作用機序
18.1 作用機序
**トルバプタンは、バソプレシンV2-受容体拮抗作用を薬理学的特徴とする薬剤であり、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。また、多発性のう胞腎においてはバソプレシンによる細胞内cAMPの上昇を抑制することにより、腎容積及び腎のう胞の増大を抑制する。
18.2 バソプレシンV2-受容体拮抗作用
トルバプタンは、ヒトバソプレシンV2-受容体発現細胞及びラット、イヌ腎臓膜標本において、標識バソプレシンのV2-受容体への結合を濃度依存的に阻害した。また、ヒトバソプレシンV2-受容体発現細胞において、それ自身ではcAMPの産生増加を示さず、バソプレシンによるcAMPの産生を抑制したことから、バソプレシンV2-受容体拮抗作用を有していることが示された。ヒトバソプレシンV2-受容体に対する阻害定数は、0.43±0.06nmol/Lであった29),30)(in vitro)。
18.3 利尿作用
トルバプタンは、覚醒ラット及びイヌにおいて、用量依存的に尿量を増加させ、尿浸透圧を低下させた。このとき、ループ利尿薬とは異なり、自由水クリアランスが正の値となり、自由水の排泄を増加させた(水利尿作用)30),31)。
18.4 抗浮腫作用
トルバプタンは、ラット浮腫モデルにおいて、カラゲニン誘発足浮腫及びヒスタミン誘発毛細血管透過性の亢進を用量依存的に抑制した。また、覚醒心不全犬において水利尿作用を示し、前負荷を軽減させた32),33)。
18.5 腹水減少作用
トルバプタンは、ラット肝硬変腹水モデルにおいて、腹水の指標である体重及び腹囲を減少させた34)。
18.6 **のう胞腎進行抑制作用
トルバプタンは、多発性のう胞腎の動物モデルであるpcyマウス、Pkd2WS25/-マウス及びPCKラットにおいて腎容積の増大を抑制した35),36),37)。
薬物動態
16.1 血中濃度
- 16.1.1 単回投与
健康成人にトルバプタン15~120mgを空腹時単回経口投与した時の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータを図16-1及び表16-1に示す4)。
図16-1 健康成人におけるトルバプタン投与時の血漿中濃度推移(平均値、6例、30mg注)群のみ12例)
| 投与量 |
tmax (h) |
Cmax (ng/mL) |
AUCt (ng・h/mL) |
t1/2 (h) |
| 15mg |
2.0(1.0~4.0) |
135±53 |
645±367 |
3.3±1.2 |
| 30mg |
2.0(1.5~6.0) |
213±76 |
1,302±553 |
3.9±1.7 |
| 45mg注) |
2.5(1.0~3.0) |
363±318 |
2,098±1,950 |
2.9±0.8 |
| 60mg |
3.0(1.5~4.0) |
315±105 |
2,321±634 |
4.6±0.8 |
| 90mg |
2.0(1.0~3.0) |
429±146 |
3,600±922 |
5.8±1.4 |
| 120mg |
2.0(2.0~3.0) |
661±276 |
5,908±2,091 |
9.3±3.2 |
| (平均値±標準偏差、tmaxのみ中央値(範囲)、6例、30mg群のみ12例) |
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- 16.1.2 反復投与
心性浮腫患者にトルバプタン15mgを1日1回7日間反復経口投与した時のトルバプタンの薬物動態パラメータを表16-2に示す5)。
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tmax (h) |
Cmax (ng/mL) |
AUC24h (ng・h/mL) |
t1/2 (h) |
| 投与1日目 |
4.0(1.8~5.9) |
258±95 |
2,057±795 |
6.6±2.1 |
| 投与7日目 |
3.9(2.0~6.0) |
256±102 |
2,173±1,188 |
6.8±2.2 |
| (平均値±標準偏差、tmaxのみ中央値(範囲)、10例) |
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tmax (h) |
Cmax (ng/mL) |
AUC24h (ng・h/mL) |
t1/2 (h) |
| 投与1日目 |
4.2(3.8~11.8) |
100±54 |
1,061±732 |
9.1±5.4 |
| 投与7日目 |
4.0(1.7~7.9) |
112±60 |
1,370±1,165 |
8.5±4.1 |
| (平均値±標準偏差、tmaxのみ中央値(範囲)、20例) |
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常染色体優性多発性のう胞腎患者に1日120mgを2回(90mg、30mg)に分けて7日間反復経口投与した時のトルバプタンの薬物動態パラメータを表16-4に示す7)(外国人データ)。
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tmax (h) |
Cmax (ng/mL) |
AUC24h (ng・h/mL) |
| 投与7日目 |
2.0(1.0~9.0) |
716±344 |
6,570±3,230 |
| (平均値±標準偏差、tmaxのみ中央値(範囲)、12例) |
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- 16.1.3 生物学的同等性
健康成人にトルバプタン15mg(OD錠又は普通錠)を、クロスオーバー法により空腹時単回経口投与した時の薬物動態パラメータを表16-5に示す8)。Cmax及びAUCtの幾何平均値の比の90%信頼区間はいずれも0.80~1.25の範囲内であり、OD錠と普通錠は生物学的に同等であった。また、トルバプタン7.5mgOD錠は「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性ガイドライン」に基づき、標準製剤をトルバプタン15mgOD錠とした時、溶出挙動は同等と判定され、生物学的に同等とみなされた。
| 剤形 |
tmax (h) |
Cmax (ng/mL) |
AUCt (ng・h/mL) |
t1/2 (h) |
| 普通錠 15mg |
2.0(1.0~4.0) |
131±71 |
697±440 |
3.4±1.0 |
| OD錠15mg (水なし) |
2.0(1.0~5.0) |
149±73 |
674±361 |
3.2±1.0 |
| OD錠15mg (水あり) |
3.0(1.0~5.0) |
125±63 |
685±392 |
3.3±0.9 |
| (平均値±標準偏差、tmaxのみ中央値(範囲)、39例) |
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16.2 吸収
- 16.2.1 **食事の影響
健康成人にトルバプタン15mgを単回経口投与した時、空腹時投与に比べ食後投与ではCmax及びAUCはそれぞれ1.3倍及び1.1倍であった4)。
健康成人にトルバプタン60mg9)又は90mg10)を単回経口投与した時、空腹時投与に比べ食後投与ではCmaxはそれぞれ1.4倍及び2.0倍、AUCはそれぞれ1.1倍及び1.0倍であった(外国人データ)。
- 16.2.2 絶対的バイオアベイラビリティ
健康成人における経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは56%であった11)(外国人データ)。
16.3 分布
ヒト血漿蛋白結合率は、98.0%以上であった2)(in vitro、限外ろ過法)。
16.4 代謝
トルバプタンは、ヒト肝ミクロゾームチトクロームP450の分子種のうち、主としてCYP3A4により代謝される12)(in vitro)。
16.5 排泄
健康成人に、14C-トルバプタン60mgを空腹時に単回経口投与した時、糞中及び尿中にそれぞれ投与した放射能の58.7%及び40.2%が排泄された。未変化体の糞中及び尿中の回収率は、それぞれ投与量の18.7%及び1%未満であった13)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1 腎機能障害患者
腎機能の程度の異なる被験者(クレアチニンクリアランス<30mL/min、クレアチニンクリアランス=30~60mL/min及びクレアチニンクリアランス>60mL/min)にトルバプタン60mgを投与した時のAUCは、それぞれ7,360ng・h/mL、6,980ng・h/mL及び3,890ng・h/mLであった。また、血漿中遊離型分率は、それぞれ1.2%、0.6%及び1.0%であった。血漿中遊離型分率を用いて算出した血漿中遊離型濃度のAUCは、クレアチニンクリアランス<30mL/min、クレアチニンクリアランス=30~60mL/min及びクレアチニンクリアランス>60mL/minでそれぞれ71.8ng・h/mL、36.4ng・h/mL及び37.5ng・h/mLであった14)(外国人データ)。
- 16.6.2 肝機能障害患者
肝性浮腫患者にトルバプタン15mgを投与した時のAUCは、中等度肝障害患者(Child-Pugh分類A又はB)で1,618ng・h/mL、重度肝障害患者(Child-Pugh分類C)で2,172ng・h/mLであった15)(母集団解析)。
- 16.6.3 高齢者(65歳以上)、性別
トルバプタンの薬物動態には年齢及び性別による影響は認められなかった16)。
16.7 薬物相互作用
- 16.7.1 ケトコナゾール
健康成人において、強力なCYP3A4の阻害作用を有するケトコナゾール200mgとトルバプタン30mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ3.5倍及び5.4倍になった17)(外国人データ)。,,
- 16.7.2 フルコナゾール
健康成人において、中等度のCYP3A4の阻害作用を有するフルコナゾール200mgとトルバプタン30mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1.8倍及び3.0倍になった18)(外国人データ)。,,
- 16.7.3 グレープフルーツジュース
健康成人において、トルバプタン60mgをCYP3A4の阻害作用を有するグレープフルーツジュースにより服用した時、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1.9倍及び1.6倍になった19)(外国人データ)。,,
- 16.7.4 リファンピシン
健康成人において、CYP3A4の誘導作用を有するリファンピシン600mgとトルバプタン240mg注)の併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはそれぞれ1/6及び1/8になった17)(外国人データ)。
- 16.7.5 ジゴキシン
健康成人において、P糖蛋白の基質であるジゴキシン0.25mgとトルバプタン60mgの併用により、ジゴキシンのCmax及びAUCは、それぞれ1.3倍及び1.2倍になった。トルバプタンのCmaxとAUCは、いずれも1.1倍になった20)(外国人データ)。
- 16.7.6 その他の薬剤
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健康成人において、CYP3A4の基質であるロバスタチン80mgとトルバプタン90mgの併用により、ロバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ1.3倍及び1.4倍になった21)。
ロバスタチン80mgとトルバプタン60mgの併用によりトルバプタンのCmaxとAUCはいずれも1.2倍になった22)(外国人データ)。
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不整脈患者において、CYP3A4の基質であるアミオダロン200mgとトルバプタン90mgの併用によるアミオダロンの薬物動態の変化は5%未満であった23)(外国人データ)。
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健康成人において、CYP2C9の基質であるワルファリン25mgとトルバプタン60mgの併用により、R-ワルファリンとS-ワルファリンの薬物動態は影響を受けなかった24)(外国人データ)。
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健康成人において、トルバプタン30mg注)とフロセミド80mgとの併用により、トルバプタンのCmax及びAUCはいずれも1.2倍になった。ヒドロクロロチアジド100mgとの併用により、トルバプタンのCmax及びAUCは変化しなかった。トルバプタンはフロセミド及びヒドロクロロチアジドの薬物動態に影響を与えなかった25)(外国人データ)。
注)本剤の承認された1日用量は、心不全における体液貯留15mg、肝硬変における体液貯留7.5mg及び常染色体優性多発性のう胞腎60~120mgである。