緊急治療を要する頻脈性不整脈(上室性及び心室性)
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
-
2.1 うっ血性心不全のある患者[不整脈(心室頻拍、心室細動等)の誘発又は増悪、陰性変力作用による心不全の悪化を来すおそれが高い。]
-
2.2 高度の房室ブロック、高度の洞房ブロックのある患者[刺激伝導抑制作用により、これらの障害を更に悪化させるおそれがある。]
効能・効果
用法・用量
- 〈期外収縮〉
通常、成人には1回0.075mL/kg(ピルシカイニド塩酸塩水和物として0.75mg/kg)を必要に応じて日本薬局方生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液などで希釈し、血圧ならびに心電図監視下に10分間で徐々に静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜減量する。
- 〈頻拍〉
通常、成人には1回0.1mL/kg(ピルシカイニド塩酸塩水和物として1.0mg/kg)を必要に応じて日本薬局方生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液などで希釈し、血圧ならびに心電図監視下に10分間で徐々に静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜減量する。
使用上の注意
-
8.1 本剤の投与に際しては、必ず心電図、脈拍、血圧等の連続監視を行うこと。PQの延長、QRS幅の増大、QTの延長、徐脈、血圧低下等の異常所見が認められた場合には、直ちに投与を中止すること。
-
8.2 発作性頻拍では投与中に不整脈が消失した場合は、患者の状態を観察しながら投与を終了すること。
-
8.3 本剤が有効であり、かつ経口投与が可能となった後は速やかに経口投与に切り替えること。
-
8.4 本剤の効果の発現が認められない場合は、他の治療方法に切り替えること。
-
8.5 本剤投与後に他の抗不整脈薬の追加投与が必要な場合には、作用が増強する可能性があるので十分注意して投与すること。本剤投与後、心電図に変化が認められる間は特に注意して投与すること。
-
8.6 本剤でBrugada症候群に特徴的な心電図変化(右脚ブロック及び右側胸部誘導(V1~V3)のST上昇)の顕在化、又はそれに伴う心室細動、心室頻拍、心室性期外収縮を発現させたとの報告があるので注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
- 9.1.1 基礎心疾患(心筋梗塞、弁膜症、心筋症等)のある患者
心不全を来すおそれのある患者では、心室頻拍、心室細動等が発現するおそれが高い。
- 9.1.2 心不全の既往のある患者
心不全を来すおそれがある。
- 9.1.3 刺激伝導障害(房室ブロック、洞房ブロック、脚ブロック等)のある患者(高度の房室ブロック、高度の洞房ブロックのある患者を除く)
刺激伝導抑制作用により、これらの障害を更に悪化させるおそれがある。
- 9.1.4 著明な洞性徐脈のある患者
高度の徐脈、洞停止を来すおそれがある。
- 9.1.5 血清カリウム低下のある患者
催不整脈作用が発現するおそれがある。
- 9.1.6 遺伝性果糖不耐症の患者
本剤の添加剤D-ソルビトールが体内で代謝されて生成した果糖が正常に代謝されず、低血糖、肝不全、腎不全等が誘発されるおそれがある。
- 9.1.7 他の抗不整脈薬を併用している患者
慎重に観察しながら投与すること。
- 9.1.8 恒久的ペースメーカー使用中あるいは一時的ペーシング中の患者
異常が認められた場合には直ちに投与を中止すること。本剤は心臓ペーシング閾値を上昇させる可能性がある。
9.2 腎機能障害患者
本剤は腎臓からの排泄により体内から消失する薬剤であり、血中濃度が高くなりやすく、また高い血中濃度が持続するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
- 9.3.1 重篤な肝機能障害のある患者
AST、ALT、LDH等の上昇が報告されている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児に移行することが報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
肝・腎機能が低下していることが多く、また体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすい。
副作用
その他の副作用
| 副作用名 | 頻度 | 症状・説明 |
|---|---|---|
| ALT上昇 | 1〜5%未満 | — |
| AST上昇 | 1〜5%未満 | — |
| BUN上昇 | 1〜5%未満 | — |
| CK上昇 | 1〜5%未満 | — |
| LDH上昇 | 1〜5%未満 | — |
| QRS幅の増大 | 1〜5%未満 | — |
| QT延長 | 頻度不明 | — |
| クレアチニン上昇 | 頻度不明 | — |
| ふわふわ感 | 1〜5%未満 | — |
| リンパ球増加 | 1〜5%未満 | — |
| リンパ球減少 | 1〜5%未満 | — |
| 上室性期外収縮 | 頻度不明 | — |
| 上室性頻拍 | 頻度不明 | — |
| 全身倦怠感 | 1〜5%未満 | — |
| 口渇 | 1〜5%未満 | — |
| 嘔吐 | 頻度不明 | — |
| 好酸球増加 | 1〜5%未満 | — |
| 尿蛋白陽性 | 1〜5%未満 | — |
| 徐脈 | 1〜5%未満 | — |
| 心室性期外収縮 | 1〜5%未満 | — |
| 心房粗動 | 頻度不明 | — |
| 悪心 | 1〜5%未満 | — |
| 房室ブロック | 頻度不明 | — |
| 発疹 | 1〜5%未満 | — |
| 白血球数増加 | 1〜5%未満 | — |
| 白血球数減少 | 1〜5%未満 | — |
| 胸痛 | 1〜5%未満 | — |
| 胸部不快感 | 1〜5%未満 | — |
| 血圧低下 | 1〜5%未満 | — |
薬物動態・作用機序
作用機序
18.1 作用機序
本剤は、Vaughan Williamsらの分類のクラスIcに属する不整脈治療剤で、Naチャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す。Sicilian Gambitの提唱する薬剤分類(日本版)において、本剤はNaチャンネルを選択的に抑制し、K、Caチャンネル並びにα、β及びムスカリン受容体などには影響を与えないものとして位置づけられる。
18.2 臨床電気生理学的作用
発作性上室性頻拍患者に本剤0.5~1.0mg/kgを、また心室頻拍患者に本剤0.25~1.0mg/kgを単回静脈内投与した場合、洞周期(SCL)を短縮させ10),11)、房室結節内伝導(AH)時間10),11)、順行性房室結節機能的有効不応期(AVNFRP)10)を延長させた。また、頻拍誘発試験において発作性上室性頻拍及び心室頻拍の誘発抑制効果が認められた10),11)。
18.3 心機能に対する作用
発作性上室性頻拍患者に本剤0.5~1.0mg/kgを単回静脈内投与した場合、肺動脈楔入圧は有意に増加したが正常範囲内の変化であった(投与前値7mmHg、投与終了時10mmHg)10),11)。また心室頻拍患者に0.25~1.0mg/kgを単回静脈内投与した場合、心拍数及び肺動脈楔入圧が有意に増加した(心拍数;投与前値71回/分、投与終了時76回/分、肺動脈楔入圧;投与前値14mmHg、投与終了時18mmHg)11)。
18.4 実験的不整脈に対する作用
-
18.4.1 イヌの冠動脈二段結紮による実験的不整脈を抑制した12),13),14)。
-
18.4.2 イヌのアコニチン、ウアバイン及びアドレナリンによって誘発された実験的不整脈を抑制した13),15)。
-
18.4.3 イヌの冠動脈閉塞中及び再灌流中に発生する心室性不整脈を抑制した16)。
18.5 電気生理学的作用
- 18.5.1 最大脱分極速度に対する作用
モルモット乳頭筋において、静止膜電位にほとんど影響を与えることなく、最大脱分極速度(Vmax)を用量依存的に抑制した17)。
- 18.5.2 活動電位持続時間及び有効不応期に対する作用
モルモット乳頭筋の活動電位持続時間(APD)及び有効不応期(ERP)に影響を与えなかった17)。
- 18.5.3 心室細動の発生閾値に対する作用
イヌにおいて電気刺激による心室細動の発生閾値を上昇させた16)。
- 18.5.4 遅延後脱分極及び誘発自動能に対する作用
イヌのプルキンエ線維においてアセチルストロファンチジンで誘発される遅延後脱分極及び誘発自動能を抑制した18)。
- 18.5.5 アセチルコリンで惹起されるKチャンネル電流に対する作用
モルモットの単一心房筋細胞においてアセチルコリンで惹起されるKチャンネル電流に対する抑制作用はフレカイニド、ジソピラミド、キニジンと比べて弱かった19)。
- 18.5.6 心電図に対する作用
イヌにおいて心電図のPQの延長及びQRS幅の増大作用を有するがQTcの延長作用はジソピラミドと比べて弱かった14)。
18.6 活性代謝物の抗不整脈作用
イヌ冠動脈二段結紮不整脈に対する2-ヒドロキシメチル体の抗不整脈作用強度はピルシカイニド塩酸塩水和物の1/8であった14)。
薬物動態
16.1 血中濃度
健康成人男性18例にピルシカイニド塩酸塩水和物0.25、0.50及び0.75mg/kg注1)を10分間かけて単回静脈内投与した場合、血漿中濃度の推移は次のとおりであった1)。
ピルシカイニド塩酸塩水和物単回静脈内投与時の血漿中濃度の推移
| 投与量 (mg/kg) | 例数 | Cmax (μg/mL) | t1/2α (min) | t1/2β (hr) | AUC (μg・hr/mL) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.25 | 6注2) | 0.28±0.06 | 1.99±0.68 | 4.34±1.98 | 0.73±0.33 |
| 0.50 | 6 | 0.65±0.28 | 3.95±1.54 | 5.74±0.85 | 1.71±0.27 |
| 0.75 | 6 | 1.10±0.30 | 1.82±1.01 | 4.37±0.48 | 2.88±0.36 |
| (平均±SD) | |||||
ヒトの1.0mg/kg投与時(10分間かけて投与)の血漿中濃度は1.74±0.85μg/mLであり、ラットにおける1.0mg/kg反復投与時(無毒性量)のラット血漿中濃度3.12±0.60μg/mLのほぼ1/2であった。
16.3 分布
- 16.3.1 組織移行
ラットに14C-ピルシカイニド塩酸塩水和物を静脈内投与した場合、主として肝臓、腎臓に分布し、脳への分布は少なかった2)。また、胎児及び乳汁中には母体の血漿中濃度とほぼ同程度かあるいはそれ以上の移行が認められた3)。
- 16.3.2 蛋白結合率
ヒト血漿蛋白結合率は、1.0μg/mL以下の濃度で約35%と一定であったが、50μg/mLでは約20%に低下した4)(in vitro)。
16.4 代謝
健康成人ではピルシカイニド塩酸塩水和物は代謝されにくい。経口投与時に検出された代謝物2-ヒドロキシメチル体の生成に関与するヒト肝チトクロームP450分子種を検討したところ、CYP2D6により上記代謝物の生成が僅かに認められた5)。
16.5 排泄
健康成人男性にピルシカイニド塩酸塩水和物0.125、0.25、0.50及び0.75mg/kg注1)を単回静脈内投与した場合に、いずれの投与量においても24時間以内に90%以上が未変化体として尿中に排泄された1)。
16.6 特定の背景を有する患者
- 16.6.1 腎機能障害患者
ピルシカイニド塩酸塩水和物は腎排泄型の薬剤であり、経口剤においては腎機能障害患者、腎機能が低下している高齢者では内因性クレアチニンクリアランス(CLcr)の低下に伴い半減期が延長した6)。
| 腎機能CLcr (mL/min) | 例数 | Tmax (hr) | Cmax (μg/mL) | t1/2 (hr) | Vd (L/kg) | CLtot (mL/min) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| CLcr≧80 | 6 | 3.1±0.6 | 0.41±0.08 | 3.4±0.2 | 1.48±0.19 | 280.0±37.5 |
| 80>CLcr≧50 | 10 | 2.7±0.8 | 0.46±0.03 | 5.7±0.3 | 1.46±0.11 | 182.8±11.8 |
| 50>CLcr≧20 | 8 | 3.1±0.8 | 0.51±0.05 | 9.3±1.1 | 1.70±0.15 | 123.4±19.3 |
| 20>CLcr | 8 | 3.8±0.7 | 0.63±0.05 | 23.7±2.0 | 1.46±0.11 | 38.8±4.6 |
| (平均±SE) | ||||||
注1)本剤の承認用量は1回0.75mg/kg又は1.0mg/kgである。
注2)Cmaxのみ6例で、他の薬物動態パラメータは5例で解析した。