【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

高チロシン血症I型

用法・用量

通常、ニチシノンとして1日1mg/kgを2回に分割して経口投与する。 なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日2mg/kgを上限とする。

使用上の注意

  1. 8.1 本剤による高チロシン血症I型の治療は、高チロシン血症I型により死亡、肝障害、肝がん、腎疾患が発生することが報告されているため、可能な限り早期に開始すること。

  2. 8.2 本剤の投与により血漿中チロシン濃度が上昇し、副作用発現リスクが増加するおそれがあるため、本剤投与時には以下の点に留意すること。

  • チロシン及びフェニルアラニンを制限した食事療法を行うこと。

  • 定期的に血漿中チロシン濃度を測定し、血漿中チロシン濃度を500μmol/L未満に保つこと。

  • 血漿中チロシン濃度が500μmol/Lを超えた場合には、病態の悪化につながるため、血漿中チロシン濃度を低下させることを目的とした本剤の投与中止又は減量は避け、より厳しいチロシン及びフェニルアラニンを制限した食事療法で血漿中チロシン濃度の調整を行うこと。

  1. 8.3 血漿中チロシン濃度の上昇によって眼障害があらわれることがあるため、以下の点に留意すること。
  • 本剤による治療開始前には、眼の細隙灯顕微鏡検査を行うことが望ましい。

  • 自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事する際に注意するよう患者に十分説明すること。

  • 患者に対し、眼障害の初期症状を説明し、それらの症状が認められた場合には、直ちに主治医等に相談するよう指導すること。

  • 眼障害の初期症状が認められた場合には、眼科医を受診させるなど適切な処置を行うこと。また、食事療法の順守を確認し、血漿中チロシン濃度を測定すること。

  • 患者に自覚症状がない場合があるため、血漿中チロシン濃度のコントロールが不良な場合等、患者の状態に応じて治療開始後も定期的に、眼の細隙灯顕微鏡検査を行うこと。

  1. 8.4 高チロシン血症I型の患者においては肝悪性腫瘍が発生することが報告されているため、肝機能検査及び肝画像検査を定期的に行うこと。また、α-フェトプロテイン値の上昇及び肝臓に小結節の所見がみられた患者では、肝悪性腫瘍の検査を行うこと。

  2. 8.5 本剤の投与中は血小板数及び白血球数の定期的な検査を行うこと。

9.4 生殖能を有する者

妊娠する可能性のある女性に投与する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明すること。

9.5 妊婦

*妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。投与する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明すること。ヒトで胎盤を通過することが報告されている1),2),3)。動物実験(ウサギ)において、ヒトの臨床用量を下回る用量で催奇形作用(骨格異常、臍ヘルニア、腹壁破裂)が報告されている。また、動物実験(マウス)では、ヒトの臨床用量を下回る用量で胎児毒性(骨化遅延)が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)において、母乳を介した毒性として角膜混濁及び体重減少が報告されている。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度 症状・説明
そう痒症 1%未満
剥脱性皮膚炎 1%未満
白血球増加症 1%未満
紅斑性皮疹 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

遺伝性高チロシン血症I型はチロシン分解経路の最終段階にあるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)の遺伝子変異による常染色体劣性遺伝疾患である9)。FAHの活性が低下することにより、チロシン分解経路の中間代謝物であるフマリルアセト酢酸(FAA)及びマレイルアセト酢酸(MAA)、並びにこれらの代謝物であるサクシニルアセトン(SA)及びサクシニルアセト酢酸(SAA)が肝及び腎に蓄積し、これらの臓器に障害が生じると考えられている10)。ニチシノンは、チロシン分解経路においてFAHよりも上流に位置する4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼを阻害することにより、FAA、MAA、SA及びSAAの産生及び蓄積を抑制すると考えられている。

18.2 サクシニルアセトン産生抑制作用

遺伝性高チロシン血症I型患者(乳児及び小児)において、ニチシノンの反復経口投与(0.1~0.6mg/kg/日)により尿中SA及び血漿中SAが低下することが報告されている11)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与

10例の健康成人男性にニチシノン1mg/kgを空腹時に単回経口投与注)したときの薬物動態パラメータを以下に示す(外国人データ)。

AUC(μg・h/mL) Cmax(μg/mL) Tmax※(h) t1/2(h)
599±153 7.7±1.0 2.8(1.7~11.1) 54.5±13.0
平均値±標準偏差

※:中央値(範囲)

  1. 16.1.2 反復投与

日本人の高チロシン血症I型患者1例を含む医師主導型で開始されたNTBC試験において以下の知見が認められた(外国人データ)。

  • 反復投与後の時期による血中濃度の変動 用量で補正した血中ニチシノン濃度は、投与開始後最初の3年間でほぼ2倍になることが示された。また、3年目以降の上昇率は1年あたり6%程度であり、3年目までの上昇に比べて緩やかであった。

  • 投与開始年齢の影響 血中ニチシノン濃度に及ぼす投与開始年齢の影響を検討したところ、投与開始年齢が1歳上昇すると血中ニチシノン濃度は1.2~2μmol/L増加すると考えられた。

  • 線形性 本剤の投与開始1年後の用量で補正した血中ニチシノン濃度の比較からは、ニチシノンの薬物動態における非線形性は示唆されなかった。

16.3 分布

健康成人男性にニチシノン1mg/kgを空腹時に単回経口投与注)したときの血漿蛋白結合率は、投与後の測定時間(0.25~24時間)によらずほぼ一定で、96.2%(6例の平均値)であった(外国人データ)。主な結合蛋白はアルブミンであった(in vitro試験)。

16.4 代謝

ヒト肝ミクロソーム及び肝細胞を用いたin vitroでの検討において、ニチシノンは殆ど代謝されなかった(最大で、添加した標識化合物の2%)。 ヒトCYP3A4発現系において、シクロヘキサンジオン環の水酸化体が1種検出された(in vitro試験)。一方、ニチシノンを投与した高チロシン血症Ⅰ型患者の尿中において、4-水酸化体、5-水酸化体、2-ニトロ-4-トリフルオロメチル安息香酸、グリシン抱合体及びβ-アラニン抱合体の5種の代謝物の存在が報告されている4)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 臨床薬物相互作用試験

併用薬の薬物動態に及ぼす本剤の影響は以下の表に示すとおりである5)(外国人データ)。

併用薬 併用薬の用量 本剤の用量注) 投与期間 例数 幾何平均比(90%信頼区間) (併用投与/単独投与)
AUC Cmax
トルブタミド (CYP2C9 基質) 500mg 単回 80mg/日 16日間 18 2.31 (2.11~2.53) 1.16 (1.11~1.21)
フロセミド (OAT1/OAT3 基質) 20mg 単回 80mg/日 15日間 18 1.72 (1.63~1.81) 1.12 (1.08~1.15)
クロルゾキサゾン (CYP2E1 基質) 250mg 単回 80mg/日 16日間 18 0.73 (0.67~0.80) 0.82 (0.67~0.99)
メトプロロール (CYP2D6 基質) 50mg 単回 80mg/日 16日間 18 0.95 (0.88~1.03) 1.06 (0.90~1.25)
  1. 16.7.2 In vitro試験

ニチシノンはCYP2C9を阻害した(IC50=46μmol/L)が、CYP1A2、2C19及び3Aに対しては阻害しなかった。また、ニチシノンはCYP1A2、2B6及び3Aに対して顕著な誘導作用を示さなかった6)。 ニチシノンは有機アニオントランスポーター1(OAT1)及びOAT3を阻害した(IC50=6.87μmol/L及び3.11μmol/L)。P-糖蛋白質(P-gp)、乳癌耐性蛋白質(BCRP)、有機アニオン輸送ポリペプチド1B1(OATP1B1)、OATP1B3及び有機カチオントランスポーター2(OCT2)に対する阻害作用は弱く、臨床用量では阻害しないと考えられた。P-gpの基質ではなかった7)。

注)本剤の承認された用法及び用量は「通常、ニチシノンとして1日1mg/kgを2回に分割して経口投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日2mg/kgを上限とする。」である。