-
既存治療で効果不十分な関節リウマチ
-
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
【警告】
- 〈効能共通〉
-
1.1本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等や、悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
-
1.2感染症
-
1.2.1重篤な感染症
敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。
- 1.2.2結核
播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、脳髄膜、胸膜、リンパ節等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤の投与開始前に適切な抗結核薬を投与すること。 ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている。
- 〈関節リウマチ〉
- 1.3本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること。
- 〈潰瘍性大腸炎〉
- 1.4本剤の治療を行う前に、少なくとも1剤の既存治療薬(ステロイド、免疫抑制剤又は生物製剤)の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と潰瘍性大腸炎治療の経験をもつ医師が使用すること。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
-
2.2重篤な感染症(敗血症等)の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
-
2.3活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
-
2.4重度の肝機能障害を有する患者
-
2.5好中球数が500/mm3未満の患者
-
2.6リンパ球数が500/mm3未満の患者
-
2.7ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者
-
2.8妊婦又は妊娠している可能性のある女性
効能・効果
用法・用量
- 〈関節リウマチ〉
通常、トファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。
- 〈潰瘍性大腸炎〉
導入療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回10mgを1日2回8週間経口投与する。なお、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができる。 維持療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、維持療法中に効果が減弱した患者では、1回10mgの1日2回投与に増量することができる。また、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害剤無効例等)では、1回10mgを1日2回投与することができる。
使用上の注意
-
8.1本剤は、免疫反応に関与するヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーを阻害するので、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性がある。本剤の投与に際しては十分な観察を行い、感染症の発現や増悪に注意すること。患者に対し、発熱、倦怠感等があらわれた場合には、速やかに主治医に相談するよう指導すること。関節リウマチ患者において、本剤投与時に発現する重篤な感染症は、本剤単独投与時と比較して抗リウマチ薬(メトトレキサートを含むDMARD)併用投与時では発現率が高い傾向が認められているため、特に注意すること。
-
8.2悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍の発現が報告されている。また、海外臨床試験において悪性腫瘍の発現頻度がTNF阻害剤に比較し本剤で高い傾向が認められたとの報告もあることから、悪性腫瘍の発現には注意すること。
-
8.3本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。 また、本剤投与中も胸部レントゲン検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること。
-
8.4本剤投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されているので、本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。
-
8.5ヘルペスウイルス等の再活性化(帯状疱疹等)が報告されている。また、日本人患者で認められた重篤な日和見感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと、播種性帯状疱疹も認められていることから、ヘルペスウイルス等の再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。徴候や症状の発現が認められた場合には、患者に受診するよう説明し、速やかに適切な処置を行うこと。また、ヘルペスウイルス以外のウイルスの再活性化にも注意すること。
-
8.6本剤投与により、好中球減少、リンパ球減少及びヘモグロビン減少があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に好中球数、リンパ球数及びヘモグロビン値を確認すること。
-
8.7総コレステロール、LDLコレステロール及びHDLコレステロールの増加等の脂質検査値異常があらわれることがある。本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること。臨床上必要と認められた場合には、高脂血症治療薬の投与等の適切な処置を考慮すること。
-
8.8感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。
-
8.9肝機能障害があらわれることがあるので、トランスアミナーゼ値上昇に注意するなど観察を十分に行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1感染症(重篤な感染症(敗血症等)又は活動性結核を除く)の患者又は感染症が疑われる患者
感染症が増悪する可能性がある。
-
9.1.2結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)及び結核感染が疑われる患者
-
(1)結核の既感染者では、結核を活動化させるおそれがある。
-
(2)結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として本剤の開始前に適切な抗結核薬を投与すること。
-
胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
-
結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
-
インターフェロン-γ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
-
結核患者との濃厚接触歴を有する患者
- 9.1.3易感染性の状態にある患者
感染症を発現するリスクが増加する。
- 9.1.4腸管憩室のある患者
消化管穿孔があらわれるおそれがある。
- 9.1.5好中球減少(好中球数500/mm3未満を除く)のある患者
好中球数が低い患者(1000/mm3未満)については、本剤投与を開始しないことが望ましい。好中球減少が更に悪化するおそれがある。
- 9.1.6リンパ球減少(リンパ球数500/mm3未満を除く)のある患者
リンパ球減少が更に悪化するおそれがある。
- 9.1.7ヘモグロビン値減少(ヘモグロビン値8g/dL未満を除く)のある患者
ヘモグロビン値が9g/dL未満の患者については、本剤投与を開始しないことが望ましい。ヘモグロビン減少が更に悪化するおそれがある。
- 9.1.8間質性肺炎の既往歴のある患者
定期的に問診を行うなど、注意すること。間質性肺炎が増悪又は再発することがある。
- 9.1.9B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。本剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。
- 9.1.10心血管系事象のリスク因子を有する患者
他の治療法を考慮すること。特に10mg 1日2回投与の必要性については慎重に判断すること。 本剤を投与する場合は、心筋梗塞等の心血管系事象、静脈血栓塞栓症の徴候及び症状の発現について十分に観察すること。 心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を有する関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験において、心筋梗塞等の心血管系事象の発現頻度はTNF阻害剤群に比較し、本剤群で高い傾向が認められている。また、静脈血栓塞栓症の発現頻度は本剤群で用量依存的に高くなる傾向が認められており、死亡の発現頻度は本剤10mg 1日2回群で高い傾向であったことが報告されている。
9.2 腎機能障害患者
- 9.2.1中等度又は重度の腎機能障害患者
減量し、慎重に投与すること。 腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある。
- 9.2.2軽度の腎機能障害患者
腎機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し、副作用が強くあらわれるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
- 9.3.1重度の肝機能障害患者
投与しないこと。 国内外で実施された臨床試験において重度の肝機能障害を有する患者は除外されている。また、中等度又は軽度の肝機能障害を有する患者に投与した場合に本剤の曝露量が増加するとの臨床試験成績があり、副作用が強くあらわれるおそれがある。
- 9.3.2中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスB)
減量し、慎重に投与すること。肝機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し副作用が強くあらわれるおそれがある。
- 9.3.3軽度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスA)
肝機能が正常な患者に比べ、本剤の曝露量が増加し副作用が強くあらわれるおそれがある。
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は、妊娠を避けるよう指導すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験では催奇形性が報告されており、日本人関節リウマチ患者に本剤5mg 1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ78倍(無毒性量:30mg/kg/日)及び2.8倍(無毒性量:10mg/kg/日)、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者に本剤10mg 1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ51倍及び1.8倍であった。また、ラットで受胎能、出産、胎児の発達への影響が報告されており、雌ラットの受胎能及び初期胚発生に関する安全域は、日本人関節リウマチ患者に本剤5mg 1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき5.7倍(無毒性量:1mg/kg/日)、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者に本剤10mg 1日2回投与したときの血漿中濃度と比較したとき4.0倍であった1)。
9.6 授乳婦
*本剤投与中は授乳しないことが望ましい。ヒト母乳中へ移行することが報告されている2),3) 。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。 重篤な感染症の発現頻度の上昇が認められている。一般に生理機能が低下している。また、肝機能及び腎機能の低下により本剤の血中濃度の増加が認められている。
相互作用
- 本剤は主としてCYP3A4及び一部CYP2C19により代謝される。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
|---|---|---|
| CYP3A4阻害剤 • マクロライド系抗生物質• (クラリスロマイシン、エリスロマイシン等) • ノルフロキサシン等 • アゾール系抗真菌剤• (イトラコナゾール、ボリコナゾール等) • カルシウム拮抗剤• (ジルチアゼム、ベラパミル) • アミオダロン • シメチジン • フルボキサミン • 抗HIV剤• (リトナビル、アタザナビル、ネルフィナビル) • ニルマトレルビル・リトナビルグレープフルーツ |
トファシチニブの曝露量が増加するおそれがある。併用時には本剤を減量(1回投与量を減量。1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす。)するなど用量に注意すること。 | これらの薬剤等はCYP3A4による本剤の代謝を阻害するため、トファシチニブの血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| フルコナゾール | トファシチニブの曝露量が増加するおそれがある。 併用時には本剤を減量(1回投与量を減量。1回投与量を減量することができない場合は投与回数を減らす。)するなど用量に注意すること。 |
フルコナゾールはCYP3A4及びCYP2C19の代謝活性を阻害するため、トファシチニブの血中濃度が上昇する可能性がある。 |
| CYP3A4誘導剤 • 抗てんかん剤• (バルビツール酸誘導体、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン等) • リファンピシン • リファブチン • モダフィニル セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 |
トファシチニブの血漿中濃度が低下し、本剤の効果が減弱する可能性がある。CYP3A4誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。 | これらの薬剤等はCYP3A4を誘導するため、本剤の効果が減弱する可能性がある。 |
| 肝機能障害を起こす可能性のある薬剤 | 関節リウマチ患者において、メトトレキサートを含むDMARD等併用時に本剤単独投与時と比較して肝機能障害の発現割合上昇が認められている。 | 機序は不明である。 |
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| γ-GTP増加 | 頻度不明 |
| インフルエンザ | 頻度不明 |
| ウイルス性胃腸炎 | 1%未満 |
| ウイルス感染 | 1%未満 |
| クリプトコッカス性髄膜炎 | 1%未満 |
| サイトメガロウイルス感染 | 1%未満 |
| ざ瘡 | 頻度不明 |
| そう痒症 | 1%未満 |
| トランスアミナーゼ上昇 | 1%未満 |
| ニューモシスチス肺炎 | 1%未満 |
| ブドウ球菌性菌血症 | 頻度不明 |
| マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス感染 | 1%未満 |
| 下痢 | 頻度不明 |
| 不眠症 | 1%未満 |
| 低比重リポ蛋白増加 | 1%未満 |
| 体重増加 | 1%未満 |
| 副鼻腔うっ血 | 1%未満 |
| 副鼻腔炎 | 頻度不明 |
| 単純ヘルペス | 1%未満 |
| 呼吸困難 | 1%未満 |
| 咳嗽 | 頻度不明 |
| 咽頭炎 | 頻度不明 |
| 嘔吐 | 頻度不明 |
| 壊死性筋膜炎 | 1%未満 |
| 尿路感染 | 頻度不明 |
| 悪心 | 頻度不明 |
| 末梢性浮腫 | 1%未満 |
| 気管支炎 | 頻度不明 |
| 消化不良 | 頻度不明 |
| 疲労 | 頻度不明 |
| 発熱 | 頻度不明 |
| 発疹 | 頻度不明 |
| 白血球減少 | 1%未満 |
| 筋骨格痛 | 1%未満 |
| 紅斑 | 1%未満 |
| 細菌性肺炎 | 1%未満 |
| 細菌性関節炎 | 1%未満 |
| 肉離れ | 頻度不明 |
| 肝機能検査異常 | 1%未満 |
| 肝酵素上昇 | 1%未満 |
| 肺炎 | 頻度不明 |
| 肺炎球菌性肺炎 | 1%未満 |
| 胃炎 | 1%未満 |
| 脂肪肝 | 1%未満 |
| 脂質異常症 | 1%未満 |
| 脱水 | 1%未満 |
| 脳炎(BKウイルス脳炎を含む) | 1%未満 |
| 腎盂腎炎 | 1%未満 |
| 腱炎 | 1%未満 |
| 腹痛 | 頻度不明 |
| 膀胱炎 | 頻度不明 |
| 菌血症 | 頻度不明 |
| 蜂巣炎 | 1%未満 |
| 血中クレアチニン増加 | 1%未満 |
| 血中クレアチンホスホキナーゼ増加 | 5%以上 |
| 血中コレステロール増加 | 頻度不明 |
| 血管浮腫等) | 頻度不明 |
| 貧血 | 頻度不明 |
| 過敏症(蕁麻疹 | 頻度不明 |
| 錯感覚 | 頻度不明 |
| 関節痛 | 頻度不明 |
| 関節腫脹 | 1%未満 |
| 非定型マイコバクテリア感染 | 頻度不明 |
| 靱帯捻挫 | 1%未満 |
| 頭痛 | 5%以上 |
| 高比重リポ蛋白増加 | 1%未満 |
| 高脂血症 | 頻度不明 |
| 高血圧 | 頻度不明 |
| 鼻咽頭炎 | 5%以上 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
トファシチニブは、JAKファミリーの強力な阻害薬であり、ヒトのキナーゼ群の中で高い選択性を示す。トファシチニブは、キナーゼアッセイでJAK1、JAK2、JAK3を阻害し、TyK2も軽度に阻害する。細胞内では2分子のJAKが介在してシグナル伝達が行われるが、トファシチニブはJAK3又はJAK1に会合するヘテロ二量体受容体によるシグナル伝達を強力に阻害し、その機能的選択性はJAK2に会合するホモ二量体受容体によるシグナル伝達に対する阻害よりも高い。JAK1及びJAK3の阻害により、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21を含む数種類の共通のγ鎖を有するサイトカイン受容体を介したシグナル伝達が遮断される。これらのサイトカインは、リンパ球の活性化、増殖及び機能発現に不可欠であることから、これらのシグナル伝達の阻害により免疫反応を様々な形で抑制できると考えられる。また、JAK1に対する阻害作用により、IL-6やⅠ型IFNなど他の炎症誘発性サイトカインを介したシグナル伝達も抑制すると考えられる。より高用量では、JAK2ホモ二量体シグナル伝達の抑制を介したエリスロポエチンのシグナル伝達の抑制が生じる可能性がある。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1単回投与
日本人健康被験者6例に、本剤1及び5mgを空腹時単回経口投与注)したとき、トファシチニブの全身曝露量は、ほぼ用量比例的に増加した9)。
| 日本人被験者 | |||
|---|---|---|---|
| 1mg (N=6) |
5mg (N=6) |
||
| AUC0-∞ (ng・h/mL) |
幾何平均値 %CV |
22.0 28 |
111 22 |
| Cmax (ng/mL) |
幾何平均値 %CV |
7.32 14 |
41.3 35 |
| tmax (h) |
中央値 範囲 |
0.75 0.50-2.00 |
0.50 0.50-1.00 |
| t1/2 (h) |
算術平均値 範囲 |
1.96 1.69-2.40 |
2.49 2.06-3.60 |
- 16.1.2反復投与
日本人健康被験者6例に本剤を5日間15mg 1日2回反復経口投与注)したとき、反復投与開始後24時間以内に定常状態に到達し、累積係数(単回投与時のAUC0-12に対する反復投与5日目のAUC0-12の比)は1.15であった9)。
| 単回投与 | 反復投与 | ||
|---|---|---|---|
| 1日目a)(N=6) | 8日目a)(N=6) | ||
| AUCτb) (ng・h/mL) |
幾何平均値 %CV |
387 32 |
445 25 |
| Cmax (ng/mL) |
幾何平均値 %CV |
141 34 |
136 32 |
| tmax (h) |
中央値 範囲 |
0.75 0.50-1.00 |
0.75 0.50-1.00 |
| t1/2 (h) |
算術平均値 範囲 |
3.14 2.36-4.06 |
3.28 2.58-3.97 |
| 累積係数c) | 幾何平均値 %CV |
- - |
1.15 10 |
a)投薬スケジュール:1日目 単回投与、2-3日目 休薬期間、4-8日目 反復投与(8日目は朝1回のみ投与) b)投与間隔(τ):12時間 c)8日目のAUCτ/1日目のAUCτ
国内外で実施した第Ⅱ相試験5試験についてポピュレーションPK解析を実施し、日本人関節リウマチ患者(男性、70kg、55歳、ベースラインのクレアチニンクリアランス≧80mL/min)のポピュレーションPKパラメータを推定したところ、見かけのクリアランス(CL/F)は18.4L/h、見かけの分布容積(V/F)は96.0Lであった。また推定値より本剤5mg 1日2回経口反復投与したときの定常状態における各患者の薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]は、最高血漿中濃度(Cmax,ss)60.4(17)ng/mL、トラフ濃度(Cmin,ss)4.39(51)ng/mL及び投与間隔における血漿中濃度時間曲線下面積(AUCτ)262(20)ng・h/mLと推定された10)。
日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者に、本剤10mgを1日2回9週間反復経口投与したときの投与2週目及び8週目の血漿中トラフ(投与前)濃度が得られている。
| 週 | 外国人 | 日本人 | ||
|---|---|---|---|---|
| 例数 | トラフ濃度 (ng/mL) |
例数 | トラフ濃度 (ng/mL) |
|
| 投与2週目 投与8週目 |
391 388 |
5.07[0.00, 199] 4.78[0.00, 133] |
46 46 |
4.78[0.447, 21.9] 4.46[0.00, 112] |
中央値[最小値, 最大値] 定量下限(0.100ng/mL)未満の場合は0.00とした。 前回投与時から採血までの中央値(四分位範囲)は13時間(12~15時間)であった。
日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に実施した国際共同第Ⅲ相試験2試験並びに外国人潰瘍性大腸炎患者を対象に実施した海外第Ⅱ相試験1試験及び第Ⅲ相試験1試験についてポピュレーションPK解析を実施し、日本人を含む潰瘍性大腸炎患者(仮定した基準となる患者は、アジア人以外、男性、体重72kg、年齢40歳、ベースラインのクレアチニンクリアランスが109mL/min)のポピュレーションPKパラメータを推定したところ、CL/Fは26.3L/h、V/Fは116Lであった。また本剤5及び10mgを1日2回経口反復投与したときの定常状態における各患者の薬物動態パラメータ[幾何平均値(変動係数%)]はそれぞれ、Cmax,ss 46.9(19)及び90.8(20)ng/mL、AUCτ 211(23)及び404(25)ng・h/mLと推定された11)。
16.2 吸収
-
16.2.1外国人健康被験者12例に本剤及び静脈注射用製剤10mgを単回経口及び静脈内(Ⅳ)投与注)しトファシチニブの絶対的バイオアベイラビリティを評価した。本剤10mg経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは74.14%(90%信頼区間:70.32~78.16%)であった12)(外国人データ)。
-
16.2.2食事の影響
外国人健康被験者16例に、本剤10mgを単回経口投与注)しPKに対する食事の影響を評価した。AUC0-∞を指標としたトファシチニブ平均曝露量は、摂食下では約6%(90%信頼区間:3~10%)増大したのに対し、Cmaxは約32%(90%信頼区間:20~42%)減少した13)(外国人データ)。
16.3 分布
静脈内投与後、トファシチニブの定常状態における見かけの分布容積(Vss)は87Lと推定された。トファシチニブのヒト血漿蛋白結合率は0.39であった。トファシチニブの血液-血漿濃度比は1µM(312ng/mL)において1.2であった12),14),15),16)。
16.4 代謝
トファシチニブのクリアランスの機序に対する代謝経路の寄与は、未変化体の肝代謝が約70%、腎排泄が30%である。主に薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)3A4を介して代謝され、CYP2C19によってもわずかに代謝されると考えられる。マスバランス試験では、循環中総放射能の65%以上をトファシチニブの未変化体が占めた。血漿中における残りの放射能は8種類の代謝物によるものであり、それぞれは総放射能の8%未満であった。 in vitro試験により、トファシチニブは日本人関節リウマチ患者に10mg 1日2回投与注)したときの定常状態における非結合型Cmax(0.24µM)の125倍の濃度(IC50>30µM)で、ヒトの主要な薬物代謝酵素CYP450(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)の活性を有意に阻害又は誘導しないことが示されている。 in vitro試験により、トファシチニブは日本人関節リウマチ患者に10mg 1日2回投与注)したときの定常状態における非結合型Cmax(0.24µM)の417倍の濃度(IC50>100µM)で、ヒトの主要な薬物代謝酵素UGT(UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9及びUGT2B7)の活性を有意に阻害しないことが示されている17),18),19),20)。
16.5 排泄
ヒトのマスバランス試験から、放射能の約29%が未変化体として、約51%が代謝物として、それぞれ尿中に排泄されることが示された。糞便中には、放射能の約1%が未変化体として、約13%が代謝物として、それぞれ排泄された。総回収率は約94%であった17)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1腎機能障害患者
軽度、中等度、重度の腎機能障害患者各6例、腎機能正常被験者6例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、全被験者でCmaxの平均値は類似していた。腎機能正常被験者と比べ、軽度、中等度及び重度の腎機能障害被験者におけるAUC0-∞の平均値の比は、それぞれ137%(90%信頼区間:97~195%)、143%(90%信頼区間:101~202%)及び223%(90%信頼区間:157~316%)であった。t1/2の平均値は、腎機能正常被験者における2.4時間から重度の腎機能障害被験者における3.8時間まで延長した21)(外国人データ)。
| 正常 (N=6) |
軽度 (N=6) |
中等度 (N=6) |
重度 (N=6) |
|
|---|---|---|---|---|
| AUC0-∞ (ng・h/mL) |
260 (71.5) |
357 (109) |
370 (154) |
579 (214) |
| Cmax (ng/mL) |
91.2 (25.3) |
84.9 (23.2) |
95.0 (47.5) |
107 (28.6) |
| tmax (h) |
0.8 (0.5-1.5) |
1.0 (0.5-1.5) |
0.8 (0.5-2.0) |
0.8 (0.5-1.5) |
| t1/2 (h) |
2.37 (0.36) |
2.83 (0.86) |
2.88 (0.65) |
3.77 (0.48) |
AUC0-∞及びCmax:幾何平均値(標準偏差)、tmax:中央値(範囲)、t1/2:算術平均値(標準偏差)
血液透析を受けている末期腎疾患患者12例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、透析クリアランス/血液流量で算出される透析効率の平均値(標準偏差)は0.73(0.15)であった。しかしながら、トファシチニブは腎外クリアランスが大きいことから、血液透析による除去の総排泄に対する割合は小さい。
- 16.6.2肝機能障害患者
軽度及び中等度の肝機能障害患者各6例、肝機能正常被験者6例に本剤10mgを単回経口投与注)したとき、軽度肝障害群のCmaxの幾何平均値は肝機能正常群よりも0.6%低く、AUC0-∞の幾何平均値は3.2%高かった。中等度肝障害群のCmaxの幾何平均値は肝機能正常群よりも49%高く、AUC0-∞の幾何平均値は65%高かった。t1/2の平均値については、肝機能正常群の4.1時間から中等度肝障害群の5.4時間まで延長した22)(外国人データ)。
| 正常 (N=6) |
軽度 (N=6) |
中等度 (N=6) |
|
|---|---|---|---|
| AUC0-∞ (ng・h/mL) |
355 (82.6) |
366 (55.9) |
584 (280) |
| Cmax (ng/mL) |
60.5 (14.2) |
60.1 (17.0) |
89.9 (30.6) |
| tmax (h) |
3.0 (1.0-6.0) |
2.5 (0.5-4.0) |
0.8 (0.5-2.0) |
| t1/2 (h) |
4.09 (0.94) |
4.37 (0.41) |
5.41 (1.08) |
AUC0-∞及びCmax:幾何平均値(標準偏差)、tmax:中央値(範囲)、t1/2:算術平均値(標準偏差)
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1メトトレキサート
本剤とメトトレキサート(15~25mg 週1回投与)の併用投与によるトファシチニブのAUCの増加は3%(90%信頼区間:-1~7%)、Cmaxの増加は3%(90%信頼区間:-6~12%)であり、トファシチニブの薬物動態に対する影響は認められなかった。 また、本剤とメトトレキサートの併用投与により、メトトレキサートのAUCが10%(90%信頼区間:-4~23%)減少し、Cmaxが13%(90%信頼区間:-0.1~24%)減少した23) (外国人データ)。
- 16.7.2ケトコナゾール
CYP3A4の阻害薬であるケトコナゾール(経口剤:国内未承認)との併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ103%(90%信頼区間:91~116%)及び16%(90%信頼区間:5~29%)増加した24) (外国人データ)。
- 16.7.3フルコナゾール
CYP3A4及びCYP2C19の阻害薬であるフルコナゾールとの併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ79%(90%信頼区間:64~96%)及び27%(90%信頼区間:12~44%)増加した24) (外国人データ)。
- 16.7.4タクロリムス及びシクロスポリン
CYP3A4の阻害薬であるタクロリムスとの併用投与により、本剤単独投与時と比較して、本剤を単回投与したときのAUCは21%(90%信頼区間:13~30%)増加し、Cmaxは9%(90%信頼区間:1~17%)低下した。CYP3A4の阻害薬であるシクロスポリンとの併用投与により、本剤単独投与時と比較して、本剤を単回投与したときのAUCは73%(90%信頼区間:62~85%)増加し、Cmaxは17%(90%信頼区間:3~29%)低下した25) (外国人データ)。
- 16.7.5リファンピシン
CYP3A4の誘導薬であるリファンピシンとの併用投与により、トファシチニブのAUC及びCmaxは、本剤単独投与時と比較して、それぞれ84%(90%信頼区間:82~86%)及び74%(90%信頼区間:69~77%)低下した26) (外国人データ)。
- 16.7.6ミダゾラム
本剤(30mg 1日2回投与注))とミダゾラムの併用投与によるミダゾラムのAUCの増加は4%(90%信頼区間:-4~13%)、Cmaxの増加は2%(90%信頼区間:-4~9%)であり、ミダゾラムのCmax又はAUCに影響は認められなかった27) (外国人データ)。
- 16.7.7経口避妊薬
健康女性被験者において、本剤(30mg 1日2回投与注))の併用投与により、経口避妊薬(レボノルゲストレル及びエチニルエストラジオール)の薬物動態に影響は認められなかった。本剤との併用時のレボノルゲストレルのAUCは1%(90%信頼区間:-5~7%)増加し、Cmaxは12%(90%信頼区間:5~20%)増加した。本剤との併用時のエチニルエストラジオールのAUCは7%(90%信頼区間:-1~15%)増加し、Cmaxは10%(90%信頼区間:2~18%)減少した28) (外国人データ)。
- 16.7.8メトホルミン
本剤(30mg 1日2回投与注))とOCTの典型的基質であるメトホルミン(500mg単回投与)の併用投与によるメトホルミンのAUCの減少は2%(90%信頼区間:-3~3%)、Cmaxの減少は7%(90%信頼区間:-13~-1%)、腎クリアランスの増加は0.2%(90%信頼区間:-3~4%)であり、メトホルミンのAUC、Cmax又は腎クリアランスに影響は認められなかった29) (外国人データ)。
- 16.7.9P糖蛋白質
in vitro試験により、トファシチニブはP糖蛋白質の基質であることが示された。また、P糖蛋白質によるジゴキシンの輸送に対するトファシチニブの阻害作用も認められた(IC50:311µM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの1300倍)30),31)。
- 16.7.10ヒト有機カチオントランスポーター(hOCT1又はhOCT2)
in vitro試験により、トファシチニブはhOCT2によるクレアチニンの取り込みを用量依存的に阻害し、その阻害活性はキニジンと同等で、シメチジンよりも高いことが示唆された(IC50:150µM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの625倍)。また、in vitro試験により、300µM(日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの1250倍)までの濃度で、トファシチニブはhOCT1及びhOCT2の基質とはならないことが示唆された32),33),34),35)。
- 16.7.11ヒト有機アニオン輸送ポリペプチド(hOATP 1B1又は1B3)
in vitro試験により、hOATP1B1を介した輸送に対するトファシチニブの阻害作用が認められた(IC50:55.3µM;日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときのCmaxにおける血漿中非結合トファシチニブ濃度の平均値の230倍及び肝臓中の推定トファシチニブ最高濃度の83倍)。hOATP1B3を介した輸送は、トファシチニブ濃度100µMで阻害されなかった。また、in vitro試験により、900µM(日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの3750倍)までの濃度で、トファシチニブはhOATP1B1及びhOATP1B3の基質とはならないことが示唆された36),37),38),39)。
- 16.7.12サンドイッチ培養ヒト肝細胞への取り込み
サンドイッチ培養ヒト肝細胞を用いたin vitro試験(1µM及び20µM:日本人関節リウマチ患者に本剤10mg 1日2回投与注)したときの非結合型Cmaxの4.17及び83.3倍)により、トファシチニブの肝取り込みにおいて、取り込みトランスポーターが主要な役割を担う可能性は低いことが示唆された40)。
- 注)本剤の関節リウマチにおける承認用法・用量は、トファシチニブとして5mg 1日2回経口投与である。