Clinical snapshot

エリル点滴静注液30mg

ファスジル塩酸塩水和物

添付文書改訂 2026年04月01日

【警告】

本剤の臨床試験において、頭蓋内出血(脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳室内出血、頭皮下血腫、くも膜下出血)の発現が認められている。本剤の投与は緊急時に十分対応できる医療施設において行うこと。また、本剤の投与に際しては、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1出血している患者(頭蓋内出血)

  2. 2.2頭蓋内出血の可能性のある患者(出血した動脈瘤に対する十分な止血処置を術中に施すことができなかった患者)

  3. 2.3低血圧の患者[本剤の投与により低血圧があらわれることがある。]

効能・効果

くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善

用法・用量

通常、成人には、塩酸ファスジルとして1回30mgを50~100mLの電解質液または糖液で希釈し、1日2~3回、約30分間かけて点滴静注する。 本剤の投与は、くも膜下出血術後早期に開始し、2週間投与することが望ましい。

使用上の注意

  1. 8.1本剤の投与に際しては、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、頭蓋内出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

  2. 8.2本剤の投与により低血圧があらわれることがあるので、血圧の変動に注意し、投与速度に注意するなど慎重に投与すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1術前から糖尿病を合併している患者、術中所見で主幹動脈に動脈硬化がみられた患者

頭蓋内出血を起こした例がある。

  1. 9.1.2重篤な意識障害のある患者

  2. 9.1.3くも膜下出血に重症の脳血管障害(モヤモヤ病、巨大脳動脈瘤など)を合併している患者

9.2 腎機能障害患者

低血圧が観察された場合には減量(例えば1回10mg)すること。排泄が遅延して、血中濃度が持続する可能性があり、低血圧が認められることがある。

9.3 肝機能障害患者

代謝が遅延して、血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれる可能性がある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。24時間持続静脈内投与によりラットに12日間投与した器官形成期投与試験で、奇形(腹部閉鎖障害)を有する仔がみられたとの報告がある。また、24時間持続静脈内投与によりウサギに14日間投与した器官形成期投与試験で、奇形(頭部神経管障害、腹部閉鎖障害)を有する仔が認められたとの報告がある。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で本剤の乳汁移行が認められている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

腎機能が低下している可能性があるので、減量する(例えば1回10mg)など注意すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。なお、臨床試験及び市販後調査では、65歳以上の高齢者での副作用発現率は11.96%(1,798例中215例)であった。

  1. 9.8.170歳以上の高齢者

機能予後の改善がみられない可能性があり、有効性が確立されていない。

相互作用

記載なし

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度
ALP 頻度不明
ALT 頻度不明
LDHの上昇等) 頻度不明
クレアチニンの上昇等) 頻度不明
低血圧 頻度不明
呼吸抑制 頻度不明
嘔吐 頻度不明
嘔気 頻度不明
多尿 頻度不明
意識レベル低下 頻度不明
排尿困難 頻度不明
発熱 頻度不明
発疹等の過敏症状 頻度不明
白血球減少 頻度不明
肝機能異常(AST 頻度不明
腎機能異常(BUN 頻度不明
膨満感 頻度不明
血小板減少 頻度不明
貧血 頻度不明
頭痛 頻度不明
顔面潮紅 頻度不明
黄疸 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

蛋白リン酸化酵素であるRhoキナーゼの阻害作用によるものと考えられている。Rhoキナーゼは、ミオシンホスファターゼの不活化(リン酸化)を促進することで、それに続くミオシン軽鎖の不活化(脱リン酸化)を阻害する。Rhoキナーゼは、血管の収縮、炎症性細胞の活性化、血管内皮細胞の損傷など、くも膜下出血に伴う脳血管攣縮及び脳虚血障害発生の原因となっている生体内での諸反応に関与している。

  1. 18.1.1ファスジルは、Rhoキナーゼを阻害することで、ミオシンホスファターゼの不活化(リン酸化)を阻害し、それに続くミオシン軽鎖の不活化(脱リン酸化)を促進することで、ニワトリ及びウサギの摘出平滑筋、さらに平滑筋細胞の弛緩作用を示した9),10),11)(in vitro)。

  2. 18.1.2ヒト好中球及び単球の遊走を抑制した12),13)(in vitro)。

  3. 18.1.3ヒト好中球の活性酸素産生を抑制した14)(in vitro)。

18.2 脳血管攣縮の予防及び緩解作用

イヌ遅発性脳血管攣縮モデルにおいて、攣縮を予防15)及び緩解16)した。

18.3 脳循環改善作用

  1. 18.3.1イヌ遅発性脳血管攣縮モデルにおいて、大脳皮質血流を改善した17)。

  2. 18.3.2ラット脳虚血モデルにおいて、血液粘度を改善した18)。

  3. 18.3.3ヒト血管内皮細胞において、低酸素負荷による内皮細胞障害を改善した19)(in vitro)。

18.4 好中球浸潤抑制作用

イヌ遅発性脳血管攣縮モデルにおいて、くも膜下腔への好中球浸潤を抑制した20)。

18.5 脳梗塞巣発生抑制作用

  1. 18.5.1スナネズミ脳虚血モデルにおいて、遅発性神経細胞死を抑制した21)。

  2. 18.5.2ラット脳虚血モデルにおいて、脳浮腫及び脳梗塞巣の発生を抑制し、神経症状を改善した22)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1単回投与

  2. (1)健康成人に塩酸ファスジル0.4mg/kgを単回30分間静脈内持続投与したときの血漿中未変化体濃度は、投与終了時に最高値に達し、速やかに減衰した。消失半減期は、約16分であった1)。

  3. (2)ラット及びサルに、14C標識塩酸ファスジルを単回静脈内投与したときの血液中放射能濃度は、投与終了直後より速やかに減少し、消失半減期はラットで約1時間2)、サルでは1.4時間3)であった。

  4. 16.1.2反復投与

  5. (1)くも膜下出血術後患者に、塩酸ファスジル30mgを1日3回、14日間反復点滴静注したときの血漿中濃度推移は、健康成人に類似していた4)。

  6. (2)ラットに14C標識塩酸ファスジルを1日1回反復静脈内投与したとき、血漿中放射能濃度は21回投与時には定常状態に近いと考えられた5)。

16.3 分布

  1. 16.3.1ラット及びサルに14C標識塩酸ファスジルを単回静脈内投与したとき、投与後速やかに放射能は各組織に移行した。特に腎臓、肝臓に高濃度に分布し、その消失は血漿中濃度に比べ緩徐であった。また脳内への移行が認められた2),3)。サルにおいては、ぶどう膜及び皮膚にも分布し、その消失は緩徐であった3)。

  2. 16.3.2ラットに14C標識塩酸ファスジルを反復静脈内投与したとき、組織内放射脳の濃度は投与回数に伴い上昇したが、21回投与時には定常状態に近いと判断された。また、反復投与後の組織からの消失は血漿中濃度に比べ緩徐であり、単回投与の場合に比べ遅延の傾向が認められた5)。

  3. 16.3.3妊娠中のラットに14C標識塩酸ファスジルを単回静脈内投与したとき、胎児への放射能の移行が認められたが、消失は速やかであった2)。

  4. 16.3.4授乳中のラットに14C標識塩酸ファスジルを単回静脈内投与したとき、乳汁への放射能の移行が認められたが、消失は速やかであった2)。

16.4 代謝

  1. 16.4.1健康成人における塩酸ファスジルの主代謝物は、イソキノリン骨格の1位の水酸化体及びその抱合体であった1)。

  2. 16.4.2ラット及びサルにおける主代謝物は、イソキノリン骨格の1位の水酸化体及びその抱合体であり、主たる代謝組織は肝臓であった2),3)。

16.5 排泄

  1. 16.5.1健康成人における未変化体及び代謝物を合わせた投与後24時間までの尿中累積排泄率は、投与量の67%であった1)。

  2. 16.5.2ラット及びサルに14C標識塩酸ファスジルを単回静脈内投与したとき、ラット及びサルともに排泄は速やかであり、ラットでは尿及び胆汁に同程度に排泄され2)、サルでは主に尿に排泄された3)。

  3. 16.5.3ラットに14C標識塩酸ファスジルを1日1回反復静脈内投与したとき、尿糞中排泄における反復投与の影響は認められなかった5)。