Clinical snapshot

ジオン注無痛化剤付

硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸注射液

添付文書改訂 2026年03月01日

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性

  2. 2.2授乳中の女性

  3. 2.3透析療法を受けている患者

  4. 2.4嵌頓痔核を伴う患者[症状を悪化させることがある。]

  5. 2.5本剤の成分又はリドカイン等のアミド型局所麻酔剤に対し過敏症の既往歴のある患者[添付の希釈液はリドカインを含有している。]

  6. 2.6次の部位には投与しないこと 直腸下部の粘膜下以外の部位[壊死等の症状があらわれることがある。]

効能・効果

脱出を伴う内痔核

用法・用量

本剤の投与に先立ち、局所麻酔により肛門括約筋を弛緩させる。 用時、ジオン注無痛化剤付1バイアル(10mL)に添付の希釈液10mLを加えて20mLとし、硫酸アルミニウムカリウム水和物として2%溶液に調製する。 通常、成人には、1つの主痔核あたり2%溶液として9~13mLを分割して粘膜下に投与する。 なお、投与量は患者の病態により適宜増減することとし、1回の治療あたりの総投与量は2%溶液として60mL以内とする。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の投与は、痔疾治療に精通し、本剤を用いた手技を理解した医師が四段階注射法を遵守して行うこと。

  2. 8.2本剤は組織傷害性があることから、適切な場所に適量投与されなかった場合や原液を投与した場合、直腸筋層壊死、直腸狭窄等が発生する可能性があるので十分に注意すること。

  3. 8.3本剤の投与中あるいは投与後に過度の血圧低下、徐脈があらわれることがあるので、本剤の投与に際しては、常時、血圧及び心拍数を観察し、直ちに適切な救急処置のとれる準備をしておくとともに、予め静脈路の確保を行うこと。

  4. 8.4本剤の投与手技上、以下の事象が発生する可能性があるので十分に注意すること。

  5. 8.4.1前立腺炎、副睾丸炎、睾丸炎、血精液症:男性の前側の痔核に注射する際、直腸壁全層を注射針が穿通し、前立腺・精嚢とその近傍に刺入・注射した場合に発生する。このような場合には、観察を十分に行い、導尿、抗生物質の投与等の適切な処置を行うこと。

  6. 8.4.2直腸腟瘻:女性の前側の痔核に注射する際、直腸壁全層を注射針が穿通し、腟とその近傍に刺入・注射した場合に発生する。このような場合には、観察を十分に行い、手術等の適切な処置を行うこと。

  7. 8.4.3痔核壊死:痔核中央部への投与において、投与部位が浅い場合、又は投与量が多く投与部位を十分にマッサージせず薬液が均一に分散しなかった場合に発生する。このような場合には、観察を十分に行い、抗生物質を投与するなど適切な処置を行うこと。痔核全体が壊死した場合、手術等の適切な処置を行うこと。

  8. 8.4.4嵌頓痔核、肛門部疼痛:歯状線及び肛門管皮下に投与した場合、又は肛門管皮下に薬液が浸潤した場合に発生する。このような場合には、坐浴や消炎鎮痛剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、嵌頓痔核が回復しない場合には手術等の適切な処置を行うこと。

  9. 8.4.5硬結:投与量の過多、又は投与後に十分にマッサージせず痔核の一部に薬液が集中した場合に発生する。なお、痔核中央部の粘膜固有層への投与量が多く、粘膜下層への投与量が少なかった場合にも発生する。通常は自然に吸収され、肛門機能に影響を残さないが、硬結が著しく排便障害等が認められる場合には、観察を十分に行い、手術等の適切な処置を行うこと。

  10. 8.4.6直腸筋層壊死:針先が直腸の筋層まで達し、投与量が多い場合に発生する。このような場合には、観察を十分に行い、消炎鎮痛剤及び抗生物質の投与等の適切な処置を行うこと。

  11. 8.4.7直腸狭窄:多くは痔核上極部の粘膜下層への投与量過多の場合に発生する。なお、痔核中央部の粘膜下層への投与の際、痔核上極部の粘膜下層に薬液が誤って注入された場合にも投与量過多となり発生する。このような場合には、観察を十分に行い、狭窄部の切開やブジー等の適切な処置を行うこと。

  12. 8.5本剤投与後、少なくとも前処置の麻酔の影響がなくなるまで、医師の監督下で患者の全身状態の観察を十分に行うこと。

  13. 8.6本剤投与2週間後までに一過性の発熱があらわれることがあるので、このような場合には、観察を十分に行い、解熱鎮痛剤を投与するなど適切な処置を行うこと。

  14. 8.7本剤による治療後に重篤な直腸潰瘍や直腸狭窄等が発生する可能性があるので、治療後は定期的に経過観察を行うこと。また、投与に際しては、患者に対して本剤の副作用等について十分な説明を行うとともに、出血、肛門痛等の異常が認められた場合には速やかに主治医に連絡するように注意を与えること。

  15. 8.8添付の希釈液は、塩酸リドカインとして0.5%含有する。リドカインはショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握するとともに、異常が認められた場合には、直ちに救急処置のとれるように、常時準備しておくこと。

  16. 8.9塩酸リドカインの基準最高用量は、通常、成人1回200mg(0.5%の場合、40mL)であることに注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1全身状態が不良の患者

希釈液にリドカインが含まれており、生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。

  1. 9.1.2心刺激伝導障害のある患者

希釈液に含まれるリドカインが症状を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.3*前立腺等の骨盤内癌に放射線治療歴のある患者

放射線治療歴及び放射線直腸炎による直腸粘膜障害の程度を確認し、投与の必要性を検討すること。 前立腺等の骨盤内癌への放射線治療により、放射線直腸炎や強い線維化を生じている可能性があり、本剤の投与により、難治性潰瘍や重篤な直腸狭窄を生じるおそれがある。また、重篤な直腸狭窄を発現し、人工肛門が造設され、排便困難や便失禁のリスクから人工肛門の閉鎖が困難となった症例が報告されている。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1透析療法を受けている患者

投与しないこと。本剤の有効成分である硫酸アルミニウムカリウム水和物に由来するアルミニウムは、主に腎臓から排泄されるため、アルミニウムの排泄が極端に遅延するおそれがある。

  1. 9.2.2腎機能障害のある患者(透析療法を受けている患者を除く)

尿量が十分に確保できることを確認してから投与すること。アルミニウムの排泄が遅延するおそれがある。また、重篤な腎機能障害のある患者では、希釈液に含まれるリドカインの中毒症状が発現しやすくなるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1重篤な肝機能障害のある患者

希釈液に含まれるリドカインの中毒症状が発現しやすくなるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット)で胎児へのアルミニウムの移行が認められている。

9.6 授乳婦

投与しないこと。動物実験(ラット)で乳汁中へのアルミニウムの移行が認められている。

9.7 小児等

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

尿量が十分に確保されていることに注意すること。一般に腎機能が低下していることが多い。また、希釈液にリドカインが含まれており、生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。

相互作用

記載なし

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
A/G比低下 1%未満
ALP上昇 1〜5%未満
ALT上昇 1〜5%未満
APTT延長 1〜5%未満
AST上昇 1〜5%未満
BUN上昇・減少 1%未満
CRP上昇(12%) 5%以上
LDH上昇 1%未満
γ-GTP上昇 1〜5%未満
アルブミン低下 1%未満
トリグリセライド上昇 1%未満
プロトロンビン時間延長 1%未満
ヘモグロビン減少 1%未満
リンパ球減少 5%以上
下痢 1〜5%未満
下腹部痛 頻度不明
不快感 1%未満
全身倦怠(感) 1〜5%未満
単球増加 1%未満
嘔吐 頻度不明
嘔気 1〜5%未満
多尿 1%未満
好中球増加 5%以上
好酸球増加 1〜5%未満
尿ウロビリノゲン上昇 1%未満
尿中NAG上昇 1〜5%未満
尿中β2マイクログロブリン上昇 5%以上
尿潜血陽性化 1〜5%未満
尿糖陽性化 1〜5%未満
尿蛋白陽性化 1%未満
尿酸上昇 1〜5%未満
尿閉 頻度不明
徐脈 1〜5%未満
熱感 1%未満
発熱 5%以上
白血球数上昇 5%以上
直腸周囲膿瘍 頻度不明
直腸炎 頻度不明
総ビリルビン上昇 1〜5%未満
肛門不快感 1%未満
肛門出血 頻度不明
肛門周囲炎 頻度不明
肛門周囲膿瘍 頻度不明
肛門浮腫 頻度不明
肛門縁腫脹 頻度不明
胃潰瘍 1%未満
蕁麻疹 1%未満
血圧低下 1〜5%未満
血尿 1%未満
血栓形成性痔核 1〜5%未満
血清カリウム上昇 1%未満
赤血球数低下 1%未満
頚肩痛 1%未満
頭痛 1〜5%未満
頻尿 1%未満
食欲不振 1〜5%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

本剤を痔核に投与すると、投与局所に壊死を伴う急性炎症が惹起され、その後、組織修復過程である肉芽形成及び線維化を経て、痔核は硬化退縮する。また、急性炎症により投与局所では血管透過性が亢進し、局所血液が濃縮され、血流は停滞・停止する。この血流量減少作用により、痔核の出血症状が早期に改善される。 本剤の炎症惹起作用及び組織硬化作用は硫酸アルミニウムカリウム水和物による。また、タンニン酸は、硫酸アルミニウムカリウム水和物による急性期の白血球浸潤を抑制し、過度の急性炎症反応を制御することにより組織障害を防ぐ。

18.2 炎症惹起作用

本剤及び硫酸アルミニウムカリウム水和物の皮下投与は、血管透過性亢進作用(投与直後、マウス)、白血球浸潤促進作用(投与3日後、ラット)及び肉芽形成作用(投与14日後、ラット)を示した4)。

18.3 肉芽形成及び線維化による組織硬化・縮小

本剤をラットの背部皮下に投与し、投与部位の組織変化を経時的に検討した。その結果、投与後早期に壊死を伴う炎症が発現し、投与7日後頃から、その修復像として類上皮肉芽腫が発現し線維化が認められた。類上皮肉芽腫は投与14日後をピークに増大し、線維化のピークは投与28日後であった。類上皮肉芽腫は線維化の進行とともに投与56日後にかけて縮小した4)。

18.4 血流量減少作用

  1. 18.4.1本剤をラットの腹部皮下に投与し、投与部位における血流量減少作用を検討した結果、投与部位において投与5分後から皮膚血流量を減少させ、その作用は投与120分後まで持続した5)。

  2. 18.4.2本剤をラット腸間膜表面に灌流すると、血管透過性亢進及び静脈血液のヘマトクリット値上昇を呈するとともに、血流が停止した5)。

18.5 タンニン酸の炎症抑制作用

タンニン酸の配合は、ラット皮下投与部位における硫酸アルミニウムカリウム水和物による白血球浸潤促進作用(投与3日後)を抑制したが、肉芽形成作用(投与14日後)は抑制しなかった4)。

薬物動態

16.1 血中濃度

本剤を、局所麻酔剤を用いて硫酸アルミニウムカリウム水和物として2%溶液に調製し、内痔核患者に投与したときの血清中アルミニウムの薬物動態パラメータは以下のとおりである1),2)。

(平均値±標準偏差)
被験者a) 投与液量b)
(mL)
投与量c)
(mg/kg)
tmax
(h)
Cmax
(μg/mL)
t1/2(24-168h)
(h)
AUC0-24h
(μg・h/mL)
AUC0-∞
(μg・h/mL)
非高齢者d) 33.5
(27~42)
10.7
(8.4~13.7)
0.71±0.37 1.80±0.51 49.7±9.9f) 13.8±3.7 30.1±5.1f)
高齢者e) 37.8
(34~41)
13.1
(10.4~16.3)
0.25±0.00 2.09±0.33 48.8±5.1 16.0±2.6 33.7±5.9

( ):最小値~最大値 a)非高齢者(n=15):平均年齢49.3歳(30~64歳) 高齢者(n=6):平均年齢70.0歳(69~74歳) b)硫酸アルミニウムカリウム水和物として2%に調製した溶液の投与量 c)硫酸アルミニウムカリウム水和物の量 d)1%プロカイン塩酸塩注射液を用いて調製 e)0.5%リドカイン注射液を用いて調製 f)n=14(1例において7日後の採血を実施しなかった)

本剤の2%溶液を内痔核患者に投与した際の血清中アルミニウム濃度推移 [平均値±標準偏差, 非高齢者の投与終了後168時間はn=14]

16.2 吸収

本剤を痔核内に投与後、アルミニウムは血中に移行し、血清中濃度が一過性に上昇しその後減少するが、タンニン酸はほとんど血中に移行しないと考えられる。

16.3 分布

  1. 16.3.1蛋白結合率

ヒト血清に硫酸アルミニウムカリウム水和物(最終アルミニウム濃度:1、5、20mg/mL)を添加し、アルミニウムの血清蛋白結合率を限外ろ過法により測定した結果、各濃度における結合率はそれぞれ91.6±2.6、94.9±0.8、99.1±0.3%(平均値±標準偏差、n=4)であった(in vitro)。

16.5 排泄

非高齢者において、投与後96時間までの尿中排泄率はアルミニウムが56.6±11.1%、タンニン酸が8.4±6.7%であった。また高齢者において、投与後96時間までのアルミニウムの尿中排泄率は48.7±4.8%であった。