【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

  2. 2.2 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者,,,

  3. 2.3 **血管性浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬による血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管性浮腫、特発性血管性浮腫等)

  4. 2.4 アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)

  5. 2.5 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者

  6. 2.6 妊婦又は妊娠している可能性のある女性

効能・効果

  • 〈錠50mg・100mg・200mg〉

  • 成人

慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

  • 小児

慢性心不全

  • 〈錠100mg・200mg〉

高血圧症

  • 〈粒状錠小児用12.5mg・31.25mg〉

慢性心不全

用法・用量

  • 〈慢性心不全〉

通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。 通常、1歳以上の小児には、サクビトリルバルサルタンとして下表のとおり体重に応じた開始用量を1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に目標用量まで増量する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。

体重 開始用量 第1漸増用量 第2漸増用量 目標用量
40kg未満 0.8mg/kg 1.6mg/kg 2.3mg/kg 3.1mg/kg
40kg以上50kg未満 0.8mg/kg 50mg 100mg 150mg
50kg以上 50mg 100mg 150mg 200mg
  • 〈高血圧症〉

通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。

錠50mg 錠100mg 錠200mg 粒状錠小児用12.5mg 粒状錠小児用31.25mg
慢性心不全(成人)
慢性心不全(小児)
高血圧症
〇:承認用法・用量あり、―:承認なし

使用上の注意

  1. 8.1 **血管性浮腫があらわれるおそれがあるため、本剤投与前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。また、本剤投与終了後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。,,,

  2. 8.2 症候性低血圧があらわれるおそれがあるため、特に投与開始時及び増量時は患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。,,,,,

  3. 8.3 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬投与中に肝炎等の重篤な肝障害があらわれたとの報告があるので、肝機能検査を実施するなど観察を十分に行うこと。

  4. 8.4 脱水があらわれるおそれがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の減量、投与中止や補液等の適切な処置を行うこと。

  5. 8.5 手術前24時間は投与しないことが望ましい。麻酔及び手術中にレニン-アンジオテンシン系の抑制作用による低血圧を起こす可能性がある。

  6. 8.6 降圧作用に基づくめまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.1.1 両側性腎動脈狭窄のある患者又は片腎で腎動脈狭窄のある患者

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与は避けること。腎血流量の減少や糸球体濾過圧の低下により急速に腎機能を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.2 高カリウム血症の患者

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与は避けること。高カリウム血症を増悪させるおそれがある。 高カリウム血症のリスク因子のある患者(腎機能障害、糖尿病、低アルドステロン症の患者又はカリウム含量が高い食事を摂取している患者等)では、血清カリウム値をモニタリングすること。,

  1. 9.1.3 脳血管障害のある患者

本剤の降圧作用により、脳血流不全を引き起こし、病態を悪化させるおそれがある。

  • 〈慢性心不全〉
  1. 9.1.4 血圧が低い患者

定期的に血圧を測定し、患者の状態を十分に観察しながら投与すること。,,

  • 〈高血圧症〉
  1. 9.1.5 厳重な減塩療法中の患者

低用量から投与を開始し、増量する場合は徐々に行うこと。急激な血圧低下(失神及び意識消失等を伴う)を起こすおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  • 〈慢性心不全〉
  1. 9.2.1 軽度又は中等度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満)のある患者

血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。,,

  1. 9.2.2 重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者

本剤投与の可否を慎重に判断し、投与する場合には血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがあり、臨床試験では除外されている。,,

  • 〈高血圧症〉
  1. 9.2.3 軽度又は中等度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満)のある患者

血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。,

  1. 9.2.4 重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者

本剤投与の可否を慎重に判断し、投与する場合には血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察すること。低用量から開始することを考慮すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。,

  1. 9.2.5 血液透析中の患者

本剤投与の可否を慎重に判断し、投与する場合には血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察すること。低用量から投与を開始し、増量する場合は徐々に行うこと。本剤の血中濃度が上昇するおそれや、急激な血圧低下(失神及び意識消失等を伴う)を起こすおそれがあり、臨床試験では除外されている。,

9.3 肝機能障害患者

  • 〈効能共通〉
  1. 9.3.1 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者

投与しないこと。重度の肝機能障害のある患者では本剤の血中濃度が上昇するおそれがあり、臨床試験では除外されている。

  • 〈慢性心不全〉
  1. 9.3.2 中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)のある患者

本剤投与の可否を慎重に判断し、投与する場合には血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。,

  • 〈高血圧症〉
  1. 9.3.3 中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)のある患者

本剤投与の可否を慎重に判断し、投与する場合には血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与すること。低用量から開始することを考慮すること。本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。

9.4 生殖能を有する者

  1. 9.4.1 妊娠する可能性のある女性

妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている1),2)。

本剤の投与に先立ち、代替薬の有無等も考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。

  1. (1) 本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。

  2. (2) 次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。

  • 妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。

  • 本剤投与中及び最終投与後1週間は避妊する必要があること及び適切な避妊法。

  • 妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。

  • 妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。本剤を投与した動物実験(ラット、ウサギ)において、サクビトリルの活性代謝物(sacubitrilat)及びバルサルタンの曝露量が、臨床用量投与時の曝露量の0.06倍及び0.72倍(ラット)並びに0.03倍及び2.04倍(ウサギ)に相当する用量から、胚・胎児致死(着床後死亡率の高値)及び催奇形性(水頭症)が認められたとの報告がある。また、バルサルタンを含むアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬並びにアンジオテンシン変換酵素阻害薬で、妊娠中期~末期に投与を受けた妊婦において、母体及び胎児への影響(自然流産、胎児・新生児死亡、羊水過少症、胎児・新生児の低血圧、腎機能障害、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、脳、頭蓋顔面の奇形、肺の発育形成不全等)が報告されている3),4)。,

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。本剤のヒトにおける乳汁中への移行は不明であるが、動物実験(ラットの授乳期経口投与)で、乳汁中にsacubitrilat及びバルサルタンの移行が認められた。本剤の投与期間中の授乳により、新生児又は乳児に影響を及ぼすおそれがある。また、バルサルタンの動物実験(ラットの周産期及び授乳期経口投与)において、600mg/kg/日で出生児の低体重及び生存率の低下が認められており、200mg/kg/日以上で外表分化の遅延が認められている。

9.7 小児等

  • 〈慢性心不全〉
  1. 9.7.1 低出生体重児、新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
  • 〈高血圧症〉
  1. 9.7.2 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  • 〈慢性心不全〉
  1. 9.8.1 血圧、血清カリウム値及び腎機能等の患者の状態を十分に観察しながら投与すること。特に投与開始時及び増量時は患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。臨床試験において、高齢者では、低血圧、高カリウム血症、腎機能障害の発現が増加することが報告されている。,,,,
  • 〈高血圧症〉
  1. 9.8.2 低用量から投与を開始するなど慎重に投与すること。一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度 症状・説明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
頻度不明
ALP上昇注1) 頻度不明
ALT上昇注1) 頻度不明
AST上昇注1) 頻度不明
BUN上昇注1) 頻度不明
CK上昇注1) 頻度不明
LDH上昇注1) 頻度不明
アナフィラキシー反応を含む) 頻度不明
けん怠感注1) 頻度不明
しびれ注1) 頻度不明
そう痒症 頻度不明
ビリルビン値の上昇注1) 頻度不明
ほてり注1) 頻度不明
下痢 頻度不明
不眠注1) 頻度不明
低カリウム血症 頻度不明
低ナトリウム血症注1) 頻度不明
体位性めまい 頻度不明
便秘注1) 頻度不明
光線過敏症注1) 頻度不明
動悸注1) 頻度不明
口渇注1) 頻度不明
味覚異常注1) 頻度不明
咳嗽 頻度不明
咽頭炎注1) 頻度不明
嘔吐注1) 頻度不明
回転性めまい 頻度不明
好酸球増多注1) 頻度不明
心房細動注1) 頻度不明
悪心 頻度不明
浮動性めまい 頻度不明
浮腫注1) 頻度不明
無力症 頻度不明
疲労 頻度不明
発熱注1) 頻度不明
眠気注1) 頻度不明
筋肉痛注1) 頻度不明
紅斑注1) 頻度不明
耳鳴注1) 頻度不明
胸痛注1) 頻度不明
腰背部痛注1) 頻度不明
腹痛注1) 頻度不明
蕁麻疹注1) 頻度不明
血中尿酸値上昇注1) 頻度不明
血清カリウム値上昇注1) 頻度不明
血清クレアチニン上昇注1) 頻度不明
血清コレステロール上昇注1) 頻度不明
血清総蛋白減少注1) 頻度不明
血糖値上昇注1) 頻度不明
貧血注1) 頻度不明
起立性低血圧 頻度不明
過敏症(発疹 頻度不明
関節痛注1) 頻度不明
頭痛 頻度不明
頻脈注1) 頻度不明
食欲減退注1) 頻度不明

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体を阻害する。サクビトリルは、エステラーゼによりNEP阻害の活性体であるsacubitrilatに速やかに変換される。NEP阻害は、血管拡張作用、利尿作用、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)抑制作用、交感神経抑制作用、心肥大抑制作用、抗線維化作用、及びアルドステロン分泌抑制作用を有するナトリウム利尿ペプチドの作用亢進に寄与する。バルサルタンのAT1受容体拮抗作用は、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。

18.2 ナトリウム利尿ペプチド系及びRAASに対する作用

  1. 18.2.1 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を持続静注したラットにサクビトリルバルサルタンを単回経口投与したとき、用量依存的に血漿中ANP濃度が上昇した18)。

  2. 18.2.2 低ナトリウム食飼育イヌにサクビトリルバルサルタンを反復経口投与したとき、溶媒投与の対照群と比較して有意な血漿中cGMP濃度の上昇及び血漿中アルドステロン濃度の低下がみられた19)。

18.3 利尿作用

  1. 18.3.1 生理食塩水を持続静注したラットにサクビトリルを十二指腸内投与したとき、ANP投与による尿中ナトリウム排泄は溶媒投与の対照群と比較して有意に増強された20)。

  2. 18.3.2 正常イヌにsacubitrilatを静脈内投与したとき、ANP投与による利尿及び尿中ナトリウム排泄は溶媒投与の対照群と比較して有意に増強された21)。

18.4 心筋肥大抑制作用

アンジオテンシンⅡを介して誘発されるラット心筋細胞の肥大は、sacubitrilat及びバルサルタン併用投与により抑制された22)。

18.5 抗線維化作用

アンジオテンシンⅡを介して誘発されるラット心線維芽細胞のコラーゲン産生は、sacubitrilat及びバルサルタンの併用投与により抑制された22)。

18.6 降圧作用

  1. 18.6.1 ヒトレニン及びヒトアンジオテンシノーゲン遺伝子を導入したダブルトランスジェニックラットにサクビトリルバルサルタンを単回経口投与したとき、用量依存的な降圧作用が認められた23)。

  2. 18.6.2 高血圧自然発症ラットにサクビトリルバルサルタンを14日間反復経口投与したとき、バルサルタンを単独投与した対照群と同程度の降圧作用が認められた24)。

  3. 18.6.3 Dahl食塩感受性ラットにサクビトリルバルサルタンを14日間反復経口投与したとき、バルサルタンを単独投与した対照群よりも有意な降圧作用が認められた25)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与

サクビトリルバルサルタンを経口投与したとき、速やかに溶解し、サクビトリル(体内でエステラーゼにより加水分解され活性代謝物sacubitrilatに変換される)及びバルサルタンに解離する。

  1. (1) 健康成人男子にサクビトリルバルサルタン(200mg又は400mg)注2)を空腹時に単回経口投与したとき、sacubitrilatとバルサルタンのCmax及びAUCは投与量に応じて増加し、Tmax及びT1/2は投与量に依存しなかった5)。
薬物動態パラメータ 200mg 400mg
成分 sacubitrilat バルサルタン sacubitrilat バルサルタン
Cmax(ng/mL) 8,480±1,540 3,980±1,390 16,200±3,160 7,400±1,490
Tmax※(h) 2.0(1.5~3.0) 1.5(1.0~3.0) 3.0(1.5~6.0) 2.0(1.5~4.0)
AUCinf(ng・h/mL) 71,800±13,100 22,200±6,670 138,000±26,800 42,900±11,200
T1/2(h) 13.4±0.975 18.9±7.36 12.1±0.608 12.6±2.61
n=8、平均±標準偏差、※:中央値(範囲)

○:本剤200mg投与時、■:本剤400mg投与時 健康成人男子にサクビトリルバルサルタン200mg又は400mgを単回経口投与したときのsacubitrilat及びバルサルタンの血漿中濃度推移(空腹時)(平均値±標準偏差、n=8)

  1. (2) 小児慢性心不全患者にサクビトリルバルサルタン(0.8mg/kg又は3.1mg/kg)を単回経口投与したとき、sacubitrilatとバルサルタンのCmax及びAUCは投与量に応じて増加し、年齢区分による曝露量の大きな差は認められなかった6)(外国人のデータ)。
年齢区分 薬物動態 パラメータ 0.8mg/kg 3.1mg/kg
成分 n sacubitrilat バルサルタン n sacubitrilat バルサルタン
6歳以上18歳未満 Cmax(ng/mL) 7 1,951±839 1,271±1,011 7 6,707±1,887 4,035±1,678
Tmax※(h) 7 4.0(2.0~8.0) 1.0(0.9~4.0) 7 2.0(2.0~4.0) 2.0(2.0~4.0)
AUCinf(ng・h/mL) 7 48,264±22,939 13,540±12,962 7 150,440±49,515 40,733±21,003
1歳以上6歳未満 Cmax(ng/mL) 8 1,359±711 1,112±583 6 5,453±1,032 4,935±1,268
Tmax※(h) 8 2.3(2.0~4.3) 1.5(0.9~4.3) 6 2.3(2.0~10.0) 2.0(1.1~2.4)
AUCinf(ng・h/mL) 8 31,042±17,259 11,036±7,031 6 127,625±35,634 48,561±21,163
平均±標準偏差、※:中央値(範囲)
  1. 16.1.2 反復投与

  2. (1) 健康成人にサクビトリルバルサルタン400mgを1日1回5日間連続経口投与したときサクビトリルは投与後4~5日、sacubitrilat及びバルサルタンは投与後3~5日で定常状態に達した7)。

  3. (2) 健康成人にサクビトリルバルサルタン200mgを1日2回5日間連続経口投与したとき初回及び投与5日目のサクビトリル及びバルサルタンの薬物動態パラメータに累積性は認められなかった。投与5日目のsacubitrilatのAUCは投与1日目の1.6倍であった8)(外国人のデータ)。

16.2 吸収

健康成人にサクビトリルバルサルタン400mg注2)を低脂肪食又は高脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、sacubitrilatのCmaxは空腹時投与に比べそれぞれ19%及び28%減少したが、AUCは、食事の種類及び食事の時期に関わらず、影響は認められなかった。Tmaxは空腹時投与では2時間、食後投与では4~6時間であり、食事の種類にかかわらずいずれも延長する傾向がみられた。サクビトリルバルサルタン400mgを低脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、バルサルタンのCmax及びAUCは、空腹時投与に比べそれぞれ39%及び34%低下した。サクビトリルバルサルタン400mgを高脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、バルサルタンのCmax及びAUCは、空腹時投与に比べそれぞれ40%及び9%低下した。Tmaxの中央値は空腹時投与の1.75時間、食後投与では4時間であり、高脂肪食又は低脂肪食摂取後にいずれでも延長する傾向がみられた8)(外国人のデータ)。

16.3 分布

Sacubitrilat及びバルサルタンのヒト血漿蛋白結合率はそれぞれ約97%及び約94%であり、主な結合蛋白はいずれもアルブミンであった8)(in vitro)。

16.4 代謝

健康成人男子にサクビトリル部位に14C標識したサクビトリルバルサルタン200mgを空腹時単回経口投与したとき、エステラーゼにより加水分解を受け、活性代謝物であるsacubitrilatが主に生成した。 なお、健康成人男子に14C標識したバルサルタン80mgを空腹時単回経口投与したとき、投与8時間後の血漿中には、主として未変化体が存在し、その他に代謝物として4-ヒドロキシ体が認められた。In vitroの試験において主にCYP2C9の関与が示唆されている8)(外国人のデータ)。

16.5 排泄

健康成人男子にサクビトリルバルサルタン200mg又は400mg注2)を空腹時単回経口投与したとき、投与後96時間までに投与量の約55%がsacubitrilatとして、約11%がバルサルタンとして尿中に排泄された9)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能障害患者

軽度又は中等度の腎機能障害患者(軽度:クレアチニンクリアランスが50mL/min以上80mL/min以下、中等度:クレアチニンクリアランスが30mL/min以上50mL/min未満)にサクビトリルバルサルタン400mg注2)を反復経口投与したとき、定常状態においてsacubitrilatのCmax及びAUCは健康成人のそれぞれ約1.5~1.6倍及び約2.1~2.2倍であった。バルサルタンのCmaxは健康成人とほぼ同程度であったが、AUCは健康成人の約1.0~1.4倍であった。重度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランスが30mL/min未満)にサクビトリルバルサルタン400mg注2)を反復経口投与したとき、定常状態においてsacubitrilatのCmax及びAUCは健康成人のそれぞれ約1.6倍及び約2.7倍であった。バルサルタンのCmax及びAUCは健康成人のそれぞれ約0.9倍及び約1.3倍であった8)(外国人のデータ)。,,,

  1. 16.6.2 肝機能障害患者

軽度又は中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類A又はB)にサクビトリルバルサルタン200mgを単回経口投与したとき、sacubitrilatのCmaxは健康成人とほぼ同程度であったが、AUCは健康成人の約1.5~1.9倍であった。バルサルタンのCmaxは健康成人とほぼ同程度であったが、AUCは健康成人の約1.2~2.1倍であった8)(外国人のデータ)。,

  1. 16.6.3 高齢者

65歳以上の高齢者にサクビトリルバルサルタン400mg注2)を単回経口投与したとき、sacubitrilatのCmaxは非高齢者とほぼ同程度であったが、AUCは約1.4倍であった。バルサルタンのCmax及びAUCはいずれも非高齢者のそれぞれ約1.2倍及び約1.3倍であった8)(外国人のデータ)。,

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 アトルバスタチン

健康成人(28例)に、サクビトリルバルサルタン200mgを1日2回(朝、夕)及びアトルバスタチン80mgを1日1回(朝)で5日目の朝まで反復併用経口投与したとき、アトルバスタチン及びその活性代謝物のCmax及びAUCtauはそれぞれ約1.7~2.1倍及び約1.2~1.3倍になった。Sacubitrilat及びバルサルタンの薬物動態に大きな変化はみられなかった10)(外国人のデータ)。

  1. 16.7.2 In vitro試験

SacubitrilatはOAT3の基質であり、バルサルタンはOAT3及びMRP2の基質であることが示された。

16.8 その他

健康成人に本剤又はバルサルタン製剤注3)を単回経口投与したとき、バルサルタンの薬物動態パラメータは下表のとおりであった5),11),12)。

バルサルタン含量 例数 Cmax (ng/mL) AUCinf (ng・h/mL)
本剤200mg 103mg 8 3,980±1,390 22,200±6,670
バルサルタン製剤80mg 80mg 30 2,780±1,070 19,800±8,240
バルサルタン製剤160mg 160mg 40 5,770±1,730 38,900±11,100

注2)慢性心不全における本剤の承認された用法及び用量はサクビトリルバルサルタンとして1回最大200mgを1日2回である。

注3)国内で承認されたバルサルタン製剤の用法及び用量は1日1回40~80mg、1回最大160mgである。