【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡[輸液、インスリン製剤による速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]

  3. 2.3 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]

効能・効果

  • 2型糖尿病

  • 1型糖尿病

用法・用量

  • 〈2型糖尿病〉

通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。

  • 〈1型糖尿病〉

インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg1日1回まで増量することができる。

使用上の注意

  1. 8.1 本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。,

  2. 8.2 本剤投与中は、血糖値等を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、3カ月投与しても効果が不十分な場合には、より適切な治療法への変更を考慮すること。

  3. 8.3 本剤投与により、血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあるので、腎機能を定期的に検査するとともに、腎機能障害患者における治療にあたっては経過を十分に観察すること。,,,

  4. 8.4 尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること。,

  5. 8.5 本剤の利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導し、観察を十分に行うこと。脱水、血圧低下等の異常が認められた場合は、休薬や補液等の適切な処置を行うこと。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者や利尿剤併用患者等)においては、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。,,,

  6. 8.6 本剤の作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により、血糖コントロールが良好であっても脂肪酸代謝が亢進し、ケトーシスがあらわれ、ケトアシドーシスに至ることがある。,,

  7. 8.6.1 *著しい血糖の上昇を伴わない場合があるため、以下の点に留意すること。

  • (1)悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等の症状が認められた場合には、血中又は尿中ケトン体測定を含む検査を実施すること。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

  • (2)特に、1型糖尿病患者、インスリン分泌能の低下、インスリン製剤の減量や中止、過度な糖質摂取制限、食事摂取不良、感染症、脱水を伴う場合にはケトアシドーシスを発現しやすいので、観察を十分に行うこと。

  • (3)患者に対し、以下の点を指導すること。

  • ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等)。

  • ケトアシドーシスの症状が認められた場合には直ちに医療機関を受診すること。

  • 血糖値が高値でなくともケトアシドーシスが発現しうること。

  • 特に、1型糖尿病患者に対しては、上記3点に加えて、ケトアシドーシス発現リスクが高いことも説明すること。

,,

  1. 8.6.2 *本剤を含むSGLT2阻害剤の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。,,

  2. 8.7 排尿困難、無尿、乏尿あるいは尿閉の症状を呈する患者においては、その治療を優先するとともに他剤での治療を考慮すること。

  3. 8.8 本剤投与による体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意すること。

  4. 8.9 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
  • 脳下垂体機能不全又は副腎機能不全を有する患者

  • 栄養不良状態、るいそう、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態の患者

  • 激しい筋肉運動を行った状態

  • 過度にアルコールを摂取した状態

,

  1. 9.1.2 尿路感染、性器感染のある患者

症状を悪化させるおそれがある。,

  1. 9.1.3 脱水を起こしやすい患者(血糖コントロールが極めて不良の患者、高齢者、利尿剤併用患者等)

本剤の利尿作用により脱水を起こすおそれがある。,,

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者

投与しないこと。本剤の効果が期待できない。,,

  1. 9.2.2 中等度の腎機能障害のある患者

投与の必要性を慎重に判断すること。本剤の効果が十分に得られない可能性がある。,,,,

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1 重度の肝機能障害のある患者

低用量から投与を開始するなど慎重に投与すること。重度の肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には本剤を投与せず、インスリン製剤等を使用すること。類薬の動物実験(ラット)で、ヒトの妊娠中期及び後期にあたる幼若動物への曝露により、腎盂及び尿細管の拡張が報告されている。また、本剤の動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中への移行及び出生児の体重増加抑制が報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

高齢者では脱水症状(口渇等)の認知が遅れるおそれがある。,

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度 症状・説明
ケトーシス 頻度不明
そう痒症 頻度不明
上気道の炎症 頻度不明
上腹部痛 頻度不明
下痢 頻度不明
体位性めまい 頻度不明
体重減少 頻度不明
便秘 頻度不明
倦怠感 頻度不明
口渇 頻度不明
嘔吐 頻度不明
外陰部膣カンジダ症 頻度不明
多尿 頻度不明
尿中α1ミクログロブリン増加 頻度不明
尿中β‒NアセチルDグルコサミニダーゼ増加 頻度不明
尿中β2ミクログロブリン増加 頻度不明
尿中アルブミン/クレアチニン比増加 頻度不明
尿中ケトン体陽性 頻度不明
尿潜血陽性 頻度不明
尿管結石 頻度不明
尿量増加 頻度不明
悪心 頻度不明
感覚鈍麻 頻度不明
浮動性めまい 頻度不明
湿疹 頻度不明
発疹 頻度不明
眼瞼浮腫 頻度不明
空腹 頻度不明
筋痙縮 頻度不明
筋肉痛 頻度不明
糖尿病性ニューロパチー 頻度不明
糖尿病網膜症 頻度不明
細菌尿 頻度不明
肝機能異常 頻度不明
胃炎 頻度不明
胃食道逆流性疾患 頻度不明
背部痛 頻度不明
脂肪肝 頻度不明
脱力感 頻度不明
腎結石症 頻度不明
腹部膨満 頻度不明
膀胱炎 頻度不明
蕁麻疹 頻度不明
薬疹 頻度不明
血中ケトン体増加 頻度不明
貧血 頻度不明
陰部そう痒症 頻度不明
頭痛 頻度不明
頻尿 頻度不明
顔面浮腫 頻度不明
高血圧 頻度不明
鼻咽頭炎 頻度不明
齲歯 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

Na+/グルコース共輸送担体(SGLT:Na+‒glucose cotransporter)は、Na+の濃度勾配を駆動力としてグルコースを細胞内へ能動輸送するトランスポーターである。ヒトにおけるSGLT1とSGLT2の機能について、消化管におけるグルコース吸収はSGLT1が、腎近位尿細管におけるグルコース再吸収はSGLT2が、それぞれ主たる役割を担っていることが明らかになっている33)。イプラグリフロジンは腎近位尿細管に発現するSGLT2を阻害し、血液中の過剰なグルコースを体外に排出することで血糖降下作用を発揮する。

18.2 薬理作用

  1. 18.2.1 ヒトSGLT2阻害作用

イプラグリフロジンは、ヒトSGLT2に対して選択的な阻害作用を示し、その50%阻害濃度(IC50値)は、7.38nmol/Lであった。SGLT1に対するIC50値は、1880nmol/Lであった34)(in vitro試験)。

  1. 18.2.2 尿中グルコース排泄促進作用及び血糖降下作用

イプラグリフロジンは、正常マウス、ニコチンアミド/ストレプトゾトシン誘発軽症2型糖尿病マウス及び2型糖尿病KK‒Ayマウスにおいて単回経口投与により投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量を増加させた35)。また、イプラグリフロジンは、それらのマウスにおいて単回経口投与により液体栄養剤負荷後の血糖値上昇を抑制した36)。更に、イプラグリフロジンは2型糖尿病KK‒Ayマウス並びにdb/dbマウスにおいて、1日1回28日間の反復経口投与によりHbA1c低下作用を示した37),38)。 イプラグリフロジンは、ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットにおいて単回経口投与により投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量を増加させ、グルコース溶液負荷後の血糖値上昇を抑制した。更に1日1回28日間の反復経口投与によりHbA1c低下作用を示した39)。 2型糖尿病患者を対象に、本剤50mg、100mg又はプラセボを1日1回14日間投与したところ、本剤投与群において最終投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量はベースラインから増加した。また、空腹時血糖値はベースラインから減少した3)。 1型糖尿病患者を対象に、本剤25mg、50mg、100mg又はプラセボを1日1回14日間投与したところ、本剤投与群において初回投与後及び最終投与後24時間までの累積尿中グルコース排泄量はベースラインから増加した。また、空腹時血糖値はベースラインから減少した4)。

薬物動態

16.1 血中濃度

    1. 16.1.1 健康成人

健康成人男性に本剤1~300mg注)を空腹時単回経口投与したとき、血漿中未変化体濃度は投与後1~3時間でCmaxに達し、その後速やかに消失した1)。

投与量 n Cmax (ng/mL) Tmax (h) t1/2 (h) AUCinf (ng・h/mL)
1mg 6 18±4 0.75±0.27 4.35±1.05 59±11
3mg 6 54±16 0.92±0.20 10.01±2.28 245±35
10mg 6 174±14 0.92±0.20 13.34±4.99 855±168
30mg 6 524±103 1.58±1.11 12.43±5.05 2896±363
100mg 6 1392±423 2.33±1.21 11.71±2.00 9696±2242
300mg 5 3421±690 2.60±1.34 10.34±1.59 27299±4622
(平均値±標準偏差)
  • 〈2型糖尿病〉
  1. 16.1.2 単回投与

2型糖尿病患者(8例)に、本剤50mgを食前単回経口投与したときの血漿中未変化体濃度推移及び薬物動態パラメータは下図及び下表のとおりである2)。

投与量 Cmax (ng/mL) Tmax (h) t1/2 (h) AUCinf (ng・h/mL)
50mg 1045±348 1.43±1.86 14.97±4.58 4821±1558
(平均値±標準偏差、n=8)
  1. 16.1.3 反復投与

2型糖尿病患者(各群9例)に本剤50又は100mgを1日1回14日間食前反復経口投与したとき、最終投与後のCmaxは1225及び2030ng/mL、AUC24hは4808及び9213ng・h/mLであった3)。

  • 〈1型糖尿病〉
  1. 16.1.4 反復投与

1型糖尿病患者(各群10、12又は10例)に本剤25、50又は100mgを1日1回14日間食前反復経口投与したとき、最終投与後のCmaxは694、1400及び2680ng/mL、AUC24hは2510、5790及び10600ng・h/mLであった4)。

16.2 吸収

  1. 16.2.1 生物学的利用率

健康成人男女(14例)に本剤25mgを空腹時1時間持続静脈内投与又は100mgを空腹時単回経口投与注)したとき、イプラグリフロジンの絶対バイオアベイラビリティは90.2%と高く、本剤の吸収は良好と考えられた5)(外国人データ)。

  1. 16.2.2 食事の影響

健康成人男性(30例)に本剤50mgを空腹時、食前又は食後単回経口投与したとき、空腹時投与に対する食前投与のCmax及びAUClastの幾何平均比(90%信頼区間)は1.23(1.14~1.33)及び1.04(1.01~1.07)、空腹時投与に対する食後投与のCmax及びAUClastの幾何平均比(90%信頼区間)は0.82(0.76~0.89)及び1.00(0.97~1.03)であった2)。

16.3 分布

イプラグリフロジンの血漿蛋白結合率は94.6%~96.5%であり、主要結合蛋白質はアルブミンであった6),7)(in vitro試験)。

16.4 代謝

イプラグリフロジンは主にグルクロン酸抱合代謝を受け、ヒト血漿中には4種のグルクロン酸抱合代謝物が認められた8)。また、1種の硫酸抱合代謝物が少量認められた。イプラグリフロジンの主代謝酵素はUGT2B7であり、UGT2B4、UGT1A8及びUGT1A9も寄与することが示された9)(in vitro試験)。 イプラグリフロジンの各種CYP及びUGT分子種に対する阻害作用は弱く、CYP1A2及びCYP3A4に対する誘導作用もほとんど示さなかった10),11),12)(in vitro試験)。

16.5 排泄

イプラグリフロジンはP‒gpの基質であった13)(in vitro試験)。 健康成人男性に本剤1~300mgを空腹時単回経口投与注)したとき、未変化体の尿中排泄率は約1%であった1)。 健康成人男性(6例)に14C‒イプラグリフロジン100mgを空腹時単回経口投与したとき、投与後48時間までに大部分(84.4%)の放射能が排泄された。投与後144時間までの放射能の尿中及び糞中排泄率はそれぞれ67.9%及び32.7%(合計100.6%)であり、投与した放射能のほとんどは尿中又は糞中に排泄された。呼気中には放射能は検出されなかった14)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能低下患者

腎機能の程度が異なる2型糖尿病患者(25例)に、本剤50mgを食前単回経口投与したとき、腎機能正常患者(8例)に対する軽度腎機能低下患者(eGFR:60mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満、9例)のCmax及びAUCinfの幾何平均比(90%信頼区間)は1.12(0.83~1.52)及び0.94(0.69~1.26)、中等度腎機能低下患者(eGFR:30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満、8例)のCmax及びAUCinfの幾何平均比(90%信頼区間)は1.17(0.85~1.60)及び1.21(0.89~1.65)であった2)。一方、腎機能の程度が異なる2型糖尿病患者に本剤100mgを空腹時単回経口投与したとき、腎機能正常患者(8例)に対する重度腎機能低下患者(8例)のCmax及びAUCinfの幾何平均比(90%信頼区間)は1.05(0.85~1.31)及び1.47(1.12~1.92)であった2)(外国人データ)。,,,

  1. 16.6.2 肝機能低下患者

中等度(Child‒Pugh分類B、スコア7~9)の肝機能低下患者(8例)に本剤100mgを空腹時単回経口投与したとき、健康成人(8例)に対する中等度肝機能低下患者のCmax及びAUCinfの幾何平均比(90%信頼区間)は1.27(0.93~1.73)及び1.25(0.94~1.66)であった15)(外国人データ)。

  1. 16.6.3 高齢者

健康な高齢(25例)及び非高齢(24例)男女に本剤100mgを食前反復経口投与したとき、非高齢男性に対する高齢男性のCmax及びAUC24hの幾何平均比(90%信頼区間)は0.99(0.84~1.16)及び1.21(1.06~1.38)であった。一方、非高齢女性に対する高齢女性のCmax及びAUC24hの幾何平均比(90%信頼区間)は1.25(1.06~1.49)及び1.45(1.27~1.67)であった2)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 イプラグリフロジンが及ぼす影響

イプラグリフロジンは以下の薬物の薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった。 シタグリプチン※)16)、メトホルミン※)17)、ミグリトール2)、ピオグリタゾン※)16)、グリメピリド※)16)、ミチグリニド2)、フロセミド※)2)

  1. 16.7.2 イプラグリフロジンが受ける影響

以下の薬物はイプラグリフロジンの薬物動態に明らかな影響を及ぼさなかった。 シタグリプチン※)16)、ミグリトール2)、ピオグリタゾン※)16)、グリメピリド※)16)、ミチグリニド2)

※)外国人データ

16.8 その他

  1. 16.8.1 薬力学(尿中グルコース排泄量)

腎機能の程度が異なる2型糖尿病患者(25例)に、本剤50mgを食前単回経口投与したとき、1日あたりの尿中グルコース排泄量のベースラインからの変化量は、腎機能正常患者で約71g、軽度腎機能低下患者で約61g、中等度腎機能低下患者で約38gであり、腎機能低下患者で低かった2)。一方、腎機能の程度が異なる2型糖尿病患者に本剤100mgを空腹時単回経口投与したとき、20時間あたりの尿中グルコース排泄量は、腎機能正常患者で約49g(ベースライン値:約1g)であったのに対し、重度腎機能低下患者では約12g(ベースライン値:約2g)であった2)(外国人データ)。

注)本剤の承認された1回用量は50mg(効果不十分な場合は100mgまで)である。