【警告】

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能・効果

BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫

用法・用量

通常、成人にはベムラフェニブとして1回960mgを1日2回経口投与する。

使用上の注意

  1. 8.1 有棘細胞癌があらわれることがあるので、定期的に皮膚の状態を確認すること。また、皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。,

  2. 8.2 皮膚以外の部位に扁平上皮癌があらわれることがあるので、観察を十分に行うこと。

  3. 8.3 QT間隔延長があらわれることがあるので、本剤の投与開始前には心電図検査及び電解質測定を行うこと。投与開始前にQTcのベースライン値が500msを超える場合又は補正できない電解質異常が認められる場合には投与を避けること。本剤投与期間中は定期的に心電図検査及び電解質測定を行うこと。,,

  4. 8.4 肝不全、肝機能障害、黄疸等の肝障害又はALT、AST、ビリルビンの上昇等があらわれることがあるので、患者の状態に応じて定期的に肝機能検査を行うこと。

  5. 8.5 急性腎障害があらわれることがあるので、投与開始前及び投与中に定期的に腎機能検査を行うこと。

  6. 8.6 光線過敏症があらわれることがあるので、外出時には帽子や衣類等による遮光や日焼け止め効果の高いサンスクリーンの使用により、日光やUV光線の照射を避けるよう患者を指導すること。

  7. 8.7 ブドウ膜炎等の重篤な眼障害が報告されているので、定期的に眼の異常の有無を確認すること。また、眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者

QT間隔延長が起こるおそれがある。,,

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1 重度の肝機能障害のある患者

重度の肝機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.4 生殖能を有する者

*妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後2週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。経口避妊薬による避妊法の場合には、経口避妊薬以外の方法を併せて使用すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠ラット及びウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験において、胚・胎児への影響は認められていないが、最大投与量におけるAUCは臨床曝露量の約1.2倍(ラット)及び約0.5倍(ウサギ)であった。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。乳汁移行に関するデータはないが、ベムラフェニブは乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質であるため、乳汁移行の可能性がある。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度 症状・説明
Al-P上昇 5%以上
ALT上昇 5%以上
AST上昇 5%以上
γ-GTP増加 1〜5%未満
アクロコルドン 1〜5%未満
アレルギー性皮膚炎 1〜5%未満
インフルエンザ様疾患 1〜5%未満
カンジダ症 1〜5%未満
ざ瘡 1〜5%未満
ざ瘡様皮膚炎 1〜5%未満
せつ 1%未満
そう痒症(21.8%) 5%以上
デュプイトラン拘縮 1%未満
ブドウ膜炎 1〜5%未満
ヘルペスウイルス感染 1%未満
ほてり 5%以上
メラノサイト性母斑 1〜5%未満
リンパ浮腫 1〜5%未満
リンパ球減少 1〜5%未満
上気道感染(鼻咽頭炎 1〜5%未満
上気道感染等) 1〜5%未満
下痢(21.3%) 5%以上
不眠症 1〜5%未満
丘疹等)(54.0%) 5%以上
乳頭痛 1〜5%未満
乳頭腫 1〜5%未満
乳頭腫ウイルス感染 1%未満
乾燥症 1〜5%未満
休止期脱毛 1%未満
低カリウム血症 1〜5%未満
体重減少 5%以上
便秘 1〜5%未満
傾眠 1%未満
光線過敏症(46.0%) 5%以上
全身健康状態低下 1〜5%未満
全身性皮疹 1〜5%未満
副鼻腔炎 1〜5%未満
動悸 1%未満
口内乾燥 1〜5%未満
口内炎 1〜5%未満
口唇炎 1〜5%未満
口唇腫脹 1%未満
味覚異常 5%以上
呼吸困難 1〜5%未満
咽頭喉頭痛 1〜5%未満
嗜眠 1〜5%未満
嘔吐 5%以上
嚥下障害 1%未満
四肢痛 5%以上
回転性めまい 1〜5%未満
変形性関節症 1%未満
多汗症 1〜5%未満
好中球減少 1〜5%未満
好酸球増加症 1%未満
寝汗 1〜5%未満
小結節 1〜5%未満
悪寒 1〜5%未満
悪心(26.1%) 5%以上
手足症候群 5%以上
振戦 1%未満
掌蹠角皮症 1〜5%未満
日光性角化症 5%以上
日光皮膚炎 1〜5%未満
末梢性浮腫) 5%以上
末梢神経障害 5%以上
棘細胞腫 1〜5%未満
毛包炎 5%以上
毛孔性角化症 5%以上
毛質異常 1〜5%未満
毛髪成長異常 1〜5%未満
流涙増加 1〜5%未満
浮動性めまい 1〜5%未満
浮腫(全身性浮腫 5%以上
消化不良 1〜5%未満
熱傷 1%未満
疲労(43.7%) 5%以上
疼痛 1〜5%未満
発熱 5%以上
発疹(湿疹 5%以上
白血球減少 1%未満
皮膚乳頭腫(21.6%) 5%以上
皮膚乾燥 5%以上
皮膚刺激 1%未満
皮膚剥脱 1〜5%未満
皮膚嚢腫 1〜5%未満
皮膚変色 1〜5%未満
皮膚毒性 1%未満
皮膚炎 1〜5%未満
皮膚疼痛 1%未満
皮膚病変 5%以上
皮膚肥厚 1〜5%未満
皮膚腫瘤 1〜5%未満
眼乾燥 1〜5%未満
眼充血 1〜5%未満
眼刺激 1〜5%未満
眼痛 1%未満
眼瞼乳頭腫 1〜5%未満
知覚過敏 1〜5%未満
稗粒腫 1〜5%未満
筋力低下 1〜5%未満
筋痙縮 1〜5%未満
筋骨格痛 5%以上
筋骨格硬直 1〜5%未満
紅斑 5%以上
結節性紅斑 1〜5%未満
結膜炎 1〜5%未満
網膜静脈閉塞 頻度不明
羞明 1〜5%未満
背部痛 1〜5%未満
胸痛 1〜5%未満
脂漏性角化症 5%以上
脂肪織炎 1%未満
脱毛症(46.0%) 5%以上
脱水 1〜5%未満
腫瘤 1%未満
腱痛 1%未満
腹痛 5%以上
腹部不快感 1%未満
腹部膨満 1〜5%未満
膵炎 1%未満
膿瘍 1%未満
色素沈着障害 1〜5%未満
苔癬様角化症 1%未満
蕁麻疹 1〜5%未満
血中ビリルビン増加 5%以上
血小板減少 1〜5%未満
血管炎 1%未満
貧血 1〜5%未満
転倒 1%未満
逆流性食道炎 1〜5%未満
過角化(25.9%) 5%以上
関節滲出液 1%未満
関節炎 1〜5%未満
関節痛(49.4%) 5%以上
関節腫脹 1〜5%未満
霧視 1〜5%未満
頚部痛 1%未満
頭痛 5%以上
顔面神経麻痺 頻度不明
顔面腫脹 1%未満
食欲減退 5%以上
高コレステロール血症 1%未満
鼓腸 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

ベムラフェニブは、BRAF V600変異(V600E、V600D、V600R、V600K、V600G、V600M)を含む活性化変異型のBRAFキナーゼ活性を阻害することにより21)、BRAF活性化によるMEK及びERKのリン酸化を阻害し、BRAF V600変異を有する腫瘍の増殖を抑制すると考えられる22)。

18.2 抗腫瘍効果

ベムラフェニブは、in vitroにおいて、BRAF V600E変異を有するヒト悪性黒色腫由来Colo829及びA375細胞株並びにBRAF V600D変異を有するヒト悪性黒色腫由来WM2664細胞株に対して増殖抑制作用を示した。また、BRAF V600E変異を有するヒト悪性黒色腫由来細胞株(LOX、Colo829及びA375)を皮下移植したヌードマウスにおいて、ベムラフェニブ投与による腫瘍増殖抑制作用が示された22)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回及び反復投与

悪性黒色腫患者9例を対象にベムラフェニブとして960mgを単回経口投与したときの血漿中ベムラフェニブ濃度の推移を以下の図に示した。 また、引き続き15日目までベムラフェニブとして1回960mgを1日2回反復経口投与した7例の血漿中ベムラフェニブ濃度推移図を示すと共に、薬物動態パラメータを単回投与時(1日目)の結果と併せて表に示した。 単回投与時(1日目)と反復投与時(15日目)のAUC、Cmaxから算出した蓄積係数は、それぞれ20.5、16.5を示した3)。

1日目の血漿中ベムラフェニブ濃度推移(平均値±標準偏差)15日目の血漿中ベムラフェニブ濃度推移(平均値±標準偏差)

n AUC0-12 (μg・h/mL) Cmax (μg/mL) t1/2 (h) Tmax (h)
960mg/回 1日目 9 46.4 (57.8%) 6.40 (54.9%) 12.7 (18.2%)a) 3.88 (3.83-5.98)
15日目 7 669 (24.2%) 73.3 (28.7%) 60.8 (82.4%)b) 2.12 (0.900-4.02)
平均値(CV%) Tmax:中央値(最小値-最大値) a)n=6、b)n=4

悪性黒色腫患者52例を対象にベムラフェニブとして240、480、720注)又は960mgを単回経口投与し、その後15日目まで、1日2回反復経口投与したところ、投与15日目までに多くの症例が定常状態に達していた。単回投与時、反復投与時ともに240mg注)から960mgの範囲で線形性が認められた4)(外国人データ)。 注)承認された用法及び用量は、通常1回 960mgを1日2回経口投与である。

16.2 吸収

  1. 16.2.1 食事の影響

悪性黒色腫患者16例を対象にベムラフェニブとして960mgを単回経口投与したとき、食後(高脂肪・高カロリー食)投与では絶食時投与と比較して、Cmaxが2.5倍、AUCinfが4.6倍に増加し、Tmaxの中央値は4時間から7.5時間に延長した5)(外国人データ)。

  1. 16.2.2 絶対的バイオアベイラビリティ

悪性腫瘍患者4例を対象にベムラフェニブの絶対的バイオアベイラビリティを検討したところ、57.8%(幾何平均値)であった6)(外国人データ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1 蛋白結合率

ベムラフェニブは、血清アルブミン及びα1-酸性糖蛋白と結合し、蛋白結合率はいずれも99%以上であった7)(in vitro)。

  1. 16.3.2 分布容積

母集団薬物動態解析によると、悪性黒色腫患者のみかけの分布容積は、90.9L(個体間変動64.8%)であった8)(外国人データ)。

16.4 代謝

悪性黒色腫患者7例を対象にベムラフェニブとして1回960mgを1日2回14日間連日反復投与し、15日目に14C-ベムラフェニブ960mgを単回経口投与したところ、血漿中放射能の95%がベムラフェニブ、代謝物は5%未満であった9)(外国人データ)。 ヒト肝ミクロソームでは、ベムラフェニブは主にCYP3A4で代謝された10)(in vitro)。

16.5 排泄

悪性黒色腫患者7例を対象にベムラフェニブとして1回960mgを1日2回14日間連日反復投与し、15日目に14C-ベムラフェニブ960mgを単回経口投与したところ、放射能の94%が糞中に排泄され、尿中に排泄されたのは1%未満であった9)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能障害

悪性黒色腫患者458例を対象に母集団薬物動態解析を実施し、腎機能に関連するクレアチニンクリアランスで共変量探索を実施した結果、クレアチニンクリアランスは共変量として組み込まれなかった8)(外国人データ)。

  1. 16.6.2 肝機能障害

悪性黒色腫患者458例を対象に母集団薬物動態解析を実施し、肝機能に関連するALT、Al-P、AST、総ビリルビン、肝転移の有無で共変量探索を実施した結果、これらの変数は共変量として組み込まれなかった8)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 カフェイン、デキストロメトルファン、ミダゾラム、オメプラゾール、S-ワルファリン

悪性黒色腫患者20例を対象に5種のCYP分子種(CYP1A2、CYP2D6、CYP3A4、CYP2C19、CYP2C9)の基質となるカクテル薬剤を用いて、本剤が各CYP分子種の基質となる薬剤の薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す11)(外国人データ)。

基質薬 薬物動態パラメータ 併用、非併用時の幾何平均値の比 幾何平均値の比の90%信頼区間
カフェイン (CYP1A2) AUC0-last 2.56 (2.24-2.93)
Cmax 1.05 (0.98-1.13)
デキストロメトルファン (CYP2D6) AUC0-last 1.47 (1.21-1.78)
Cmax 1.36 (1.07-1.72)
ミダゾラム (CYP3A4) AUC0-last 0.61 (0.50-0.74)
Cmax 0.65 (0.54-0.78)
オメプラゾール (CYP2C19) AUC0-last 1.13 (0.92-1.37)
Cmax 1.17 (0.92-1.49)
S-ワルファリン (CYP2C9) AUC0-last 1.18 (1.12-1.24)
Cmax 1.00 (0.93-1.08)
(カフェインはn=19,他はn=20)
  1. 16.7.2 リファンピシン

悪性腫瘍患者23例を対象にCYP3A4を誘導するリファンピシンを用いて、CYP3A4の誘導剤がベムラフェニブの薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す12)(外国人データ)。

基質薬 薬物動態パラメータ 併用、非併用時の幾何平均値の比 幾何平均値の比の90%信頼区間
ベムラフェニブ (CYP3A4) AUC0-last 0.614 (0.484-0.780)
Cmax 1.11 (0.908-1.36)
(n=23)
  1. 16.7.3 イトラコナゾール

悪性腫瘍患者8例を対象にCYP3A4を阻害するイトラコナゾールを用いて、CYP3A4の阻害剤がベムラフェニブの薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す13)(外国人データ)。

基質薬 薬物動態 パラメータ 併用、非併用時の 幾何平均値の比 幾何平均値の比の 90%信頼区間
ベムラフェニブ AUC0-tau 1.400 (1.210-1.610)
Cmax 1.400 (1.210-1.610)
(n=8)
  1. 16.7.4 チザニジン

悪性腫瘍患者16例を対象にCYP1A2の基質であるチザニジンを用いて、本剤がCYP1A2の基質となる薬剤の薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す14)(外国人データ)。

基質薬 薬物動態パラメータ 併用、非併用時の幾何平均値の比 幾何平均値の比の90%信頼区間
チザニジン (CYP1A2) AUC0-last 4.22 (3.37-5.28)
Cmax 2.15 (1.71-2.71)
(n=16)
  1. 16.7.5 ジゴキシン

悪性腫瘍患者29例を対象にP-gpの基質であるジゴキシンを用いて、本剤がP-gpの基質となる薬剤の薬物動態に与える影響を検討した結果を表に示す15)(外国人データ)。

基質薬 薬物動態パラメータ 併用、非併用時の幾何平均値の比 幾何平均値の比の90%信頼区間
ジゴキシン (P-gp) AUC0-last 1.82 (1.63-2.02)
Cmax 1.47 (1.30-1.65)
(n=26)
  1. 16.7.6 その他

In vitro試験において、ベムラフェニブはP-gp及びBCRPの基質であること、並びにCYP2C8、P-gp、BCRP及び胆汁酸排泄ポンプ(BSEP)を阻害することが示されている16),17)。,