【警告】

  1. 1.1 本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

  2. 1.2 肺臓炎、間質性肺炎等の間質性肺疾患があらわれ、死亡に至る例も報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、疲労、肺浸潤等)の確認及び胸部X線検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分又はトラスツズマブ(遺伝子組換え)に対し過敏症(過敏症と鑑別困難で死亡につながるおそれのある重篤なInfusion reactionを含む)の既往歴のある患者

  2. 2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性

効能・効果

  • HER2陽性の手術不能又は再発乳癌

  • HER2陽性の乳癌における術後薬物療法

用法・用量

通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。

使用上の注意

  1. 8.1 心障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前には患者の心機能を確認すること。また、本剤投与中は心症状の発現状況・重篤度等に応じて適宜心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態(LVEFの変動を含む)を十分に観察し、休薬、投与再開又は中止を判断すること。

  2. 8.2 肝機能障害、肝不全があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査(AST、ALT、総ビリルビン等)を行うこと。また、結節性再生性過形成があらわれることがあるので、門脈圧亢進症の症状等について観察を十分に行い、発現が疑われる場合には肝生検等の実施を考慮すること。

  3. 8.3 血小板減少症があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血小板数を測定し、出血に関する症状の有無を確認する等、患者の状態を十分に観察すること。

  4. 8.4 本剤の使用にあたっては、本剤と一般名が類似しているトラスツズマブ及びトラスツズマブ デルクステカンとの取り違えに注意すること。

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 安静時呼吸困難等の症候性の肺疾患のある患者

肺臓炎があらわれることがある。

  1. 9.1.2 左室駆出率(LVEF)が低下している患者

LVEF低下を悪化させるおそれがある。

  1. 9.1.3 以下のような心機能の低下するおそれのある患者

心不全等の心障害があらわれるおそれがある。

  • アントラサイクリン系薬剤の投与歴のある患者

  • 胸部への放射線治療中の患者又はその治療歴のある患者

  • うっ血性心不全若しくは治療を要する重篤な不整脈のある患者又はその既往歴のある患者

  • 冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)の患者又はその既往歴のある患者

  • 高血圧症の患者又はその既往歴のある患者

  1. 9.1.4 血小板数減少のある患者

出血のおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

肝機能障害患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.4 生殖能を有する者

  1. 9.4.1 **妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後7カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。,

  2. 9.4.2 **男性には、本剤投与中及び最終投与後4カ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。本剤を構成するトラスツズマブを投与した妊婦に羊水過少が起きたとの報告がある。また、羊水過少を発現した症例で、胎児・新生児の腎不全、胎児発育遅延、新生児呼吸窮迫症候群、胎児の肺形成不全等が認められ死亡に至った例も報告されている。本剤を構成するDM1の類薬であるメイタンシンを用いた動物実験において、催奇形性及び胎児毒性が報告されている。,

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。ヒトでの乳汁移行に関するデータはないが、本剤を構成するトラスツズマブを用いた動物実験において、乳汁への移行が報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

心機能、肝・腎機能検査、血液検査を行うなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。

副作用

その他の副作用

副作用名 頻度 症状・説明
インフルエンザ 1%未満
インフルエンザ様疾患 頻度不明
うつ病 1%未満
カンジダ症 1%未満
そう痒症 頻度不明
ほてり 頻度不明
めまい 頻度不明
リンパ球数減少 頻度不明
上気道感染 頻度不明
下痢 5%以上
不眠症 頻度不明
低血圧 1%未満
体重増加 1%未満
体重減少 頻度不明
便秘(11.1%) 5%以上
倦怠感(34.4%) 5%以上
傾眠 1%未満
動悸 頻度不明
口内乾燥(10.7%) 5%以上
口内炎 5%以上
口唇乾燥 1%未満
口渇 1%未満
口腔内出血 1%未満
口腔内痛 1%未満
口腔咽頭痛 頻度不明
味覚異常 5%以上
呼吸困難 頻度不明
咳嗽 頻度不明
嗅覚錯誤 1%未満
嗜眠 頻度不明
嘔吐(11.7%) 5%以上
四肢痛等) 5%以上
回転性めまい 頻度不明
多汗症 1%未満
好中球数減少 5%以上
尿路感染 頻度不明
平衡障害 1%未満
悪寒 頻度不明
悪心(34.6%) 5%以上
感覚鈍麻 1%未満
手掌・足底発赤知覚不全症候群 1%未満
挫傷 頻度不明
末梢性浮腫等) 頻度不明
歯周病 1%未満
歯肉出血 頻度不明
注射部位反応 1%未満
流涙増加 頻度不明
浮腫(全身性浮腫 頻度不明
消化不良 頻度不明
消化器痛 1%未満
消化管出血 1%未満
湿疹 1%未満
無力症 5%以上
熱感 1%未満
爪の異常 5%以上
片頭痛 1%未満
疼痛(背部痛 5%以上
痔核 1%未満
発熱 5%以上
発疹 5%以上
白血球数減少 5%以上
皮下出血 頻度不明
皮膚乾燥 頻度不明
皮膚炎 頻度不明
眼そう痒症 1%未満
眼乾燥 頻度不明
眼充血 1%未満
眼刺激 1%未満
眼痛 1%未満
神経毒性 1%未満
筋力低下 1%未満
筋痙縮 頻度不明
筋骨格痛 5%以上
筋骨格硬直 1%未満
粘膜の炎症 頻度不明
粘膜乾燥 1%未満
紅斑 頻度不明
紫斑 1%未満
結膜出血 1%未満
結膜炎 頻度不明
耳鳴 1%未満
肺炎 1%未満
胃炎 1%未満
胃腸炎 1%未満
胃食道逆流性疾患 1%未満
胸痛 頻度不明
胸部不快感 1%未満
脱毛症 頻度不明
脱水 1%未満
腟出血 1%未満
腹痛 5%以上
腹部不快感 1%未満
腹部膨満 頻度不明
蕁麻疹 1%未満
血中ALP増加 5%以上
血中アルブミン減少 1%未満
血中カリウム減少 頻度不明
血中クレアチニン増加 1%未満
血中尿酸増加 1%未満
血腫 1%未満
視力低下等) 頻度不明
視力障害(霧視 頻度不明
貧血 5%以上
錯感覚 頻度不明
関節痛(10.4%) 5%以上
頭痛(15.4%) 5%以上
頻脈 1%未満
食欲減退(10.5%) 5%以上
高血圧 頻度不明
高血糖 1%未満
鼓腸 1%未満
鼻乾燥 1%未満
鼻出血(16.5%) 5%以上
鼻咽頭炎 頻度不明
鼻漏 頻度不明
鼻炎 頻度不明
鼻閉 1%未満

薬物動態・作用機序

作用機序

18.1 作用機序

本剤は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブとチューブリン重合阻害作用を有するDM1を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である11)。 本剤は、トラスツズマブと同様に、HER2及びFcγ受容体との結合活性を示し12),13),14)、HER2細胞外ドメインの遊離(シェディング)抑制、PI3K/AKT経路のシグナル伝達阻害及び抗体依存性細胞傷害活性を示す12),14),15)。また、本剤は、HER2に結合して細胞内に取り込まれた後、DM1含有代謝物を遊離し16)、G2/M期での細胞周期停止及びアポトーシスを誘導する11),15)。

18.2 抗腫瘍効果

本剤は、in vitroにおいて、トラスツズマブに感受性のHER2陽性のヒト乳癌由来細胞株(SK-BR-3、BT-474)に対し、トラスツズマブよりも強い増殖抑制作用を示した12),15)。また、トラスツズマブに非感受性のHER2陽性のヒト乳癌由来細胞株(KPL-4、HCC1954、BT-474EEI)に対して増殖抑制作用を示した15)。さらに、HER2陽性のヒト乳癌由来細胞株(BT-474EEI、KPL-4)を同所移植したマウスにおいて、増殖抑制作用を示した11)。

薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与時

日本人のHER2陽性進行・再発乳癌患者10例に本剤1.8、2.4又は3.6mg/kg注1)を90分(±10分)間点滴静注したときのトラスツズマブ エムタンシンの血清中濃度推移は以下のとおりであった。Cmax及びAUCinfはいずれも投与量の増加に応じて増加した。CL及びVd,ssは投与群間で同様の値の範囲内にあった。t1/2は投与群間で大きく異ならなかった。以上のことから、血清中トラスツズマブ エムタンシンの薬物動態は検討した範囲内で線形性を示した1)。日本人のHER2陽性進行・再発乳癌患者30例に本剤3.6mg/kgを点滴静注したときのVd,ssの平均値は54.9mL/kgであり、ほぼ血漿容量に相当した2)。 注1)承認された用法・用量は3.6mg/kg(体重)を3週間間隔投与である。

単回投与時の血清中トラスツズマブ エムタンシン濃度推移平均値±標準偏差

投与量 (mg/kg) Cmax (μg/mL) AUCinf (μg・day/mL) t1/2 (day) CL (mL/day/kg) Vd,ss (mL/kg)
1.8 (n=1) 35.3 141 2.39 12.9 57.1
2.4 (n=4) 43.4 ±15.2 204 ±70.5 2.88 ±0.317 13.4 ±6.34 67.6 ±20.3
3.6 (n=5) 82.0 ±10.0 346 ±41.1 3.74 ±1.15 10.6 ±1.26 59.1 ±6.62
平均値±標準偏差
  1. 16.1.2 反復投与時

日本人のHER2陽性進行・再発乳癌患者32例に本剤3.6mg/kgを3週間間隔で90分間(±10分、忍容性が確認された場合、2回目以降30分間(±10分)に短縮可能)点滴静注したときのトラスツズマブ エムタンシンの血清中濃度推移は以下のとおりであった。血清中トラスツズマブ エムタンシンの蓄積はほとんど認められなかった3)。

反復投与時の血清中トラスツズマブ エムタンシンの トラフ濃度及びピーク濃度平均値±標準偏差(n=2~28)

16.3 分布

  1. 16.3.1 血漿蛋白結合

本剤を構成するDM1をヒト血漿に20ng/mLの濃度で添加した際の血漿蛋白結合率は93.2%であった4)。

16.4 代謝

トラスツズマブ エムタンシンは主として細胞内のリソゾームにより異化を受けると推測される。血漿中代謝物として、DM1及びMCC-DM1注2)がトラスツズマブ エムタンシンと比較して低い濃度で検出された。日本人のHER2陽性進行・再発乳癌患者に本剤3.6mg/kgを点滴静注したときのサイクル1における血漿中DM1及び血漿中MCC-DM1はともに投与後30分にピーク値を示し、その値は各々3.79±0.950ng/mL(28例)、8.65±3.03ng/mL(28例)であった。Lys-MCC-DM1注3)はほとんど検出されなかった3)。ヒト肝ミクロソーム等を用いたin vitro試験で、DM1は主としてCYP3A4及び一部CYP3A5で代謝されることが示唆された5)。 注2)MCC-DM1:DM1とMCCリンカーが結合した状態で遊離した代謝物 注3)Lys-MCC-DM1:リシン残基とともにMCC-DM1が遊離した代謝物

16.5 排泄

In vitro試験から、DM1はP-糖蛋白質(P-gp)の基質であることが示唆された6)。またDM1を3H標識したトラスツズマブ エムタンシンをラットに単回静脈内投与したとき、DM1、Lys-MCC-DM1及びMCC-DM1を含む異化代謝物は主に糞中に排泄され(50%)、尿中への排泄は少なかった(8.2%)7)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 肝機能障害患者での薬物動態

HER2陽性進行・再発乳癌のうち、肝機能障害患者18例[軽度(Child-Pugh分類A):10例、中等度(Child-Pugh分類B):8例]及び正常肝機能患者10例に本剤3.6mg/kgを3週間間隔で点滴静注したとき、トラスツズマブ エムタンシンのAUCの平均値は、軽度及び中等度肝機能障害患者で、サイクル1では正常肝機能患者と比べそれぞれ38%及び67%低く、サイクル3では正常肝機能患者と同程度であった。また、DM1、MCC-DM1、Lys-MCC-DM1は、肝機能障害患者と正常肝機能患者とで同程度であり、いずれもトラスツズマブ エムタンシンと比べ低い濃度で検出された8)(外国人データ)。