラビリティは29%であった3)(外国人データ)。
- 16.2.2食事の影響
健康成人に本剤400mgを単回経口投与したとき、短時間絶食(投与2時間前から投与1時間後まで絶食)(21例)に対する空腹時投与(22例)におけるカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.72及び0.84であった。また、健康成人に本剤400mgを単回経口投与したとき、短時間絶食(投与2時間前から投与1時間後まで絶食)(21例)に対する高脂肪・高カロリー食後投与(22例)におけるカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.85及び1.13であった4)(外国人データ)。
16.3 分布
健康成人(6例)にカピバセルチブ100µgを単回静脈内投与注3)したときの分布容積は205Lであった5)(外国人データ)。カピバセルチブのヒト血漿タンパク結合率は76.8~78.9%であった(in vitro)。カピバセルチブの血液/血漿中濃度比は1.402であった6)(in vitro)。
16.4 代謝
カピバセルチブの代謝に寄与する主なCYP分子種はCYP3Aであり、UGT2B7もカピバセルチブの代謝に寄与する7),8)(in vitro)。血漿中の主代謝物はエーテル型グルクロン酸抱合体と同定され、未変化体及び代謝物の総和の83%に相当した。また、血漿中に存在する未変化体及び代謝物の総和のうち、未変化体の占める割合は15%であった。活性代謝物は同定されなかった8)(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人(5例)に[14C]-カピバセルチブ400mgを単回経口投与したとき、投与168時間後までに投与放射能の45%が尿中に、50%が糞中に排泄された。尿中には投与168時間後までに投与放射能の7.4%が未変化体として排泄された。腎クリアランスは全身クリアランスの21%を占めた9)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1イトラコナゾール
健康成人(11例)にイトラコナゾール(強いCYP3A阻害剤)200mgを1日目は1日2回、2~5日目は1日1回で反復経口投与し、本剤80mg注2)を単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するイトラコナゾール併用投与時のカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.70及び1.95であった10)(外国人データ)。
- 16.7.2ミダゾラム
進行固形癌患者(21例)に本剤400mgを1日2回、4日間連続して経口投与、その後3日間休薬し、ミダゾラム(CYP3A基質)1mgを単回経口投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対する本剤併用投与時(間欠投与スケジュールの4日目)のミダゾラムのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.25及び1.75であった11)(外国人データ)。
- 16.7.3生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション12)
生理学的薬物動態モデルによるシミュレーションにより、本剤400mgを1日2回、4日間連続して経口投与、その後3日間休薬したときの薬物相互作用を推定した。
-
(1)本剤単独投与時に対するベラパミル及びエリスロマイシン(中程度のCYP3A阻害剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は、それぞれ1.40~1.41及び1.41~1.42と推定された。
-
(2)本剤単独投与時に対するリファンピシン(強いCYP3A誘導剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は0.27~0.31と推定された。
-
(3)本剤単独投与時に対するモダフィニル(中程度のCYP3A誘導剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は0.76~0.79と推定された。
-
(4)メトホルミン(MATE1、MATE2-K及びOCT2基質)単独投与時と比較して本剤併用投与時にメトホルミンの曝露量が上昇する可能性が示唆された。
-
16.7.4その他
-
(1)ラベプラゾール 健康成人(22例)にラベプラゾール20mgを1日2回で3日間投与し、本剤400mgを単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するラベプラゾール併用投与時のカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.73及び0.94であった4)(外国人データ)。
-
(2)カピバセルチブはCYP2C9、CYP2D6、UGT1A1、UGT1A4、BCRP、OATP1B1、OATP1B3及びOAT3を阻害した13)(in vitro)。
-
(3)カピバセルチブはP-gp及びOCT2の基質であることが示された13)(in vitro)。
注1)カプセル剤は未承認である。
注2)本剤の承認用法・用量は「1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する」である。
注3)注射剤は未承認である。