B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎ウイルスの増殖抑制
【警告】
本剤を含むB型肝炎に対する治療を終了した患者で、肝炎の急性増悪が報告されている。 そのため、B型肝炎に対する治療を終了する場合には、投与終了後少なくとも数ヵ月間は患者の臨床症状と臨床検査値の観察を十分に行うこと。経過に応じて、B型肝炎に対する再治療が必要となることもある。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能・効果
用法・用量
本剤は、空腹時(食後2時間以降かつ次の食事の2時間以上前)に経口投与する。 通常、成人にはエンテカビルとして0.5mgを1日1回経口投与する。 なお、ラミブジン不応(ラミブジン投与中にB型肝炎ウイルス血症が認められる又はラミブジン耐性変異ウイルスを有するなど)患者には、エンテカビルとして1mgを1日1回経口投与することが推奨される。
使用上の注意
-
8.1本剤によるB型慢性肝疾患の治療は、投与中のみでなく投与終了後も十分な経過観察が必要であり、経過に応じて適切な処置が必要なため、B型慢性肝疾患の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとで使用すること。
-
8.2本剤は、投与中止により肝機能の悪化もしくは肝炎の重症化を起こすことがある。本内容を患者に説明し、患者が自己の判断で投与を中止しないように十分指導すること。
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8.3本剤の投与終了により肝炎の悪化が認められることがあるので、本剤の投与を終了する場合には、投与終了後少なくとも数ヵ月間は患者の臨床症状と臨床検査値の観察を十分に行うこと。
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8.4本剤の投与中は定期的に肝機能検査を行うなど十分注意すること。
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8.5本剤による治療により他者へのHBV感染が避けられることは証明されていない旨を患者に説明すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1HIV/HBV重複感染患者
抗HIV療法を併用していないHIV/HBVの重複感染患者には本剤の投与を避けることが望ましい。抗HIV療法を受けていないHIV/HBVの重複感染患者のB型肝炎に対して本剤を投与した場合、薬剤耐性HIVが出現する可能性がある。
9.2 腎機能障害患者
高い血中濃度が持続するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
- 9.3.1肝移植患者
シクロスポリン又はタクロリムス等の腎機能を抑制する可能性のある免疫抑制剤が投与されている肝移植患者では、本剤の投与開始前と投与中に腎機能の観察を十分に行うこと。 肝移植患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした国内臨床試験は実施していない。
- 9.3.2非代償性肝硬変患者
非代償性肝硬変患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした国内臨床試験は実施していない。
9.4 生殖能を有する者
妊娠の可能性がある女性に対しては避妊するよう指導すること。胎児の発育に影響を及ぼすおそれがある。
9.5 妊婦
-
9.5.1妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。生殖発生毒性試験において、ラットでは母動物及び胚・胎児に毒性が認められ、ウサギでは胚・胎児のみに毒性が認められた。ラット及びウサギの曝露量は、ヒト1mg投与時の曝露量のそれぞれ180倍及び883倍に相当する。
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9.5.2新生児のHBV感染を防止するため適切な処置を行うこと。本剤が母体から新生児へのHBV感染に及ぼす影響についてはデータがない。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中に移行することが報告されている。本剤がヒトの乳汁中に分泌されるか否かは不明である。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の腎機能を定期的に観察しながら投与間隔を調節するなど慎重に投与すること。本剤は主に腎から排泄されるが、高齢者では若年者よりも腎機能が低下していることが多い。
相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)
エンテカビルは主に腎から排泄されるため、腎機能障害作用のある薬剤や尿細管分泌により排泄される薬剤と併用した場合には、本剤又は併用薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。このような薬剤と併用する場合には副作用の発現に注意し、患者の状態を十分に観察すること。
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 |
|---|---|
| ALT上昇 | 頻度不明 |
| AST上昇 | 頻度不明 |
| BUN上昇 | 頻度不明 |
| リパーゼ増加 | 頻度不明 |
| 上腹部痛 | 頻度不明 |
| 下痢 | 頻度不明 |
| 便秘 | 頻度不明 |
| 倦怠感 | 頻度不明 |
| 好酸球数増加 | 頻度不明 |
| 尿中白血球陽性 | 頻度不明 |
| 尿潜血陽性 | 頻度不明 |
| 悪心 | 頻度不明 |
| 浮動性めまい | 頻度不明 |
| 発疹 | 頻度不明 |
| 白血球数減少 | 頻度不明 |
| 筋硬直 | 頻度不明 |
| 脱毛 | 頻度不明 |
| 血中アミラーゼ増加 | 頻度不明 |
| 血中ビリルビン増加 | 頻度不明 |
| 血中ブドウ糖増加 | 頻度不明 |
| 血中乳酸増加 | 頻度不明 |
| 頭痛 | 頻度不明 |
| 鼻咽頭炎 | 頻度不明 |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
エンテカビルはグアノシンヌクレオシド類縁体であり、HBV DNAポリメラーゼに対して強力かつ選択的な阻害活性(Ki値:0.0012μM)を有する。エンテカビルは細胞内でリン酸化され、活性を有するエンテカビル三リン酸に変化する。エンテカビル三リン酸は、天然基質デオキシグアノシン三リン酸との競合により、HBV DNAポリメラーゼの(1)プライミング、(2)mRNAからマイナス鎖DNA合成時の逆転写、及び(3)HBV DNAのプラス鎖合成の3種すべての機能活性を阻害する。エンテカビル三リン酸の細胞性DNAポリメラーゼα、β、δ及びε並びにミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対する阻害作用は弱い(Ki値:18~約160μM)18),19),20)。
18.2 抗ウイルス活性
エンテカビルはHBVをトランスフェクトしたヒト肝HepG2細胞におけるHBV DNA合成を阻害し、そのEC50値は0.004μMであった18)。 エンテカビルをウッドチャック肝炎ウイルスに慢性感染したウッドチャック21),22)及びアヒルB型肝炎ウイルスに感染したアヒルに毎日又は週1回反復投与したとき、ウイルスDNA量の著明な(4~8log10)減少が認められた。ウッドチャックを用いた長期維持投与試験では、エンテカビルを0.5mg/kg(臨床用量1mg相当)で週1回、3年間反復経口投与した結果、投与期間中のウイルスDNA量は検出限界以下で維持された(PCR法)。また、3年間の投与ではいずれの動物においてもHBV DNAポリメラーゼに耐性を示す変化は認められなかった22)。
18.3 薬剤耐性
- 18.3.1In vitro試験
HBV DNAポリメラーゼのアミノ酸残基に特徴的な変異(rtM204V/I、rtL180M)を有するラミブジン耐性HBVでは、エンテカビルに対する感受性が野生型に比較して1/8以下に低下したが、1mg投与時の血漿中エンテカビル濃度を反映する細胞外濃度において、細胞内エンテカビル三リン酸はラミブジン耐性型HBV DNAポリメラーゼ活性を十分に阻害する濃度を超えているものと考えられた23),24)。アデホビルの耐性変異であるrtN236Tをコードした組換えウイルスにおいては、エンテカビルに対する感受性が維持されていた25)。エンテカビル治療が無効であったラミブジン不応患者から得られたHBV分離株はin vitroでアデホビルに対する感受性を有していたが、ラミブジンに対する感受性は認められなかった24)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1健康成人
エンテカビル0.5mg及び1mgを健康成人男子に経口投与したとき、エンテカビルは速やかに吸収され、投与後0.5~1.5時間で最高血漿中濃度(Cmax)に到達した。エンテカビルを1日1回反復投与した時の定常状態におけるCmaxと血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)は線形性を示した。エンテカビルの薬物動態は投与後6~10日で定常状態に到達し、累積係数は約2であった。定常状態におけるCmax及び血漿中トラフ濃度(Cmin)は0.5mg投与時で6.4及び0.3ng/mL、1mg投与時で11.6及び0.5ng/mLであった1)(表1)。
| 薬物動態パラメータ | 投与量 | |
|---|---|---|
| 0.5mg(n=6) | 1mg(n=6) | |
| Cmax(ng/mL)a | 6.4(34.8%) | 11.6(19.7%) |
| AUC0-24(ng・hr/mL)a | 17.8(7.4%) | 35.4(8.1%) |
| Tmax(hr)b | 0.63(0.50, 1.00) | 0.75(0.50, 1.50) |
| t1/2(hr)c | 96.6(20.3) | 83.3(19.0) |
| Cltot/F(mL/min)a | 468.7(7.4%) | 470.5(8.1%) |
| ClR(mL/min)a | 372.1(17.1%) | 366.4(8.8%) |
| UR(%)c | 79.8(8.6) | 78.0(3.8) |
| 累積係数c | 1.8(0.1) | 1.5(0.2) |
| Cmin(ng/mL)c | 0.3(0.03) | 0.5(0.06) |
ClR=腎クリアランス、Cltot/F=みかけの全身クリアランス、UR=24時間尿中排泄率
a 幾何平均値(変動係数%)
b 中央値(最小、最大)
c 算術平均値(標準偏差)
- 16.1.2B型慢性肝炎患者
国内試験におけるB型慢性肝炎患者(n=142)の血漿中濃度成績を用いて母集団薬物動態解析を実施した結果、全身クリアランス(Cltot/F)の平均値(標準偏差)は投与量が0.5mg及び1mgでそれぞれ442.4(81.3)mL/min及び447.7(79.3)mL/min、AUC0-24はそれぞれ19.6(4.1)ng・hr/mL及び38.3(6.5)ng・hr/mLで、健康成人と同程度であった2)。
- 16.1.3生物学的同等性試験
- 〈エンテカビル錠0.5mg「YD」〉
エンテカビル錠0.5mg「YD」とバラクルード錠0.5mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(エンテカビルとして0.5mg)健康成人男子20名に絶食単回経口投与して血漿中の未変化体濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された3)。
| 判定パラメータ | 参考パラメータ | |||
|---|---|---|---|---|
| AUC0-72 (ng・hr/mL) |
Cmax (ng/mL) |
Tmax (hr) |
t1/2 (hr) |
|
| エンテカビル錠0.5mg「YD」 | 14.32±2.32 | 5.02±1.05 | 0.8±0.4 | 40.5±8.1 |
| バラクルード錠0.5mg | 14.40±1.99 | 4.91±1.35 | 0.8±0.4 | 42.5±7.0 |
(平均値±標準偏差、n=20)
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
- 16.2.1食事の影響
エンテカビルを食事とともに投与すると吸収率が低下する。エンテカビル0.5mgを標準高脂肪食(945kcal、脂肪54.6g)又は軽食(379kcal、脂肪8.2g)とともに経口投与したとき、吸収(Tmax)はわずかに遅延し(食事とともに投与:1~1.5時間、絶食時:0.75時間)、Cmaxは44~46%、AUCは18~20%低下した4)(外国人データ)。
16.3 分布
経口投与後におけるエンテカビルのみかけの分布容積は体内の総水分量より大きいことから、エンテカビルの多くは組織へ移行し、広範囲に分布すると考えられた。In vitroにおけるヒト血清蛋白結合率は約13%であった5)。
16.4 代謝
エンテカビルはチトクロームP450(CYP450)の基質ではなく、またエンテカビルによるCYP450の阻害や誘導の作用も観察されなかった。ヒトで観察される血中濃度の約10,000倍以上の濃度でCYP1A2、2C9、2C19、2D6、3A4、2B6及び2E1に対する阻害は認められず、約340倍以上の濃度で1A2、2C9、2C19、3A4、3A5及び2B6の誘導は認められなかった。代謝物としてはヒト(外国人)と動物(ラット、イヌ、サル)でわずかにグルクロン酸抱合体と硫酸抱合体が認められた6)。
16.5 排泄
エンテカビルは主に糸球体ろ過と尿細管分泌により腎から排泄される。日本人の健康成人男子にエンテカビル0.5mg及び1mgを1日1回反復経口投与した時の定常状態における未変化体の尿中排泄率(%UR)は78~80%で、腎クリアランス(ClR)は366~372mL/minであり、用量に依存しなかった。終末消失相半減期は0.5mg及び1mgでそれぞれ平均96.6及び83.3時間であった1)。
16.6 特定の背景を有する患者
国内試験におけるB型慢性肝炎患者の血漿中濃度成績を用いて母集団薬物動態解析を実施した結果、エンテカビルの全身クリアランスに対して腎機能が有意(p<0.001)に影響する因子であった。性別(男性116例、女性26例)、肝機能、年齢(24~68歳)との関連性は認められなかった2)。
- 16.6.1腎機能障害患者における薬物動態
エンテカビル1mgを腎機能障害患者に単回投与した時の薬物動態パラメータを表3に示す。腎機能の低下に応じてエンテカビルの曝露量は増加した。クレアチニンクリアランスが50mL/min未満の患者には、エンテカビルの投与間隔を調節することが推奨される7)(外国人データ)。
| 腎機能 クレアチニンクリアランス (mL/min) |
正常 >80 (n=6) |
軽度 >50~80 (n=6) |
中等度 30~50 (n=6) |
重度 <30 (n=6) |
重度 HDa (n=6) |
重度 CAPDa (n=4) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Cmax (ng/mL) |
平均値 (変動係数%) |
8.1 (30.7%) |
10.4 (37.2%) |
10.5 (22.7%) |
15.3 (33.8%) |
15.4 (56.4%) |
16.6 (29.7%) |
| AUC0-T (ng・hr/mL) |
平均値 (変動係数%) |
27.9 (25.6%) |
51.5 (22.8%) |
69.5 (22.7%) |
145.7 (31.5%) |
233.9 (28.4%) |
221.8 (11.6%) |
| ClR (mL/min) |
平均値 (標準偏差) |
383.2 (101.8) |
197.9 (78.1) |
135.6 (31.6) |
40.3 (10.1) |
NA | NA |
| Cltot/F (mL/min) |
平均値 (標準偏差) |
588.1 (153.7) |
309.2 (62.6) |
226.3 (60.1) |
100.6 (29.1) |
50.6 (16.5) |
35.7 (19.6) |
ClR=腎クリアランス、Cltot/F=みかけの全身クリアランス、HD=血液透析、CAPD=持続携行式腹膜透析
a 4時間のHDで投与量の約13%、CAPDで投与量の約0.3%が除去された。
NA:データなし
- 16.6.2肝機能障害患者における薬物動態
中等度から重度の肝機能障害患者にエンテカビル1mgを単回投与した時の薬物動態は肝機能が正常な成人と同様であり、肝機能障害患者において、用法・用量の調節の必要はないと考えられる8)(外国人データ)。
- 16.6.3肝移植患者における薬物動態
小規模のパイロット試験では、肝移植後シクロスポリン(n=5)又はタクロリムス(n=4)を常時服用しているHBV感染患者のエンテカビルの曝露量は腎機能が正常である成人の約2倍であった。曝露量の増加は肝移植患者の腎機能の低下によるものと考えられた9)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
エンテカビルは主に腎から排泄されるので、腎機能障害作用のある薬剤や尿細管分泌が競合するような薬剤と併用した場合には、エンテカビル又は併用薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。ラミブジン、アデホビルピボキシル又はフマル酸テノホビルジソプロキシルとエンテカビルを併用した場合、相互作用は認められなかった10)(外国人データ)。