Clinical snapshot

トラディアンス配合錠BP

エンパグリフロジンリナグリプチン

添付文書改訂 2025年10月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]

  3. 2.3重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]

効能・効果

2型糖尿病 ただし、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。

用法・用量

通常、成人には1日1回1錠(エンパグリフロジン/リナグリプチンとして10mg/5mg又は25mg/5mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。

  2. 8.2本剤投与中は、血糖を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、本剤を3カ月投与しても効果が不十分な場合には他の治療法への変更を考慮すること。

  3. 8.3エンパグリフロジン投与により、血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあるので、腎機能を定期的に検査すること。腎機能障害患者においては経過を十分に観察し、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討すること。

  4. 8.4エンパグリフロジン投与により、尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること。

  5. 8.5エンパグリフロジンの利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分行うこと。脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者、腎機能障害患者、利尿薬併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。

  6. 8.6エンパグリフロジンの作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により、血糖コントロールが良好であっても脂肪酸代謝が亢進し、ケトーシスがあらわれ、ケトアシドーシスに至ることがある。

  7. 8.6.1著しい血糖の上昇を伴わない場合があるため、以下の点に留意すること。

  8. (1)悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等の症状が認められた場合には、血中又は尿中ケトン体測定を含む検査を実施すること。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

  9. (2)特に、インスリン分泌能の低下、インスリン製剤の減量や中止、過度な糖質摂取制限、食事摂取不良、感染症、脱水を伴う場合にはケトアシドーシスを発現しやすいので、観察を十分に行うこと。

  10. (3)患者に対し、以下の点を指導すること。

  • ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等)。

  • ケトアシドーシスの症状が認められた場合には直ちに医療機関を受診すること。

  • 血糖値が高値でなくともケトアシドーシスが発現しうること。

  1. 8.6.2エンパグリフロジンを含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。

  2. 8.7リナグリプチン投与により、急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。

  3. 8.8エンパグリフロジンは、尿中グルコース排泄促進作用を有する。排尿困難、無尿、乏尿あるいは尿閉の症状を呈する患者においては、その治療を優先するとともに他剤での治療を考慮すること。

  4. 8.9エンパグリフロジン投与による体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意すること。

  5. 8.10低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときは注意すること。

  6. 8.11本剤と他の糖尿病用薬の併用における安全性は検討されていない。

  7. 8.12リナグリプチンとGLP-1受容体作動薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
  • 脳下垂体機能不全又は副腎機能不全

  • 栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態

  • 激しい筋肉運動

  • 過度のアルコール摂取者

  1. 9.1.2脱水を起こしやすい患者(血糖コントロールが極めて不良の患者、高齢者、利尿剤併用患者等)

エンパグリフロジンの利尿作用により脱水を起こすおそれがある。

  1. 9.1.3尿路感染、性器感染のある患者

症状を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.4腹部手術の既往又はイレウスの既往のある患者腸閉塞を含むイレウスを起こすおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者

投与しないこと。エンパグリフロジンの効果が期待できない。

  1. 9.2.2中等度腎機能障害患者

投与の必要性を慎重に判断すること。エンパグリフロジンの効果が十分に得られない可能性がある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1高度肝機能障害患者

有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、本剤を投与せず、インスリン製剤等を使用すること。エンパグリフロジンの動物実験(ラット)で、ヒトの妊娠中期及び後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂及び尿細管の拡張が報告されている。また、動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている。リナグリプチンの動物実験(ラット及びウサギ)で、胎児への移行が報告されている。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。エンパグリフロジン及びリナグリプチンの動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

一般に生理機能が低下し、脱水症状(口渇等)の認知が遅れるおそれがある。

  1. 9.8.175歳以上の高齢者

エンパグリフロジンの国内外の臨床試験の併合解析において、75歳以上の患者では75歳未満の患者と比較し、エンパグリフロジン25mg群で体液量減少の有害事象の発現割合が高かった。

相互作用

  • エンパグリフロジン

投与後血漿中には主に未変化体として存在する1)が、一部はUGT2B7、UGT1A3、UGT1A8及びUGT1A9によるグルクロン酸抱合により代謝される2)。

  • リナグリプチン

主に糞中に未変化体のまま排泄される。尿中に排泄される割合は少量である。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
糖尿病用薬
• スルホニルウレア剤
速効型インスリン分泌促進薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
ビグアナイド系薬剤
チアゾリジン系薬剤
GLP-1受容体作動薬
インスリン製剤等
低血糖が起こるおそれがある。特に、スルホニルウレア剤又はインスリン製剤と併用する場合にはスルホニルウレア剤又はインスリン製剤の減量を検討すること。 血糖降下作用が増強される。
血糖降下作用を増強する薬剤
• β遮断薬
サリチル酸剤
モノアミン酸化酵素阻害剤等
血糖値その他患者の状態を十分観察しながら投与すること。 血糖降下作用が増強される。
リトナビル 血糖値その他患者の状態を十分観察しながら投与すること。 リナグリプチンの代謝酵素であるCYP3A4阻害及び排泄に関与するP-gp阻害作用による。
血糖降下作用を減弱する薬剤
• アドレナリン
副腎皮質ホルモン
甲状腺ホルモン等
血糖値その他患者の状態を十分観察しながら投与すること。 血糖降下作用が減弱される。
リファンピシン 血糖値その他患者の状態を十分観察しながら投与すること。 リナグリプチンの代謝酵素であるCYP3A4誘導及び排泄に関与するP-gp誘導による。
利尿薬
• チアジド系薬剤
ループ利尿薬等
必要に応じ利尿薬の用量を調整するなど注意すること。 エンパグリフロジン:利尿作用が増強されるおそれがある。
リチウム製剤
• 炭酸リチウム
リチウムの作用が減弱されるおそれがある。 リチウムの腎排泄を促進することにより、血清リチウム濃度が低下する可能性がある。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
じん麻疹 頻度不明
そう痒症 頻度不明
ヘマトクリット上昇 頻度不明
めまい 頻度不明
リパーゼ)増加 頻度不明
亀頭炎等) 頻度不明
体液量減少 頻度不明
体重増加 頻度不明
体重減少 頻度不明
便秘 頻度不明
包茎 頻度不明
口内炎 頻度不明
口渇 頻度不明
味覚異常 頻度不明
咳嗽 頻度不明
外陰腟そう痒症 頻度不明
外陰部腟カンジダ症 頻度不明
多尿 頻度不明
尿中ケトン体陽性 頻度不明
尿路感染 頻度不明
尿量増加 頻度不明
性器感染(外陰部腟炎 頻度不明
排尿困難 頻度不明
気管支収縮 頻度不明
浮腫 頻度不明
発疹 頻度不明
空腹感 頻度不明
糸球体濾過量減少 頻度不明
胃腸炎 頻度不明
脂質異常症 頻度不明
腹部膨満 頻度不明
膀胱炎 頻度不明
膵酵素(血中アミラーゼ 頻度不明
血中クレアチニン上昇 頻度不明
血中ケトン体陽性 頻度不明
血液濃縮 頻度不明
血管性浮腫 頻度不明
陰部そう痒症 頻度不明
頻尿 頻度不明
鼓腸 頻度不明
鼻咽頭炎 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

  • エンパグリフロジン

腎臓で濾過されたグルコースは近位尿細管に存在するヒトナトリウム-グルコース共役輸送担体2(SGLT2)によってほぼ完全に再吸収され、わずかではあるがSGLT1によっても再吸収される54)。エンパグリフロジンはSGLT2選択的な競合阻害剤で、腎臓によるグルコースの再吸収を阻害することにより尿中グルコース排泄量を増加させ、血糖を低下させる55)。

  • リナグリプチン

リナグリプチンはジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)の競合的かつ可逆的な選択的阻害剤である。DPP-4は膜結合型プロテアーゼで、腎臓、肝臓、腸、リンパ球及び血管内皮細胞など多くの組織に広く発現しており、インクレチンと呼ばれるグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)を分解し、不活性化する。リナグリプチンはDPP-4の活性を阻害することで、GLP-1とGIPレベルを上昇させ、これらインクレチンによる強力なグルコース依存性インスリン分泌刺激作用により、インスリン分泌が促進される56)。さらに、GLP-1の作用によりグルカゴン放出も抑制される。この作用により食後の血糖コントロールを改善する。

18.2 薬理作用

    1. 18.2.1エンパグリフロジンとリナグリプチンの併用時の血糖低下作用

Zucker糖尿病肥満(ZDF)ラットを用いた経口糖負荷試験において、エンパグリフロジンとリナグリプチンの単回併用投与により、いずれか単剤を投与した時に比べて血漿グルコース濃度上昇が抑制された57)。

  • エンパグリフロジン
  1. 18.2.2SGLT2阻害作用

In vitro試験で、エンパグリフロジンはSGLT2を選択的に阻害し(IC50:1.3nM)、ヒトSGLT1(IC50:6278nM)と比較して約5000倍の選択性を示した58)。

  1. 18.2.3尿中グルコース排泄促進作用

糖尿病モデル動物(db/dbマウス及びZDFラット)において、エンパグリフロジンは単回経口投与により尿中グルコース排泄量(投与後7時間)を増加させた55)。 日本人2型糖尿病患者にエンパグリフロジン1mg、5mg、10mg、25mg又はプラセボを1日1回4週間反復経口投与した。エンパグリフロジンはプラセボに比べ投与28日目の投与24時間後までの累積尿中グルコース排泄量を増加させた59)。

  1. 18.2.4血糖低下作用

糖尿病モデル動物(db/dbマウス及びZDFラット)において、エンパグリフロジンは単回経口投与により血糖低下作用を示した55)。さらに、ZDFラットにおいて、エンパグリフロジンは1日1回5週間反復経口投与により、投与22日目(摂食下)及び投与37日目(絶食下)の血中グルコース濃度並びにHbA1cを低下させた60)。 日本人2型糖尿病患者にプラセボ、エンパグリフロジン10mg又は25mgを1日1回24週間反復経口投与した。エンパグリフロジンはプラセボに比べHbA1cを低下させた61)。

  • リナグリプチン
  1. 18.2.5DPP-4阻害作用

リナグリプチンは、in vitroにおいて、ヒトDPP-4(血漿、Caco-2細胞由来)の活性を選択的に阻害する(IC50値:1~3.6nM)62)。リナグリプチンの血漿中のDPP-4活性に対する阻害作用(80%以上)は、その薬物動態特性により、24時間持続する22)。

  1. 18.2.6耐糖能及び糖代謝改善作用

リナグリプチンは正常動物(マウス及びラット)において、GLP-1とインスリンの分泌を増大し、グルコース負荷試験による血糖値上昇を有意に抑制した62)。さらに、2型糖尿病を示す数種のモデル動物(db/dbマウス、肥満Zucker Fattyラット、ZDFラット)においても、グルコース負荷試験による血糖値上昇を有意に抑制した62)。重度のインスリン抵抗性を持つdb/dbマウスにおいて、HbA1cを有意に低下させた63)。 日本人の2型糖尿病患者において、リナグリプチンは血中GLP-1濃度を増加させ、血糖値を低下させた64)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

健康成人を対象として、本剤又は単剤併用をクロスオーバー法により空腹時単回経口投与した。本剤(エンパグリフロジン/リナグリプチン10mg/5mg)と単剤併用(エンパグリフロジン10mgとリナグリプチン5mg)投与後(56例)、並びに本剤(エンパグリフロジン/リナグリプチン25mg/5mg)と単剤併用(エンパグリフロジン25mgとリナグリプチン5mg)投与後(42例)の血漿中濃度推移データを図1に、薬物動態パラメータを表1に示す。本剤の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは、単剤併用時と類似しており、生物学的同等性の基準を満たす製剤であることが確認されている。3),4)(外国人データ)

図1 健康成人に空腹時単回経口投与後の平均血漿中濃度推移(算術平均値+標準偏差)

パラメータ名
[単位]
エンパグリフロジン リナグリプチン
本剤 単剤併用 本剤 単剤併用
10mg/5mg N=55 N=54 N=55 N=54
AUC0-tz[nM・h] 2590(17.5) 2560(19.3) 288(23.0) 291(23.6)
Cmax[nM] 380(24.6) 374(22.4) 9.92(36.6) 9.35(42.7)
tmax[h] 1.50
(0.667-4.00)
1.02
(0.667-4.00)
2.02
(0.333-6.03)
2.00
(0.333-6.02)
t1/2[h] 10.1(27.4) 10.3(24.1) 54.4(21.0) 55.1(22.9)
25mg/5mg N=42 N=40 N=42 N=40
AUC0-tz[nM・h] 6110(21.2) 5840(20.5) 271(22.1) 256(21.7)
Cmax[nM] 892(26.5) 826(23.5) 8.71(37.0) 7.83(30.5)
tmax[h] 1.50
(0.667-4.00)
1.25
(0.667-3.98)
1.50
(0.333-6.03)
1.75
(0.667-10.0)
t1/2[h] 14.0(35.6) 13.7(37.4) 55.3(18.7) 56.0(26.6)

算術平均値(変動係数%)、tmaxは中央値(最小値-最大値)

16.2 吸収

  1. 16.2.1バイオアベイラビリティ
  • エンパグリフロジン

エンパグリフロジンの絶対バイオアベイラビリティの検討は行っていない。

  • リナグリプチン

健康成人男性に、リナグリプチン10mg注)を錠剤として経口投与したとき及び5mgを静脈内投与したとき(各10例)のデータを用いて絶対バイオアベイラビリティを算出した結果、約30%であった(母集団薬物動態解析による推定値)5)。(外国人データ)

  1. 16.2.2食事の影響

日本人健康成人男性(22例)に、本剤(エンパグリフロジン/リナグリプチン25mg/5mg)を空腹時及び食後に単回経口投与したとき、Cmax及びAUC0-tzの幾何平均値の比(食後投与/空腹時投与)とその90%信頼区間は、エンパグリフロジンで74.9[66.3, 84.6]%及び86.0[83.4, 88.7]%、リナグリプチンで55.7[48.2, 64.3]%及び82.2[78.4, 86.2]%であった。空腹時投与に比べてtmaxの中央値はエンパグリフロジンで1.0時間、リナグリプチンで0.5時間延長した。6) 注)リナグリプチンの承認用量は5mgである。

16.3 分布

  • エンパグリフロジン
  1. 16.3.1日本人2型糖尿病患者(腎機能正常、8例)にエンパグリフロジン25mgを単回経口投与したときのエンパグリフロジンの血漿蛋白結合率は84.7%であった7)。外国人健康成人男性(8例)に14C-エンパグリフロジン50mg注)溶液を経口投与したときの血球/血漿の放射能濃度の分布比は28.6~36.8%であった8)。
  • リナグリプチン
  1. 16.3.2リナグリプチンのin vitro血漿蛋白結合率は濃度依存的であり、2nMでの98.8%から20nMでの84%へと減少した。30nM以上では蛋白結合率はほぼ一定であった9)。
  • 注)エンパグリフロジンの承認用量は10mg及び25mgである。

16.4 代謝

  • エンパグリフロジン
  1. 16.4.1ヒト肝ミクロソーム及びヒト肝細胞では、エンパグリフロジンはほとんど代謝を受けなかった10)。主たる代謝物の生成にはUGT2B7、UGT1A3、UGT1A8及びUGT1A9が関与しており、CYP酵素の関与はほとんどなかった2),10)。 エンパグリフロジンはヒト肝ミクロソームのCYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、3A4を阻害せず11),12)、CYP1A2、2B6、3A4を誘導しなかった13)。(in vitroデータ)

  2. 16.4.2健康成人男性に14C-エンパグリフロジン50mg注)溶液を経口投与したとき(8例)、血漿中には主に未変化体が認められ(血漿中放射能に対する割合は75%超)、主な代謝物はグルクロン酸抱合体であった(血漿中放射能に対する割合は約3.3~7.4%)1)。(外国人データ)

  • リナグリプチン
  1. 16.4.3ヒト肝ミクロソーム及びヒト肝細胞での14C-リナグリプチンの代謝は極めて低い。主たる代謝物の生成にはCYP3A4のみが関与していた14)。 リナグリプチンはヒト肝ミクロソームのCYP3A4活性を競合的に阻害するがその程度は弱く(Ki=115μM)、CYP1A1、1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1、4A11を阻害しなかった。また、ヒト肝ミクロソームのCYP3A4を弱~中程度に不可逆的に阻害した15)。CYP1A2、2B6、3A4を誘導しなかった16)。(in vitroデータ)

  2. 16.4.4健康成人に14C-リナグリプチン10mg注)を経口投与したとき(6例)、血漿中には主に未変化体が認められ(血漿中放射能に対する割合は約62%)、主な代謝物はCYP3A4によって生成するピペリジニル基の水酸化体であった(血漿中放射能に対する割合は約5%)17)。(外国人データ)

  • 注)エンパグリフロジンの承認用量は10mg及び25mgである。また、リナグリプチンの承認用量は5mgである。

16.5 排泄

  • エンパグリフロジン
  1. 16.5.1日本人健康成人男性(各6例)にエンパグリフロジン10mg及び25mgを単回経口投与したときの投与後72時間までの尿中未変化体排泄率はそれぞれ投与量の21.3%及び22.9%であった18)。

  2. 16.5.2健康成人男性(8例)に14C-エンパグリフロジン50mg注)溶液を単回経口投与したとき、投与放射能の約54.4%が尿中に、約41.2%が糞中に排泄された1)。(外国人データ)

  3. 16.5.3エンパグリフロジンはP-gp、BCRP、OAT3、OATP1B1及びOATP1B3の基質であった。また、エンパグリフロジンはBCRP、OAT3、OATP1B1及びOATP1B3に対して弱い阻害作用(IC50値:各114、295、71.8、58.6μM)を示したが、P-gpに対して阻害作用を示さなかった。19),20),21)(in vitroデータ)

  • リナグリプチン
  1. 16.5.4日本人健康成人(6例)にリナグリプチン5mgを単回経口投与したときの投与24時間後までの尿中未変化体排泄率は約0.6%であった22)。

  2. 16.5.5健康成人(6例)に14C-リナグリプチン10mg注)を単回経口投与したとき、投与後96時間までに投与放射能の約5%が尿中に、約80%が糞中に排泄された17)。(外国人データ)

  3. 16.5.6リナグリプチンはP-gpの基質であり、弱い阻害剤であった(IC50:約55μM)23)。(in vitroデータ)

  • 注)エンパグリフロジンの承認用量は10mg及び25mgである。また、リナグリプチンの承認用量は5mgである。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1腎機能障害患者
  • エンパグリフロジン

日本人腎機能正常(推定糸球体濾過量[eGFR]≥90mL/min/1.73m2、8例)及び軽度(eGFR 60~<90mL/min/1.73m2、8例)、中等度(eGFR 30~<60mL/min/1.73m2、8例)、高度腎機能障害(eGFR 15~<30mL/min/1.73m2、8例)の2型糖尿病患者にエンパグリフロジン25mg単回経口投与を行った。単回投与後の薬物動態パラメータの正常腎機能患者に対する幾何平均値の比とその90%信頼区間は、軽度、中等度、高度腎機能障害患者でそれぞれCmaxについて、93.5[72.2, 121]%、92.2[71.2, 119]%、94.0[72.6, 122]%であり、AUC0-∞について129[106, 157]%、144[118, 175]%、152[125, 185]%であった。投与後24時間までの尿中グルコース排泄量(UGE0-24h)のベースラインからの変化量の平均値は、腎機能正常患者で75.0g、軽度腎機能障害患者で62.6g、中等度腎機能障害患者で57.9g、高度腎機能障害患者で23.7gと腎機能の低下とともに減少した。7) 末期腎不全患者(8例)にエンパグリフロジン50mg注)単回経口投与を行った場合、Cmax及びAUC0-∞の正常腎機能患者(8例)に対する幾何平均値の比とその90%信頼区間は、104[81.2, 133]%及び148[120, 183]%であった。UGE0-24hのベースラインからの変化量の平均値は0.78gであった24)。(外国人データ)

  • リナグリプチン

健康被験者(クレアチニンクリアランス[Ccr]>80mL/min、6例)及び軽度(Ccr>50~≤80mL/min、6例)、中等度腎機能障害患者(Ccr>30~≤50mL/min、6例)にリナグリプチン5mg単回及び反復投与、並びに高度(Ccr≤30mL/min、6例)及び末期腎機能障害患者(Ccr≤30mL/minで血液透析が必要、6例)にリナグリプチン5mg単回投与を行った。単回投与後のAUC0-24hは健康被験者に比べて、軽度、中等度、高度、末期腎機能障害患者でそれぞれ約1.3倍、1.6倍、1.4倍、1.5倍であり、Cmaxはそれぞれ約1.3倍、1.6倍、1.5倍、1.5倍であった。反復投与後のAUCτ,ssは健康被験者に比べて、軽度及び中等度腎機能障害患者でそれぞれ約1.1倍及び1.7倍であり、Cmax,ssはそれぞれ約1.0倍及び1.5倍であった。 腎機能正常(11例)及び高度腎機能障害を有する(10例)2型糖尿病患者にリナグリプチン5mg反復投与を行った。高度腎機能障害を有する2型糖尿病患者における反復投与後のAUCτ,ss及びCmax,ssは腎機能正常2型糖尿病患者に比べて、ともに約1.4倍であった。腎機能障害患者の累積係数は健康被験者と同程度であり、尿中排泄率は腎機能障害の程度によらず全群で低かった。25)(外国人データ)

  1. 16.6.2肝機能障害患者
  • エンパグリフロジン

肝機能正常被験者(12例)及び軽度(Child-Pughスコア5又は6、8例)、中等度(Child-Pughスコア7~9、8例)、高度(Child-Pughスコア10~15、8例)肝機能障害者にエンパグリフロジン50mg注)単回経口投与を行った。単回投与後の薬物動態パラメータの肝機能正常被験者に対する幾何平均値の比とその90%信頼区間は、軽度、中等度及び高度肝機能障害者でそれぞれCmaxについて104[82.3, 131]%、123[97.7, 156]%、148[118, 187]%であり、AUC0-∞について123[98.9, 153]%、147[118, 183]%、175[140, 218]%であった。26)(外国人データ)

  • リナグリプチン

健康被験者(8例)及び軽度(Child-Pughスコア6、8例)、中等度(Child-Pughスコア7~9、9例)、高度(Child-Pughスコア10~15、8例)肝機能障害患者にリナグリプチン5mg単回投与、並びに健康被験者及び軽度、中等度肝機能障害患者にリナグリプチン5mg1日1回7日間反復投与を行った。反復投与後のAUCτ,ssは健康被験者に比べて軽度及び中等度肝機能障害患者でそれぞれ約0.8倍及び0.9倍であり、Cmax,ssは約0.6倍及び0.9倍であった。また、高度肝機能障害患者のAUC0-24hは健康被験者に比べて1.0倍、Cmaxは0.8倍であった。 肝機能障害患者におけるリナグリプチンの曝露は健康被験者よりやや低く(最大36%:軽度肝機能障害患者のCmax,ss)、肝機能の低下に伴う曝露の増加はみられなかった。27)(外国人データ)

  1. 16.6.3高齢者
  • エンパグリフロジン

2型糖尿病患者3208例(日本人患者628例を含む)を用いた母集団薬物動態解析の結果、年齢が50歳の場合に比べてエンパグリフロジンのAUCτ,ssは65歳では8.00%、75歳では12.5%高くなると予測された。28)

  • リナグリプチン

日本人2型糖尿病患者(159例)にリナグリプチン5mgを1日1回26週間投与したときのトラフ時の血漿中濃度の幾何平均値(幾何変動係数%)は65歳未満で6.57nM(31.1%)、65歳以上で7.66nM(26.9%)であった。29)

注)エンパグリフロジンの承認用量は10mg及び25mgである。

16.7 薬物相互作用

    1. 16.7.1エンパグリフロジンとリナグリプチンの併用

健康成人男性(16例)にエンパグリフロジン50mg注)とリナグリプチン5mgを1日1回7日間反復併用投与した場合、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの薬物動態への臨床的に問題となる影響はみられなかった。30)(外国人データ)

  • エンパグリフロジン
  1. 16.7.2エンパグリフロジンの薬物動態に及ぼす併用薬の影響

メトホルミン31)、グリメピリド32)、ピオグリタゾン33),34)、シタグリプチン35)、ワルファリン36)、ベラパミル37)、ラミプリル37)、シンバスタチン38)、利尿薬(ヒドロクロロチアジド及びトラセミド)39)との併用によるエンパグリフロジンの薬物動態への臨床的に問題となる影響はみられなかった。 ゲムフィブロジル40)、リファンピシン41)及びプロベネシド41)との併用投与によりエンパグリフロジンのAUCは59%、35%及び53%、Cmaxは15%、75%及び26%上昇した。これらの薬物動態の変化は臨床的に問題ないと考えられた。

  1. 16.7.3併用薬の薬物動態に及ぼすエンパグリフロジンの影響

エンパグリフロジンの併用によるメトホルミン31)、グリメピリド32)、ピオグリタゾン33),34)、シタグリプチン35)、ワルファリン36)、ジゴキシン37)、ラミプリル37)、シンバスタチン38)、利尿薬(ヒドロクロロチアジド及びトラセミド)39)、経口避妊薬(エチニルエストラジオール及びレボノルゲストレル)42)の薬物動態への臨床的に問題となる影響はみられなかった。

  • リナグリプチン
  1. 16.7.4リナグリプチンの薬物動態に及ぼす併用薬の影響

メトホルミン43)、ピオグリタゾン44)、グリベンクラミド45)との併用によるリナグリプチンの薬物動態への臨床的に問題となる影響はみられなかった。 リトナビル46)及びリファンピシン47)との併用投与により、リナグリプチンのAUCは2倍上昇及び40%低下、Cmaxは3倍上昇及び44%低下した。

  1. 16.7.5併用薬の薬物動態に及ぼすリナグリプチンの影響

リナグリプチンの併用によるシンバスタチン48)、メトホルミン43)、ピオグリタゾン44)、グリベンクラミド45)、ワルファリン49)、ジゴキシン50)、経口避妊薬(エチニルエストラジオール及びレボノルゲストレル)51)の薬物動態への臨床的に問題となる影響はみられなかった。

  • 注)エンパグリフロジンの承認用量は10mg及び25mgである。