2型糖尿病 ただし、シタグリプチンリン酸塩水和物及びイプラグリフロジン L-プロリンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
-
2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]
-
2.3 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]
効能・効果
用法・用量
通常、成人には1日1回1錠(シタグリプチン/イプラグリフロジンとして50mg/50mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。
使用上の注意
-
8.1 本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。,
-
8.2 本剤投与中は、血糖値等を定期的に検査するとともに、経過を十分に観察し、常に投与継続の必要性について注意を払うこと。本剤を3ヵ月投与しても効果が不十分な場合、より適切と考えられる治療への変更を考慮すること。
-
8.3 イプラグリフロジンにより血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあり、また、腎機能障害のある患者ではシタグリプチンの排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある。したがって、腎機能を定期的に検査するとともに、腎機能障害患者における治療にあたっては経過を十分に観察すること。,,,,,
-
8.4 シタグリプチンにより急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。
-
8.5 イプラグリフロジンにより尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること。,
-
8.6 イプラグリフロジンの利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行うこと。脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者や利尿薬併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。,,,
-
8.7 イプラグリフロジンの作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により、血糖コントロールが良好であっても脂肪酸代謝が亢進し、ケトーシスがあらわれ、ケトアシドーシスに至ることがある。
-
8.7.1 著しい血糖の上昇を伴わない場合があるため、以下の点に留意すること。
(1)悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等の症状が認められた場合には、血中又は尿中ケトン体測定を含む検査を実施すること。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
(2)特に、インスリン分泌能の低下、インスリン製剤の減量や中止、過度な糖質摂取制限、食事摂取不良、感染症、脱水を伴う場合にはケトアシドーシスを発現しやすいので、観察を十分に行うこと。
(3)患者に対し、以下の点を指導すること。
-
ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等)。
-
ケトアシドーシスの症状が認められた場合には直ちに医療機関を受診すること。
-
血糖値が高値でなくともケトアシドーシスが発現しうること。
-
8.7.2 *イプラグリフロジンを含むSGLT2阻害剤の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。
-
8.8 イプラグリフロジンは、尿中グルコース排泄促進作用を有する。排尿困難、無尿、乏尿あるいは尿閉の症状を呈する患者においては、その治療を優先するとともに他剤での治療を考慮すること。
-
8.9 イプラグリフロジンによる体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意すること。
-
8.10 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。
-
8.11 本剤と他の糖尿病用薬の併用における安全性は検討されていない。
-
8.12 シタグリプチンとGLP-1受容体作動薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
-
脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
-
栄養不良状態、るいそう、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態
-
激しい筋肉運動
-
過度のアルコール摂取者
-
高齢者
,
- 9.1.2 **腹部手術の既往又はイレウスの既往のある患者
シタグリプチンにより腸閉塞を含むイレウスを起こすおそれがある。
- 9.1.3 尿路感染、性器感染のある患者
イプラグリフロジンにより症状を悪化させるおそれがある。,
- 9.1.4 脱水を起こしやすい患者(血糖コントロールが極めて不良の患者、高齢者、利尿薬併用患者等)
イプラグリフロジンの利尿作用により脱水を起こすおそれがある。,,
9.2 腎機能障害患者
- 9.2.1 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者
投与しないこと。イプラグリフロジンの効果が期待できず、また、これらの患者に対するシタグリプチンの最大投与量は25mg 1日1回である。,,
- 9.2.2 中等度の腎機能障害のある患者
投与の必要性を慎重に判断すること。イプラグリフロジンの効果が十分に得られない可能性がある。,,,
9.3 肝機能障害患者
- 9.3.1 重度の肝機能障害のある患者
シタグリプチン治療中の患者にイプラグリフロジンを併用する場合は、本剤を使用せず、イプラグリフロジンの低用量から投与を開始するなど慎重に投与すること。重度の肝機能障害のある患者を対象にしたイプラグリフロジンの臨床試験を実施していない。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性にはイプラグリフロジンを含む本剤を投与せず、インスリン製剤等を使用すること。イプラグリフロジンの類薬の動物実験(ラット)でヒトの妊娠中期及び後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂及び尿細管の拡張が報告されている。イプラグリフロジンの動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている1)。なお、シタグリプチンの動物実験(ラット)で1,000mg/kg/日(シタグリプチンの臨床での最大投与量100mg/日の約100倍の曝露量に相当する)経口投与により、胎児肋骨の欠損、形成不全及び波状肋骨の発現率の軽度増加が認められたとの報告がある。
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)でシタグリプチンの乳汁中への移行が報告されている。また、動物実験(ラット)でイプラグリフロジンの乳汁中への移行及び出生児の体重増加抑制が報告されている1),2)。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下しているため、腎機能が低下していることが多く、また脱水症状(口渇等)の認知が遅れるなどのおそれがある。,,
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 | 症状・説明 |
|---|---|---|
| ALT増加 | 頻度不明 | — |
| AST増加 | 頻度不明 | — |
| CK増加 | 頻度不明 | — |
| RS3PE症候群 | 頻度不明 | — |
| γ-GTP増加 | 頻度不明 | — |
| ケトーシス | 頻度不明 | — |
| じん麻疹注1) | 頻度不明 | — |
| そう痒症注1) | 頻度不明 | — |
| びらん性胃炎 | 頻度不明 | — |
| ヘマトクリット減少 | 頻度不明 | — |
| ヘモグロビン減少 | 頻度不明 | — |
| 上室性期外収縮 | 頻度不明 | — |
| 上気道の炎症 | 頻度不明 | — |
| 上気道感染 | 頻度不明 | — |
| 上腹部痛 | 頻度不明 | — |
| 下痢 | 頻度不明 | — |
| 低比重リポ蛋白増加 | 頻度不明 | — |
| 体位性めまい | 頻度不明 | — |
| 体重増加 | 頻度不明 | — |
| 体重減少 | 頻度不明 | — |
| 便秘 | 1〜5%未満 | — |
| 倦怠感 | 頻度不明 | — |
| 冷汗 | 頻度不明 | — |
| 動悸 | 頻度不明 | — |
| 口内炎 | 頻度不明 | — |
| 口渇 | 1〜5%未満 | — |
| 嘔吐 | 頻度不明 | — |
| 四肢痛 | 頻度不明 | — |
| 回転性めまい | 頻度不明 | — |
| 外陰部膣カンジダ症 | 頻度不明 | — |
| 多尿 | 頻度不明 | — |
| 多汗症 | 頻度不明 | — |
| 尿中α1ミクログロブリン増加 | 頻度不明 | — |
| 尿中β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加 | 頻度不明 | — |
| 尿中β2ミクログロブリン増加 | 頻度不明 | — |
| 尿中アルブミン/クレアチニン比増加 | 頻度不明 | — |
| 尿中ケトン体陽性 | 頻度不明 | — |
| 尿中蛋白陽性 | 頻度不明 | — |
| 尿潜血陽性 | 頻度不明 | — |
| 尿管結石 | 頻度不明 | — |
| 尿量増加 | 頻度不明 | — |
| 心室性期外収縮 | 頻度不明 | — |
| 心電図T波振幅減少 | 頻度不明 | — |
| 悪心 | 頻度不明 | — |
| 感覚鈍麻 | 頻度不明 | — |
| 歯周炎 | 頻度不明 | — |
| 浮動性めまい | 頻度不明 | — |
| 浮腫 | 頻度不明 | — |
| 湿疹注1) | 頻度不明 | — |
| 発疹注1) | 頻度不明 | — |
| 白血球数増加 | 頻度不明 | — |
| 皮膚血管炎 | 頻度不明 | — |
| 眼瞼浮腫 | 頻度不明 | — |
| 空腹 | 頻度不明 | — |
| 筋痙縮 | 頻度不明 | — |
| 筋肉痛 | 頻度不明 | — |
| 糖尿病性ニューロパチー | 頻度不明 | — |
| 糖尿病網膜症 | 頻度不明 | — |
| 糖尿病網膜症の悪化 | 頻度不明 | — |
| 細菌尿 | 頻度不明 | — |
| 肝機能異常 | 頻度不明 | — |
| 胃ポリープ | 頻度不明 | — |
| 胃炎 | 頻度不明 | — |
| 胃食道逆流性疾患 | 頻度不明 | — |
| 背部痛 | 頻度不明 | — |
| 脂肪肝 | 頻度不明 | — |
| 脱力感 | 頻度不明 | — |
| 腎結石症 | 頻度不明 | — |
| 腹痛 | 頻度不明 | — |
| 腹部不快感(胃不快感を含む) | 頻度不明 | — |
| 腹部膨満 | 頻度不明 | — |
| 膀胱炎 | 頻度不明 | — |
| 萎縮性胃炎 | 頻度不明 | — |
| 薬疹注1) | 頻度不明 | — |
| 血中LDH増加 | 頻度不明 | — |
| 血中クレアチニン増加 | 頻度不明 | — |
| 血中ケトン体増加 | 頻度不明 | — |
| 血中コレステロール増加 | 頻度不明 | — |
| 血中トリグリセリド増加 | 頻度不明 | — |
| 血中ビリルビン増加 | 頻度不明 | — |
| 血中ブドウ糖減少 | 頻度不明 | — |
| 血中尿素増加 | 頻度不明 | — |
| 血中尿酸増加 | 頻度不明 | — |
| 血管性浮腫 | 頻度不明 | — |
| 貧血 | 頻度不明 | — |
| 赤血球数減少 | 頻度不明 | — |
| 関節痛 | 頻度不明 | — |
| 陰部そう痒症 | 頻度不明 | — |
| 頭痛 | 頻度不明 | — |
| 頻尿 | 5%以上 | — |
| 顔面浮腫 | 頻度不明 | — |
| 高血圧 | 頻度不明 | — |
| 鼓腸 | 頻度不明 | — |
| 鼻咽頭炎 | 頻度不明 | — |
| 齲歯 | 頻度不明 | — |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
- シタグリプチン
インクレチンであるglucagon-like peptide 1(GLP-1)及びglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)は、グルコース恒常性の維持にかかわるホルモンである。シタグリプチンは、DPP-4酵素を阻害し、インクレチンのDPP-4による分解を抑制する。活性型インクレチン濃度を上昇させることにより、血糖値依存的にインスリン分泌促進作用並びにグルカゴン濃度低下作用を増強し血糖コントロールを改善する34),35),36)。
- イプラグリフロジン
Na+/グルコース共輸送担体(SGLT:Na+-glucose cotransporter)は、Na+の濃度勾配を駆動力としてグルコースを細胞内へ能動輸送するトランスポーターである。ヒトにおけるSGLT1とSGLT2の機能について、消化管におけるグルコース吸収はSGLT1が、腎近位尿細管におけるグルコース再吸収はSGLT2が、それぞれ主たる役割を担っていることが明らかになっている37)。イプラグリフロジンは腎近位尿細管に発現するSGLT2を阻害し、血液中の過剰なグルコースを体外に排出することで血糖降下作用を発揮する。
18.2 薬理作用
- シタグリプチン
- 18.2.1 ヒトDPP-4阻害作用
シタグリプチンは、ヒトDPP-4(組換え体、血清由来、CACO-2細胞由来)の活性を選択的に阻害する38)(in vitro試験)。
-
18.2.2 耐糖能及び糖代謝改善作用
-
(1) 2型糖尿病患者において、シタグリプチンはDPP-4活性を阻害し、血漿中の活性型GLP-1及びGIP濃度の約2倍の上昇、インスリン及びC-ペプチドの血清中濃度の上昇、グルカゴン濃度の低下、空腹時血糖値の低下、経口グルコース負荷後又は食後過血糖の抑制をもたらした36),39)。
-
(2) 正常マウスを用いたグルコース負荷試験において、シタグリプチンは血糖値の上昇を抑制する。また、このとき血漿中DPP-4の阻害及び血漿中GLP-1濃度の上昇が認められる35)。
-
(3) 高脂肪食により肥満、高血糖及び高インスリン血症を呈し、耐糖能異常を示す食餌負荷肥満マウス(DIOマウス)において、シタグリプチンはグルコース負荷による血糖値の上昇を正常マウスと同程度まで抑制する35)。
-
(4) インスリン抵抗性と高血糖を特徴とする2型糖尿病モデルのdb/dbマウスにおいて、シタグリプチンは血糖値を正常マウスと同程度まで正常化させる38)。
- イプラグリフロジン
- 18.2.3 ヒトSGLT2阻害作用
イプラグリフロジンは、ヒトSGLT2に対して選択的な阻害作用を示し、その50%阻害濃度(IC50値)は、7.38nmol/Lであった。SGLT1に対するIC50値は、1880nmol/Lであった40)。
- 18.2.4 尿中グルコース排泄促進作用及び血糖降下作用
イプラグリフロジンは、正常マウス、ニコチンアミド/ストレプトゾトシン誘発軽症2型糖尿病マウス及び2型糖尿病KK-Ayマウスにおいて単回経口投与により投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量を増加させた41)。また、イプラグリフロジンは、それらのマウスにおいて単回経口投与により液体栄養剤負荷後の血糖値上昇を抑制した42)。更に、イプラグリフロジンは2型糖尿病KK-Ayマウス並びにdb/dbマウスにおいて、1日1回28日間の反復経口投与によりHbA1c低下作用を示した43),44)。 2型糖尿病患者を対象に、イプラグリフロジン50mg、100mg又はプラセボを1日1回14日間投与したところ、イプラグリフロジン投与群において最終投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量が増加し、また、空腹時血糖値は減少した45)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1 生物学的同等性試験
健康成人男性(40例)に本剤1錠又は同用量のシタグリプチン(50mg 1錠)及びイプラグリフロジン(50mg 1錠)の単剤併用を無作為化クロスオーバー法により空腹時単回経口投与した。本剤又は併用でシタグリプチン50mg及びイプラグリフロジン50mg投与時のシタグリプチン及びイプラグリフロジンの血漿中薬物濃度推移及び薬物動態パラメータは、それぞれ図及び表1のとおりであった。本剤又は併用で同用量のシタグリプチン及びイプラグリフロジンの単剤を投与したとき、生物学的同等性が認められた。
図 本剤又は併用でシタグリプチン50mg及びイプラグリフロジン50mgを単回経口投与した際のシタグリプチン(上図)及びイプラグリフロジン(下図)の血漿中薬物濃度推移 (平均値±標準偏差、n=40)
| シタグリプチン | イプラグリフロジン | |
|---|---|---|
| 本剤 | ||
| AUC0-∞ | 3.88±0.50µM・hr | 4360±820ng・hr/mL |
| Cmax | 382±103nM | 723±188ng/mL |
| Tmax | 2.00(1.00, 6.00)hr | 1.75(0.50, 4.00)hr |
| t1/2 | 10.1±1.41hr | 13.1±3.22hr |
| 単剤併用 | ||
| AUC0-∞ | 3.93±0.56µM・hr | 4400±866ng・hr/mL |
| Cmax | 393±112nM | 709±195ng/mL |
| Tmax | 3.00(1.00, 6.00)hr | 2.00(0.50, 4.00)hr |
| t1/2 | 10.4±1.41hr | 13.3±2.96hr |
| 平均値±標準偏差、n=40Tmax:中央値(最小値, 最大値) | ||
16.2 吸収
- 16.2.1 バイオアベイラビリティ
- シタグリプチン
健康成人男女(12例)を対象に、シタグリプチン100mg単剤の空腹時2時間持続静脈内投与と空腹時単回経口投与を比較したときの絶対バイオアベイラビリティは約87%であった4)(外国人データ)。
- イプラグリフロジン
健康成人男女(14例)を対象に、イプラグリフロジン25mg単剤の空腹時1時間持続静脈内投与と100mg単剤の空腹時単回経口投与を比較したときの絶対バイオアベイラビリティは90.2%であった5)(外国人データ)。
- 16.2.2 食事の影響
健康成人男性(12例)に本剤を空腹時又は高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、シタグリプチンの空腹時投与に対する食後投与のAUC0-t及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は0.98(0.95, 1.02)及び1.04(0.88, 1.23)、イプラグリフロジンの空腹時投与に対する食後投与のAUC0-t及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は1.02(0.97, 1.08)及び0.96(0.70, 1.31)であった。
16.3 分布
- シタグリプチン
シタグリプチンの血漿蛋白結合率は38%であった(in vitro試験)。
- イプラグリフロジン
イプラグリフロジンの血漿蛋白結合率は94.6~96.5%であった。主要な結合蛋白質はアルブミンであった6),7)(in vitro試験)。
16.4 代謝
- シタグリプチン
-
16.4.1 シタグリプチンは、代謝を受けにくく、主に未変化体として尿中に排泄される。健康成人男性(6例)に14C-シタグリプチンの経口投与後、放射能の約16%がシタグリプチンの代謝物として排泄された8)。6種類の代謝物が検出されたが、微量であり8)、シタグリプチンの血漿中ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害活性に影響しないと考えられる(外国人データ)。
-
16.4.2 シタグリプチンの消失において代謝の関与は少ない。シタグリプチンの主代謝酵素はCYP3A4であり、CYP2C8も寄与することが示された(in vitro試験)。また、シタグリプチンはCYP3A4、2C8、2C9、2D6、1A2、2C19及び2B6に対する阻害作用を示さず、CYP3A4に対する誘導作用を示さなかった(in vitro試験)。
- イプラグリフロジン
-
16.4.3 イプラグリフロジンは主にグルクロン酸抱合代謝を受け、ヒト血漿中には4種のグルクロン酸抱合代謝物が認められた9)。また、1種の硫酸抱合代謝物が少量認められた。
-
16.4.4 イプラグリフロジンの主代謝酵素はUGT2B7であり、UGT2B4、1A8及び1A9も寄与することが示された10)(in vitro試験)。イプラグリフロジンの各種CYP及びUGT分子種に対する阻害作用は弱く、CYP1A2及びCYP3A4に対する誘導作用もほとんど示さなかった11),12),13)(in vitro試験)。
16.5 排泄
- シタグリプチン
-
16.5.1 健康成人男性にシタグリプチン25~100mg単剤(各6例)を空腹時単回経口投与したとき、シタグリプチンの79~88%(推測値)は尿中に未変化体として排泄され、腎クリアランスは397~464 mL/minであった14)。
-
16.5.2 健康成人男性(6例)に14C-シタグリプチンを経口投与後、1週間以内に投与放射能の約87%が尿中に、13%が糞中に排泄された8)(外国人データ)。
-
16.5.3 シタグリプチンの消失は主に腎排泄によるもので、能動的な尿細管分泌が関与する。シタグリプチンはP-糖蛋白質及び有機アニオントランスポーター(hOAT3)の基質である15)。P-糖蛋白質を介するシタグリプチンの輸送はシクロスポリンにより阻害され、hOAT3を介するシタグリプチンの取込みは、プロベネシド、イブプロフェン、フロセミド、フェノフィブリック酸、キナプリル、インダパミド及びシメチジンで阻害された(in vitro試験)。また、シタグリプチンは500µMまでの濃度では、P-糖蛋白質を介するジゴキシンの輸送を阻害しなかったが、hOAT3を介するシメチジンの取込みには弱い阻害作用を示した(IC50:160µM)(in vitro試験)。
- イプラグリフロジン
-
16.5.4 健康成人男性にイプラグリフロジン1~300mg単剤(各6例)を空腹時単回経口投与したとき、未変化体の尿中排泄率は約1%であった16)。
-
16.5.5 健康成人男性(6例)に14C-イプラグリフロジン100mgを空腹時単回経口投与したとき、投与後48時間までに投与放射能の84.4%が排泄された。投与後144時間までに投与放射能の68%が尿中に、33%が糞中に排泄された。呼気中には放射能は検出されなかった17)(外国人データ)。
-
16.5.6 イプラグリフロジンはP-糖蛋白質の基質であった18)(in vitro試験)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1 腎機能障害患者
- シタグリプチン
軽度(クレアチニンクリアランス[CrCL]:50~80mL/min/1.73m2、6例)、中等度(CrCL:30~50mL/min/1.73m2、6例)及び重度(CrCL:<30mL/min/1.73m2、6例)の腎機能障害患者、血液透析が必要な末期腎不全患者(6例)にシタグリプチン50mg単剤を空腹時単回経口投与したときのAUC0-∞の幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能を有する健康成人(CrCL:>80mL/min/1.73m2、82例)に対して、それぞれ1.61(1.43, 1.81)、2.26(2.02, 2.53)、3.77(3.37, 4.22)、4.50(4.03, 5.03)であり、腎機能障害の程度に応じて上昇した。Cmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能を有する健康成人(82例)に対して、それぞれ1.35(1.15, 1.58)、1.43(1.23, 1.67)、1.75(1.51, 2.03)、1.42(1.22, 1.65)であった。血液透析が必要な末期腎不全患者では、投与後4時間から3~4時間の血液透析により、透析液中に投与量の13.5%が除去された19)(外国人データ)。なお、腎機能障害患者を対象とした反復投与による薬物動態試験は実施されていない。,,,,
- イプラグリフロジン
軽度(eGFR:60~90mL/min/1.73m2、9例)及び中等度(eGFR:30~60mL/min/1.73m2、8例)の腎機能障害を有する2型糖尿病患者にイプラグリフロジン50mg単剤を食前単回経口投与したときのAUC0-∞の幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ0.94(0.69, 1.26)及び1.21(0.89, 1.65)であった。Cmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ1.12(0.83, 1.52)及び1.17(0.85, 1.60)であった。1日あたりの尿中グルコース排泄量のベースラインからの変化量は、正常腎機能患者で約71g、軽度腎機能障害患者で約61g、中等度腎機能障害患者で約38gであり、腎機能障害患者で低かった20)。 また、イプラグリフロジン100mg単剤を2型糖尿病を有する重度腎機能障害患者(8例)に空腹時単回経口投与したときのAUC0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、正常腎機能患者(8例)に対して、それぞれ1.47(1.12, 1.92)及び1.05(0.85, 1.31)であった。20時間あたりの尿中グルコース排泄量は、正常腎機能患者で約49g(ベースライン値:約1g)であったのに対し、重度腎機能障害患者では約12g(ベースライン値:約2g)であった20)(外国人データ)。,,,
- 16.6.2 肝機能障害患者
- シタグリプチン
中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B、スコア7~9、10例)にシタグリプチン100mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、健康成人(10例)に対するAUC0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.21(1.01, 1.46)及び1.13(0.91, 1.42)であった21)(外国人データ)。重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C、スコア9超)での臨床経験はない。
- イプラグリフロジン
中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B、スコア7~9、8例)にイプラグリフロジン100mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、健康成人(8例)に対するAUC0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.25(0.94, 1.66)及び1.27(0.93, 1.73)であった22)(外国人データ)。重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類C、スコア9超)での臨床経験はない。
- 16.6.3 高齢者
- シタグリプチン
健康な高齢者(65~80歳、16例)及び非高齢者(18~45歳、12例)男女にシタグリプチン50mg単剤を空腹時単回経口投与したとき、非高齢者に対する高齢者のAUC0-∞及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.31(1.19, 1.43)及び1.23(1.04, 1.46)であった。腎クリアランスは高齢者では非高齢者に比べて31%低下していた(外国人データ)。
- イプラグリフロジン
健康な高齢者(65歳以上、25例)及び非高齢者(18~45歳、24例)男女にイプラグリフロジン100mg単剤を食前反復経口投与したとき、非高齢男性に対する高齢男性のAUC0-24hr及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.21(1.06, 1.38)及び0.99(0.84, 1.16)であった。一方、非高齢女性に対する高齢女性のAUC0-24hr及びCmaxの幾何平均値の比(90%信頼区間)は、それぞれ1.45(1.27, 1.67)及び1.25(1.06, 1.49)であった20)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
- シタグリプチン
- 16.7.1 シタグリプチンが及ぼす影響
シタグリプチンはジゴキシンの血漿中濃度をわずかに増加させた(外国人データ)。
| 併用薬 | 併用薬の用量及び投与期間 | シタグリプチンの用量及び投与期間 | 併用薬の薬物動態パラメータ幾何平均値の比(90%信頼区間)併用/単独 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 例数 | AUC0-24hr | Cmax | |||
| ジゴキシン | 0.25mg 1日1回10日間 | 100mg 1日1回10日間 | 12 | 1.11(1.01, 1.21) | 1.18(1.05, 1.33) |
シタグリプチンは以下の薬物の薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。 イプラグリフロジン23)、メトホルミン24)、ロシグリタゾン25)、グリベンクラミド26)、シンバスタチン27)、ワルファリン28)及び経口避妊薬(ノルエチステロン/エチニルエストラジオール)29)
- 16.7.2 シタグリプチンが受ける影響
以下の薬物はシタグリプチンの薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。 イプラグリフロジン23)、ボグリボース注2)、シクロスポリン30)、メトホルミン24)
- イプラグリフロジン
- 16.7.3 イプラグリフロジンが及ぼす影響
イプラグリフロジンは以下の薬物の薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。 シタグリプチン23)、メトホルミン31)、ミグリトール注2)20)、ピオグリタゾン23)、グリメピリド23)、ミチグリニド注2)20)、フロセミド20)
- 16.7.4 イプラグリフロジンが受ける影響
以下の薬物はイプラグリフロジンの薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった(外国人データ)。 シタグリプチン23)、ミグリトール注2)20)、ピオグリタゾン23)、グリメピリド23)、ミチグリニド注2)20)
注2)日本人データ
(注)本剤の承認された1回用量はシタグリプチン/イプラグリフロジン50mg/50mgである。